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米伯両政府のチリクーデター謀議文書公開さる

   ブラジルは3月31日、1964年軍事クーデターの57周年記念日を迎えた。この日、ワシントンの米国家安全保障公文書館は機密文書を公開した。そこには当時の、リチャード・ニクソン米大統領と、71年12月訪米したエミリオ・ガラスタズ=メヂシ伯軍政大統領の会談内容があった。   その文書には、米伯両国が70年11月発足していたサルバドール・アジェンデ大統領のチリ人民連合社会主義政権を打倒する画策協議が記されていた。   これまでに米伯智3国の諜報機関文書などから、米伯両政府とチリ軍部の連携によりクーデターが決行された事実は明らかになっていた。今回の公開文書は改めて、その事実を裏付けるものとなった。   ブラジル軍部は64年に自国のジョアン・ゴラ―ル民主政権を倒したが、米伯首脳会談でメヂシはニクソンに、「アジェンデは、ゴラ―ルが倒されたのと同じ理由で倒されなければならない」と語っている。   米伯両政府は71年8月には、フアン=ホセ・トーレス大統領の左翼人民主義政権を軍事クーデターで倒す画策をした。ボリビア陸軍極右のウーゴ・バンセル大佐を使って流血の政変を起こさせ、目的を達した。   米伯双方は70年代初め、米国と南米南部の軍政諸国が協力して左翼勢力を暗殺する「コンドル作戦」でも合意。亜国に亡命していたトーレスは76年、夫人とともに暗殺された。  この事件を暴いたジャーナリスト、ロドルフォ・ワルシュも77年に亜国軍政によって暗殺された。その遺体は依然、見つかっていない。   60~70年代のブラジル軍政は、「米帝国主義に歩調を合わせながら南米域内覇権という独自利益を追求する<亜帝国主義>」と指摘されていた。     

ブラジルで閣僚7人交代、3軍司令官辞任

  ブラジルで3月下旬、閣僚が7人交代した。いずれもジャイール・ボウソナロ極右大統領による更迭ないし、それに近い決定と見られている。先週の厚相交代に続き、3月29日、6人が一挙に地位を退いた。   エルネスト・アラウージョ外相は29日、大統領の最大の失政であるコロナ禍対策の失敗を被る形で更迭された。「外交の不手際でワクチン確保が遅れた」などの理由を指摘された。後任は、外交官カルロス・フランサ。   フェルナンド・アゼヴェード=イ・シルヴァ国防相も同日「辞任」した。さらに 文官長(官房長官)、大統領府相、内相、連邦法制庁長官も続いた。   国防相辞任に伴い30日、陸海空3軍司令官がそろって職位を下りた。このうちのエヂソン・プジョール陸軍司令官は、かねがね軍人の政治参加に批判的だった。閣僚数の4部の1近い6人が軍高官であり、軍人出身のボウソナロは面白くなかったはずだ。   さらにプジョールは、昨年3月末の1964年軍事クーデタ―記念日に際し、握手を求めたボウソナロに対し、肘で応じた。コロナ禍時代の流儀を示したのだが、大統領の反感を買った可能性がある。   ボウソナロは来年の大統領選挙で再選を狙うが、労働者党(PT)のルーラ元大統領が法的規制を外され出馬可能となる方向にあり、ルーラが立候補すれば「無能」の烙印を押されているボウソナロに勝ち目はないと見られている。

コスタ・リカで「スポーツでの性的急迫防止法」発効

    コスタ・リカ(CR)のカルロス・アルバラード大統領は3月29日、「スポールにおける性的急迫ハラスメント防止法」に署名した。署名式は、首都サンホセのサッカー場のピッチで催された。   同法は、言動、書簡、電話、SNSなどによる該当行為を取り締まり、罰則を科す。同法は2月25日、国会を通過していた。   新法により、「性的急迫防止委員会」(CCHS)が設置され、予防を含め、啓発活動を展開する。   また既存の、CRスポーツ・レクリエーション庁(ICODER)が、被害者への法的支援など、新法施行に伴う具体的問題に対処する。   スポーツ相カルラ・アレマンは、「犠牲者、とくに女性たちへの長年の負債がある」と指摘した。   日本で問題になっている、スポーツ選手に対する「性的目的による撮影」が防止対象に含まれているかどうかは不明。

