アルセ・ボリビア大統領がメキシコを訪問

   ボリビアのルイス・アルセ大統領は3月23~25日、メキシコを公式訪問した。アルセはエボ・モラレス(元)大統領の下で13年あまり経済相を務め、ボリビア経済の浮揚に功績があった。だが2019年11月のクーデタ―に遭い、モラレスらとメキシコに亡命した。そのメキシコをアルセは昨年11月の大統領就任後、最初の訪問国に選んだ。

  23日夜、メキシコ市に着いたアルセは24日、国家宮殿(大統領政庁)でAMLO大統領と会談し、共同記者会見に臨んだ。アルセは内外記者団に対し、19年のクーデタ―の背後には米電気自動車製造大手テスラ社によるボリビア・リチウム資源奪取の陰謀があった、と強調した。

  アルセは、19年10月の大統領選挙で落選した保守候補と組んでいた副大統領候補が、テスラ社が進出してくると語っていたことや、クーデター後、同社総帥イーロン・マスクが「必要ならば、どこであろうとクーデターを起こす」と発言したことに触れ、クーデター前夜期の暴動はリチウム資源が眠るウユニ塩湖のあるポトシー州で逸早く起きた、と指摘した。

  ボリビアは19年10月時点でドイツ企業とリチウムの合弁開発で合意しており、調印間近だったが、クーデター前の暴動が起きたことから、調印を見合わせた。アルセは、そう明らかにし、民主復活後の今、独社との話し合いは再開され、他の国々の企業とも交渉したいと述べた。

  首脳会談で合意された22項目が共同声明に盛り込まれたが、その一つは、米州諸国機構(OEA)に「民主政治尊重と内政不干渉」を求めている。米国務省べったりのルイス・アルマグロOEA総長(元ウルグアイ外相)は、ボリビアクーデターを起こす起爆剤の役割を果たした。

  アルマグはSNS取次大手と組んで偽りの情報を拡散させた、との暴露情報も流れている。アルマグロは今また、アルセ政権に対し、クーデター政権首班だったジャニーネ・アニェス容疑者の釈放を求めている。

  両首脳はまた、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の活性化で一致した。セラックは2011年12月、当時のウーゴ・チャベスVEN大統領の尽力で発足。北米の米加両国を除くメキシコ、カリブ、中米、南米にまたがる計33国が加盟している。

  だが13年のチャベス死去、15年以降のラ米右傾化でセラックの活動は停滞した。しかしアルマグロ総長下のOEAの横暴が目立ち、ラ米進歩主義・左翼諸国からセラック活性化を求める声が高まりつつある。

  AMLOとアルセはまた、コロナ疫病covid19対策、麻薬問題、移民対策などについても話し合った。

  アルセは24日にはメキシコ上院本会議場で演説。モラレス元大統領や自身を亡命させ、ボリビア民主復活に寄与したメキシコにあらためて謝意を表明した。

  今回のアルセ訪墨は、両国国交樹立190周年に因んでいる。メキシコ側にとっては、独立200周年記念外交行事の一環で、2月にはアルべルト・フェルナンデス亜国大統領を迎えている。

  アルセとAMLOは25日、メキシコ湾岸のカンぺチェ州に飛び、1517年にスペイン侵入軍を迎え撃った先住民族の勲しを記念する「チャカーン・プトゥム戦勝記念日」の行事に出席。アルセは同州から帰途に就いた。 

▼アニェス容疑者の控訴を却下

  ラパス刑事法廷は3月26日、2019年11月のクーデターで発足した旧暫定政権首班ジャニーネ・アニェス容疑者の「不当逮捕」という訴えを却下した。


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