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7月, 2021の投稿を表示しています

メキシコで大統領経験者5人断罪の是非問う諮問投票

   メキシコのAMLO政権は8月1日、選挙庁(INE)による初の国民投票と言うべき「国民諮問」投票を実施した。重要政策を巡って全有権者の意思を確認するための国政手法である。   是非を問われるのは、1988~2018年の30年間に政権を担った5人の大統領経験者の在任中の犯罪を裁くか否か。権力者とくに最高権力者である大統領は絶対に裁かないという、伝統的な無処罰主義の不文律に挑戦する初の試みだ。   国民が断罪すべきか否かを問われているのは、カルロス・サリーナス(73、PRI=制度的革命党)、エルネスト・セディージョ(69、PRI)、ビセンテ・フォックス(79、PAN=国民行動党)、フェリーぺ・カルデロン(58、PAN)、エンリケ・ペ-ニャ=ニエト(55、PRI)の5人。   投票結果が拘束力を持つには、登録有権者の40%(3700万人)が投票しなければならない。投票は、5人を裁くかどうかについて用紙に記された「はい」「いいえ」のいずれかを選ぶだけ。   世論調査によれば、77%が大統領経験者たちの断罪に賛成しているが、コロナ禍COVID19が猛威を振るっているため、投票所に行くと回答したのは31%にとどまっている。   今回の投票実施に執着するAMLOは支持率が57%。「はい」が過半数を占めるのは確実視されているが、投票率が4割に達するか否かは予測が難しい。   5人の「罪状」:サリーナスは当選したとされる1988年選挙が不正選挙だったこと。国庫資産の浪費など。セディージョは人道犯罪、民間部門債務を国庫債務にしたことなど。   初代PAN大統領フォックスは、人道犯罪、2006年大統領選挙不正介入など。その不正選挙で勝ったとされたカルデロンは「麻薬戦争」で暴力構造を全国に広げたことなど。   PRI復活政権のペーニャ=ニエトは、12年大統領選挙時の不正資金投入などによる金権選挙、腐敗、14年9月発生のアヨツィナパ事件への陸軍・連邦警察関与など。   AMLOが前任者ら5人の裁判の固執するのは、墨政治の民主化を促進するために他ならない。    だが、88年選挙不正により当時所属していた民主革命党(PRD)候補が勝利を奪われたこと、06年選挙で自身の当選を奪われたこと、12年選挙で相手の金権攻勢で敗れたことが大きい。18年選挙には自党MORENA(国家刷新運動)から出馬、

ペルー経済相に専門家フランケ就任、外相は元ゲリラ

      ペルーのペドロ・カスティージョ大統領は7月30日、同日既に就任していた16人の閣僚とは別に経済・財務相と司法・人権相を任命、就任式を済ませた。両相は、ギド・べジ―ド首相就任に異議を唱えて就任していなかった。これで全18閣僚がそろった。   とくに重要なのは、ペドロ・フランケ経済相(60)だ。経済学修士で、貧困・社会・経済を関連させて考察する社会派エコノミスト。中央準備銀行(BCR)や世界銀行に勤務し、1990年代以降、さまざまな国会議員や政治団体の政策顧問を務めてきた。   今年の大統領選挙では、穏健左翼ベロニカ・メンドサ候補の政策顧問だった。だがメンドサは4月11日の第1回投票で決選進出を果たせず、決選に進出したカスティージョの顧問になった。メンドサとカスティージョは政策協定を結び、フランケの顧問就任が決まった。   国際金融界、ペルー金融界、貧困渦巻くペルー社会の実態に精通した人物の経済相就任は、従来の主流、新自由主義路線とは一線を画す人事であり、歓迎されている。   伝統的左翼色の濃いべジ―ド首相就任には反対世論が形成されつつあり、同首相が躓いた場合、フランケが首相を兼務する可能性もささやかれている。   一方、外交政策を担うエクトル・べハル外相は85歳で閣僚として最高齢であり、9月には86歳になる。社会学博士、社会政策学修士で、大学教授を務めた。   キューバ革命直後の1960年、チェ・ゲバラ路線のゲリラ組織「民族解放軍」(ELN) をペルーで結成。62年には渡玖しゲバラに会い、ゲリラ訓練を受けた。   ゲリラ活動中の66年逮捕されたが、67年に発足したフアン・べラスコ=アルバラード将軍の「軍事革命政権」下の70年恩赦され、同政権の社会動員支援機関に入った。これが公職の始まりだった。   国際社会を駆け巡る外相ゆえに高齢への懸念はあるが、30日には、大統領就任式に出席したホルヘ・アレアサVEN外相と会談し、過去5年間疎遠だった両国関係の改善で合意した。   従来のラ米保守・右翼外交路線と米外交との協調を基盤としたペルー外交は、「左翼・進歩主義」色が鮮明になるもよう。秘米間の軍事協力関係の見直しも、将来的にありうるだろう。   べハルは記者団からベネズエラについて訊かれると、「問題はベネズエラではなく、ラ米諸国をいかによりよくするかだ」と答えている

ハイチ大統領選挙は年末実施か

      ハイチのアリエル・アンリ暫定首相は7月28日の閣議で、国政選挙を早期実施するため、政界および市民社会で合意作りを急いでいる、と述べ、「生まれた合意を壊そうとする要因があれば除去する」と強調した。   観測では、9月26日に予定されている大統領および国会議員の選挙は今年末に、地方選挙は来年1月に、それぞれ実施される公算が大きい。   7月7日に暗殺されたジョヴネル・モイーズ大統領が9月選挙に併せて実施しようとしていた改憲国民投票の実施については、アンリは具体的に触れていない。   大統領候補としては、出馬歴のある中道左翼系の政治家ジャン=シャルル・モイーズ、故モイーズ大統領の夫人マルティーヌらの名前が挙がっている。   一方、国家警察は30日までに、故モイーズ邸を警備していた警護隊員4人を逮捕した。暗殺事件の黒幕に買収され、暗殺実行部隊だったコロンビア人傭兵コマンドが邸内に入るのを阻止しなかった容疑がかけられている。   マルティーヌ夫人はこのほど事件当日の模様をあらためて語った。「7月7日未明、就寝中に最初の銃声が響き、目が覚めた。私は成人している息子2人に洗面所に身を隠すよう伝え、寝室に戻った」   「夫は警護隊に2度電話したが応答はなく、すでにコマンドが邸内に侵入していた。夫から安全のため床に伏せるようにと言われた。これが夫の最後の声だった」   「室内に自動小銃の掃射音が鳴り響いた。私は腕など数か所を撃たれたが、血が喉に入り呼吸困難になり、死んだように倒れた」   「コマンドはクレオール語もフランス語も話さず、別の言語を話していた。銃撃が終わると出ていった」   「夫を殺害することができるのは、寡頭勢力にして体制内にいる力のある者に限られる」   夫人は「夫が描いていたハイチのための将来構想を死なせたくない」と語っており、大統領選挙に出馬する意向と見られている。 ▼逮捕者44人に達する   大統領暗殺事件に関与した容疑でハイチ警察は8月3日までに計44人を逮捕した。うち12人は警察官。

週刊金曜日がハイチとキューバの情勢分析掲載

    「週刊金曜日」誌7月30日号に、拙稿『「ハイチ大統領暗殺」背景に権力・利権抗争ー隣国キューバでは社会主義体制が危機に』が掲載されています。ぎ覧ください。    併せて、ユーチューブジャーナリズム「デモクラシータイムス」「ラテンアメリカシリーズ」の「第8回<波高しカリブ海>ーハイチ大統領暗殺とキューバ対政府抗議行動」(52分)もご覧願います。    また、総合雑誌「世界」6月号「世界の潮」欄の『「カストロ後」時代のキューバ』および、「週刊金曜日」誌4月9日号『キューバ、共産党大会でカストロ第1書記引退へ  高まる体制不満、経済浮揚待ったなし』もご参照ください。    別件ですが、現代企画室7月10日刊『メヒコの衝撃 メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる』エッセイ篇(拙稿)「死があやしく騒ぐ街」もご覧ください。                             20210730 伊高浩昭

ベネズエラが選挙にジェンダー平等主義を導入

    ベネズエラも選挙における男女平等主義を実践することになった。同国選挙理事会(CNE)は7月29日、次期州知事・市長選挙(11月27日実施)の立候補届はジェンダー平等原則を守らない場合は受理しない、と政党や団体に通達した。    5月に実施されたチリの制憲会議(定数155人)選挙では、代議員に男性78人、女性77人を選出している。    ペルーのペドロ・カスティージョ新大統領は28日の就任演説で制憲議会開設構想を打ち出し、同議会議員はジェンダー平等主義をとると明言した。         カスティージョは「女性・弱者省」を新設、大学教授のアナイー・ドゥランを初代相に任命している。    ベネズエラ地方選挙の場合、議会でなく州知事と市長を選ぶため、ジェンダー平等は出馬の際に限られる。 

ペルーのペドロ・カスティージョ新大統領が就任

     ペルーのペドロ・カスティージョ新大統領(51)が7月28日就任した。任期は2016年までの5年。この日はペルー独立200周年記念日で、国中が29日まで2日間の祝日で歴史を味わっている。中央銀行は記念に、解放者ホセ・デ・サンマルティンの肖像入りの1ソル銀貨を発行した。   国会議事堂での就任式では、マリーアデルカルメン・アルバ新議長がカスティ―ジョに大統領の襷をかけた。ギド・べジ―ド首相(政権党PL国会議員)は29日、対西独立戦争の地アヤクーチョで就任。エクトル・べハル外相ら他の閣僚は連休明けの30日に就任する。   新大統領は就任演説で、まず「神、私の家族、ペルー人兄弟姉妹、農民、先住民、ロンデロ(自警団員)、漁民、教員、専門職、青少年、女性に誓う。ペルー国民、腐敗無き国、新憲法のために誓う」と宣誓した。       「ペルー史上初めて、長らく虐げられてきた農民の大統領が生まれた。この感激を完全に表すことはできない」。この言葉から語り始めた。   農村の貧困家庭に始まる自身の人生を振り返り「大統領になれた」と語り、これまで忘れられてきた農村など最も疎外されてきた人々のために尽くすと誓った。とくに教育重視策をとることを示唆した。   公約の改憲については、合法性と現行憲法を尊重すると前置きしつつ、関連法案を提出すると明言した。1993年の現行憲法は憲法を起草する制憲議会を認めておらず、同議会開設を可能にする改憲がまず必要になる。   カスティージョは、「独立200周年を期して開設されるべき制憲議会は多民族主義、人民大衆的、ジェンダー平等でなければならず、先住民族もアフリカ系市民も含まれる」と述べた。   大統領は段落を変えて、学びも働きもしていない若者は「自発的兵役」に参加し、職業訓練を受けるなどして未来に備えるべきだ、と述べた。これは若者の失業と犯罪への対策でもある。   また、国家警察(PNP)が治安維持の柱だが、犯罪激発のため警察だけでは十分ではない、と指摘。農村部の治安組織「ロンダ」(自警団)を治安機関に組み入れる考えを示した。都市部でもロンダを組織するのか否かは不明。   外国人犯罪者は72時間以内に出国せよ、と異例の「命令」も発した。   経済関係では、初年度に雇用100万人分を創設するとし、そのためには公共投資が必要だと述べた。   私有財産を

セントルシーア下院選で野党が圧勝

    英連邦セントルシーアで7月26日、下院議員選挙(定数17)が実施され、野党のセントルシ―ア労働者党(SLP)が13議席を得て勝利、フィリップ・ピエール党首が次期首相に決まった。    アラン・シャㇲネ現首相の与党・統一労働者党(UWP)は惨敗し、従来の11議席から2議席へと激減した。    シャスネ首相は、米政府の意向に沿ってニコラース・マドゥーロVEN政権から離反していた。マドゥーロ大統領は早速、シャスネ次期首相に友好関係復活を呼び掛けた。  