チリ大統領が新憲法起草会議議員選挙の延期を要請

   チリのセバスティアン・ピニェーラ大統領は3月28日、コロナ禍を理由に国会に対し、4月半ばに予定されている地方選挙と新憲法起草会議議員選挙を5月半ばに延期するよう審議を要請した。  4月10日の地方選は5月15日に、起草会議議員選は5月16日に、それそれ延期するよう求めた。コロナ禍covid19が猛威を振るうチリでは、サンティアゴ首都圏を中心に広範な蟄居令が発動されており、1600万人が外出できない状態にある。  とくに重要なのは起草議員選挙。155人を選ぶが、議長になる1人を除く154人は男女半々ずつ選ぶことが決まっている。  ピノチェー極右軍政下の1980年に制定された現行憲法に替わる民主憲法の起草であり、女性の発想、意見を十分に反映させるのが目的。  

アルセ・ボリビア大統領がメキシコを訪問

   ボリビアのルイス・アルセ大統領は3月23~25日、メキシコを公式訪問した。アルセはエボ・モラレス(元)大統領の下で13年あまり経済相を務め、ボリビア経済の浮揚に功績があった。だが2019年11月のクーデタ―に遭い、モラレスらとメキシコに亡命した。そのメキシコをアルセは昨年11月の大統領就任後、最初の訪問国に選んだ。   23日夜、メキシコ市に着いたアルセは24日、国家宮殿(大統領政庁)でAMLO大統領と会談し、共同記者会見に臨んだ。アルセは内外記者団に対し、19年のクーデタ―の背後には米電気自動車製造大手テスラ社によるボリビア・リチウム資源奪取の陰謀があった、と強調した。   アルセは、19年10月の大統領選挙で落選した保守候補と組んでいた副大統領候補が、テスラ社が進出してくると語っていたことや、クーデター後、同社総帥イーロン・マスクが「必要ならば、どこであろうとクーデターを起こす」と発言したことに触れ、クーデター前夜期の暴動はリチウム資源が眠るウユニ塩湖のあるポトシー州で逸早く起きた、と指摘した。   ボリビアは19年10月時点でドイツ企業とリチウムの合弁開発で合意しており、調印間近だったが、クーデター前の暴動が起きたことから、調印を見合わせた。アルセは、そう明らかにし、民主復活後の今、独社との話し合いは再開され、他の国々の企業とも交渉したいと述べた。   首脳会談で合意された22項目が共同声明に盛り込まれたが、その一つは、米州諸国機構(OEA)に「民主政治尊重と内政不干渉」を求めている。米国務省べったりのルイス・アルマグロOEA総長(元ウルグアイ外相)は、ボリビアクーデターを起こす起爆剤の役割を果たした。   アルマグはSNS取次大手と組んで偽りの情報を拡散させた、との暴露情報も流れている。アルマグロは今また、アルセ政権に対し、クーデター政権首班だったジャニーネ・アニェス容疑者の釈放を求めている。   両首脳はまた、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の活性化で一致した。セラックは2011年12月、当時のウーゴ・チャベスVEN大統領の尽力で発足。北米の米加両国を除くメキシコ、カリブ、中米、南米にまたがる計33国が加盟している。   だが13年のチャベス死去、15年以降のラ米右傾化でセラックの活動は停滞した。しかしアルマグロ総長下のOEAの横暴が目立ち、ラ米

