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12月, 2021の投稿を表示しています

謹賀新年2022

   読者のみなさま、絶望的状況に満ちた地球情勢ゆえに「おめでとう」という言葉が使えなくなって久しい私です。   ジャーナリズムは、未来を先取りして世論を導いたり、世論に警告したりする重要な役割が少なくなり、起きてしまった状況を追いかけることが多いように映ります。   地盤沈下が著しい大きな要因は、「マスコミズム」と電脳個人メディアに社会が凌駕されてしまっているからです。意図的虚偽が氾濫する世の中では、真実はしょんぼりしてしまいます。ジャーナリズムが必ずしも真実の味方でないにしてもです。   ラ米・カリブ情勢を通じて今年も、一方通行ではありますが、みなさまと対話して参ります。   5月のコロンビア、10月のブラジルの両大統領選挙が、ラ米2020年代の転機を決定づける可能性があります。   昨年「人民の反逆」に驚愕したキューバ指導部が、一党支配体制延命のためでなく、人民多数派のために行政を転換させうるか。これが問題です。   昏迷のハイチが、真っ当な選挙を実施し、正統な新政権を生み出すことができるか。そうなるのを祈りつつ、期待します。   大カリブ圏の島嶼諸国をはじめとする13カ国が団結をどこまで固めて、共同歩調をとれるか。これも焦点です。   併せてユーチューブ「デモクラシータイムス あなたに知ってほしいラテンアメリカ」シリーズを視聴していただければ幸いです。   間もなく、ブラジルからラ米が新年に突入します。   2022年元日 伊高浩昭    

ハイチ;暗い一年を終え、一層展望暗い新年へ

     ハイチはジョヴネル・モイーズ大統領が7月暗殺されるなど、最悪の2021年を終えようとしている。12月29日には首都ポルトープランスで、極度の治安悪化、アリエル・アンリ暫定政権の「無能」、次期正統政権樹立のための選挙実施の具体的展望がないこと、などに抗議するデモが展開された。     とくに身代金目的の拉致・誘拐事件は今年1002件の上る。うち81人は米国、カナダなど6か国の外国人だ。身代金が支払えずに殺害された人質もいる。     国中に縄張りを定めて跋扈する多くの武装暴力団は、誘拐、麻薬取引、請負殺人、土地奪取、武力抗争などに明け暮れている。     暴力団は政財界や地方の有力者と結びついている場合も少なくない。警察は人員数や組織で劣り、手が出せない。警察が有力者と癒着する場合もある。     人権団体「デフェンダー・プリ」は、2022年は一層悪い年になると展望する。理由は、①国会上下両院が議員の任期切れによる退任と、選挙が実施されていないことから新議員がおらず閉鎖されている②次期正統政権が決まっていない③判事の多くが任期切れで退任し司法権限が大幅に停止しているーこと。     法廷は事実上、閉鎖に追い込まれており、治安悪化に拍車をかけている。     「全国人権擁護センター」によれば、暴力団は2021年に支配を強め、国土の60%を支配している。警察が無力なためでもある。暴力団による殺戮攻勢で、貧困地域から数万人が追い出された。こうした事件の背後には必ず、利益・利権を得る者がいる。       

2021年ラテンアメリカ重要ニュース

◎チリ大統領選挙決選で穏健左翼ガブリエル・ボリッチ圧勝(12月)  ★★★ 詳しくは、本日公開されたユーチューブ「デモクラシータイムス 伊高 チリ」(61分)をご覧ください。 ◎キューバで革命後初めての民衆決起(7月) ★この項目以降は、「LATINA」電子版「ラ米乱反射」最新版をご参照ください。 ◎ハイチのジョヴネル・モイーズ大統領暗殺(7月) ◎ペルー大統領選挙決選で穏健左翼ペドロ・カスティージョ勝利(7月) ◎ホンジュラス初の大統領にシオマラ・カストロ決まる(11月) ◎エクアドールで財界右翼のラソ政権発足(5月) ◎ニカラグアの形式的大統領選挙でオルテガ連続4選(11月) ◎アルゼンチン国会議員選挙で政権党後退(11月) ◎ベネズエラで野党参加し地方選挙実施(11月) ◎ブラジルのルーラ元大統領が被選挙権回復(6月) ◎コロンビアで反ドゥケ政権闘争激化(5月) ◎ジャマテイ・グアテマラ大統領辞任要求高まる(7月) ◎ エル・サルバドールのブケレ大統領専横政治過熱(通年) ◎ボリビアでクーデター政権に破壊された経済・社会構造の修復進む(通年) ◎AMLOメキシコ大統領が任期半分終える(12月) ※この順番はニュースの「重要性」の順を意味するものではありません。         

バルガス=ジョサの衰退確認は喜び、とメキシコ大統領

  メキシコのAMLO大統領は12月28日、ペルー人ノーベル文学賞作家マリオ・バルガス=ジョサ(85、MVLL)の「衰退を確認するのは私の喜びだ」と、皮肉を込めて語った。   MVLLは12月10日マイアミでの保守派会合での講演で、「有権者の投票の仕方が悪いからラ米に左翼指導者が次々に当選している」と述べた。 AMLOは、「この講演は明白な敗北宣言だ。ラ米での左翼進出を嘆くだけの彼の姿勢も敗北した」と指摘した。 MVLLは、12月19日のチリ大統領選挙決選を前に、穏健左翼ガブリエル・ボリッチ候補の当選可能性に触れ「そうなれば危険だ」と言い、来年5月のコロンビア大統領選挙で穏健左翼グスタボ・ペトロが勝てば「大なる悲劇だ」と言った。 今年6月のペルー大統領選挙決選時にMVLLは「宿敵」アルべルト・フジモリ元大統領の娘ケイコ候補を初めて支持した。それ以前2回の決選では、ケイコを叩き、その落選に貢献した。だがケイコは三度敗れ、穏健左翼ペドロ・カスティージョが当選した。 右翼思想に凝り固まったこの作家の政治的発言を「妄言」としか受け止めないペルーの識者らは、「文学執筆に集中すべきだ」とした。だが作家の病的とも言える左翼扱き下ろしは、一向に止む気配がない。

ベネズエラが「国軍高度技術経済区」設置へ

       ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は12月28日、カラカス市内のティウーナ要塞での国軍(FANB)年末会合で演説。2022年内に「国軍高度技術経済区」(ZEMAT)を設置する、と発表した。   国軍科学技術理事会には163の事業計画があり、まずそれらを同「経済区」で遂行する。ティウーナ要塞には、国防省、国軍司令部、士官学校、教練場などがある。「経済区」をどこにつくるのかは明らかにされていない。   大統領は、米国との対峙関係を念頭に置きつつ、今年実施された国軍防衛演習「ボリーバルの盾」(エスクード・ボリバリアーノ)に触れて、「この演習は、VENが我々国民に属し、VENが平和の領土であり、VENが決して侵攻されないことを示している」と讃えた。   マドゥーロが師と仰ぐ故ウーゴ・チャベス前大統領は陸軍中佐だった1992年、当時のカルロス・ペレス大統領打倒のクーデタ―を起こし失敗、投獄された。だが、この流血の政変を仕掛けたことで有名になり、98年の大統領選挙に当選し、99年から2013年まで長期政権を維持した。2022年はチャベス蜂起30周年に当たる。   マドゥーロ大統領がチャベスから引き継いだボリバリアーナ(シモン・ボリーバル主義)体制は、国軍に支えられている。国軍が分裂しない限り、安泰だ。   そこで、これまで様々な軍部優遇措置をとってきた。「経済区」は、さらなる優遇措置。革命軍に体制安定を依拠している同盟国キューバに倣った措置だ。   国軍は、ロシア軍の兵器体系に沿っており、「経済区」にはロシアの軍事技術協力がありうるだろう。   