キューバ革命の「原点の日」に内外で様々な動き

   キューバ革命の起爆剤となった1953年のモンカーダ兵営襲撃蜂起68周年記念日(民族蜂起の日)の7月26日、同兵営跡のあるサンティアゴ市のサンタイフィへニア霊園内の蜂起殉教者記念碑と、蜂起の指導者だった故フィデル・カストロ革命軍最高司令官の墓の前で政府主催の記念式典が挙行された。   猛威をふるい続けるコロナ疫病、経済困難、全国的な対政府抗議行動から半月後とあって、極めて地味な式典となった。   主宰したのは、兵営襲撃、グランマ号遠征、マエストラ山脈でのゲリラ戦のいずれにも参加した戦士に与えられる「革命司令官」の名誉称号を持つラミーロ・バルデス元政治局員。フィデルの墓に両手を付けて感慨深げだった。   やはり革命司令官であり最高指導者だったラウール・カストロ前第1書記(元革命軍相)と、ミゲル・ディアスカネル大統領(第1書記)は花輪を捧げた。バルデスらは式典後、フィデルの墓の正面にあるホセ・マルティ霊廟に参拝した。   一方、メキシコのAMLO大統領は26日の記者会見で、ジョー・バイデン米大統領に向けて、対玖経済封鎖をどうするか人道的決定をなすべきだとメッセージを送り、封鎖解除を暗に求めた。メキシコは、貨物船2隻に食糧、薬品、医療物資などを連帯支援物資を満載してキューバに派遣。また原油40万トンを贈った。   ロシアからは25日、支援物資を積んだ大型輸送機2機が到着している。中国も対玖支援している。在日キュ―バ大使館は、コロナ対策関連物資や義援金を募集している。   一方、ワシントンのホワイトハウス前にはモンカーダ兵営襲撃記念日に合わせて玖系米国人数百人が集結し、米政府に対し「自由キューバ実現」を要請した。これに合わせて白亜館正面は、玖国旗の色が灯された。デモ隊は、数ブロック離れたキューバ大使館までデモ行進し、気勢を挙げた。   またマルコ・ルビオ共和党上院議員ら玖系をはじめとする保守・右翼系の米連邦議会議員たちも26日、バイデン大統領に「断固たる対玖政策」をとるよう訴えた。       だが26日には、マイアミから徒歩で前日到着した玖系米国人一行が、経済封鎖解除を求める27万筆の署名をホワイトハウスに手渡す予定。  ▼米州諸国機構(OEA)が会議延期   OEA常設理事会(大使会議)は7月28日、キューバ体制変更を求めるための審議を中止延期した。通緑加盟諸国が異

ボリビア高地でロシアによる原子炉建設工事再開

   標高4000mのボリビア・アンデス高原アルティプラ―ノの一角で7月26日、原子炉建設工事が始まった。ロシア国営原子力企業ロスアトムが施工、2024年の発電開始を目指す。   建設現場は「核技術調査開発センター」(CIDTN)の敷地で、面積15ha。16年3月、当時のエボ・モラレス大統領がウラジーミル・プーチン大統領と建設協定に調印。総投資3億ドルとされた。   原子炉は22年までに建設される計画だったが、19年11月のクーデターでモラレスMAS(社会主義運動)政権が崩壊。アルセMAS民主政権が発足した20年11月、工事再開に向け動き出した。   ロスアトム社は「原子炉建設地としては世界最高地点」と誇っている。    ここでの原子力は、調査研究、医療、農食糧生産などに利用されるという。

グアテマラ市民が大統領と検事総長の辞任求め抗議行動

   グアテマラ市で7月26日、アレハンドロ・ジャマテイ大統領とコンスエロ・ポーラス検事総長の辞任を求める市民行動が展開された。   「反無処罰特別検察」(FECI)の検事長として政府要人らの汚職を摘発してきたフアン=フランシスコ・サンドバル検事(38)が23日更迭されたことや、コロナ禍で死者が1万人を超えた「失政」に怒った市民が、展開されている全国ストの一環として両人に辞任を求めた。    サンドバルは2014~18年にかけて辣腕を振るい、60件もの政府絡みの構造的腐敗事件を暴き断罪。15年のオット・ペレス=モリ―ナ大統領の逮捕・解任の立役者でもあった。身の危険を感じたサンドバルは陸路で隣国エル・サルバドールに出国している。    最近まで同検事長は、ジャマテイ政権絡みの腐敗事件を幾つも捜査中だった。サンドバル解任で捜査は中断を余儀なくされた。    検事総長は「検察機構を蹂躙した」と解任理由を説明している。だが蹂躙されたのは真実と汚職捜査だ、と世論は批判している。        

デモクラシータイムスがハイチとキューバを特集

   ユーチューブジャーナリズム「デモクラシータイムス ラ米シリーズ」の第8回「波高しカリブ海」(52分)が7月25日夜、公開されました。   ハイチ大統領暗殺事件と、キューバ対政府抗議行動を分析しています。   どうぞ、ご覧ください。  20210726 伊高浩昭

所属党より国民の要望重視とカスティージョ明言

    ペドロ・カスティージョ秘次期大統領の政党PL(自由ペルー党)は7月28日の大統領就任に先立ち25日党大会を開いた。演説したカスティージョは、「党よりも国民の要望に応える」と明言した。    また大統領給与を返上し、「これまで教師の給与で遣り繰りしてきたように、今後もそうしたい」と述べた。さらに閣僚及び国会議員の月給を半減してはどうかと提言した。    「党よりも国民の声」に忠実でありたいという意思表示は、早くも党内に悶着を起こしている。党首のブラディーミル・セローン書記長は急進左翼で、セローン派は急進的政策を打ち出したたい意向だ。    これに対し、長年、中道的保守党員だったカスティージョは穏健左翼で、セローン派とは馬が合わない。大統領選挙と同時に実施された国会議員選挙で当選した37人のうちの多くはカスティージョ派だ。    国会で少数派の政権党としては、多数派の保守・右翼諸政党と協調しないかぎり、政権運営が行き詰まり、最悪の場合、大統領が弾劾される恐れもある。    カスティージョは現実主義路線を打ち出したわけで、党外からも支持を集めている。  ▼80%がケイコの異議申し立てを非難    7月25日公表のIEP世論調査結果によると、ケイコ・フジモリが決選結果が出た後に展開した異議申し立て戦術を回答者の80%が非難した。 ▼エボ・モラレスがペルー入り    ボリビアのエボ・モラレス元大統領は7月26日、カスティージョ就任式出席に先立ちペルー入りした。カスティージョの民族主義経済政策はモラレス期の政策に倣っている。    

ハイチ大統領暗殺事件で「女性元判事」が浮上

   ジョヴネル・モイーズ大統領暗殺事件(7月7日発生)でハイチ警察に捜査協力している米国の連邦捜査局(FBI)は、既に逮捕されている黒幕の一人クリスティアン・エマニュエル・サノン容疑者が記した大統領打倒計画書類を入手した。   コロンビアのエル・ティエンポ紙が7月25日報じた。26日には、大統領警護隊長ジャン・ラゲル・シヴィル容疑者が逮捕された。   FBI筋によれば、そこにはサノンから陰謀を伝えられたハイチ各界の人物十数人の氏名が書かれており、その中の女性の最高際元判事ウエンデル・コク・テロ―容疑者が事件の鍵を握る重要人物。彼女は国際社会に指名手配されている。   同元判事はモイーズ大統領に馘首されたため、恨みを持つとされる。事件の準備情報を把握しており、モイーズ後の新政権の閣僚名簿さえ握っていた。彼女は、米国新教系教会に影響力を持つという。 

メキシコ大統領がラ米・カリブ統合機構創設を提唱

     AMLOメキシコ大統領は7月24日、墨都チャプルテペク城で催されたCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)外相会議の開会式で演説。 ワシントンに本部があり、米政府の強い影響下にある米州諸国機構(OEA)に替わりうる、「いかなる国の下僕でもないラ米・カリブ諸国の統合機構、EU(欧州連合)のような機構の創設」を提唱した。  この日は南米北西部諸国の解放者にしてラ米統合推進者だったベネズエラ人シモン・ボリーバル(1783~1830)の生誕238周年記念日。また今年はメキシコ独立200周年、アステカ王国がスペインに滅ぼされてから500周年でもある。  大統領は、こうした歴史を踏まえて発言。国土の北半分を米国から1848年に奪われた歴史的悲劇にも言及した。  この式典には、CELAC外相団だけでなく、駐墨諸国大使たちも招かれており、AMLOは国際社会に向けて広く提唱した。  LAC(ラ米・カリブ33カ国)には、故ウーゴ・チャベスVEN大統領の奔走外交により2011年12月に発足したCELACがある。だが各国首脳の思想の違いや、米国による分断工作によってLAC域内が分断され、発足後10経つ今、LAC統合という所期の目的達成からほど遠い状況にある。  マルセロ・エブラ―ル墨外相はこの日、「CELACは熟考の時にある」と明言している。AMLO政権がCELACに替わる新機構創設を目指しているのか否かは不明。CELACがLAC統合機関として活性化されれば、それでよいと考えているのかどうかもわからない。  AMLOは演説で、米国が1823年のモンロー教義宣言でLAC支配に傾斜したことに触れ、「米国は今なおブラーボ川(米国名グランデ川)以南の諸国(LAC)に敵対する政策を捨てておらず、域内には米国の影響力が充満している」と指摘。  「侵略を特徴とする200年に及ぶ米政策は受け入れられない」として、超大国の好みに応じてLAC首脳の首を挿げ替えたり、制裁、介入、排除、封鎖、政策押し付けを恣(ほしいまま)にしてきた米政府を強く批判した。  だが「米国に統合するのか、それとも米国と決別するのか、という二者択一論は棚上げし、主権に基づき現実的に考えねばならない」として、OEAに替わり得る機構創設を提唱した。  また革命から62年を経た社会主義キューバについて発言。玖革命と玖政府に対しては立場の

知識人ら400人がバイデン政権に対玖封鎖解除を要求

  「キューバを生きさせよ」ー世界の政治家、知識人、芸術家、聖職者ら約400人が7月23日、NYT紙上に有料意見広告を載せ、バイデン米政権に経済封鎖解除を要求した。  バイデン政権は発足半年を過ぎた22日、対玖制裁を発動した。意見広告は、それに対する即座の反応だった。  ラ米からはルイス・ルーラ元伯大統領、ラファエル・コレア元赤大統領、アドルフォ・ペレス=エスキベル亜国人平和活動家(ノーベル平和賞受賞者)、フレイ・べト(伯聖職者)、シルビオ・ロドリゲス(玖シンガー・ソングライター)、ミゲル・バルネー(玖作家)ら。  米国からは女優ジェーン・フォンダ、数学者ノーム・チョムスキー、映画監督オリヴァー・ストーンら。 ▼玖系米国人一行が徒歩でワシントン到着  対玖経済封鎖解除を米政府・議会に求める玖系米国人団体「愛の橋」一行は7月25日、27万筆の署名を携えてワシントンに到着した。マイアミを6月27日出発、2000㎞以上を踏破した。  

