ハイチのジョヴネル・モイーズ大統領暗殺さる

    恒常的な政情不安にさいなまれているハイチのジョヴネル・モイーズ大統領(53)が7月7日午前1時ごろ私邸を急襲され、殺害された。マルティーヌ夫人も銃撃され重傷。クロード・ジョセフ暫定首相が発表した。

   私邸は、首都ポルトープランス南部ペシオンヴィル区の高台にある住宅街ペレラン地区にある豪邸。

   数カ月来、首都をはじめ各地で、何組みもの組織暴力団が殺傷を恣にし、警察内暴力集団も活動。無法状態が悪化していた。

   モイーズは2015年の大統領選挙に当選したが不正を暴かれ、16年の再選挙を経て17年2月に就任した。大統領任期は5年間だが、野党をはじめ反政府勢力は本来就任すべきだった16年から数えて5年となる今年2月7日に退陣するよう圧力をかけていた。

   だが大統領は、任期は22年2月までの5年間と主張、退陣を拒否し続けていた。その2月、クーデター未遂事件も起きた。

   政権党が多数派でないモイーズは、反政府派を封じ込めるため国会上下両院を解散させ、選挙をしないまま、政令政治を続けていた。

  その間、新憲法制定のための国民投票を先月27日に実施する予定だったが、反政府組織暴力の激化、コロナ禍などで延期を余儀なくされ、9月26日に大統領および国会議員選挙と併せて国民投票を実施することにしていた。

  それが実施されるか否かは、暗殺事件により不確実となった。

  ハイチはキューバ島と米植民地プエルト・リコ島の間に位置するイスパニョーラ島の西側にあり、東側のラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国=RD)と血続きだ。

  米州では米国に次ぎ2番目に早い独立国にして、「世界最初の黒人国」だが、米州一貧しく、世界でも最貧国の一つ。治安の乱れ、権力者の腐敗、大国の介入が「疫病」のように続いてきた。

  ハイチ警察は、大統領の私邸を襲った男たちの中に英語とスペイン語を話す者がいたと発表した。それが米国人やRD系である可能性もある。

  モイーズは自動車部品販売、太陽発電事業、バナナ農場経営で成功した実業家の富豪。ハイチ商工会議所事務局長だったモイーズは、前任大統領ミシェル・マルテリに指名されて15年の大統領選挙に出馬した。

  暗殺事件に遭う直前の6日、ハイチも加盟するカリブ共同体(カリコム)首脳会議に遠隔参加していた。

   

 

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