チリ軍政期の弁護士殺害で元諜報員2人に実刑判決

   チリでは、ピノチェー軍政期(1973~90)に犯された人道犯罪の追及が依然、続いている。最高裁は12月27日、弁護士を殺害した軍政期の秘密警察DINA(国家諜報局)の元要員2人に禁錮10年の判決を下した。   殺されたのは、反軍政組織「革命的左翼運動」(MIR)中央委員フェルナンド・バレンスエラ弁護士。ペドロ・エスピノーサとミゲル・クラスノフの両元要員が1974年11月19日、首都サンティアゴ市内で殺害した。   法廷は、弁護士遺族への2億6000万ペソ(約30万米ドル)の賠償金支払いも命じた。   DINAは、1973年9月11日の軍事クーデター以後、用意していた標的名簿に基づき、また派生的に、計3200人を殺害した。拉致、拷問、殺害、遺体隠しを恣にした。   ガブリエル・ボリッチ次期大統領は「人道犯罪の無処罰は許さない」と発言しており、来年3月からの新政権下でも軍政期の実行犯追及が続く。

ボリッチ次期チリ大統領がコロンビア訪問断る

       チリのガブリエル・ボリッチ次期大統領(35)は12月27日、セバスティアン・ピニェーラ現大統領から同行するよう招かれていたコロンビア訪問を断った。    ピニェーラ大統領は来年1月26、27両日、ボゴタでのプロスールおよび太平洋同盟(AP)の両首脳会合に出席するためコロンビアを訪れるが、3月11日に就任するボリッチを「外交デビュー」させるため同行招待していた。    だがプロスールは、南米諸国連合(ウナスール)を脱退した南米保守・右翼諸国が結成した機構。またAPはチリ、ペルー、コロンビア、メキシコのラ米太平洋岸4大国で構成されるが、外交面では今や影が薄い。    というのも、AP結成時は4カ国とも保守・右翼政権だったが、メキシコとペルーは穏健左翼政権となり、チリも3月から穏健左翼のボリッチになる。そしてコロンビアは来年5月の大統領選挙で穏健左翼のグスタボ・ペトロ元ボゴタ市長に当選可能性がで出ている。    コロンビアのイバン・ドゥケ現大統領は極右で、ボリッチとは肌が合わない。メキシコのAMLOは2018年末に政権に就くや、APと距離を置いてきた。    今月19日の決選で極右のホセ=アントニオ・カスト候補に圧勝したボリッチは、就任前に近隣の極右大統領に会うのは好ましくないし、思想信条に反するのだ。ドゥケは来年8月には任期切れで退陣する。これを待てばいいわけだ。    ペトロが来年勝てば、APは初めて4か国に穏健左翼の進歩主義路線が出そろうことになり、環太平洋東岸に新しい潮流が生まれる。    フアン・バルデス元チリ外相(元駐米大使)は、プロスールを南米の保守・右翼政権がつくったイデオロギー集団と見なし、「ボリッチは無意味な会合に出る必要はない」と、ボリッチの判断を支持。「ボリッチはラ米との関係に風穴を開けた」と評価した。  

キューバ反体制指導者フェレールが獄中メッセージ

   「神は解放され自由になった人を愛す」ー7月11日の反体制街頭行動日にサンティアゴ市内の自宅付近で逮捕されマル・ベルデ刑務所に収監されているホセ=ダニエル・フェレール(51)は12月25日、ナビダー(クリスマス)メッセージを玖国民宛に送った。   フェレールは、反体制団体「玖愛国同盟」(UNPACU=ウンパク)の主宰者。7月以前に何度も当局から迫害されていた。   メッセージは、「キリスト誕生を祝う者がいれば、一方には彼を十字架にかける者がいる」と指摘、玖政府・当局を暗に非難。「自由は、我々の犠牲と勝ち取る努力を通じてのみ獲得できる」と強調している。   フェレールは先の国際人権日には、「カストロ主義独裁は私を生きたまま葬ろうとしている。ゆっくりと殺そうとしている」、「健康は悪化し続けている。頭痛もひどい。囚人よりもひどい。生き埋めにされ、徐々に死んでゆく」と告発している。   一方、マイアミ在住の玖人美術キュレーター、アナメリ・ラモスは、7月11日行動で逮捕されたままの囚人とその家族にナビダーメッセージを送り、「捕らわれた人々は祖国の希望だ」と述べ、彼らの自由への闘争を讃えた。   彼女は別途、「息子・娘らが捕らわれている母親たちは絶望している。囚人には必要な薬がない」と指摘。「マイアミ在住の玖人たちは、祖国キューバの過去と現在の記憶を守っている。異なるキューバとなった暁には、その記憶が残されている」とも語った。 ▼第1書記が党幹部向けに年末演説   共産党のミゲル・ディアスカネル第1書記(大統領)は12月27日、党本部内のニコ・ロペス党高等学校講堂で、中央委員ら幹部党員を集めて演説。コロナ禍、経済苦、米経済封鎖強化、反政府行動などで厳しい1年だったが、「大いに学習し、乗り切り、勝利した」と強調した。   第1書記は、「キューバは、脅威、侵攻、不安定化、米政府による諜報活動などに抵抗し、凌いだ」と指摘。「若い世代の革命体制防衛能力と決意が試された。そして、それが証明された」と讃えた。    党組織政策書記のロベルト・モラレス=オヘーダ政治局員は閉会演説で、「祖国、革命体制、社会主義、貢献のため、革命63周年(2022新年元日)おめでとう」と述べた。      

キューバと中国が「一帯一路」計画事業文書に調印

   キューバと中国は12月24日、「一帯一路」経済協力計画事業文書に調印、計画は同日発効した。双方は2018年11月、議定書を交わし、キューバの「一帯一路」構想加盟が決まった。   中心的協力分野は、政策調整、インフラ連携、自由貿易、金融統合、人民間関係など。優先的協力事業は、再生可能エネルギー、通商とインフラ、観光、金融、電気通信、科学技術、食糧、生物薬学など。   またキューバの「2030年経済社会開発計画」への中国側の協力も謳われている。   「一帯一路」事業の玖側中心人物は、リカルド・カブリーサス副首相(対外経済関係担当、元駐日大使)。 ▼騒乱罪で32人裁かる   7月11,12両日の反政府行動で逮捕された市民のうちの32人(10代後半から60代まで)32人が12月13~23日、騒乱罪で裁かれ、被告15人に禁錮12~30年が求刑された。全国で騒乱罪で起訴された被告は141人に上るとの情報がある。そのうちの14人は18歳未満という。 ▼革命63周年祝賀準備始まる   キューバ革命は2022年元日、63周年記念日を迎える。これに備え文化省は12月25日、全国的な文化行事の開催準備に着手した。    

コロンビアで今年、人権活動家168人が殺害さる

        人道犯罪が絶えないコロンビアで今年、人権活動家168人が暗殺された。残る1週間に数人増える可能性がある。同国の開発・平和研究所(INDEPAZ)が12月24日、明らかにした。    今年最初のこの種の殺害事件の犠牲者は、アンティオキア州アンデス市サンペルーチョの共同体行動会議(JAC)のグスタボ・オロスコ=ラミーレス議長だった。    サントス前コロンビア政権とゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC、現合法政党)が2016年に和平合意を結んでから5年間に殺害された人権活動家は、計1283人に達した。    同研究所やオンブズマン事務所は、殺害は売春を含む闇経済を支配する極右準軍部隊などが放つシカリオ(殺し屋)が実行する。    INDEPAZによれば、人権活動家殺害とは別に今年、コロンビア各地で計91件の集団虐殺事件が起きた。    人権活動家の他に殺し屋の標的になるのは、環境活動家、弁護士、労組幹部、先住民指導者や、殺害事件の真相を暴こうとするジャーナリストだ。 ▼元FARC要員約1300人殺さる    2016年の和平以後、元FARC要員1283人が殺害された。うち885人はドゥケ現政権下で殺された。      