ベネズエラ大統領が野党とのメキシコ交渉参加を表明

    べネズエラのニコラース・マドゥ―ロ大統領は7月22日、ノルウェーを仲介国としてメキシコで開かれる政府と野党間の話し合いに参加する、と発表した。    大統領はまた、11月21日に実施される州知事・市長選挙に全野党が参加する見込み、と明らかにした。    トランプ前米政権に擁立されたフアン・グアイドー前国会議長=人民意志(VP)党=は「政府との間で救国合意に達したい」と語っている。    グアイドーはトランプ政権下では、「VEN大統領代行(暫定大統領)」を自認していたが、200国近い世界の国々の中の60カ国未満から「承認」ないし「支持」を受けただけだった。日本は「支持」したが、チャベス前政権が派遣したセイコー・イシカワ大使を受け入れ続けている。    マドゥーロ政権は、政権打倒を何度も試み、マドゥーロ拉致・暗殺さえ狙った陰謀に加担していたグアイドーのメキシコ交渉参加を認めながらも、同交渉での野党側の主導権をグアイドーには認めたくない方針だ。    交渉で全政党参加の自由選挙実施が決まれば、大統領選挙と国会議員選挙が将来のVEN体制を決める重要選挙となる。    次期大統領選挙は2024年、国会議員選挙は25年に実施される予定だが、メキシコ交渉以後の合意次第では両選挙が早まる可能性もあるだろう。 ▼「VEN領内で策謀」とコロンビア政府発表    コロンビアのディエゴ・モラーノ国防相は7月22日記者会見し、6月15日の陸軍第30旅団基地での爆弾事件と、同25日の大統領登場ヘリコプター銃撃事件は隣国ベネズエラ領内で画策された、と発表した。    爆弾事件では36人が死亡。VEN国境地帯のノルテデサンタンデル州都ククタ近郊上空で狙われたヘリコプター墜落を免れ、乗っていたイバン・ドゥケ大統領らは無事だった。爆弾事件の軍事基地もククタにある。    国防相は、ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)の残党「第33戦線」の要員が両事件を決行したと断定。同戦線は聖域化しているベネズエラ領内から出撃したという。    同戦線要員の容疑者10人が逮捕されているが、うち一人は元陸軍大尉アンデレㇲ・メディーナという。     この発表に対し、ホルヘ・アレアサVEN外相は22日、コロンビア政府は自国内で起きた悲劇の真相を隠そうとしている、と非難した。    因みに元ロンビア軍要員26人は

米政府が玖革命軍相と内務省特殊部隊を制裁

   米財務省は7月22日、キューバのアルバロ・ロペス=ミエーラ革命軍相(国防相に相当、軍位は軍団大将、共産党政治局員)と、内務省国家特殊部隊(BEN)に対し、キューバで11日に起きた全国的な対政府抗議行動時に「過剰に実力行使し、抗議者を襲撃し逮捕するのに中心的役割を担った」として、制裁を科した。  両者ともすでに財務省OFAC(外国資産管理室)の「制裁対象者」(SDN)名簿に記載されていた。  ジャネット・イエレン財務長官は、「玖国民による民主探索と玖体制柔軟化促進を支援するため対玖制裁を続けてゆく」と述べた。  ジョー・バイデン米大統領は。「この制裁は、ほんの始まりに過ぎない」と述べ、今後新たな制裁を科してゆくことを示唆した。  同大統領はさらに、①死活的に重要な玖系米市民と対玖政策策定で協働してゆく②米政府は既に玖国民にインターネットへの接近機会を与えるため、米市民社会および民間企業部門と協議中③玖国民への支援を最大化するため、米国内からの送金方法を見直し中④領事業務拡充と市民社会との関係強化のため在玖・米大使館の人員を増やすーと述べた。  米民主党内には、対玖経済封鎖やトランプ前政権が科した243項目の封鎖・制裁強化措置を解除・廃止するよう求める意見が少なくない。バーニー・サンダース上院議員は、その代表格だ。  ▼キューバ外相が反駁  一方、ブルーノ・ロドリゲス玖外相は22日、「米国には他国の高官らを一方的に制裁する権限はない」と前置きし、「根拠のない中傷的制裁は断固拒否する」と反駁。「米国務省は対玖糾弾宣言を強制しようと欧州・ラ米に圧力をかけている」、「USAID(米国際開発局)は専門企業に資金を与え、メディアに対玖虚偽情報を流させている」と非難した。  キューバの基本的立場は、国連が決める制裁だけを認めるもので、したがって米国による制裁は一般的に「封鎖」と呼ぶ。ただし今回のように反論するため仕方なく「制裁」を使うことがある。  玖政府は、米国から経済封鎖、「テロリズム支援国家再指定」など根拠の乏しい制裁、メディア攻撃を含む「非通常型戦争」を仕掛けられていると、国際社会に訴えている。玖側試算では、60年以上に亘る経済封鎖で受けた被害額は総額1478億5300万ドルに上る。  同外相はまた、「もし米政府が真摯に玖国民のことを思っているならば、経済封鎖、内政干

キューバ抗議行動参加者12人に禁錮刑の判決

    7月11日のキューバ抗議行動から10日目の20日、抗議行動に参加し逮捕された「社会秩序紊乱」などの容疑者数百人のうち最初の12人に簡易裁判で禁錮刑が科せられた。10人に禁錮1年、2人は10カ月の実刑。   1年の刑を科せられた1人は、ラップ音楽「祖国も命も」を制作したラッパーたちのうちの玖側ビデオ監督アンジェロ・トゥロヤ。簡易裁判のため、ほとんどの被告は弁護士なしで裁かれた。   著名な玖人チェス選手で「グランドマスター」の称号を持つアリアン・ゴンサレス(32)は、スペインのオレンセ市に住むが、7月初めビージャ・クラーラ州に住む母親を見舞うため一時帰国し、州とサンタクラーラで抗議行動に参加し逮捕された。秩序紊乱容疑がかけられており、判決待ち。   ゴンサレス逮捕に対し、国際チェス界から連帯表明と対玖批判が相次いでいる。 ゴンサレスは拘置所内で断食ストを3日間続けた後、22日仮釈放され、裁判待ちとなった。   政府当局は抗議行動の逮捕者数を一切公表していない。人権団体、芸術家・知識人団体「サンイシドロ運動」(MSI)、逮捕者家族らによる推計では、逮捕者は250~550人。負傷者は数十人に上るもよう。死亡1人が確認されている。内務省は「行方不明者はいない」とだけ発表している。   著名な玖人カンタウト―ル(シンガー・ソングライター)シルビオ・ロドリゲスは21日、今回の全国的な抗議行動に参加し、あるいは関係して逮捕されたり起訴されたり実刑を言い渡されたりしている人々の中で非暴力にして、犯罪も冒していない者の釈放を当局に求めた。 ▼17歳の少女に禁錮8カ月の実刑判決   7月22日の簡易裁判で12人の女性被告が裁かれ、11日に逮捕された17歳のガブリエラ・セケイラは「社会秩序紊乱」罪で禁錮8カ月を言い渡された。裁判を傍聴した母親が明かにした。母親は娘が「控訴する」と言ったことも明らかにしている。   同じ裁判で他の17人の女性は禁錮1年を言い渡された。   一方、ブルーノ・ロドリゲス外相は記者会見で、「米国には他国を制裁する権限はない」と強調したが24日の記者会見ではジャミ―ラ・ペニャ=オヘーダ検事総長、ルベーン・ㇾミヒオ=フェロ人民最高裁長官、リリアン=マリーア・エルナンデス=ドエホ弁護士事務所連合会長 を伴い、発言させた。

第1回イベロアメリカ首脳会議の開催30周年を祝う

   イベリア半島とラ米にまたがるイベロアメリカ(イ米)諸国は7月19日、墨グアダラハーラ市での第1回イベロアメリカ首脳会議開催の30周年記念日に当たる7月19日(イベロアメリカの日)に際し、同記念日を祝った。    記念式典は同日、マドリ―で加盟22カ国を代表する形で、スペイン、ポルトガル、コロンビア、コスタ・リカ、ドミニカ共和国の5カ国外相会合を開いた。    イ米会議は、コロンブスべ州到達500周年の1992年を記念して、当時のフアン=カルロス西国王とフェリーペ・ゴンサレス西首相が発案、マドリ―で第1回首脳会議開催を提案した。    ところが当時メキシコのカルロス・サリーナス大統領が、ラ米側、とりわけ最初に生まれた大植民地ヌエバ・エスパーニャ(新スペイン=その後のメキシコおよび中米5カ国)重視をと主張。第1回会議は1年繰り上げて1991年にグアダラハーラ市で開催された。    マドリ―開催は翌92年7月マドリ―で開かれ、その直後にバルセローナ五輪が開会した。さらにコロンブスが航海していた時代の首都セビージャでは万博が開かれた。    当時、五輪特派員としてスペインに2カ月滞在した私は、これらの行事を取材した。五輪大会について言えば、68年東京、68年メキシコ市に次いで3度目の体験だった。2021年東京は4度目だが、もはや感慨はない。

ニカラグアのオルテガ大統領が連続4選出馬へ

    ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領(75)が連続4選、通算5選をめざして、11月7日の大統領選挙に出馬することがほぼ確定した。    政権党FSLN(サンディニスタ民族解放戦線)が絶対多数を占める1院政国会のグスタボ・ポーラス議長は、サンディ二スタ革命42周年記念日の7月19日、オルテガを「候補」と呼び、「勝利は議論の余地がない」と言い切った。    立候補届は選挙法に基づき、7月28日から8月2日までの期間。野党の出馬希望者は5人以上が逮捕され、誰が何人立候補するのか、見通しがつかない。    副大統領には、オルテガ夫人で現職のロサリオ・ムリージョが出馬するのは疑いない。    米国はオルテガ夫妻による支配継続の見通しとなったため、一方的に新たな「ニカラグア制裁」を科すもよう。    これに対し、ロシアはオルテガ支持を表明。米国などによる「制裁」の動きを糾弾した。 ▼FSLNが創立60周年    政権党FSLNは7月23日、ゲリラ組織として1961年のこの日、カルロス・フォンセカ=アマド―ル司令の下で結成されてから60周年を迎えた。キューバ共産党などから祝電が届いている。                                 にち mdeni

ハイチ暫定首相にアリエル・アンリ医師就任

        ハイチの新しい暫定首相に7月20日、元内相アリエル・アンリ医師(71)が就任した。アンリは穏健派の神経外科医で、7日暗殺された故ジョヴネル・モイーズ大統領から5日に次期暫定首相に任命されていた。暫定大統領。    アンリは就任演説で、「国は極めて困難な状況にある。その解決はハイチ自らがなさねばならない。私は例外なく国内全勢力と話し合う」と強調、国民に対話とともに、「混乱に陥らないために団結を」と呼び掛けた。また、大統領暗殺の犯人たちはすべて特定され、罪状にふさわしい罰を受けるべきだ、と強調した。          過去にアンリは保健相高官、内相、社会問題・労働相を務めたことがある。    これまで暫定首相を務めてきたクロード・ジョゼフ前外相は国際社会からの圧力を受けて19日辞任。退任演説でモイーズを讃えた。   モイーズの国葬はアンリ暫定首相の下、マルティーヌ夫人、ミシェル・マルテリ元大統領らが参列し21、22両日挙行され、23日に北部のカプハイシアン市近郊にあるモイーズ一族の墓地に埋葬される。   焦点は9月26日に実施予定とされてきた大統領・国会議員選挙、および改憲国民投票が実施されるか否かだ。この点についての記者団の質問に対し、アンリ暫定首相は「早期実施したい」とだけ述べ、具体的には語らなかった。 ▼モイーズが警察に緊急支援要請   暗殺されたジョヴネル・モイーズは、7月7日午前1時半過ぎ、警察に電話をかけ、「私の命が危ない。急いで助けに来てくれ」と、必死に求めていたことが20日、明かにされた。   当局は、事件の容疑者だけでなく、大統領警護隊要員らを尋問している。 ▼国葬終わる   故ジョヴネル・モイーズ大統領の遺体は7月23日、ハイチ北部のカパイシアン(カプハイシアン)市の墓地に埋葬された。21日から3日間に亘った国葬は終了した。   マルティーヌ夫人は、挨拶で「夫は裏切られ放置された」と述べ、殺害事件の背後に陰謀があったとの見方を示唆した。   マルティーヌ夫人ら親族、アリエル・アンリ暫定首相ら政府要人、外交団などが参列した。米国からは、リンダ・グリーンフィールド国連駐在大使を首席とする代表団が参列、関係の深さを見せつけた。    埋葬式に先立ち、墓地周辺で銃撃があった。警官隊が催涙ガスを発射し、群衆を規制した。国家警察のレオン・シャルル