亜国大統領が「五月広場の祖母・母たち」を表彰

     アルヘンティーナ(亜国、アルゼンチン)で1976年3月24日、ホルヘ・ビデ―ラ陸軍司令官らによる軍事クーデターが起きてから今日3月24日で45年が過ぎた。イサベル・ぺロン大統領を倒して登場した軍政は1983年まで6年余り続き、その間、3万2000人が命を奪われた。   アルべルト・フェルナンデス大統領は45周年記念日前日の23日、軍政に抵抗し、暗殺などの迫害に遭いながら失踪した父、夫、息子、兄弟、孫らを探してきた女性組織の指導者3人に「フアーナ・アスルドゥイ賞」を贈り、闘ってきた女性たちの勇気を讃えた。   受賞したのは、「5月広場の祖母たち」のエステラ・デ・カルロット会長、「5月広場の母たち(創立時路線)」のタティ・アルメイダ会長、「政治囚失踪・逮捕者家族」のリタ・ボイタ―ノ会長。3人は約70人の女性闘士生存者の代表として表彰された。   大統領は、「彼女たちには、軍政期の亜国社会に欠けていた勇気があった。それをもって亜国社会を正常な方向に進めた」と、最大限に讃えた。   賞名のフアーナ・アスルドゥイ(1780~1862)はボリビア南部出身の女性で、ボリビア(当時は「高地ペルー」)と亜国の独立戦争を戦った英雄。   21世紀になってから、モラレス・ボリビア政権期とクリスティーナ・フェルナデス亜政権に、アスルドゥイは「ボリビア国軍元帥」、「亜陸軍将軍」に死後任命された。   24日の45周年記念日にはブエノスアイレスをはじめ、全国主要都市で一斉に記念行事が執り行われた。       日系人17人も軍政の犠牲になった。2人は遺体が確認されたが、15人は行方不明のままだ。その家族・遺族らは24日、ラ・プラタ河畔の犠牲者全員の名が刻まれた壁に参り、15人の行方捜査を当局に求めた。 ▼亜国が「リマグループ」(グリマ)を脱退  亜国外務省は3月24日、声明を発表。米国の肝煎りで2017年に結成された反マドゥーロVEN政権派米州諸国のグリマを脱退した、と明らかにした。  「VEN野党の一部勢力(グアイドー派)がVENを代表して加盟している集団にはいられない」と、理由を述べている。メキシコも事実上脱退している。トランプ前米政権がつくった「グアイドー暫定政権」という虚構は徐々に崩れつつある。

赤道国大統領選挙決選はアラウス候補が優位

   エクアドール(赤道国)の大統領選挙決選は4月11日に実施される。2月7日の第1回投票で得票上位候補2人が決選に臨む。最新の両候補支持率調査の結果が3月22日公表された。   1位進出のアンドレス・アラウス(UNES=希望連合)が58・7%、2位進出のギジェルモ・ラソ(Creo運動)が41・3% だった。   ラファエル・コレア前大統領の「弟子」であるアラウスは左翼・進歩主義路線。グアヤキル財界出身の銀行家ラソは保守・右翼の代表。左右が激突する決戦となった。      アラウスは36歳、ラソは65歳。老弱両世代の対決でもある。    アラウスが勝てば、南米の政治潮流がわずかに左傾化する。3度目の挑戦となるラソは、コロンビア政府と連携して、アラウスに対し「汚い戦い を仕掛けている。   一方、僅差で決勝進出を逃した先住民政治組織パチャクティクは、支持者に無効投票を呼び掛けている。 ▼接戦の兆候   決選まで10日となった4月1日公表された支持率調査では、両候補は50%前後で拮抗しており、接戦となる見通も出てきた。     

キューバのコロナワクチン実用化間近か

   キューバ産コロナワクチンが4月初め、実用化に近づく見通しになった。ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は3月21日、玖産ワクチン「主権02」3万回分と「アブダラ」(数量未定)が4月初めにVENに到着すると発表した。   同大統領は、「これはALBA(米州ボリバリアーナ同盟)のワクチンだ。なぜならキューバはALBAの加盟国だからだ」と指摘。ALBAとして生産し実用化してゆきたい考えを示した。   キューバのコロナワクチン生産はラ米初。コロナ禍で観光産業が95%麻痺状態にあるキューバは、外貨獲得源としてコロナワクチン生産に全力を投入している。 ▼玖ワクチン試験投与は7月に延期   Ven政府は3月25日、4月に予定していた試験投与が7月に延期されたと発表した。  