ボリッチ出現でラ米に新しい政治地図

    チリ大統領選挙決選(12月19日)で民社主義の穏健左翼ガブリエル・ボリッチ(35)が次期大統領に決まった。これにより、ラ米諸国の政治潮流は新たに左傾化傾向が顕著になった。    現在、左翼・穏健左翼・進歩主義諸国は;①左翼:共産党独裁キューバ、専横体制ニカラグアおよびベネズエラ②穏健左翼メキシコ、ペルー、亜国、ボリビア③次期穏健左翼政権ホンジュラス、チリの9カ国。    2020年には、コスタ・リカ(2月6日)、コロンビア(5月29日)、ブラジル(10月2日)、ハイチ(日程未定)で大統領選挙が予定されている。ブラジルでは、穏健左翼のルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領の復活当選が確実視されている。ラ米一の大国ブラジルの再左傾化は、ラ米全体に大きな影響を及ぼす。    左翼政権が登場したことのないラ米一保守的なコロンビアでは、前回選挙で存在感を強めた穏健左翼のグスタボ・ペトロに当選可能性が出ている。    伯COL両国で穏健左翼が勝てば、前記9カ国と合わせて計11カ国が左翼・穏健左翼陣営となる。そうなればラ米20カ国の過半数を占め、政治地図は左傾化が鮮明になる。    極右・右翼政権はブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、コロンビア、エクアドール、ホンジュラス、エル・サルバドール、グアテマラ、ハイチ。中道保守政権はコスタ・リカ、パナマ、ドミニカ共和国。    このうちチリとホンジュラスは穏健左翼に移行する。ブラジルとコロンビアには、その可能性がある。    左傾化の原因は、新自由主義経済で拡大した貧困層が2年続くコロナ禍COVID19で痛めつけられたのが大きい。    来年10月までにラ米11カ国が左傾陣営になった場合、それは決して1枚岩にはなりえない。穏健左翼は社会主義革命を目指さず、新自由主義を社会政策拡大によって修正する「人道的資本主義」を目標としているからだ。    穏健左翼はまた、「階級闘争」よりも、人権、女権、環境などに関心が強い。イデオロギーが絡みがちな米中露3大国との関係も是々非々主義で臨む傾向がある。    日本メディアにありがちな「親米・反米」を基準にラ米諸国を観る見方は、米国を起点にしてラ米を捉える点でまず正統的でないうえ、ラ米独自の立場を覆い隠す過ちを犯すことになる。    もし米国の眼鏡でラ米を観るなら、ラ米から米国を眺め

今夜NHKTVで「メキシコ女性殺し」報告

    世界各地で「女性殺し」(西語でフェミニシディオ、英語でフェミサイドなど)が問題化しています。ラ米では、この問題が対米国境地帯などで数十年前から大きな問題になってきました。    このほどメキシコでフェミ二シディオ問題を取材したジャーナリスト工藤律子、フォトジャーナリスト篠田有史が本日21日、報告します。    ◎「メキシコ<女性であることで殺される> ”フェミサイド”と闘う」    ★NHKBS1 「国際報道2021」 21日22時から45分の間に    ★NHK総合1「国際報道2021」 22日午前2時24分から40分の間に    どうぞご覧ください。

「構造改革し公正なチリを」ーボリッチが勝利演説

   チリ次期大統領に決まったガブリエル・ボリッチは12月20日夜、首都サンティアゴの広場で大群衆を前に30分余り、勝利の演説をぶった。「こんばんわ、チリ!」と西語とマプーチェ語で呼び掛け、「民主を尊ぶ人々のお陰で決定的勝利を収めた」と強調した。   決選の相手だったホセ=アントニオ・カストを含む6人の候補に謝意を表明。「不平等でない公正な国を造るため、構造改革を目指す。団結しよう」と訴えた。   「誰もが主人公である民主体制をつくる」、「過去のあらゆる時期になされた人権蹂躙を2度と繰り返すまい」、「財政均衡を目指す」、「国会での対話が必要」などと述べた。        経済成長については、不平等是正のため必要と述べた。   「先住民族の権利を尊重し、新しい関係を築く」と語り、「気候変動対策に取り組む。乱開発は我々自身を滅ぼす」と警告した。   新憲法を起草中の制憲会議(CC)に触れ、「民主的で公正な憲法を目指す」と述べた。   演説中、花火が打ち上げられ、若者たちが歓声を上げ続けた。演説が終わると、紙吹雪が舞った。ボリッチはかすかに涙した様子で、眼鏡を外した。   

チリ決選の投票率は55・5%

   チリ選管セルべルは12月19日、同日実施の大統領選挙決選の投票率は55・57%と発表した。有権者1503万人のうち835万人が投票した。   開票率99・84%段階で、ボリッチ55・87%、カスト44・13%。差は11・74ポイント。   チリでは2012年に義務投票制度が終わり、その後の選挙で投票率が50%を上回ったのは初めて。選挙ではないが、2020年の新憲法制定の是非を問う国民投票では50・95%を記録した。   今選挙は、11月21日の第1回投票の投票率が47・33%だったが、それを決選では8ポイント余り上回った。その増えた分は第1回で棄権した若者層のもので、その票がボリッチの得票を押し上げたと見られている。   12年以降の大統領選挙でこれまで投票率が最も高かったのは、2013年の49・36%。このときは決選(投票率41・98%)でミチェル・バチェレ―(前大統領)が当選した。   今回、極右カストを第1回投票で1位にのし上げたのは、2019年10月の大学生らによる「社会蜂起」だった。その長期騒乱状態に危機感を抱いた保守・右翼・財界・富裕・中年・高齢者層が、「鉄の治安」を公約したカストになびいた。   「蜂起」の主人公だった若者は、現在起草中の新憲法制定を勝ち得た19年の政治行動の成果がカストに空洞化されるのに気づき、目覚めて投票所に向かった。その結果、ボリッチの逆転勝利を確かなものとした。   翻って日本の若い有権者層は依然、「眠れるライオン」に留まっている。 

ボリッチが当選、チリ民主が極右を阻止

   チリ民主は愚かではなかった。極右の政権奪取を阻み、新自由主義の行き過ぎを正し社会政策充実を唱える若い政治家を、次期大統領に選んだ。    チリ大統領選挙決選は12月19日午後7時半、開票率50%段階で穏健左翼ガブリエル・ボリッチ(35)54・7%、極右ホセ=アントニオ・カスト45・2%で、優劣差は9・5ポイントに開いた。★カストは敗北を認め、ボリッチを祝福した。   世論調査機関CADEMの専門家は18日、決選前1週間にボリッチ(拡大戦線所属、尊厳連合候補)が8ポイント優勢として、ボリッチ勝利を予測。それを上回る得票差がついている。   11月21日の第1回投票では、得票1位のカストが2位のボリッチに2ポイント差をつけたが、決選ではボリッチが大差で逆転勝利した。   ボリッチ勝利は、極右カストが勝てば「ピノチェー独裁回帰」となりかねないと強く懸念した有権者の多数派が危機感を抱き、ボリッチ支持に勢いをつけた結果だ。   カスト(共和党所属、キリスト教社会戦線候補)も劣勢を予知、両候補同士の公開討論会などで、フェイク情報を交えてボリッチの「麻薬疑惑」などを追及。その激しいネガティヴ攻撃に焦りの色を見せていた。   ピノチェーの妻ルシーア・イリアルト(98)は、決選直前の16日死去。カスト陣営は、ルシーアの死が「哀悼票」となってカスト支持を固めると期待したが、既に「ピノチェー票」は早くからカストの固定票に組み込まれており、「哀悼票」にはならなかった。   ボリッチ当選で、新憲法起草中の制憲会議(CC)は「ボリッチ政権発足後の来年9月の国民投票に向けて、起草作業を進めることになった。カストは1980制定の軍政憲法維持を主張。カストが当選すれば、CCの起草作業の行方に暗雲が立ち込めると懸念されていた。   だが、国会上下両院では、左右両派の議席数が接近しており、ボリッチ次期政権は、カスト陣営やピニェーラ現政権諸党との「対話と理解」が不可欠となる。   南米では来年10月、ブラジル大統領選挙が予定され、穏健左翼のルーラ元大統領の復活当選が確実視されている。また5~6月のコロンビア大統領選挙では、穏健左翼のグスタボ・ペトロに当選可能性が出ている。   チリでのボリッチ勝利は、南米左翼・進歩主義陣営に弾みをつける。だがボリッチはキューバ、ベネズエラ、ニカラグアの「ラ米伝統左翼

穏健左翼ボリッチが8・24ポイントリード

   チリ大統領選挙決選は12月19日午後6時(JST20日午前6時)、投票が終了。セルべル(選挙サービス=中央選管)による午後7時の開票率30%段階での第2回発表では、穏健左翼ガブリエル・ボリッチ(35)54・12%、極右ホセアントニオ・カスト(55)45・88%で、ボリッチが8・24ポイント、リードしている。   開票率13・19%段階での第1回発表では、ボリッチ53・39%、カスト46・61%で、ボリッチが6・78ポイントリードしていた。そのリードが1・46ポイント拡がった。   開票率は低いが、勝敗への趨勢が徐々に定まりつつあるかに見える。   両派、とりわけボリッチ派は、有権者が投票所に行くのに使う乗り合いバスが首都サンティアゴなどで大幅に不足した事態を厳しく批判した。投票率が上がれば、若者の投票が増えることを意味し、若いボリッチに有利になると見られている。   グロリア・フット運輸相は、バス運行の不手際を詫びた。野党からは府っと更迭を求める声が出ている。   ボリッチは、マゼラン海峡に面した出身地のプンタアレナスで投票を済ませ、サンティアゴに向かった。カストは首都郊外の住宅地で投票した。