★ペルー次期大統領はペドロ・カスティージョ

  ペルーの国家選挙審議会(JNE)は7月19日夜(JST20日午前)、6月6日に実施された大統領選挙決選の当選者を自由ペルー(PL)党候補ペドロ・カスティージョ(51)と発表した。カスティージョは28日のペルー独立200周年記念日に就任する。任期は5年。  またしても苦杯をなめたケイコ・フジモリ(46、人民勢力(PL)党候補)は、「結果を認める」と表明した。  カスティージョは北部出身の農村小学校教師。穏健左翼だが、急進的左翼党PLの党首ブラディーミル・セローン書記長が選挙出馬を禁止されたため、同党候補に招かれ、出馬。4月11日の第1回投票で1位になり、決選に進出した。これは「大番狂わせ」と受け止められた。  新自由主義陣営のダークホース的存在だった保守・右翼陣営のベテラン候補ケイコ党=は前回に次いで、またも僅差で敗北した。ケイコは連続3回、決選で敗れた。  今回は政治生命をかけて「僅差の敗北」を認めず、「開票集計の不正」を約300件もJNEに申し立てた。その審査に時間がかかりすぎ、当選者確定に1カ月半以上かかり、「民主制度が危うくなった」との懸念が国内に渦巻いていた。  通常は最終得票数が公表された段階で、負けた側が相手を祝福して決着する。ケイコは、それをしなかった。   ケイコは、今回を除く過去2回の大統領選挙時にブラジルの建設大手オデブレシ―社から受け取った巨額の資金を使い、「収賄(資金不正受領)」や「資金洗浄」で起訴され、1年半収監された後、仮釈放されて今回の大統領選挙に臨んだ。  検察はケイコに対する公判の再開を待ち構えており、禁錮30年の実刑を求刑する方針。ケイコが最後まで敗北を認めなかったのは、それが大きな理由だったと受け止められている。   ケイコの決選進出決定後の選挙戦略の失敗は、農村対策や貧困対策として現金のバラマキ程度の弥縫策しか打ち出せず、左翼党の「雇われ候補」カスティージョに反共攻撃を仕掛けるだけだったことだろう。  また、ケイコは第1回投票前から服役中の父親アルべルト・フジモリ元大統領の恩赦を公約していたが、国内に依然根強い「反フジモリ感情」を考慮すれば、「勇み足」に過ぎたと言える。  これに対しカスティージョは、ケイコの作戦に乗らず、独自の農村・貧困対策政策を掲げ、自身の路線を淡々と貫いた。その違いが、4万数千票の僅差ながら、勝敗を決

バイデン政権発足半年、対玖政策見直しに着手

       バイデン米政権は1月20日の発足から半年となるが、7月19日にようやく対玖政策見直しに乗り出した。11日の全玖的対政府抗議行動を受け、何らかの手を打つべきだという方向に傾いたのだ。   政策見直しないし新規策定の要点は、①在玖・米大使館要員拡大計画②対玖送金③玖国内でのインターネット自由化ーの3点。   米国が恐れるのは、キューバが重大な事態に陥った場合、大量の難民が押しかけてくること。マイアミをはじめとする在米玖系社会が難民救援に立ち上がれば、中間選挙や次期大統領選挙を遠望し、玖系有権者の動向が気になるバイデン政権は、状況に流されることになりかねない。小刻みであっても、手を打つべき時が来たと判断したのだろう。   ジョー・バイデン大統領は国務省に対し、ハバナの米大使館の要員を増やす計画について再検討するよう求めた。トランプ前政権は発足後、早い機会に対玖対立策に出て、館員を大幅に削減した。このため今日まで大使館の外交・領事業務は停止するなど、最低レベルに陥っている。   1959年元日のキューバ革命後、大規模な反政府行動は、ソ連消滅後の1994年8月、ハバナ市海岸通り「マレコン」で数千人規模のものがあった。政府は内務省軍部隊、緊急対応私服部隊を出動させて対応。最後は故フィデル・カストロ革命軍最高司令官の立場で群衆を説得して収まった。   今回の抗議行動は全国規模で展開され、人権団体や外交メディアの推計で「数万人規模」とされている。政府は一切数字を発表しておらず、実際の規模は分からない。      次にトランプ前政権が大幅に封じ込めたままになっている、米国内からの対玖為替送金規制の緩和について検討するため、バイデンは、送金に関する作業部会の設置を決めた。要点は、直接キューバ国民に米ドル紙幣が渡る方法を探り定めること。   さらにバイデン政権は、キューバでのインターネットの無料自由使用を可能にする方策を連邦議会および民間関連業界と検討に入った。これは11日の抗議行動後,玖政府がインターネットを断ち切ったのに対する措置。

ハイチ大統領国葬は23日、夫人が帰国

   ハイチの故ジョヴネル・モイーズ大統領(7日暗殺)のマルティーヌ夫人(47)が7月17日、マイアミから首都ポルトープランスに到着した。大統領が襲撃された折、右手や臀部に銃弾を受け重傷となり、マイアミの病院に緊急搬送され手当てを受けていた。   帰国は、23日挙行される故大統領の国葬に備えて。空港にはクロード・ジョゼフ暫定首相が出迎えた。夫人は右手を吊り、防弾チョッキをまとい、歩きにくそうだった。国葬は首都でなく、出生地に近い北部のカプハイシアン市で挙行される。   一方、ハイチ警察のレオン・シャルル長官は16日、同警察は米FBI(連邦捜査局)、国際刑事警察機構(インターポール)などと国際捜査協力をしていると明らかにした。   警察は、元司法省高官ジョセフ・フェリックス・バディオ、元上院議員ジョエル・ジョン・ジョセフ、およびカナダ在住のアシュカール・ジョセフ・ピエールの3容疑者を捜索中。   医師クリスティアン・エマニュエル・サノン容疑者は逮捕済み。サノンは米テキサス州内のIMV(国際医療村)所属のハイチ系米国人。ハイチ警察は既にサノンを含むハイチ系米国人5人を逮捕している。   大統領を襲撃したコロンビア人コマンド26人は、18人逮捕、3人射殺、5人逃亡中。 ▼アリエル・アンリ新暫定首相就任か   ハイチ駐在の国連、米州諸国機構(OEA)、欧州連合(EU)各代表部と、中核諸国(米仏加伯西独6か国)大使は7月19日、故ジョヴネル・モイーズ大統領が死の2日目に暫定首相に任命していたアリエル・アンリの就任を支持すると表明した。   現在のクロード・ジョゼフ暫定首相は、以前の地位である外相に戻るもよう。         

チリ左右2大勢力の大統領候補決まる

   チリ革新・保守2大政治勢力による大統領候補指名のための予備選挙が7月18日実施され、11月21日の大統領選挙に出馬する候補者が確定した。   ピニェーラ政権の保守・右翼与党連合「チレ・バモス」(チリよ行こう)予備選には4人が立候補した。無党派のセバスティアン・ミチェル(53)49・08%、独立民主同盟(UDI)のホアキン・ラビン31・3%、他2人計19・62%で、ミチェルが大統領候補に指名された。   過去2回大統領選に出馬したベテランのラビンが優勢と見られていたが、票が割れて、番狂わせが実現した。   一方、左翼陣営の「ディグニダー」は、社会結集(CS)党のガブリエル・ボリッチ(35)60・43%、共産党(PCCH)のダニエル・ハドゥエ39・57%で、圧勝した若手ボリッチが大統領候補になった。   ハドゥエが有力視され、「共産党大統領実現か」との展望が政界やジャーナリズムを賑わわせていたが、これまた大番狂わせに終わった。   現在2期目のピニェーラ保守・右翼政権は内政の失敗から支持率が低迷。若いボリッチがにわかに有力候補として浮かび上がった。 ▼中道・中道左翼候補も決まる   8月20日の「制憲連合」(UC)の予備選挙が実施され、中道のキリスト教民主党(DC)のヤスナ・プロボステ上院議長が当選した。プロボステは近日中に議長を辞任する。対抗馬は中道左翼の社会党(PS)のパウラ・ナルバエスと、急進党(PR)のカルロス・マルドナードだった。   これで左翼ボリッチ、中道プロボステ、右翼ミチェルと主要3候補がそろった。左翼アジェンデ、中道トミッチ、右翼アレサンドリが鼎立した1970年9月の大統領選挙を彷彿させる。

茂木外相がキューバ訪問を中止

   茂木敏充外相は15日夜グアテマラ市に到着、中米・カリブ諸国歴訪を開始したが、17日同市で、18~19両日に予定していたキューバ訪問を中止すると発表した。同国で11日に起きた全国的な対政府抗議行動に鑑み、訪問を取りやめた。   日本政府が、キューバに厳しい政策を維持しているバイデン米政権に配慮したのは疑いない。オバマ政権期に日本は対玖政策拡大に動いたが、その流れは停止した。   茂木外相が予定通りハバナを訪問していれば、11日の出来事の後、最初に訪問する外国外交当局の長となるはずだった。訪問中止は玖外交によっても痛手だ。「事態に拘わらず日本の外相が来訪した」と内外に公言できることになるはずだったからだ。   11日の抗議行動事件後キューバを最初に訪れた外国政府要人は、17日ハバナ入りした同盟国ベネズエラのデルシー・ロドリゲス副大統領だ。   外相は16日、グアテマラ市で同国外相と会談した後、中米統合機構(SICA)外相団と会合し、アレハンドロ・ジャマテイ大統領を表敬した。17日にはパナマ市に到着、ラウレンティーノ・コルティーソ大統領を表敬。18日にはパナマ外相と会談した。   茂木外相は19日、パナマ市からジャマイカの首都キングストンに到着の予定。20日、アンドリュー・ホルネス首相を表敬。同国外相と会談後、カリブ共同体(カリコム)外相団と会合する。 同日夜キングストンを出発、21日に帰国する。        

キューバ政府が全国で「反撃」大集会、ラウールも登場

        キューバ政府は7月17日、全国各地で「革命の再確認」という集会を開き、革命体制が「堅固」であることを「再確認」した。無論、全国的な広がりを見せた11日の対政府抗議行動に対抗する国内引き締め策だ。同時に、米保守・右翼勢力や在米玖系社会をはじめとする体制崩壊を狙う勢力への「反撃」でもある。    ハバナでは海岸通りマレコン西部の米大使館前の「反帝国主義」演壇一帯で大集会が開かれた。政府発表で「10万人」が集結。ミゲル・ディアスカネル大統領(共産党第1書記)と、90歳のラウール・カストロ前第1書記(元国家評議会議長)が、この一種の「総決起集会」を主導した。    ディアスカネル大統領は演説で、「抗議行動の背後には米政府がいた。玖社会を不安定にするため、SNS工作を仕掛けた。その偽りの絶頂で、偽の写真や情報を流した。その結果、国際社会はキューバを<偽り>と見なし、人民が政府に反逆し、これを政府が弾圧したと受け止めてしまった」と、米政府を糾弾した。    大統領は、「主権・独立・社会主義キューバ万歳。祖国か死か」で演説を締めくくった。   ラウ―ル・カストロは演説せず、陸軍上級大将の軍服を着て演壇下で、ディアスカネルと並び立っていた。大統領にはラウールに代表される革命軍という強力な後ろ盾がある事実を内外に示すために違いない。                  