ブラジルで歴史改竄進み、クーデターを正当化

     ブラジル連邦第5地方裁(レシ―フェ市)は3月17日、「1964年の軍事クーデターは伯民主化のための一里塚だった」とする解釈を国防省が維持することを認めた。賛成4、反対1だった。   ボウソナロ極右政権下で支配層の右傾化が著しいブラジルだが、歴史修正(改竄)主義も進んでいる。軍部は2020年3月31日のクーデター記念日に国防相と陸海空3軍司令官が連名で署名し、同解釈を打ち出し、その後、同省文書に記していた。今回の法廷判断は、その是非を問うものだた。   同地方裁は判断とは別に、64年クーデターはゴラ―ル民主政権が倒した政変であり、記念日は祝うべきものではないと、式典などを開催しないよう政府、軍部、右翼などに釘を刺した。   このクーデターはジョンソン米政権の了解の下、伯軍部が決行。その後のラ米軍政下が拡がる基になった。85年まで21年間続いた軍政下で数百人が殺害され、多数の人々が拷問されたり、国外亡命を余儀なくされた。反軍政ゲリラだったヂウマ・ルセーフ元大統領も拷問の被害者だ。   「憲法と法治国家を蹂躙した軍事クーデターを公的機関を利用して正当化するのは許し型」と、ナタリア・ボナヴィデス国会下院議員らは軍部と同地方裁判断を糾弾している。   

ル―ラがワクチン問題でG20会合開催を米大統領に訴え

   ブラジルのルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領(75)は3月17日、サンパウロから米CNNTVのインタビューに応じ、ジョー・バイデン米大統領はコロナワクチン配分の公平性を保証すべきだと前置きして、米国にはコロナワクチンの余剰があり、それを必要としている国々に回してほしい、と述べた。   ルーラはまた、ワクチンの公平な配分を巡る緊急G20会合を開くよう要請してほしいと、バイデンに訴えた。理由として、現役首脳でない自分は開催を呼び掛けることができないし、ジャイール・ボウソナロ伯大統領にはその気がないようだから、と語った。   さらに、もし労働者党(PT)や友党が来年の大統領選挙の候補として私を推薦するというような状況になれば、私は拒否しないが、それはいまの優先事項ではないと強調。現在の最優先課題は、「この国を(コロナ禍から)救うことだ」と述べた。   最高裁はこのほど、従来のクリチーバ連邦裁支所でのルーラを巡る訴訟を無効と判断した。今後、首都ブラジリアでの訴訟が大統領選挙公示までになければ、ルーラは出馬可能となる。出馬した場合、ボウソナロの再選は困難になるという世論調査結果がある。   ブラジルのcovid19感染者は3月18日現在1160万人、死亡者28万人で、いずれも米国に次ぐ悪い数字だ。          

先住民の極貧化問題を国連が報告

   国連経済社会問題局は3月15日、先住民族は1日当たり2米ドル未満で暮らす極貧層になる可能性が他の人々より3倍もあるとする報告書を公表した。   現在、世界の極貧層の19%を先住民族が占めている。   先住民族は自然と共存する生き方をしており、その生き方は地球環境の後退により脆弱になっているとし、先住民族の権利と居住領土を守り、食糧支援などをする必要があると指摘している。   報告書はまた、世界の多くの地域で、先住民族の居住地、領地の所有権は尊重されていないとも記している。