チリ上院が「旧ナチ農場」記憶する委員会設置要請へ

    チリ上院は12月17日、同国中部マウレ州パラル市郊外で、ナチ残党パウル・シャーファーが1961~2005年運営していた大農場「コロニア・ディグニダー」に関する「国家真実・賠償・記憶委員会」を設立するようセバスティアン・ピニェーラ大統領に要請する決議を可決した。    農場内では、チリ人約300人が奴隷労働をさせられ、強姦など人権蹂躙が著しかった。ピノチェー軍政期(1973~90)には、諜報機関DINA支部が置かれ、政治囚の収容、拷問、処刑にも使われた。    19日の大統領選挙決選を戦う極右ホセ=アントニオ・カスト候補の父親は、ナチ軍尉官で、身分を偽ってチリ南部に移住し、養鶏から身を立てた。

チリ大統領選挙決選、投票開始

  チリ決選投票は12月19日午前8時(JST20日午後8時)、投票が始まった。午後6時(同20日午前6時)まで続く。有権者は18歳以上の1500万人。  11月21日の第1回投票時の投票率は47%と低かった。決選の投票率が高くなれば、それは現状への不満の強い若者層が多く投票所に向かったことを意味し、若い候補が有利になる。  世論調査会社の調査やマスメディアの出口調査による当落速報は、投票終了の午後6時にラテ(ラジオ・テレビ)やSNSで伝えられる。  今回の選挙は、1990年3月11日の民政移管後の大統領5人(延べ7人)を選んだ7回の大統領選挙の中で最も対立状況が激しい。  それは民政移管後31年経ち、政経両面で転換期にあるこの国で、伝統的左右政党連合に属さない左右両候補が決選で政権を争うからだ。  穏健左翼のガブリエル・ボリッチ(35)と、極右のホセ=アントニオ・カスト(55)。ボリッチは極左でなく、「両極端の争い」とする報道は的外れだ。  今年6月のペルー決選で、右翼ケイコ・フジモリを破った現大統領ペドロ・カスティージョを「極左」とした間違いと同種のものだ。  チリの極左は、11月の第1回投票に出馬した7候補のうち、得票最下位だった「愛国同盟」のエドゥアルド・アルテ―スである。1・47%しか得票できなかった。  前大統領(現・国連人権高等弁務官)ミチェル・バチェレ―型の穏健左翼ボリッチと、トランプ前米大統領の側近だったスティーヴ・バノン型とも形容される極右カストのいずれが次期大統領になるかは、ラ米の政治状況に大きな影響を及ぼすことになる。 ▼在日チリ人はボリッチ支持  東京のチリ大使館で12月19日、在留チリ人120人が投票。ボリッチが91票、カストが29票、それぞれ獲得した。  豪州ではボリッチ982、カスト376。乳国(NZ)「はボリッチ738、カスト118。シンガポールは買うと22、ボリッチ13だった。

明日左右対決のチリ大統領選挙決選

   極右弁護士ホセ=アントニオ・カスト下院議員(55)と、穏健左翼のガブリエル・ボリッチ下院議員(35)が対決する決選投票は12月19日実施される。   11月21日の第1回投票には7人が出馬、得票上位2人が決選に進出した。支持率調査の発表は、選挙法により決選15日前(今回は12月4日)まで可能。11月下旬から4日までに公表された調査結果は、ボリッチ優勢。   カストが醸す「ピノチェー独裁ノスタルジー」が、多くの有権者に危機感を募らせたからだ。極右仲間のジャイール・ボウソナロ大統領の国ブラジルの国旗には「秩序と進歩」の文字が刻まれているが、カストは選挙戦最終日に、この言葉を唱え、「鉄の治安」を敷く公約をあらためて示唆した。   チリにはナチ残党の逃亡者が少なからず亡命したが、カストの父親はナチ党員だった可能性を示す記録がドイツに残っている。智独双方の調査報道が、それを明るみに出した。   無論、治安を確保したうえで経済成長を果たすカストの公約を支持する財界、富裕層、中産上層、保守・右翼陣営と、生活向上を願う中流以下の有権者も少なくない。   だが、自由を堅固にし、ほどほどの発展を維持しながら福祉国家を確立するという、ボリッチの公約になびく市民は多い。それが一連の支持率調査に表れている。  ▼支持率動向専門家は「ボリッチ勝利」と予測   世論調査機関CADEMの調査責任者ロベルト・イシクソンは12月17日、「選挙法により我々は支持率調査結果を今月5日以降は公表できずにいるが、ボリッチが勝つと思う」と述べた。   「第1回投票からの4週間のうち最も重要なのは、決選直前の最終週だが、ボリッチは野党諸勢力の支持を逸早く束ねた。これによりカストに8ポイント差をつけた」。イシクソンは、そう指摘する。   「とりわけ14日の2度目の討論会でボリッチは明らかにカストを凌駕した。有権者への影響は大きい」とも観る。   一方、ピニェーラ現政権の政権党連合「チレ、バモス」(レッツゴー・チリ)は17日、決選当日18時(日本時間20日午前6時)に最初の結果速報が出るが、「それをカストと共に待つことはしない」と明らかにした。極右のカストは、独自に「キリスト教社会戦線」としての選対本部を持つため、政権党連合は連合の中心にあるUDI(独立民主連合)党本部で結果を見守るという。      

チリ決選3日前に故独裁者ピノチェーの妻死去

   チリ軍政期の独裁者、故アウグスト・ピノチェー将軍の妻、ルシーア・イリアルト=デ・ピノチェー(98)が12月16日、老衰による心臓麻痺で死去した。19日の大統領選挙決選の3日前という、政治的に極めて微妙な時期だ。    軍政期の創設された「母親セントロ」(母の会)の理事長として「国母」を演出、保守・右翼陣営の女性たちに強大な影響力を行使した。同セントロは1990年の民政移管後も、2004年のピノチェー死去後も閉鎖されず、2016年末まで続いた。    妻は夫の独裁政策にも影響を与え、夫妻で巨額の公金を横領蓄財した嫌疑がかけられていた。妻も捜査当局から数次に亘り尋問された。    決選は、穏健左翼で旧ユーゴスラヴィア系のガブリエル・ボリッチ下院議員(35、拡大戦線)と、極右でドイツ系のホセ=アントニオ・カスト弁護士(55、共和党)の戦い。数次の支持率調査では、押しなべてボリッチ優勢。    勝敗の鍵は、11月21日の第1回投票で棄権した有権者53%の評をより多く獲得すること。カスト陣営は、ルシーア・イリアルトの死去が保守系浮動票を「同情票」として固めるのを期待している。    カスト支持派は、イリアルト追悼を名目に首都サンティアゴ中心部にある広場に集まり花を飾るなどの運動をした。これには「選挙戦終了後の選挙運動」という批判が出ている。    カスとは第1回投票で1位になり、2ポイント差で2位につけたボリッチと共に決選に進出した。だがピノチェー礼賛の発言が厳しく批判され、ボリッチに逆転される可能性が出ている。  ▼選挙戦終了    決選の選挙戦は12月16日終了した。ボリッチの拡大戦線(FA)が共産党などと組む「ディグニダー(尊厳)連合」(AD)と、カストの共和党が保守・右翼陣営と組む「キリスト教社会戦線」(FSC)は、それぞれサンティアゴ市内の公園で最終決起集会を開いた。    年末帰国中のミチェル・バチェレ―前大統領(現・国連人権高等弁務官)は、このほどボリッチと会談、ボリッチ支持を表明している。    一連の支持率調査で劣勢にあるカスト陣営は、焦りからか、さまざまな攻撃的言動を仕掛けている。    政治評論家らは、支持率が60%以上に上がり、若者と女性が大挙して投票すれば、ボリッチ勝利と見る。カスト勝利は保守的な中年と老年の票に懸かっている、と見る。    