キューバ大統領がバイデン発言に遣り返す

    キューバのミゲル・ディアスカネル大統領(共産党第1書記)は7月16日、米国を暗に指して、「失敗国家とは反動的かつ恐喝的な少数派を喜ばせ、キューバ人、米国人、国際社会の多数派の意思を無視して、1100万キューバ国民が苛まれている害を何倍にも増幅させる国だ」と指摘した。    これは15日にジョー・バイデン米大統領がキューバを「失敗国家」と扱き下ろしたのに対するしっぺ返しだ。    玖大統領は、「米国は何十億ドルという巨額の資金を浪費してなお、キューバ(社会主義体制)の破壊に失敗してきた」と、米国をくさした。    大統領はまた、「在米キューバ系社会の利害に譲歩して、対玖経済封鎖を維持している」と、バイデン大統領を非難した。    さらに、「もしバイデン大統領がキューバ国民のことを人道的見地から誠実に気にかけているのなら、トランプ前政権が科した243項目の反玖政策を撤廃すべきだ。それには残酷にもコロナ禍下で科された50項目が含まれている」と、注文を付けた。  ▼ベネズエラ副大統領が来訪    デルシー・ロドリゲスVEN副大統領は7月17日、ハバナ入りし、ミゲル・ディアスカネル大統領に連帯を表明、会談した。玖側から首相、副首相、外相、貿易・投資相らが出席した。    VEN側随行はアダン・チャベス駐玖大使(故ウーゴ・チャベス大統領の実兄)だけであり、デルシー訪問が、11日の抗議行動以来動揺している玖指導部への連帯表明が主目的であることを示している。    玖社会不安は電力不足による停電も原因であり、VEN側による原油供給量増大が重要議題になるもよう。

ハイチ大統領殺害を命じた人物が判明

     コロンビア警察のホルヘ・バルガス長官は7月16日、元ハイチ政府当局者ジョセフ・フェリックス・バディオ容疑者が、コロンビア人傭兵たちのまとめ役だった元大尉ヘルマン・リベーラ容疑者ら2人に対し、大統領邸襲撃3日前(7月4日)、襲撃の目的は大統領殺害だと伝えた、と明らかにした。当初は、大統領の身柄拘禁が目的、と偽っていた。     バディオは元司法省の職員で、諜報機関と組んで腐敗取締りになど従事していた。 バディオが誰かの命令で動いていたのか、および大統領殺害の動機が何か、は依然不明だ。ハイチ警察は13日からバディオの公開捜査を続けていた。バディオ逮捕の情報はない。     リベーラは2人は4月から5月にかけてドミニカ共和国に滞在。そこからハイチに入国した。ハイチ警察は、逃亡中の他の黒幕らを依然捜索している。     バルガス長官は、世界中に知れ渡った大事件にコロンビア人がこのように関与していたことがわかり、嘆き悲しんでいると述べた。                      

ハイチ大統領暗殺事件の細部が徐々に明らかに

   コロンビア警察のホルへ・バルガス長官は7月15日ボゴタで記者会見し、ハイチ大統領殺害事件に関与し同国で逮捕されたコロンビア陸軍退役大尉ヘルマン・リべーラ容疑者は米国で現金5万ドルをもらい、故ジョブネル・モイーズ大統領襲撃計画を立案し組織した、と明かにした。   当初計画では、モイーズを拘禁するのが目的だったという。この点については、大統領に辞任を強要するためで、大統領が拒否したため殺害されたことが明らかになっている。   同長官によれば、逮捕されたコロンビア人容疑者たちは「大統領を逮捕し米国の麻薬捜査局(DEA)に引き渡すという契約をしていた」と供述している。大統領襲撃には7人が参加し、たの要員は支援に回っていたという。   どの段階で目的が大統領殺害に変更されたか、誰がそれを命じたかは明らかでないという。いずれにせよコロンビア人コマンドの多くは偽りの目的を伝えられていたもよう。    同長官の説明によると、リベーラ元大尉は、事件直後にハイチで射殺されたコロンビア元軍人ドゥベルネイ・カパドール、および他の人物と3人で5月10日、ドミニカ共和国(RD)からハイチに入国し、ハイチ人医師クリスティアン・エマニュエル・サノン容疑者と会合した。サノンは事件の黒幕の一人としてハイチで逮捕されている。   暗殺事件に関与したコロンビア人は26人で、うち18人はハイチで逮捕され、3人は射殺された。このほかコロンビア人3人の関与が疑われている。他の2人については言及されなかった。   コロンビア人要員らは、マイアミに本拠のあり警備会社CTUの仲介により契約された。モイーズ暗殺は、RD国内で計画されていたという。   リベーラとカパドールはハイチ入国前に、陰謀に参加するコロンビア人たちと会った。2人は米国を含む数か所を訪れていたが、米入国査証取得に誰が関与したかについて捜査中という。   同2人はハイチで、同国系米国人ジェイムス・ソラ―ジ容疑者を知った。ソラ―ジは通訳として参加した2人のハイチ系米国人の一人だが、モイーズ暗殺を知って、警察に自首した。   リベーラとカパドールは、ハイチで計22人と接触した。その接触相手はすべて判明している。ハイチ警察は、サノン以外の黒幕について捜査を続けている。   コロンビアのイバン・ドゥケ大統領は15日、事件を巡って指摘されたコロンビア人は全

キューバ政府が必需物資持ち込み制限を緩和

     キューバ政府は7月14日、帰国する玖人旅行者や来訪する外国人らが入国時に持ち込める食品、薬品、洗面用品を19日から年末まで無税・無制限とすると発表した。薬品の場合、従来1人1回10㎏までだった。この緩和政策の結果を見て、来年元日以降の政策を決めるという。     この「個人輸入」に対する規制の大幅緩和は、11日の全国的な対政府抗議と反体制決起の両要素が混在した街頭行動事件を受けた緊急措置。多くの国民が、コロナ禍下での生活必需物資の欠乏にたまりかねて不満を爆発させた。     緩和政策は、マヌエル・マレーロ首相(共産党政治局員)が、国営TV定例政治番組「円卓会議」で発表した。明らかに、政府の不満国民に対する「譲歩」と言える。緩和策は、主要な海浜観光地であるバラデロとカヨココの空港には適用されない。     首相はまた、約30万人の国民に月ごとの生活必需物資を居住地で供与すると明らかにした。外貨に接近できず、外国旅行も外貨店での物資購入も叶わない底辺層を慮った政策だ。     首相はさらに、国民生活に深刻な影響を及ぼしている停電を解消するため発電・送電面で努力することや、原材料不足で生産が滞っている薬品生産を促進すると約束した。     一方、アレハンドロ・ヒル経済企画相は、 国営企業の画一的な賃金体系を止め、今後は各企業の生産実績に応じて賃金を決める、と発表した。     11日の街頭行動は12日にも波及、計約40市で起きたことが判明。12日の抗議行動では、反体制派の男性1人の死亡が確認されている。     街頭動員を誘発したインターネットは政府によって遮断されたが、14日には一部で遮断が解除されつつある。だがスマホや携帯電話器による情報発信は困難になっている。     「円卓会議」に出演したミゲル・ディアスカネル大統領は、米国による経済封鎖を激しく非難してきたが、★ついに「自己批判」した。     「物資欠乏、若者の活動の場が少ないこと、顧みられない人々の存在を認める。だが蛮行はいけない。11日の出来事から我々は経験を得なければならいし、問題を乗り切り、再発を防ぐため、我々は厳しく(自己)批判せねばならない」ーこう明言した。     「玖社会は憎悪を醸す社会ではない。だが彼らは憎悪から行動した。玖人の心は連帯の心だ。だが彼らは蛮行で武装していた。SNSなど

全国的抗議行動に依然揺れるキューバ

    社会主義キューバは、1959年元日以来62年半の革命体制下で初めて起きた7月11日の全国的な対政府抗議行動と反体制行動の衝撃で揺れている。    11日には1人の死亡が確認されているが、多数いるはずの負傷者数は不明。逮捕者は、人権団体などの推計で100~170人と見られている。その多くは若者だ。SNSの呼びかけに応じて抗議行動に参加した市民は、若い世代が圧倒的に多かった。    逮捕者には、スペイン王党派系保守紙ABCのカミーラ・アコスタ通信員も含まれている。西政府はアコスタの早期釈放を玖政府に求めている。    識者には、キューバ庶民・市民は「政治的決起への疑念と恐怖を打ち払った。この種の行動や運動は今後、長期的に続くはずだ。後戻りすることはない」と見る向きが少なくない。    ブルーノ・ロドリゲス外相(共産党政治局員)は13日、ハバナ駐在の外国メディア通信員らを外務省に呼んで会見。コロナ禍で難渋している時に米政府による厳しい経済封鎖が重くのしかかり、生活苦が国民不満を招いている旨を指摘した。    だが「玖社会は騒擾状態にはならなかった」と断言しつつ、「米政府はキューバ社会を騒乱状態に陥れるため、巨額の資金を投入してきた」とし、「フロリダ州内のある勢力が扇動した。SNSによる挑発は玖国外からなされた」と非難した。    ミゲル・ディアスカネル大統領(党第1書記)は、「キューバは(体制打倒のための)非通常型戦争を仕掛けられている」と述べている。    11日の抗議行動については「意図的誤報」が多くなされた。ひどい例の一つは、<ハバナの海岸通り「マレコン」大通りを埋め尽くした群衆>の写真として、「2011年2月11日にエジプト・アレキサンドリア市の海岸通りを埋め尽くした反政府デモ市民」の写真が流された。    ハバナをはじめ全国都市部は、警官の姿が目立ち、市民の姿はまれになっている。インターネットは大幅に遮断され、大学の遠隔授業にも支障が出ている。                   

ペルー次期大統領決定は15日だが延期の公算も

      ペルーの国家選挙審議会(JNE)は7月12日、ケイコ・フジモリ陣営が提出していた決選開票結果への異議申し立て案件を処理、それを多数決で確認した。それにより次期大統領決定段階に入ったが、検察出身の審議員が反対し、全会一致による当選者確定が遅れている。   同審議員は解任された検察出身の前任者ルイス・アルセ同様、ケイコ支持に傾斜していると見られている。世論の大勢は、ペドロ・カスティージョ「当確」と見ている。   JNEは15日を次期大統領決定の期限と想定しているが、同審議員1人が同意しない限り決定できない。そのため決定発表期日が延期される可能性もある。   6月6日の決選投票から既に1カ月と1週間。次期大統領就任は7月28日の独立記念日と決まっているが、それまで半月という現段階で次期大統領が決まらないという、極めて異常な事態に陥っている。   選挙結果を否定するケイコの振る舞いを「トランプ型」と指摘する批判が内外で高まっている。   今年の7月28日は独立200周年記念日という輝かしい日。この日付はケイコの父アルベルト・フジモリ元大統領(服役中) の誕生日でもあり、ケイコとしては「2重に輝かしい日」に大統領に就任したかったに違いない。   一方、ケイコ党FP(人民勢力)の次期国会議員は12日、新国会が開会されたらペドロ・カスティージョ陣営の選挙不正を調査する委員会を設置したい、と述べた。   FP党は、検事職も解任されたルイス・アルセ元審議員の妻である弁護士を党として雇用することを決めている。 ▼JNE発表は19日か20日か   JNEは7月13日、次期大統領を19日か20日に発表する方針を固めた。だがケイコ派の異議申し立て案件が片付いていないため、さらに数日遅れる公算もあるという。   