ボリビア検察は極右勢力にどこまで迫れるか

   ボリビア検察庁は3月14日、前日逮捕されラパスに護送されたジャニーネ・アニェス容疑者の身柄を6か月間拘禁すべく裁判所に要請した。逃亡の恐れがあるからという。裁判所は15日、4カ月間の拘禁を認めた。   検察は13日、アニェスを「元暫定政権大統領」でなく、「元上院議員」として起訴した。クーデターにより発足したアニェス前政権を合憲政権と認めていないからだ。同容疑者はラパス市内にある女性拘置所に、また逮捕済みの元閣僚2人はサンペドロ拘置所にそれぞれ拘禁された。   アルセ政権下の検察は、アニェスおよび元閣僚、元軍部・警察高官を逮捕したり、手配したりしているが、これは彼らを断罪するためであると同時に、クーデターの起爆剤として組織的暴力事件を起こした極右ルイス・カマ―チョと父親らに迫るためだ。   息子カマ―チョは3月7日の統一地方選挙のサンタクルース州知事選に当選、次期州知事の立場にある。同州は富裕層、保守・右翼層の牙城であり、そこにアルセ政権の司法当局がどこまで迫ることができるかが中長期的な問題だ。   一方、2019年11月、軍部と国家警察に辞任を強要され、辞任してメキシコ、次いでアルゼンチンに亡命、昨年11月帰国したエボ・モラレス元大統領は13日、アニェスらを十分に取り調べ、罪を追及するよう検察に求めた。   モラレスは、クーデタ―前後の流血事件で死者36人、負傷者800人、不法捕者1500人が出たと指摘。アニェス政権はモラレス政権が13年余りの歳月をかけて築いていた経済を大きく傷つけたと糾弾した。   流血事件はとくに、アニェスが一時、治安部隊に取締まりをしないよう命じたため、死傷者が急増した。イバン・リマ司法相は、アニェスに禁錮最大30年を求刑する方針と明かにしている。   モラレスは、アニェス政権はカマ―チョ政権に等しいと指摘していた。 ▼アニェスに新たな容疑加わる   ボリビア検察は3月16日、ジャニーネ・アニェス容疑者に、国会承認なしに国際通貨基金(IMF)から2400万ドルの融資を受け国庫に打撃を与えたことや、コロナ禍covid19対策を理由に言論の自由を制限したことなど4つの容疑を加えた。   一方、クーデター実行に加担した容疑で手配されていた元陸軍司令官パストール・メンディエータ退役将軍は16日自発的に出頭、逮捕された。 ▼OEA総長追及を検討

ボリビア警察がアニェス元非合憲政権首班を送検

   ボリビア検察庁は3月12日、クーデター政権(2019年11月~20年11月)の首班だった非合憲暫定大統領ジャニーネ・アニェス、および、その元閣僚5人、軍・警察元高官4人に対する逮捕状を出した。容疑は、テロリズム、反乱、謀議。       ★アニェス容疑者は13日未明、自宅で箱の中に隠れていたところ見つかり逮捕され、警察の拘置所に入れられた後、空路ラパスに護送され、検察の尋問を受けた。アニェスは黙秘権を行使したという。検察はアニェスと逮捕済みの元閣僚2人を正式に起訴した。    彼女は昨年11月、アルセ現政権が発足した直後、ブラジルへの逃亡に失敗。出身地のベニ州都トゥニダ―に留まり、監視下に置かれていた。   軍人の容疑者は、クーデター当時、エボ・モラレス大統領に辞任を要求したウィリアムス・カリマン国軍司令官、フラビオ・アルセ国軍参謀長、セルジオ・オレジャーナ前国軍司令官、ユーリ・カルデロン国家警察長官。アルセは自首した。オレジャーナは昨年11月コロンビアに逃亡した。  元閣僚は、大統領府相、内相、国防相、司法相、エネルギー相。元エネルギー相と元司法相は既に逮捕されている。   クーデター後の虐殺事件などの責任をとくに問われている元内相アルトゥーロ・ムリージョと、元国防相フェルナンド・ロペスは昨年11月上旬、逸早く米国に逃亡した。  アルセ政権は逃亡した容疑者については、国際刑事警察機構(インターポール)を通じて国際手配する。  