ハイチ大統領暗殺は麻薬取引取締りが原因か

     今年7月7日に暗殺されたハイチのジョヴネル・モイーズ大統領は、なぜ殺されたのか。この最大の疑問を解く有力な「仮説」が12月14日、NYT紙報道で明らかにされた。     それによると、モイーズ大統領は政財界、治安部隊に麻薬汚染(腐敗)が拡がっている事実を知るや、どんな大物でも容赦するなと部下らに命じ、麻薬取引に関与する可能性のある者たちの名簿を密かに作成した。その名簿をDEAに渡そうと決意していた。     名簿の筆頭には、モイーズを後継者に据えたミシェル・マルテリー元大統領の義兄弟であるシャルル・サンレミの氏名が記された。サンレミは強大な勢力を誇り、モイーズ政権の重要人事を決めるほどだった。名簿には、モイーズの警護警察隊長ディミートゥリ・エラルの名もあった。      ハイチは、南米南部と米国に間にあるカリブ海の島国で、コロンビアやベネズエラからコカイン、ヘロインなど高価な麻薬が大量に運び込まれていた。米DEA(麻薬捜査局)はサンレミらを麻薬犯罪関与人物としてマークしていた。     DEAは暗殺の数週間前(今年6月ごろか)、ハイチ北部にある複数の秘密滑走路が、南米南部から麻薬を運んで来る小型機の離着陸に使用されていると、モイーズに通告した。     モイーズは直ちに部下らに、到着する小型機を破壊するよう命じた。それが引き金になったのかどうかは不明だが、モイーズは、首都ポルトープランスの私邸で、コロンビア人コマンドに拷問された後、銃撃され殺害された。     コロンビア人コマンドに命令していたハイチ人ジョセフ・フェリックス・バディオの名も名簿に記載されていた。バディオは暗殺事件当時、モイーズ邸付近にいた。     大統領が暗殺されたのは7日未明だったが、モイーズと共に寝室にいた妻マルティーヌも銃弾数発を浴び、血だらけになって床に伏せた。彼女は、死んだふりをして生死を確認しようとしたコマンドを欺き、辛くも生き延びた。     マルティーヌは救助され、マイアミに急送され入院、一命をとりとめ、7月に帰国し、夫の国葬に参列した。     マルティーヌは捜査当局に、コマンドは夫を殺した後、私邸内の夫の執務室で何かを探し回り、部屋中に書類をまき散らして引き揚げた、と証言している。当局は、コマンドが問題の名簿を探していたと見ている。     逮捕されたコマンド18人は

「民主サミット」に対抗する形でALBA首脳会議開催

     米州ボリバリアーナ同盟(ALBA=正式名称ALBA・TCP=我らの人民のためのボリバリアーナ同盟・人民通商条約)が2004年12月14日、ハバナでのフィデル・カストロ玖議長とウーゴ・チャベスVEN大統領の間で創設されてから17周年経つ12月14日、これを記念して第20回ALBA首脳会議がハバナの政庁「革命宮殿」で開かれた。     ALBAにはラ米4か国とカリブ6か国が加盟している。ラ米からは、議長のミゲル・ディアスカネル玖大統領、ニコラース・マドゥーロVEN大統領、ダニエル・オルテガNICA大統領、ルイス・アルセBOL大統領が顔をそろえた。     カリブはアンティグア&バーブーダ、ドミニカ、グレナダ、セントクリストファー&ネヴィス、セントルシーア、サンヴィセンテ&グラナディーン(SVG)。ラルフ・ゴンサルヴェスSVG首相ほか、首相、外相、閣僚が出席した。      会議はディアスカネル大統領が基調演説し、次いでマドゥーロ大統領ら9人の首席代表が演説した。ディアスカネルは閉会に際し、ALBA諸国が合同で食糧と薬品を製造する企業を興す可能性を検討すると述べた。     会議は44項目の共同声明を採択して閉会した。声明骨子は次の通り。①ALBA創設の意義②域内連帯③LAC(ラ米・カリブ)統合④多国間主義に基づく公正な国際関係⑤SVGの過去2年間の国連安保理非常任理事国としての活動評価⑥2014年のCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)第2回首脳会議でのLAN平和宣言評価⑦CELAC強化⑧一方的強制措置に対するため独自の政経社文体制構築⑨対外債務軽減メカニズム創設⑩一方的強制措置(制裁)糾弾     ⑪対玖経済封鎖糾弾⑫対VEN強制措置糾弾⑬米政府によるテロ支援国家への玖指定糾弾⑭米州諸国機構(OEA)事務総長による内政干渉糾弾⑮人権問題の政治化糾弾⑯デモ行進時含むあるゆる種類のテロリズム糾弾⑰COVID19犠牲者追悼⑱COVID19対策⑲玖コロナワクチン生産評価⑳VEN国営航空CONVIASAによる域内ワクチン輸送評価     ㉑ALBA銀行の活動評価㉒カリブ諸国による先住民殺戮・奴隷制度・大西洋越し輸送時の蹂躙に対する賠償要求支持㉓カリコム評価㉔カリブ諸国に不利な方策適用糾弾㉕アルセ・ボリビア政権支援㉖VEN政治対話支持㉗VEN地方選

ベネズエラでカトリック聖職者45人がコロナ死

    ベネズエラ司教会議(CEV)は12月13日、昨年3月以来、コロナ禍COVID19により、カトリック聖職者45人が死亡した、と明らかにした。内訳は司祭41人、司教2人、大司教2人(うち一人は枢機卿)。    聖職者は2113人いたが、死者を含む439人が感染した。教会活動に大きな影響が出た。    ベネズエラの感染者累計は約44万人。うち5239人が死亡している。    国民の81・6%が、1回以上のワクチン接種を終えている。ワクチンはキューバ産が中心だが、中国産やロシア産も用いた。 

「アンデス3国統合」構想に待ったがかかる

   ペルーのクスコ市(旧インカ帝国首都)で12月20、21両日「ルナスール」会合が予定されていたが11日、国会外交委員会がルナスール指導者エボ・モラレス元ボリビア大統領を「好ましからざる人物」と議決したことから、中止となった。   この会合の目的の一つは、「タウアンティンスーヨ」(旧インカ帝国版図)に含まれていたペルー、ボリビア、エクアドールの「領土的統合」の実現。これを「とんでもない内政干渉」と受け止めた外交委は、モラレスを非難。モラレスと親交のあるペドロ・カスティージョ大統領に、同様に「好ましからざる人物」と宣言するよう求めている。   だが秘政権党PL(自由ペルー)のブラディーミル・セローン書記長は12日、クスコ会合は中止が決まったわけではなく、延期を含め対応を検討中であり、モラレス来訪の可能性も依然残っている、と述べた。【セローンは13日、会合中止を確認した。】   ルナスールは、南米諸国連合(ウナスール)の発展的復活のためにモラレスが組織したが、ここへ来て、先住民の多い3国の統合という側面が色濃く出た。   モラレスは政権にあった時期に、勢力基盤のコチャバンバ州内にウナスール議会を建設したが、その完成時には、南米に右翼・保守諸国が増え、それが脱退し、ウナスールは活動停止に追い込まれれていた。モラレスには赤道国首都キト郊外にあるウナスール本部と同議会の再生を実現する悲願がある。   今月19日のチリ大統領選挙決選や、来年のコロンビアとブラジルの大統領選挙で左翼候補が勝てばウナスール復活が実現性を帯びると見るモラレスは、当面は「アンデス3国の統合」に力を注いでいる。   ペルーが、新自由主義政権30年の歴史を終え、今年7月末から、社会政策を重視するカスティージョ穏健左翼政権に移行したのを好機と捉えている。だがウナスール本部のある赤道国は今年、右翼財界人ギジェルモ・ラソ大統領が政権に就いた。ラソはウナスール反対派だ。 ▼ペルー国会議長が物議醸す   マリーアデルカルメン・アルバ秘国会議長は、このほどマドリ―を訪れ、スペインの国会議員らと会合した際、「ペルーは共産主義に捕らえられた。カスティージョ大統領には正統性がない」などと述べたと伝えられた。   秘外務省は12月12日声明を発表、在西大使館に事実調査を命じたことを明らかにした。秘政界では既に、アルバに退陣を