キューバ大統領が「団結破壊を狙った」と抗議行動非難

    キューバのミゲル・ディアスカネル大統領(共産党第1書記)は7月12日、記者会見し、11日に全国約20カ所で起きた対政府・反体制抗議行動について所見を語った。会見は、ラジオ・テレビの全国放送で中継された。    大統領は、「我々は業績と、革命で得た主権と独立を決して失わない」と強調。「行動を起こした中核的集団」については、「玖国民の団結を破壊し、政府と革命体制が築いた業績を貶めるために行動を起こした」と分析した。    抗議集団の中に犯罪者がいたと前置きし、「行動は平和的でなく蛮行があった。警官たちに投石し、警察車をひっくり返すなどして何台も破損させた」と指摘した。あちこちで食料品店や外貨店を狙った掠奪事件も起きたが、これには大統領は触れなかった。    抗議行動は11日11時半ごろ、ハバナ南西のアルテミサ州サンアントニオデロスバニョス市でSNSの呼びかけに集まった若者ら数百人が始めた。内務省軍特殊部隊「黒ベレー」が出動。大統領もハバナから急行し、抗議者たちと対話し、説得した。逮捕者も出た。    その後SNSで全国に「抗議行動開始」の映像が伝えられ、西端のピナルデルリオ州から東部のサンティアゴ州まで抗議行動は波及した。    大統領は説得を終えハバナに戻り、全国放送で演説。「革命を守るため街に出て戦え」と国民に呼び掛けた。この点については、「我々は国民同士の対決を呼び掛けたのではない。革命体制防衛と国民の権利を守るために呼び掛け、国民がそれに応じた」と説明した。    キューバ全土はインターネットが断ち切られて住民同士の交信が難しくなり、静寂に包まれた。「これは偽りの静けさだ」と、抗議者は言う。逮捕された夫、息子、兄弟らのいる女性たちは、拘置所前に集結し、釈放を求めた。    一方、共産党機関紙グランマは12日付紙面の記事で、「首都全区の市民は革命体制防衛のため街に出た。<革命派よ警戒せよ>の呼びかけに、たちまち人々は国会議事堂周辺に集結した。そして、<自由を><祖国も命も>などと叫びながら秩序を変え街を炎上させようと狙う米帝国主義への奉仕者である傭兵、ルンペン、反革命派の小集団に対抗した」と綴った。     ブルーノ・ロドリゲス玖外相は12日、米大統領安全保障担当顧問ジェイク・サリヴァンがキューバの反政府抗議行動を「表現の自由」として支持すると11日夜表明

ハイチ大統領殺害事件の首謀者1人を逮捕

       ハイチ国家警察のレオン・シャルル長官は7月11日、ジョヴネル・モイーズ殺害事件の首謀者の一人、クリスティアン=エマニュエル・サノン医師(63)を逮捕した、と発表した。   逮捕済みの容疑者であるコロンビア人18人、通訳要員のハイチ系米国人2人の自白により、サノン容疑者が浮上した。警察は他の2人の首謀者を捜査中。   サノンは米フロリダ州を拠点としているが、6月にベネズエラの在米警備会社CTUと警備契約を結んだ。当初は人物警護が目的とされていたが、途中からモイーズ大統領邸襲撃に変更されたという。   サノンのハイチ国内の自宅から、武器弾薬の他、米国の麻薬捜査局(DEA)の制帽などが押収された。コロンビア人らのコマンドは事件当日の7日、DEA要員を装って警備網をかいくぐり、邸内に侵入したとされる。だが警察は大統領邸警備要員たちを取り調べている。   コロンビア人コマンドは26人で、3人は射殺され、5人は逃亡中。  ▼米外交派遣団が到着   7月11日ポルトープランス入りした。現在3人いる「政府指導者」と話し合うためだ。実権を握るクロード・ジョセフ暫定首相、上院から非公式に「暫定大統領」に任命されたが認知されていないジョセフ・ランベール、故モイーズ大統領から5日に「新暫定首相」に任命されたが就任していないアリエル・アンリの3人。   大統領殺害事件解明に協力する米政府派遣団も11日ハイチ入りた。   

★キューバで革命後初の対政府大規模抗議行動

    キューバ人民衆がついに立ち上がり、政府に抗議する街頭行動に出た。7月11日、日曜日、ハバナ首都圏、西方のピナルデルリオ、中部のマタンサス、東部のサンティアゴと、抗議行動は全国的に拡がった。    日常生活への抜本的な対策を求めているが、政治改革を要求しているのは疑いない。    恒常的な経済苦に苛まれてきた社会は、その苦しみがコロナ禍によって輪をかけられ、日常生活の破綻状況が、庶民を立ち上がらせた。無論、「キューバの宿敵」米政府の工作もあるだろう。だが、それだけでは、キューバ庶民は立ち上がらない。切羽詰まったから動いたに違いない。    各地の病院はコロナ禍で崩壊状態にある。キューバは自力でコロナワクチンを開発しており、うち2種類を実用化している。だがCOVID19の感染者と死亡者は減っていない。    「コロナワクチンを」、「食べ物を」との悲痛な叫びに、やむにやまれぬ庶民の気持が表れている。このところ連日のように各地で生活苦や薬品欠乏を訴え、フライパンなど金物を叩いて抗議する「SOSカセロラソ」行動が拡がりを見せていた。    共産党第1書記であるミゲル・ディアスカネル大統領は直ちにラジオ・テレビの全国放送で、「すべての革命支持者よ、共産主義者よ、街頭に出て挑発に対抗せよ。これは戦いの命令だ。街に出よ」と異例の言葉で呼びかけた。    同時多発的な庶民の街頭行動は、前日10にまでにSNSで、経済苦とコロナ禍で苦しむキューバ支援をという「人道回廊」運動の呼びかけなどを通じ、行動開始への雰囲気が醸されていた。同「回廊」は、コロナワクチン、薬品、食糧などの対玖支援を求めるものだ。政府は受け入れを拒否している。    抗議デモする群衆からは「自由を」、「くたばれ独裁」の声が聞かれた。大統領以下指導部が、1959年元日の革命後初めての大規模な「対政府」抗議行動が「反政府」行動に転じる危険性を感知しているのは疑いない。    著名な反体制ブロガー。ジョア二・サンチェスは、大統領は「街に出よう、我々は既に街にいる」と言い、「あたかも内戦を呼び掛けているように見える」と批判した。    大統領は抗議行動参加者を、「(対米)併合主義者の計画は許さない。米国から帝国から買われ、そのイデオロギー叛乱戦略に乗って、我々の国を不安定化させたい者たち」、「反革命、傭兵」と呼び、「決意

「メヒコの衝撃」ー展示会と書籍出版が同時に始まった!

   「メヒコの衝撃」という名の作品展が始まった。場所は、千葉県市原市の市原湖畔美術館。「メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる」という副題がついている。9月26日まで続く。    北川民次(1894~1989)、岡本太郎(1911~1996)、利根山光人(1921~1994)、深沢幸雄(1924~2017)、水木しげる(1922~2015)、河原温(1932~2014)、スズキコージ(1948~)、小田香(1987~)の8人の芸術家の作品が展示されている。    7月10~11日、スズキコージは制作を実演する。これは既に終わったが。17日には、文化人類学者の今福龍太が「薄墨色の智慧のくにー<メヒコ>の衝撃を語る」と題して講演する。8月1日には、小田香監督作品『セノーテ』の上映会が催される。そして28日は「メヒコ・デイ」。    6人の大家の古典化した作品群と、今を生きる現役2人の作品群が眼前に展開され、迫ってくる。見逃すべきでない独特な展示会だ。    7月10日の開会式には、私伊高も出席した。東京駅前をバスで出発し、海ほたる経由で1時間半ないし2時間で美術館に着くことができる。バスの運転手によれば、千葉県湾岸沿いを通るよりも早く着けるそうだ。    開会式で挨拶したメルバ・プリ―ア駐日メキシコ大使は、「日本がメキシコに、メキシコが日本にと相互に影響を及ぼし合う。まさにこれこそが友情というものでしょう」と結んだ。素晴らしい挨拶だった。          この作品展と、この後に述べる書籍出版は、いずれもメキシコ独立200周年に合わせた記念企画だ。    メキシコ滞在が長いヴァイオリニストの黒沼ユリ子、スズキコージ、小田香、市原湖畔美術館の北川フラム館長も出席した。千葉県知事、市原市長、ヌエバ・エスパーニャ時代からメキシコと縁の深い大多喜町と御宿町の両町長も出席した。    私はメキシコでの駆け出し記者時代に河原温、岡本太郎、利根山光人に会い、黒沼ユリ子にも会った。取材以外でもお付き合いいただいた。今は亡き作家3人の人間が脳裏に生き生きと蘇り、黒沼ユリ子には四半世紀ぶりに再会できた。帰途のバス車内で、けだるさを打ち払って、はるばる市原まで出かけてよかったと思った。    開会式の日に合わせて、東京の現代企画室が『メヒコの衝撃 メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる』(143頁

夫の殺害は国民投票実施を巡って起きたー夫人が発言

   7月7日に殺害されたハイチ大統領ジョヴネル・モイーズの夫人マルティーヌは入院先のマイアミの病院で10日、事件後初めてSNSで2分余り発言。「事件は夫が目指していた(改憲のための)国民投票を巡って起きた」と述べた。   事件については、「傭兵たちは一瞬のうちに邸内に侵入し、夫を殺害した。彼が政治に関与してからはずっと、彼が私のためだけの存在でないことを理解していたが」と語った。   夫人は、「夫は道路、水道などを整え、年内に選挙と国民投票を実施しようとしていた。そのような闘いを続けていた人物である夫が殺された。お分かりか」と訴えた。   続けて、「大統領を殺した傭兵らが刑務所にいる間にも、別の者たちは、大統領が国のために描いていた夢、理想を殺すだろう。国が方向を見失わないようにするため<2度目の殺害>を許してはならない」と、国民に呼びかけた。   マルティーヌ夫人はさらに、「殺害に関与した容疑者たちを無処罰に終わらせてはならない。大統領の闘いは自分のためではなくハイチ国民のためだった。国民は(闘う)態勢をを整えなければならない」と強調した。 ★この夫人の発言は無論、故大統領を美化しており、異論が多い。       

ハイチ大統領殺害は辞任求めた野党勢力関与か

      ハイチ上院は7月9日、暫定大統領にジョセフ・ランベール議長を任命した。上院議員総数の3分の1の任期内にある議員による決議で決まった。だが定足数には達しておらず、決議が公式なものとして認めらえるかどうか定かでない。    国会上下両院は2000年1月、7日に暗殺されたジョヴネル・モイーズ大統領によって解散させられ、機能していない。   この決定への支持は少なく10日、ランベールは「就任延期」に追い込まれた。     暗殺事件後、暫定政権は実質的にクロード・ジョセフ暫定首相が握っている。上院は、正式に首相に就任したい意志を表明している同暫定首相に対し、あからさまに権力闘争を挑んだ形になった。    だがモイーズは殺害される2日前の7月5日、新首相にアリエル・アンリを任命しており、ジョセフとアンリの間にも権力闘争がある。    暫定首相ジョセフは、「私は権力には興味はない。次の大統領派選挙で決まる」と述べた。ジョセフは国軍と国家警察の支援を得て当座の権力を固め、戒厳令を発動することが可能になった。その事実が9日明らかにされた。    ジョセフは9日、暫定政権が事態の正常化を図る間、公官庁警備など治安確保のため国連軍と米軍にハイチへの派遣を要請した。    これに対し米国務省は、連邦捜査局(FBI)と国家安全保障関係の要員を近くハイチに派遣したいと述べた。    事件に巻き込まれ撃たれて重傷となったマルティーヌ夫人は、マイアミの病院で手当てを受けている。故大統領の葬儀は、夫人の退院を待って挙行される。    一方、首都ポルトープランスの台湾大使館は9日、暗殺事件に関与したコロンビア人容疑者のうち11人は保護を求めて同館に駆け込んでいたが、8日ハイチ警察に逮捕、連行された、と明らかにした。    コロンビア人容疑者は26人で、うち15人は逮捕されたが、残る11人は射殺されたか逃亡中かであり、数字は定かでない。    コロンビア人コマンドの通訳として陰謀に参加し逮捕されたハイチ系米国人2人は、1か月前にハイチ入りし、コロンビア人たちは3カ月前から入国していた、と供述している。    暗殺事件は、「ある勢力」がコロンビア人傭兵コマンドを使って実行したことが明らかになっているが、事件の黒幕である肝心の「ある勢力」は不明なままだ。    ハイチのマティアス・ピエール選挙担