コスタ・リカが「科学技術の平和利用」運動を開始

  コスタ・リカ(CR)が3月10日、軍事目的にのめり込んできた科学技術を平和利用に向けよう、という運動を開始した。  同国外務省、科学技術電気通信省、およびNGO「平和民主財団」(FUNPADEM)は共同で、この政策を遂行する。自動式兵器類をCRからなくす運動も併せて展開する。  運動は、CR社会全体に対し、技術を平和目的のために開発するよう働きかける。  ロドルフォ・ソラ―ノ外相は、科学技術の発展と平和利用は世界に膨大な利益をもたらす、と強調した。  また、同財団のカルロス・リべーラ代表は、技術の軍事利用でなく平和利用をと働きかける独自の政策を展開する国の一つにCRがなったことは、CRとラ米地域にとり画期的であり、一里塚になった、と指摘した。  CRは平和憲法の下、国軍を廃止して70年以上経つ。だが有事には軍隊を持つことができる。   

ペルー大統領選挙まで1カ月、突出候補なし

   4月11日実施のペルー大統領選挙(第1回投票)まで1カ月。9日公表された3月実施の最新の世論調査では、主要候補12人のなかで、伝統政党、人民行動党(AP)のジョニー・レスカ―ノ元国会議員(62)が支持率13%で1位になっている。レスカーノはティティカカ湖畔のプーノ出身の弁護士で、拠点はリマ首都圏。  支持率2位は、ラファエル・ロペス=アリアガ(国民刷新)、ジョージ・フォーサイス(フォルシス=国民勝利)、ケイコ・フジモリ(人民勢力)が各7%。元サッカー代表チームのゴールキーパーだったフォーサイスは 昨年、高い支持率を示していたが、下降線をたどっている。  ケイコはアルべルト・フジモリ元大統領の長女で3度目の挑戦。ロペス=アリアガは企業家。  5位は、左翼勢力が期待するベロニカ・メンドサ(40)=拡大戦線=で6%。左翼潰しの動きがあり、また新自由主義路線がフジモリ施政下の1990年代から定着していることもあって、伸び悩んでいる。  エコノミストのエルナンド・デ・ソトは79歳の高齢。5%で7位と低迷している。元大統領オヤンタ・ウマーラは1%で、振るわない。  秘大統領の任期は5年だが、現政権期の5年はPPクチンスキ、マルティン・ビスカラ、マヌエル・メリーノ、現在の暫定大統領フランシスコ・サガスティと4人が、あたかもリレーのように大統領肩章を変則的につないできた。それは汚職絡みのクチンスキの失脚に始まった。  有権者は7月28日(独立記念日)に発足する次期政権は堅実、堅固であってほしいと願っている。そこで、20年近く国会議員を務めたレスカーノへの期待が膨らんできた。  調査では、支持する候補者未定21%、棄権・無回答が16%あった。突出した候補がなく、6月6日予定の決選実施は確実。だれが上位2候補になるか、今調査では判断し難い。  ▼ジョニー・レスカ―ノが依然優勢  3月28日公表のペルー大統領選挙候補12人の支持率調査結果によれば、ジョニー・レスカ―ノが11・4%で依然優位を維持している。2~6位は次の通り。  ラファエル・ロペス=アリアガ9・7%、ベロニカ・メンドサ9・6%、エルナンド・デ・ソト8・5%、 ジョージ・フォーサイス8・2%、ケイコ・フジモリ7・9%。