中米・カリブ3国の「民主開発同盟」が首脳鼎談

    コスタ・リカ(CR)、パナマ(巴)、ドミニカ共和国(RD)3国が組む「民主開発同盟」(ADD)の第2回首脳鼎談が12月11日、RDのプエルトプラタ市で開かれた。    この「3国同盟」は今年9月、国連総会時にルイス・アビナデルRD、カルロス・アルバラードCR、ラウレンティーノ・コルティーソ巴の3大統領がNYで会合し、結成した。    3国とも中米統合機構(SICA)に加盟する。他のSICA加盟国はグアテマラ、エル・サルバドール、ホンジュラスの「非民主的」な中米北部3国、オルテガ強権体制のニカラグア、および英連邦のベリーズ。ADD3国は、これら5カ国と肌が合わない。         そこで、3国はADD結成に踏み切った。  

米主導の「民主サミット」は具体的合意なく終わる

     ジョー・バイデン米大統領主唱の「民主サミット」は12月9、10両日、ワシントンを中心に遠隔で開かれ、約100カ国・地域が参加した。具体的な合意なしに終わり、同大統領は今回の討議事項を踏まえて来年、2回目の会合を開くと述べた。     今回の「サミット」は、中露両国と対峙する米国が「民主陣営」を固めて対抗する意図が鮮明で、同両国、それに同調する諸国は招かれなかった。また米国が「民主政治」と認めないグアテマラ、エル・サルバドール、ホンジュラスの中米北部3国なども排除された。     米国の意向に従わないキューバ、ベネズエラ、ニカラグアも除外された。これら3国は中露の友好国で、ニカラグアは、このサミット開会に合わせて9日、台湾と断交、中国との国交を再開させた。台湾総統はサミットに招かれ、注目された。     バイデンは、ベネズエラからは反体制派のフアン・グアイドー前国会議長を招いた。その「代表団」には、キューバの反体制派活動家ロサ=マリーア・パジャーが入っていた。     国連総会は、ニコラース・マドゥ-ロ大統領のボリバリアーナ政権にベネズエラ代表権を来年末まで3年連続で認めている。バイデンは、トランプ前米政権が傀儡として擁立したグアイドーを招いたわけだが、明らかな虚構だった。     ルイス・アルセ大統領のボリビア民主政権も招かれなかった。グアイドーが招かれたことから想像すれば、2019年11月のクーデターで1年間ボリビア政権に就いた非合憲政権首班が、今も政権にあったとすれば、招かれただろう。     米連邦議会をはじめワシントン政界を取材する「ザ・ヒル」紙は、トランプ政権末期にトランプ支持の暴徒群が米議会に侵入したことで著しく落ちた「米民主」の評価を回復したい思惑がバイデンにあったと見ている。     伯紙フォーリャデサンパウロは、「民主サミット」について「世界を分断し、覇権を維持するための米国の武器だ。偽装された新植民地主義だ」と糾弾する駐伯中国大使の発言を報じている。 ▼亜国大統領が米国含むOEAを批判     アルゼンチンのアルべルト・フェルナンデス大統領は12月10日、「民主サミット」に遠隔参加し、バイデン米大統領らを前に、「2019年11月のボリビアクーデターは国際社会と米州諸国機構(OEA)加盟国の多くから支持された」と指摘。暗に米国およびOEA

米入国目指した中米人ら160人がメキシコ南部で死傷

      メキシコ南部チアパス州都トゥーストラグティエレス郊外の自動車道で12月9日、 走行中の大型トレーラートラックが転倒。車内にいた中米人ら約160人が死傷した。10日現在、死者はグアテマラ人、サルバドール人ら55人、負傷者は105人。   メキシコ警察の調べでは、トラックは高速で走行中、転倒した。運転手は逃亡している。「コヨーテ」(ハイエナ)と呼ばれる不法移民輸送業者は、大型トレーラーの屋根に通気口を開け、内部に160人もの米国密入国希望者を乗せていた。   一方、11月に徒歩でチアパス州を出発したハイチ人、中米人ら数千人のうち、脱落しなかった約1000人は10日、プエブラ市近郊から首都メキシコ市に向かった。そのなかのドミニカ共和国出身者は、チアパス州内での上記トレーラー事故で肉親2人を失ったという。

英控訴審がアサンジ被告の対米身柄引渡を承認

    英控訴審は12月10日、米政府などの機密を暴露したウィキリークスの創設者で豪州人のジュリアン・アサンジ被告(50)の米国への身柄引き渡しを承認した。今年1月、一審は「引き渡されれば被告が自殺する恐れがある」として、引き渡しを禁止した。    これに対し米政府は10月、アサンジ被告の精神的健康を含め身柄を適切に扱うと保証。これを踏まえて控訴審は引き渡しを可とした。米政府は、被告に有罪判決が出た場合、豪州で服役することも約束した。    米検察はアサンジを、スパイ罪、機密情報不正取得罪など18件で起訴。米軍がイラクとアフガニスタンでの戦争中に犯した人権蹂躙が含まれている。すべてが有罪となれば、計禁錮175年にも及ぶ可能性があるとされる。    弁護側は、米政府は政治的動機からアサンジを起訴したと捉え、有罪となれば報道の自由に壊滅的な打撃を与えることになると主張してきた。    国際ジャーナナリスト連盟(IFJ、本部ブリュッセル)は10日、判決を糾弾し、アサンジの上告を支援すると表明した。    一方、キューバのブルーノ・ロドリゲス外相は同日、「戦争犯罪を暴かれたことへの報復としてアサンジを迫害し、断罪しようとしている」と、米政府を非難した。    アサンジはロンドンのエクアドール大使館で2012年から亡命生活を送っていたが、レニーン・モレーノ前大統領が19年、米政府との取引でアサンジを大使館から追放。待ち構えていた英当局に逮捕れ、拘禁され、裁判にかけられた。    アサンジに亡命を認めたラファエル・コレア元大統領は10日、「恥知らずにも、アサンジの逮捕と身柄の引き渡しを容易にした」と、元部下で後任のモレーノを非難した。 ▼アサンジが上告    アサンジは12月23日、英最高裁に上告した。                

ニカラグアが台湾と断交し、中国と復交

   ニカラグア政府は12月9日、台湾と断交し、中国と国交を再開したと発表した。    1989~90年のサンディニスタ政権期にニカラグアは中国と国交を樹立したが、90年に誕生したチャモーロ保守政権は対中断交し、89年までのソモサ独裁期同様、台湾と外交関係を持った。    これで台湾が外交関係を持つ国は、ラ米のパラグアイ、グアテマラ、ホンジュラスなど14カ国になった。    ダニエル・オルテガ大統領は2014年末、太平洋岸とカリブ海(大西洋)を結ぶ全長270㎞の「ニカラグア大運河」の建設工事を開始したが、資金枯渇など実現可能性が低くなり、数年後に事業は挫折した。    この事業計画には、中国に繋がる香港企業が参入した。だが、中国には、台湾との外交化を断ち切らないニカラグアに本気で援助する意欲はなかった。    また、パナマ運河第3水路が完成し、超大型船舶が通航可能となり、80㎞のパナマ運河と比べ3倍半と長い二カラグア運河の国際的需要はほぼなくなった。    ニカラグアは、トランプ政権以降、米国から政権打倒を狙う揺さぶりをかけられ続けてきた。台湾は、その米国に守られている。そしてバイデン米政権はワシントン開催の遠隔「民主サミット」に台湾総統を招いた。    その時宜に合わせて中国は、米国と冷戦関係にあるニカラグアとの国交再開をやってのけた。ニカラグアにとっても、敵対的な米国と比べ中国は、はるかに頼り甲斐のある超大国だ。    中国はニカラグアに、相当な「反対給付」を提示したと考えられる。     