ハイチ警察がコロンビア人15人、米国人2人を逮捕

        ハイチのジョヴネル・モイーズ大統領を7月7日殺害した武装集団のうち逃亡していた2人が8日、首都ポルトープランス南部のペシオンヴィル区に隠れていたところを住民により拘禁され、警察に突き出された。   そのビデオ映像が公開されたが、2人は白人ないし白人系に見える。この時点で、容疑者集団は4人が射殺され、4人が逮捕されたことになった。   ところが警察本部は8日の記者会見で、①犯罪に加担した武装コマンドは総勢28人②うちコロンビア人26人、ハイチ系米国人2人③コロンビア人は事件現場で3人が射殺され、15人が逮捕され、8人が逃亡中④米国人2人も逮捕されたーと発表した。当初、「4人が射殺された」と発表していた。   記者会見の場に逮捕された要員たちは座った姿で並ばされ、襲撃に用いられた自動小銃、ライフル銃、弾薬類とともに撮影された。数万ドルの米ドル紙幣も押収されている。   だが、「襲撃犯7人が射殺され、6人が逮捕されている」との警察発表もあり、情報は錯綜している。   モイーズは、5mmから9mmの銃弾を眼、胸などに12発撃ち込まれていたことが判明した。襲撃時に邸内にいた大統領の娘ジョマリイはとっさに身を隠して無事だった。家事労働者の一人は犯人集団に縛られたが、銃撃は免れた。   襲撃者集団は犯行時、英語やスペイン語を話し、米国の麻薬捜査局(DEA)の要員を名乗っていた。そのため警備をかいくぐって邸内に入ることができたらしい。警察は、邸宅を警備していた全員を尋問している。   通常、大統領の邸宅周辺には最大100人もの警官、警備員らが配置されるが、事件当時、コマンドは抵抗らしい抵抗に全く遭わずに邸内に侵入している。   DEAは直ちに関与を否定した。ハイチ駐在米国大使は、「犯行は十分に計画され、専門的集団が実行した」と述べ、「ビデオ映像があるが、犯行集団は外国人傭兵たちのようだ」と指摘していた。   その映像は大統領の豪邸前に武装集団の一部が展開する姿を捉えており、公開されている。   一方、クロード・ジョセフ暫定首相は8日記者会見し、外出禁止令は解除され、首都国際空港が再開し、経済活動も再開された、と明らかにした。だが戒厳令と国喪は続いている。   大統領は自邸内の事務所にいたところを、背後から急襲されたもよう。血まみれで、左眼は撃ち抜かれていた。邸内は略

ハイチに戒厳令、暫定政権首班は誰か不明

       ハイチのクロード・ジョセフ暫定首相は7月7日記者会見し、ジョヴネル・モイーズ大統領の同日未明の暗殺を受けて、戒厳令を発動したと発表した。当面は15日間の予定。公官庁などに半旗が掲げられ、国喪に入った。   国民は自宅蟄居を求められ、自動車の通行は制限された。ラジオ・テレビは通常の番組を差し替えるよう求められた。   街には重武装の軍隊と警官隊が出動。平常はごった返している首都ポルトープランスをはじめ主要都市の街から人影がほとんど見られなくなった。その映像が伝えられている。   隣国ドミニカ共和国(RD)の政府は、ハイチとの国境を閉鎖した。ポルトープランスのトゥサン・ルヴェルチュール国際空港も閉鎖された。     同国駐米大使によれば、暗殺時に銃撃され重傷を負っていたマルティーヌ夫人はマイアミの病院に緊急搬送された。命に別状はない。大統領夫妻の子供たちも米国の保護下にあるという。   暫定首相はアンソニー・ブリンケン米国務長官と電話で話し合ったことを明らかにした。記者会見に同席した警察長官は、容疑者集団の4人を射殺し、他の2人を逮捕したと発表した。一味に拉致されていたモイーズ邸警備の警官3人は解放された。   差し当っての最重要問題は、誰が暫定大統領になるかだ。憲法規定では、最高裁判所長官に継承権があるが、ルネ・シルヴェストル長官はコロナ疫病COVID19で死去したばかりで、まさに7日に葬儀が予定されていた。   ジョセフ暫定首相の暫定大統領就任については、国会の承認が必要だが、国会は2020年初めから閉鎖されている。   モイーズの下で起草されていた新憲法は上院を廃止して一院制国会にすることや、首相の地位の廃止が盛り込まれている。   上下両院議員選挙と新憲法承認の是非を問う国民投票は9月26日に予定されているが、実施されるか否かはわからなくなった。モイーズは新憲法を制定し、上院を廃止してから国会議員選挙を実施するつもりだったが、その目算もくるっていた。   20世紀初めからフランスに替わって事実上の宗主国となってきた米国のジョー・バイデン大統領は、モイーズ暗殺の報に「衝撃を受け悲しみに暮れている」と述べ、ハイチへの支援を申し出た。   米国は20世紀に2度、海兵隊を送り込んでハイチを占領したり、デュヴァリエ父子長期独裁体制を支え、不要となった息子ジャ

ハイチのジョヴネル・モイーズ大統領暗殺さる

    恒常的な政情不安にさいなまれているハイチのジョヴネル・モイーズ大統領(53)が7月7日午前1時ごろ私邸を急襲され、殺害された。マルティーヌ夫人も銃撃され重傷。クロード・ジョセフ暫定首相が発表した。    私邸は、首都ポルトープランス南部ペシオンヴィル区の高台にある住宅街ペレラン地区にある豪邸。    数カ月来、首都をはじめ各地で、何組みもの組織暴力団が殺傷を恣にし、警察内暴力集団も活動。無法状態が悪化していた。    モイーズは2015年の大統領選挙に当選したが不正を暴かれ、16年の再選挙を経て17年2月に就任した。大統領任期は5年間だが、野党をはじめ反政府勢力は本来就任すべきだった16年から数えて5年となる今年2月7日に退陣するよう圧力をかけていた。    だが大統領は、任期は22年2月までの5年間と主張、退陣を拒否し続けていた。その2月、クーデター未遂事件も起きた。    政権党が多数派でないモイーズは、反政府派を封じ込めるため国会上下両院を解散させ、選挙をしないまま、政令政治を続けていた。   その間、新憲法制定のための国民投票を先月27日に実施する予定だったが、反政府組織暴力の激化、コロナ禍などで延期を余儀なくされ、9月26日に大統領および国会議員選挙と併せて国民投票を実施することにしていた。   それが実施されるか否かは、暗殺事件により不確実となった。   ハイチはキューバ島と米植民地プエルト・リコ島の間に位置するイスパニョーラ島の西側にあり、東側のラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国=RD)と血続きだ。   米州では米国に次ぎ2番目に早い独立国にして、「世界最初の黒人国」だが、米州一貧しく、世界でも最貧国の一つ。治安の乱れ、権力者の腐敗、大国の介入が「疫病」のように続いてきた。   ハイチ警察は、大統領の私邸を襲った男たちの中に英語とスペイン語を話す者がいたと発表した。それが米国人やRD系である可能性もある。   モイーズは自動車部品販売、太陽発電事業、バナナ農場経営で成功した実業家の富豪。ハイチ商工会議所事務局長だったモイーズは、前任大統領ミシェル・マルテリに指名されて15年の大統領選挙に出馬した。   暗殺事件に遭う直前の6日、ハイチも加盟するカリブ共同体(カリコム)首脳会議に遠隔参加していた。      

カリコム首脳会議がコロナワクチン支援を要請

       カリブ共同体(CARICOM)は7月5、6両日、第42回首脳会議を遠隔開催した。議長のトリニダード&トバゴ首相ケイス・ロウリー首相は6日の閉会演説で、コロナワクチン供給を国際社会に引き続き求めてゆくことを強調した。   コロナ疫病COVID19の蔓延で、国際観光が主要産業であるカリコムの多くの加盟国は観光収入が激減し、打撃を受けている。   ロウリー議長はまた、4月以降に活動を活発化させているサンヴィセンテ&グラナディーンのラ・スフリエール火山(標高1234m)の爆発や、スリナムとガイアナを見舞った洪水の被害についても触れ、カリコム加盟国に支援を要請した。   今会議終了をもってカリコム議長は、アンティグア&バーブーダのガストン・ブラウン首相に交代した。 

ペルー検察がモンテシーノスとケイコの関係を捜査

      ペルー検察は7月5日、ブラディミロ・モンテシーノスの「通話事件」とケイコ・フジモリ大統領候補との関係について捜査を開始した。担当は、ケイコの過去の選挙資金不正事件を扱っているホセ・ペレス検事。   モンテシーノスは国家選挙審議会(JNE)の審議員5人の内3人に100万ドルずつ賄賂を渡して多数決権を握り、決選結果を覆してケイコを当選させる陰謀を企てたとされる。この「贈賄意図」がケイコの腐敗捜査と関連すると、ペレスは捉えている。   ケイコは、モンテシーノスの通話事件に関与していない、と表明している。   通話事件は「ブラディヤマ―ダ」(ブラディミロの通話)と呼ばれている。人道犯罪関与などで25年の禁錮刑に服役しているモンテシーノスは、刑務所から、現職警官1人と退職警官2人の携帯電話を使って、外部と30回近く通話していた。   その刑務所は、ペルーで最も厳重とされるカヤオ港の海軍司令部にある。センデロ・ルミノソ(輝く道) の最高指導者アビマエㇽ・グスマン(元教授)は、ここで終身刑に服している。 ▼在秘外国人も有権者登録ヘ   秘国家身分・婚姻登録庁(RENIEC)は7月6日、投票日前2年間出国しなかった18歳以上の外国人は、その選挙で投票権および出馬権を持つことになる、と発表した。2022年10月の市長・市会議員選挙から適用される。希望する在住外国人は、RENIECに7月7日~10月2日の期間に登録する。   C] )書に7月7日から10月2日の期間に