ボリビア統一地方選挙はほぼ現状維持か

   ボリビアで3月7日、統一地方選挙が実施された。昨年11月発足した社会主義運動(MAS)党のルイス・アルセ政権は、最初の選挙の洗礼を受けた。    選出されるのは、9州知事、州会議員計568人、336市長、市会議員計4016人、このほか地方行政職約900人。有権者は710万人。   政権党MASは前回選挙以来、オル―ロ、ポトシー、コチャバンバ、チュキサカ、ベニー、パンドの6州知事を握っている。野党はほぼ右翼だが、ラパス、サンタクルース、タリーハの3州知事をもつ。アルセ大統領としては政治首都のあるラパス州知事を奪回したいところだ。   市長はMASが現在9割方を握っているが、ラパス、エル・アルト、コチャバンバ、サンタクルースの4大都市は野党に奪われている。MASは、この4都市の幾つかで勝利を狙う。   この選挙には問題がある。2019年11月のクーデターの首謀者の一人で極右のルイス・カマ―チョは、地元サンタクルース州の州知事を目指している。カマ―チョを断罪できないところに、現政権の弱さがある。   選挙戦でMASを応援したエボ・モラレス元大統領は7日夜、出口調査の結果を踏まえて、市長選で圧勝したと述べた。   一昨年の政変は、国軍と警察が極右になびいた結果だった。アルセ政権は、軍と警察の指導部をほぼ全取っ換えしたが、これら2つの武装機関に対し、権力をまだ十分には確立していないのだ。   ベニー州でも、非合憲のクーデター政権にお手盛りで就いた極右ジャニーネ・アニェスが知事選に出馬している。検察は彼女を起訴しているが、選管は出馬を認めてきた。   正常化のための出直し大統領選挙で惨敗した衝撃から、まだ立ち直ってはおらず、今回「皆でMASに反対しよう」という連携運動を展開しているが、盛り上がっていない。大統領選挙の敗北は、1年間のクーデタ―政権が否定されたことを意味し、意気が上がらないのだ。   このためカマ―チョ、アニェスのように地元州に籠って, 地元単位でMASに対抗するという戦術に転じている。   クーデターで辞任を強制され、国民の流血を避けるため辞任したエボ・モラレス元大統領は、エル・アルト市などでMASの選挙戦を応援してきた。 ▼MASがラパス州知事奪回   知事選結果は3月8日、判明した。政権党MASはラパス、オル―ロ、ポトシー、コチャバンバ、パンドの5州、

次期チリ大統領選で左翼・中道左翼優位の展望

     チリの次期大統領選挙は11月21日実施される。まだ8カ月余り先のことだが、立候補を予定している政党連合や個人は選挙戦をすでに展開している。   最新の世論調査では、共産党(PCCH)を柱とする左翼政党連合「アプルエボ・ディグニダー」(私は尊厳を良しとする)のダニエル・ハドゥエ(共産党)が支持率17・9%で一番手になっている。   この連合の正式名称は、「チレ・ディグーノ・イ・フレンテ・アンプリオ」(尊厳あるチリと拡大戦線=FA=)。   ハドゥエはサンティアゴ首都圏のレコレタ市長。出馬は、8月ごろに見込まれている政党連合や政党の予備選挙で決まる。   2番手は、右翼政党連合「チレ・バモス」(チリよ行こう)の中核を担う極右・独立民主同盟(UDI)のホアキン・ラビーン首都圏コンデ市長で、8・4%。   次は、連合を組んでいない人本主義党(PH=パルティード・ウマ二スタ)のパメラ・ヒレス下院議員で、6・1%。進歩主義路線だ。 PHは以前、拡大戦線(FA)に加盟していた。   続いて、5・7%のエベリン・マテイ首都圏プロビデンシア市長。UDI所属。5位はセバスティアン・シチェル元社会開発相で5・4%。「チレ・バモス」に個人参加している。   6番手は、政党連合外の共和党(PLR)のホセ=アントニオ・カスト元下院議員で、4・4%。その後は、中道・中道左翼政党連合「ウニダー・コンスティトゥエンテ」(憲法制定連合)に加盟する社会党のパウラ・ナルバエスで、4・4%。バチェレ―前政権で官房長官だった。   チリでは4月11日、新憲法を起草する制憲会議(起草会議)の代議員155人を選ぶ選挙が実施される。議長を除く154人は男女半々ずつと決まっている。   昨年の国民投票で軍政憲法に替わる民主憲法の制定方針と、起草会議開設が決定したが、同投票は左翼・中道左翼・中道勢力の圧勝だった。起草会議選挙でも同勢力が勝つことが予想され、そうなれば大統領選挙への趨勢がおおよそ決まる。   2期目のピニェーラ現保守・右翼政権の不人気と新憲法制定機運の高まりで、大統領選挙は、左翼連合と中道・中道左翼連合が有利になると予測されている。   その場合、両連合が以前のように大連合を組むことが出来れば、勝利は保証されるだろう。だが左翼、中道、保守右翼の三勢力に割れて三つ巴になると、1970年9月の大統領