マリオ・バルガス=ジョサの仏アカデミア入会に異議

    ペルー人でスペイン国籍も併せ持つノーベル文学賞作家マリオ・バルガス=ジョサ(MVLL、85)は11月25日、フランスアカデミー入会が認められたが、この決定に反対する仏知識人5人が12月9日、連名で、この作家の入会決定を覆すべきだと表明した。    理由は、①19日実施のチリ大統領選挙決選の極右候補で「ピノチェー軍政の望郷的支持者」ホセ=アントニオ・カストへの支持を表明した②FARCとの和平合意を終わらせたコロンビアのイバン・ドゥケ大統領を支持した③今年のペルー大統領選挙決選で右翼ケイコ・フジモリ候補を支持した④亜國軍政期の人道犯罪を過去に葬るよう1995年に求めた⑤租税回避地での脱税疑惑があるー。    「この作家の過激姿勢はよく知られ、拒絶を招いており、その加入は仏アカデミーに汚点を残すことになる」と、反対する5人は指摘している。    MVLLは現在、入会の最終承認段階にある。それはエマニュエル・マクロン仏大統領への作家本人の謁見。それが済んでいない時期に、この反対表明がなされた。    5人は、大学教授セサル・エティエル、開発調査専門家エヴェリン・マスクリエル、大学教授ヴァレリー・アゼヴェ―ド、研究者シルヴィー・トーシグ、考古学者パブロ・デルヴァイエ。 ▼イサベル・アジェンデらがボリッチ支持表明    在米作家イサベル・アジェンデ、作家アントニオ・スカルメタらチリ人約40人は12月9日、公開書簡で、19日実施のチリ大統領選挙決選で左翼ガブリエル・ボリッチ候補を支持すると表明した。「研究や表現の自由のだけでなく、チリ社会の多様性、対話深化、不平等是正のために」と記している。 署名した約40人は、いずれも「チリ文学賞」などチリ国家賞の受賞者ばかり。 ▼チョムスキーらもボリッチュ支持    米国の数学者ノーム・チョムスキー、カナダ人作家ナオミ・クラインら諸国の知識人40人は、独裁者アウグスト・ピノチェー没15周年の12月10日、声明を発表。「カストはピノチェー遺制を復活させようとしており、チリ民主体制を守らねばならない」として、ボリッチ支持を表明した。    

キューバが国家・政府幹部の二重国籍を認める

    キューバ共産党(PCC)機関紙グランマは12月8日、玖国家および政府の高官ら幹部は玖国籍に加え、もう一つの国籍を持つことができるとする改正法案が、国家評議会で承認された、と伝えた。    「国外移住したキューバ人が革命体制に忠誠を誓えば、帰国後、外国籍を併せ持ちながら幹部として働くことができる」という新設項目もある。    国家評議会は、立法府ANPP(人民権力全国会議)の幹部会。エステバン・ラソANPP議長が議長を兼務する。ミゲル・ディアスカネル大統領(国家元首)、マヌエル・マレーロ首相(政府首班)も会員だ。    改正されるのは、2020年制定の「国家・政府幹部労働制度」(政令13号)18項。「幹部はキューバ国民でキューバに常住し、他の国籍は持てない」とされている。改正法案は21、22両日開かれるANPP本会議で審議され、承認される。    同法案は、「大統領は、当該幹部に関係する当局からの提案を受けて、同幹部にキューバ以外の国籍を認めることができる」としている。だが、「正副大統領と首相は生来のキューバ人で、他の国籍は持てない」という項目は従来通り。    2020年の政令13号には、「国家・政府職員は、キューバ革命のイデオロギーおよび倫理原則を備えねばならない」とも規定されている。この部分は変わらない。    現時点でなぜ「幹部二重国籍容認」政策が出てきたかについては、幾つかの憶測が出ている。帰国を希望する在外定住キューバ人で、革命体制に忠誠を誓う者は、国際的人材として登用する、という狙いという見方がある。    「単なる国際世論向けジェスチュア―であって、実行されないかもしれない」と見る反体制電子紙もある。     社会主義体制に見切りをつけて出国する若者が増えているが、そのような若いキューバ人が外国で成功すれば、人材として呼び戻したいとの思惑が政府にある、との見方も成り立つだろう。

フジモリ秘元大統領の元妻スサーナ・ヒグチ死去

     アルベルト・フジモリ元ペルー大統領(83)の元妻スサーナ・ヒグチ(71)が12月8日、癌で死去した。     長女ケイコ・フジモリ(46)は、弟で次男のケンジ・フジモリとともに姿を現し、弔意を表したペドロ・カスティージョ大統領らに謝意を表明。「母は勇気ある闘士で、カリスマがあった」と語った。     スサーナは1974年にフジモリと結婚、94年に離婚した。90~94年は大統領夫人だった。ケイコ、ケンジら、2男2女を儲けた。      

キューバ・カマグエイ州内で金鉱発見さる

    キューバ中部カマグエイ州内で埋蔵量8トンの金鉱が発見された。同国地質調査当局が12月8日、公表した。    同州グアイマロ市郊外30㎞に拡がる144haの原野で、「ハシント金鉱事業」計画として長らく調査されていたが、それが実ったことになる。    これから採算を含め、発掘可能性調査に入る。それを含む開発経費は、ベネズエラとキューバが主導する米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)が融資するという。    政権を握る共産党(PCC)は、金鉱発見に「歓喜している」と伝えられる。国際市場での金価格は、1㎏=5万7300米ドル強。外貨準備が底をついているため、早くも皮算用が始まっているわけだ。 ▼作家・芸術家らが玖政府に釈放を要求    諸外国の作家・芸術家訳300人は12月8日、声明を発表。玖政府に対し「一方的に逮捕された玖人芸術家らを釈放すべきだ」と要求した。声明に署名した人々のうちラ米人は、在米チリ人作家イサベル・アジェンデ、メキシコ人作家エレーナ・ポニアトウスカ、ペルー人作家マリオ・バルガス=ジョサ、在米キューバ人女優タニア・ブルゲーラらが名を連ねている。  

同性結婚法をチリ国会が可決

        チリ国会上下両院は12月7日、同性結婚を認める新法を可決した。この国のカトリック教会は、かつてピノチェー軍事独裁を支持するなど保守的だ。その影響下で民事では保守性の強いチリで同新法が成立したのは画期的なことだ。    セバスティアン・ピニェーラ大統領の署名と官報掲載をもって発効する。    今月19日の大統領選挙決選に臨む極右候補ホセ=アントニオ・カストは、同性婚に反対しており、新法可決後、「結婚は男女間にのみある」と語った。カストは9人の子どもの父である。    米州では、加米CR赤COL・URU亜が既に同性婚を認めている。メキシコでは、32州中14州で認められている。 ▼大統領が公布    ピニェーラ大統領は12月9日、同性結婚法を公布した。官報記載を経て90日後に発効する。

国連が3年連続でマドゥーロ政権の代表権承認

      国連総会は12月6日、ベネズエラ代表権決議投票を実施、ニコラース・マドゥーロ大統領の現政権を圧倒的多数で承認した。193カ国中、反対したのは16カ国だけだった。    この代表権投票は、バイデン前米政権が2019年1月に傀儡として擁立したフアン・グアイドー国会議長(当時)を「大統領代行」とする「もう一つのベネズエラ政権」が出現したため、同年12月初めて実施された。同傀儡政権支持票は60カ国に及んだが、実効支配しているマドゥーロ政権が承認され、20年末にも同政権が代表権を認められた。    グアイドーは今年1月、議長任期が切れ、国会議員でもなくなった。このため「もう一つの政権」は完全な虚構となった。    今回、反対した国々は、①米州9カ国(伯COL赤PAR・ES・HON・GUA米加)②その他7カ国(韓豪マーシャル諸島イスラエル英ジョージア、および1)。米国などは依然、架空の「グアイドー政権」を支持している。    グアイドー派はベネズエラ国内では既に分解。「空中楼閣」さえ失っている。だがジョー・バイデン大統領は、遠隔「民主サミット」にグアイド―を招待している。

ペルー大統領弾劾審議開始決議が否決さる

    ペルー国会(1院制、定数130)は12月7日、ペドロ・カスティージョ大統領を「無能」として弾劾審議する決議案を賛成46、反対76、棄権4、不参加4で否決した。審議開始には定数の4割52の賛成票が必要だが、これに6票届かなかった。    弾劾審議は、野党第1党でケイコ・フジモリ元大統領候補が率いる人民勢力(FP)、国よ前進せよ(AP)、人民刷新(RP)の右翼・極右3党が働きかけたが、多数派工作に失敗した。    ケイコ党は、PPクチンスキ、マルティン・ビスカーラ両元大統領の弾劾には成功したが、今回は不成功だった。クチンスキは2016年の大統領選挙でケイコを決選で破り就任した大統領だった。クチンスキは事実上弾劾される直前に辞任した。その後を継いだビスカーラは弾劾された。    今年の大統領選挙決選でカスティージョに僅差で敗れたケイコは、弾劾行動を早晩起こすと予測されていた。その通りになったが、審議を阻まれ、敗北した。    2026年の次期大統領選挙出馬(4度目)への意欲を失っていないケイコにとり、「決選で敗れると弾劾に動く」との定評が定着した事実は極めて好ましくないはずだ。 