ニカラグア政権の反政府派への弾圧続く

   オルテガ・ニカラグア政権による反政府勢力への弾圧が止まない。ニカラグア農民同盟(ACN)は7月5日、指導者のメダルド・マイレーナが他の3人とともに同日、警察に連行された、と明かにした。マイレーナは11月7日の大統領選挙に出馬する意志を表明していた。これで、大統領選挙出馬希望者の逮捕は6人目。   マイレーナは2018年4月、今日に続く反政府運動が始まったころ、「警官4人殺害」容疑で起訴され、有罪となって「禁錮216年」を言い渡されて服役したが、恩赦で釈放されていた。   5日には、ニカラグア大学生同盟(AUN)の指導者レステル・アレマンも逮捕された。アレマンは去る2日、外国通信社に、「オルテガは満身創痍の牛で、一線を越えてしまった」と語っていた。   SNSメディア「環境ボレティン」記者ダビー・キンテーロは5日、身の危険を感じたとして出国した。6月下旬から同様の理由で出国したニカ人ジャーナリストは4人目。   一方、オルテガの息子の一人、フアン=カルロス・オルテガ(39)は5日、オルテガ政権の弾圧を批判したメキシコのAMLO大統領に向けて、「アンドレスよ聴け。歴史はそのような卑怯な贅沢は許さないぞ。責任を取るべきだ」と発信した。   これに対し墨外務省ラ米・カリブ局は、「勇気は常に自由の側にある。卑怯は抑圧の同盟者だ」と斬り返した。   AMLO大統領は6月25日、ニカラグアで5月28日以降21人が逮捕されていたのを受け、「自由を。抑圧せずと投獄せずに」と記者会見で語っていた。   だがAMLOは6月半ば、米州諸国機構(OEA)がニカラグアの弾圧状況を糾弾する声明を可決した際には、亜国とともに「内政干渉しない」との立場で賛成しなかった。    

チリ制憲会議議長にマプーチェ知識人女性を選出

      チリ制憲会議(CC)は7月4日、サンティアゴ市内の旧国会議事堂庭園に特設された会議場で初の全体会合(本会議)を開き、正副議長を選出した。CCは9ヶ月ないし12カ月をかけて、ピノチェー軍政期の1980年に制定された現行憲法に替わる民主憲法を起草する。   CC代議員155人は5月半ばのジェンダー平等選挙で、男性78人、女性77人が選ばれた。うち17人は先住民族で、その最大民族集団マプーチェ(代議員7人)から、エリーサ・ロンコーン代議員(58)が議長に選出された。   ロンコーンは、テムーコ市にあるラ・フロンテ―ラ大学卒の英語教授で、サンティアゴ大学、カトリック大学で教鞭をとる。メキシコの首都自治大学言語学教授でもある。また智先住民語学教育の専門家でもある。   マプーチェの中心的居住地域のあるラ・アラウカニーア州に生まれ、少女時代には学校まで片道8kmを徒歩で通った。学生時代からピノチェー軍政と闘っていた。   民族の正装をしたロンコーンは就任演説をマプドゥングーン(マプーチェ語)とスペイン語でぶち、「多民族主義、先住民族自決、諸権利確立(水利、大地、環境、女性、虐げられた他者との連帯など)を基にチリを再建したい」と述べた。   副議長には、バルパライソ大学教授で法学博士のハイメ・バッサ(44)が選ばれた。左翼「拡大戦線(FA)」の一翼を担う「社会協約(CS)」に所属する。   ロンコーンは、蘭ハーグ社会研究所(修士)、蘭ライデン大学(社会科学博士)、加レジーナ大学(修士)に留学。智カトリック大学では文学博士号を取得した。チリきっての知識人の一人で、1992年にはマプーチェ旗「ウェヌフォーイェ」の制作に参画した。       智政府はCC発足を祝福し、財政支援や側面支援を確認するとともに、「CCは過去を尊重しつつ現在と未来を考えてほしい」と述べた。保守・右翼勢力を基盤とするピニェーラ政権の立場が滲み出ている。   初会合終了後、ロンコーンは記者団に対し、「私たちマプーチェは姿を見えなくされ抑圧され投獄されてきたが、本日、民族や仕事に誇りが持てるようになった。チリの他国民との関係に重要な一里塚が築かれた。新しい歴史がつくられた」と述べた。        

チリ予備選まで2週間、左右両翼候補指名が焦点

     チリではきょう7月4日(日)、制憲会議(CC)の初会合が開かれるが、この日は18日の次期大統領選挙候補者指名のための会派別予備選まで2週間となるため、政界の話題は予備選に飛んでいる。   11月21日実施の大統領選挙では、左翼勢力と、ピニェーラ現政権の保守・右翼与党連合の争いとなる公算が大きい。   キリスト教民主党(DC)に代表される中道保守と社会党(PS)をはじめとする中道左翼が5月半ばの制憲会議代議員選挙などで大きく後退したからだ。   左翼と保守・右翼では、セバスティアン・ピニェーラ大統領の支持率が20%を切っていることなどから、左翼がやや有利になると予測されている。   左翼陣営の予備選では、共産党(PC)のダニエル・ハドゥエ首都サンティアゴ・レコレタ区長(54)と、社会協約党(CS)のガブリエル・ボリッチ下院議員(35)が統一候補の座を争う。   ハドゥエはパレスティーナ人移民の3世で、建築家にして社会学者。レコレタ区長は3期目。首都中心部のサンティアゴ中央区長にはPCのイラシ―・ハスレル区長が就任し、最大票田の首都圏でPCが勢いを持つ。   PCは1970年の大統領選挙に詩人パブロ・ネル―ダを出馬させたが、社会党のサルバドール・アジェンデを勝たせるために候補を下り、PS、PC両党中心の人民戦線(人民連合)を組み、アジェンデ社会主義政権を誕生させた。ハドゥエは、故ネルーダ以来のPC有力候補。   ボリッチは南端のマガジャネス・智南極州が基盤で、ユーゴスラヴィア移民の子孫。2013年の学生運動でチリ大学学生連合議長として手腕を発揮、政界入りした。若さが売りだが、経験や知名度からハドゥエが優勢。   一方、保守・陣営では、富裕層を代表する独立民主同盟(UDI)のホアキン・ラビン首都ラ・コンデ区長(67)ら4人が予備選に臨む。ピニェーラ第1期政権で教育相や社会開発相を務め、大統領選挙にも過去2回出馬したラビンが有利と見られている。   これまでの出馬候補者の支持率調査では、ハドゥエがラビンをやや上回っている。このため保守・右翼陣営は、ハドゥエへの中傷運動を続けてきた。   予備選に出ない出馬希望者には、社会党のパウラ・ナルバエス、急進党(PR)のカルロス・マルドナードら4人がいる。   2022年3月11日に就任する次期大統領は、制憲会議(CC)の新

ベネズエラが大型デノミを8月実施か

   ベネズエラ政府は、超インフレで購買力が失われている通貨ボリーバルの「0」を6つ削除する大型デノミネーションを8月実施する予定。米ブルームバーグ通信が7月2日報じた。   現在1米ドルは321万9000b。これがデノミにより、1d=3・2bになる。過去 【政府は8月5日、デノミを10月1日実施すると発表した。】 ▼VEN大統領が暗殺を警戒   ニコラース・マドゥーロ大統領は7月2日、米CIA(中央情報局)のウィリアム・バーンズ長官と米南方軍のクレイグ・フォーラ―司令官がこのほどコロンビアを訪問したことに触れ、「我々が持つコロンビア情報筋によれば、両人とCOL政府との話し合いには、私およびVEN民・軍高官の暗殺計画が含まれていた」と述べた。   マドゥーロ大統領はまた、2018年8月4日、軍事行進観閲式典中に同大統領らの頭上に近い空中でドローン爆弾が爆発し、兵士ら数人が負傷した事件を振り返り、「トランプ前米大統領は私や高官たちの暗殺を謀った。バイデン大統領が同じ政策を持っているのかどうかはわからない」と語った。

ペルー次期大統領は15日までに決定へ

      ペルー国家選挙審議会(JNE)と当局者は7月2日、遅くとも15日までに次期大統領を確定させると明かにした。就任式は28日。   JNEは決選で僅差2位になったケイコ・フジモリ陣営による開票結果精査要求を受け、6月6~8日の3日間に提出された270件の書類(アクタ=得票結果表)のうち未処理の243件を処理し次第、当選者を発表する方針。これまでに27件が却下されている。   ケイコ派は他に100件を提出しているが、6月9日後(期限後)の提出だったため、精査対象にはならない。   JNEは全国に60の支部として「特別選挙審議会」(JEE)を設けており、うち27支部から精査報告が既になされている。   決選で僅差1位となったペドロ・カスティージョは2日、28日の就任演説で制憲議会(AC)開設方針を打ち出す、と述べた。自派の自由ペルー(PL)党は、AC開設の是非を問う国民投票に向けて署名運動を開始する準備に入った。請願には有権者250万人の署名が必要。   ワシントンの米州諸国機構(OEA)は2日、ペルー決選結果に関し、近く最終報告を発表すると明らかにした。OEAは選挙監視団をペルーに派遣している。   ケイコ派は6月30日ワシントンで、ルイス・アルマグロOEA事務総長(ウルグアイ元外相)に面談を求めたが、拒否された。   秘政府も2日、決選結果についてOEAに諮問してほしいとのケイコの要請を拒否した。   一方、ワルド・メンドサ秘経済相は2日、過去30年間の(新自由主義政策下での)秘経済状況からすれば、ペルーを工業国家にするのは現実的でないと述べた。ペルーが米欧中日の世界の工業先進地域から遠く離れており、辺境では先進工業国化は難しいとの立場だ。   ラ米では唯一メキシコが工業国化しつつあるが、同国は3200kmの国境で米国に隣接しており、墨米加3国自由貿易協定(T-MEC)を結んでいる。   カスティージョは現在の地下資源採掘輸出中心の経済を、民族化(国産化)してペルーの利益取り分を大きくし、さらにその資源を加工するという「鉱工業化」を図るボリビア型の民族主義経済路線を温めている。   メンドサ経済相の指摘した「工業大国化」とは趣が異なる。         

モンテシーノスはCIAに協力を求めるよう指示か

     ブラディミロ・モンテシーノス(VM)は、CIAとの接触を求めていた。秘紙ラ・レプーブリカが7月1日報じた新たな「ブラディアウディオ」(ブラディ通話=VM通話=録音記録)で暴露された。   それによると、VMは6月21日のペドロ・レハス元少佐との通話で、リマの米大使館内にある「地域問題事務所」(CIAリマ支局)と接触し、決選結果をケイコ・フジモリに有利になるよう覆すべく協力を求めるよう指示した。   その際VMはㇾハスに、「君が接触すれば、私の娘を通じ、私の旧職場の現在の長に、CIA支局に支援を要請してもらう。その長は娘が勤務する大学の元同僚だ」と伝えた。「旧職場」とは、「秘情報機関」を指すと解釈できる。   さらに、「ケイコの夫は米国人だから、ケイコは彼を同伴して米大使館に行くことだ。決選開票不正に関する書類を携行して」、「CIA支局にはワシントンの上司に報告するよう要請せよ」とも指示した。   「急がねばならない。さもないと、ケイコの父親は収監状態が続くだろうし、彼女も収監されて政治生命が終わるだろうから」と、レハスに伝えた。   検察庁は1日、ブラディ通話事件の捜査日程を明らかにした。主要人物への尋問は、7月7日レハス、9日弁護士ギジェルモ・サンドーン、16日VM,19日ルイス・アルセ(元JNE審議員)。アルセはケイコ派に有利な判断を下していたとして解任された。   著名な秘ジャーナリスト、セサル・ヒルデブラントは1日、「これでフジモリ主義は終わる。保守・右翼陣営が4度ケイコを支援することはあるまい」と述べた。   また「ペドロ・カスティージョは穏健化する必要がある。だが保守・右翼陣営にも穏健化が必要だ」と指摘した。   一方、カスティージョは来週に想定される当選発表を前に、大学総長、財界、世界銀行代表部を含む金融界などと面談を重ね、人脈を拡げている。   閣僚候補者も出始めており、首相にリカルド・ベルモン(元リマ市長)、経済相にペドロ・フランケ、外相に元外相・元駐米大使らの名前が挙がっている。   決選結果で「左翼カスティージョ当確」の印象が強まったため急騰していた米ドルは、カスティージョの財界接近など「穏健化・現実主義化」で下がり、通貨ソルが盛り返している。現在、1㌦=3・8ソル。