米政府が対VEN締め付け政令を1年間延長

    バイデン米政権は3月3日、「ベネズエラは米国の安全保障上の並外れた脅威」として「非常事態」を発動した2015年3月8日の政令13692を2日付で1年間延長したと発表した。  ジョー・バイデン大統領は15年当時は、バラク・オバマ大統領の副大統領で、対VEN締め付け政策に関与していた。オバマは当時、対玖国交正常化を打ち出し済みで、その年半ば対玖国交を再開させたが、米国内の 反対世論を抑える意味も込めて対VEN非常事態を発動した。  トランプ前政権は、オバマ政令に沿って対VEN制裁を激化させ、VEN経済を危機的状況に追い込んだ。さらにフアン・グアイドー前VEN国会議長を傀儡(大統領代行)として擁立、マドゥーロ政権打倒を図った。だがクーデターの陰謀も武装上陸作戦もことごとく失敗した。  今回の政令延長により、バイデン政権の対VEN政策は「グアイドー傀儡支援・マドゥーロ打倒戦略維持」路線の継続であることが明確になった。  バイデンは、来年の「中間選挙」を気にしている。昨年の大統領選挙でバイデンはトランプが7400万票もとったのを脅威に感じており、保守・右翼層、とりわけバイデンが勝ったフロリダ州に多いラ米系有権者の投票動向に神経を使っている。  「トランプの生きた亡霊」にバイデンのラ米政策は縛られているのだ。  バイデン政権は、この政令に基づき、「平時の戦争」である「制裁とい う経済戦争」をVENに仕掛けつづけることが可能になった。  トランプ政権期の主な狙いは、原油などVENの豊かな地下資源にあったが、バイデンは「人権・民主」をことさら強調している。 ▼VENが跳ね付ける  ホルヘ・アレアサVEN外相は3月3日、米政令延長に対し「断固跳ね付ける」とする声明を発表した。      

エル・サルバドー大統領が投票日に選挙違反

   エル・サルバドールで2月28日、国会議員84人、262市の市会議員、中米議会議員20人を選ぶ大型選挙が実施された。ところが政権党「新思考」を率いるナジブ・ブケレ大統領が同日、投票が続いていた時間帯に事もあろうに、記者会見を実施してしまった。   選挙最高審議会(TSE、中央選管)は、大統領が「選挙前3日間および選挙当日の選挙運動を禁止する」という選挙法175条に違反したとして、28日、追及手続きに入った。   ブケレは極右で、国会本会議場に重武装に陸軍部隊を配置して審議を進めるなど、強権発動をして憚らず、内外から「反民主性」が批判されてきた。   当のブケレは3月1日、政権党が勝利したとSNSで発信した。2019年5月まで2期10年に亘って政権党だったFmln(ファラブンド・マルティ民族解放戦線)は1日、国会議員選での敗北を認め、立て直しのため党内を改革すると発表した。   国会議員選挙の投票率は51%だった。 ▼政権党が圧勝   国会議員選挙は「新思考」党が、定数84議席のうち、3分の2の56議席を確保。右翼ARENAは37から14へと議席が激減。左翼FMLNも23から4へと惨敗。第2保守党GANA(国民団結大連盟)も10から5に半減。   残る5議席は、国民協和党(PCN)2,キリスト教民主党(PDC)1,行こう(バモス)1,我らの時代(NT)1。   1992年の内戦終結以来、長らく続いていたFMLNとARENA(共和国民同盟)の2大政党を中心とする国会支配は終焉を迎えた。両伝統政党は内戦を戦った左右両派を代表する。   有権者は内戦後世代が増え、ブケレのような若くて荒っぽいが「強い指導者」を支持する層が膨らんでいる。それが今選挙で明確になった。 だがブケレに独裁を志向する傾向があると指摘する向きもある。