バイデンのキューバ不安定化工作は失敗と玖外相表明

   キューバのブルーノ・ロドリゲス外相(共産党政治局員)は12月7日、在米反玖勢力にそそのかされたバイデン米政権による対玖内政干渉、不安定化、虚偽情報宣伝の工作は失敗した、と表明した。   11月15日の反体制運動(15N)をほぼ完全に封じ込めてから3週間になる時点で、玖政府の見方を打ち出したもの。   外相は、トランプ前米政権がベネズエラでの数次に亘るクーデタ―起爆工作に失敗したのと同じだ、と指摘した。   同外相は別途、ジョー・バイデン大統領が遠隔開催を呼び掛けた「民主サミット」について、米国は国連での権威失墜と孤立に対処できなくなっており、「その弱さの表れだ」と述べている。

ボリビアが国産リチウム電池車を公開

   ボリビア政府は、政治首都ラパスで12月3~5日の日程で開催中の「技術革新見本市」で、リチウム電池で動く国産小型乗用車を公開展示した。   アンデス大高原南部のウユニ塩湖から採れるリチウムをエネルギーとする電動車で、国内に購入するよう呼び掛けている。   電池は、コチャバンバ州にある国営ボリビアリチウム鉱脈(YLB)社が生産している。 ▼ボリビアが国連に提訴   ボリビアの人権活動団体は12月4日、国連人権理事会「反拷問委員会」に対し、2019年11月のクーデタ―で政権に就いたジャニーネ・アニェス元非合憲大統領とアルトゥーロ・ムリージョ元内相を、拷問および残虐行為で提訴した、と明らかにした。   アニェスはボリビアで逮捕され収監されている。ムリージョは米国に逃亡したが、資金洗浄容疑により逮捕され、マイアミで拘禁されている。

米主唱の「民主サミット」を「新冷戦への招待」と腐す

   キューバ政府の広報官ホルヘ・レガニョアは12月3日、国営テレビを通じて、ジョー・バイデン米大統領が提唱し、9~10日、遠隔で開かれる「民主サミット」を「新冷戦への招待」となる、と論評した。    この遠隔会合には約110カ国が参加するが、中露イランや、キューバ、ベネズエラ、ニカラグア、ボリビア、中米北部3国などは招かれていない。台湾は招かれ、ベネズエラからはトランプ前米政権が傀儡として擁立したフアン・グアイドー前国会議長が参加する。    米政府は「米国と共にあるか、反米となるか」の選択を諸国にますます迫りつつある。バイデンはある政治的傾向をもつが、それは世界の人民を救済するものではない。レガニョアは指摘する。    同広報官は、米国は世界の民主国としてに言及される立場にはない、と批判。米国は民主の名の下に他国に対し、クーデター、首脳暗殺、陰謀、経済戦争などを仕掛けてきた、と糾弾した。    共産党一党支配国キューバは、自国の「人民民主体制」も「世界の民主」に含まれるという立場だ。    米政府は、サミットでは⓵専横体制に対する防衛②腐敗撲滅闘争③人権尊重促進、が主要議題になると発表している。 

ラ米・カリブ諸国が中国の「一帯一路」に組み込まれる

       米州の「広義の南米」であるラ米20カ国と大カリブ圏13か国、計33カ国がつくるラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)が、中国の「一帯一路」開発計画に組み込まれることになった。   CELACと中国は12月3日、第3回CELAC中国外相会合を遠隔で開き、その場で「一帯一路」参加が確認された。 この会合はCELAC輪番制議長国メキシコのマルセロ・エブラ―ル外相と、中国の王毅外相が共同議長を務めた。   キューバのブルーノ・ロドリゲス外相は逸早く、確認決定を歓迎した。   中国とCELACは、11月30日~12月1日には北京で「第3回中国CELAC政党会合」を開き、その場でCELACの「一帯一路」参加が討議された。この件は、2013年に習近平中国主席が提案していた。   北京での政党会合はまた24年に北京で、「CELAC中国会合首脳会議」を開くことを決めた。政党会合にはCELAC加盟諸国の政権党をはじめ、主要野党が参加した。   米政府は、中国のラ米・カリブ地域への「新たな大型公式進出」に神経を尖らせている。   

プエブラグループ会合が「司法偏向」批判し閉会

    ラ米やスペインの進歩主義指導者らがつくる「グルーポ・デ・プエブラ」は、メキシコ市で2日間亘る第7回会合を開き、12月1日、会合は声明を発表して閉会した。     声明は、「世界中で進歩主義勢力を攻撃する戦略があり、ラ米では亜伯智COL赤などに、それが見られる」と警鐘を鳴らした。「司法が偏向し、進歩主義勢力攻撃に用いられている」と指摘。「民主制度を脅かすクーデター促進、人種主義、気候変動否定、コロナ禍否定の言説が跋扈している」と懸念を表明している。     司法を政権打倒に使った例として、パラグアイのフェルナンド・ル―ゴ大統領、ブラジルのヂウマ・ルセーフ大統領をそれぞれ追放した議会による不当な弾劾や、ルーラ伯元大統領の2018大統領選挙出馬阻止が挙げられた。     そのうえで声明は、「ラ米・カリブ諸国が苛まれているコロナ禍、弱者に打撃を与えている経済危機、民主に対する絶え間ない脅威などが渦巻く状況に、我々は関与してゆく」と強調した。     声明はまた、以下を表明した。①ベネズエラへの連帯と同国の政府・反政府勢力間の対話支持②コロンビア和平協定順守願望③ニカラグアの平和化と安定化を願望④カスティージョ秘政権不安定化工作を糾弾⑤エル・サルバドールにおける法治への組織的攻撃を非難⑥キューバ国民への連帯と対玖経済封鎖解除要求⑦チリ極右勢力糾弾⑧ホンジュラス大統領選挙でのシオマラ・カストロ勝利祝福⑨ボリビアで再クーデターを画策する右翼の不安定化工作を糾弾⑩土地奪回を求めるパラグアイ先住民・農民を断罪する法制を糾弾。     今会合には、マルセロ・エブラ―ル墨外相、ヂウマ・ルセーフ元伯大統領、サパテロ元スペイン首相、ラ米正義民主理事会(CLAJUD)のエリ・ゴメス理事長らが出席。アルべルト・フェルナンデス亜大統領、ルイス・アルセBOL大統領、ルーラ伯元大統領らは遠隔参加した。            

マクリ前亜国大統領が「非合法諜報」で起訴さる

    亜国のマウリシオ・マクリ前大統領は12月1日、同国海軍沈没事故で殉職した乗組員の遺族たちの情報を連邦諜報局(AFI)に非合法に収集させた容疑で起訴された。    マクリはチリ滞在中に起訴の一報を得、帰国した。法廷はマクリに保証供託金1億ペソ(約100万米ドル)を課し、出国を禁止した。    潜水艦サンフアンは2017年11月15日、亜国南部パタゴニア沖の南大西洋を潜水航行中、行方不明になった。1年後の18年11月16日、コモドロ・リバダビア港南東沖500㎞の深さ907mの海底に沈んでいるのが確認された。   同艦は要員44人を乗せ、ティエラデルフエゴ州都ウスアイアから母港マルデルプラタに向かっていた。要員には、亜国海軍初の女性潜水艦乗務士官1人も含まれていた。   潜水航行中に使える酸素は7日分で、不明1週間後には全員絶望と見られた。マクリは潜水艦行方不明後5日経った17年11月20日、遺族たちに初めて会った。非合法諜報活動は、それ以後に始まったもよう。   艦の残骸は、海底に広範囲に散らばっているのが確認された。今年21年10月24日、マルデルプラタ海軍基地前に44人の慰霊碑の除幕式が挙行された。   マクリは23年実施の次期大統領選挙での返り咲きを狙っている。今年11月の国会議員選挙では自派が躍進。それだけに、起訴は痛手だ。