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VEN大統領が「反経済封鎖法」案を制憲議会に提出

  ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は9月29日、「反経済封鎖法」案を制憲議会(ANC)のディオスダード・カベ―ジョ議長に提出した。大統領は、「米国による経済・金融・貿易封鎖に制度的かつ法的に対処するための立法」と説明した。同様の法律はキューバにあり、VENが玖法を参考にしているのは間違いない。 【★法案は10月8日、ANC全会一致で可決された。大統領は経済政策実施上、強大な権限を得た。新法の正式名称は「国家開発とVEN国民の権利保障のための反経済封鎖法」。】       法の目的は:①国民を守り、封鎖の影響を和らげ、封鎖によって被った損害(年間約300億米ドル)を補償し、人権を保障する、②資源を国内に行き渡らせ、生産的経済を促進し、国の資産と資源を守り、MCU(一方的強圧措置=制裁)とそれに付随するさまざまな脅威に対し経済を防備する、③ VEN国民・国家・祖国の主権と自由な自決を、それを蹂躙し破壊しようとする意図から守るー。   法は;①対VEN経済封鎖とMCUが続く限り存続する、②封鎖とMCUの及ぼす影響と衝撃を防ぎ和らげ減らす法的手段を国に付与する、③他国・他国集団・公私国際組織が及ぼすMCU・抑圧・脅威がVEN国民への人道犯罪になるのを阻止する、④全公的機関はこの法の下に置かれ法を適用し、また公私個人・法人も同じ立場に置かれるー       ★法案の最重要点の一つは、国営石油会社PDVSA(ペデべサ)が内外の民間企業と設立した合弁企業の所有権の変更。この合弁ではPDVSAが最大株主になっているが、それが変更され経営権が民間に移る可能性がある。米国による経済封鎖に対し、合弁企業の体質を強化するのが狙いらしい。   総じて新法は、内外の民間投資を引き付け、経済生産の活性化を図るのが狙い。   マドゥーロによれば、VENは2014~19年の6年間に外貨収入の99%を失った。すなわち560億ドルから4億ドルに激減した。15年の石油収入は300億ドルも減った。原油生産は66%も減り、19年の生産は14年の3分の1に落ちた。    VENは外貨準備高の急減で、対外債務を金塊で返済せざるを得なくなっているが、それも滞る傾向にある。最大の原因は経済政策の失敗および制度的腐敗にあるが、これに次のが米国による経済封鎖だ。トランプ政権はVENの石油資産を接収したり、石油貿

メキシコの学生43人失踪事件、6年経て解決に前進

   メキシコ南部ゲレロ州内で農村教師養成学校生43人が拉致され行方不明になった事件から6年が過ぎた。事件は依然未解決のままだが、アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO)大統領は事件6周年の9月26日、事件捜査について「特別報告」を発表、軍・警察要員ら数十人の逮捕状を執行すると明らかにした。   事件はようやく、かつ、ついに、解決に向けて動き出した。事件の専任検事は、連邦警察、ゲレロ州警察、イグアラ市警察、陸軍、連邦検察庁などの要員70人の逮捕状が用意され、うち容疑者34人に執行済みと明らかにした。   同校はゲレロ州都チルパンシンゴ郊外のアヨツィナパにあり、事件は「アヨツィナパ事件」として知られている。   事件は2014年9月26日夜から27日未明にかけて起きた。事件に遭った43人を含む学生たちは、10月2日の「トラテロルコ虐殺事件」46周年記念集会に参加するため首都メキシコ市へ向かおうと州都でバスを数台乗っ取り、同州北部のイグアラ市に26日夜到着。その時点で地元の市警、州警、同市駐屯陸軍大隊に目を付けられていた。   バスを降りた学生、通りかかった市民ら6人が銃撃されてた。5人は死亡、負傷した学生1人は連れ去られ、拷問され顔の表面を剥がされた惨殺死体で見つかった。バスを降り逃げるのに成功した学生もいたが、43人は連行され行方不明になった。   事件はその後、乗っ取られたバスのうちの1台、43人が乗っていたバス に、 麻薬マフィアが米国に密輸する麻薬を積んでいたことがわかった。マフィアはひごろ買収している州と市の当局に緊急対応を求めた。当局は、やはり買収されている陸軍大隊に通報した。   その結果、事件が起きた。当時のエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領(任期2012~18年)は腐敗にまみれた政治家だった。就任2年目に起きた大事件に動揺した。国軍最高司令官である大統領の指揮下にある陸軍の大隊が関与していたため、しかも麻薬を対米密輸するマフィアが絡んでいたため、窮地に陥ったのだ。   ここまでは、EPN政権終焉時の2018年11月時点で大方わかっていた。   学生の家族、友人、教師、人権団体、知識人らは政府に真相究明を求めて運動を展開。とくに毎年9月26日には首都メキシコ市目抜き、遊歩道のついたㇾフォルマ大通りを行進し、連邦検察庁前で抗議集会を開

フォルクスワーゲン社がブラジル人道犯罪加担で賠償へ

   ブラジルで事業を長年展開してきた独社フォルクスワーゲン(VW)ブラジル法人は、伯軍事独裁政権期(1964~85)に同社が軍政の人権抑圧に加担したことを認め、賠償の意味を込めて、被害者への賠償や、人権抑圧の実態調査促進に資金を提供することになった。   9月25日明らかにされたところによれば、同伯法人はサンパウロ州検察庁と以下で合意した。   1680万レアル(約250万米ドル)を、伯VW社労働者協会に支払う。軍政期に迫害された労働者の生存者や遺族に渡される。   このほか3600万レアル(約700万ドル)が、同社労働者が被った人権被害の実態解明に充てられる。うち1050万レアル(200万ドル弱)は、軍政期の人権抑圧の記憶と真実究明事業に回される。   真実究明事業は、ヂウマ・ルセーフ政権期に専門委員会が設置され、かなり解明された。だが人道犯罪の責任者は罰せられないままだ。しかい同委員会の調査で伯VW社の人権犯罪関与が明るみに出た。   また同3600万レアルのうちから450万レアル(約90万ドル)は、国立サンパウロ大学にに提供される。この資金は、軍政が処刑し大穴に投棄した遺体の身元調査および、軍政期の人権弾圧に他の諸企業が協力した実態の解明に使われる。   同資金の残り2100万レアル(約400万ドル)は、軍政期に蹂躙された人権の「復権」のための活動資金に組み入れられる。   伯法人を含むVW社と伯当局とのこの合意は、伯軍政期の人道犯罪と趣が異なるが日韓間の「元徴用工訴訟問題」の解決にヒントを与える可能性があると言えるかもしれない。   

トランプが「再選後ベネズエラで何かが起きる」と発言

   ドナルド・トランプ米大統領は9月25日、マイアミ郊外でのラ米系有権者との集票会合で、「私が再選されたらベネズエラで興味深いことが起きるから、注意してほしい」と述べた。これは有権者の歓心を買うためばかりでなく、マドゥーロVEN政権を威嚇する狙いをもつ。   ニコラース・マドゥーロ大統領は米大統領選挙直前の10月に米軍関与の軍事侵攻がありうると厳戒態勢を維持しており、トランプの「再選後に何かが起きる」との発言を陽動作戦でもありうると見ている。   トランプ政権は23日には、米国人がキューバで政府系宿泊施設を利用することを禁止。併せてラム酒など玖産アルコール飲料とアバーノ(玖産葉巻)の輸入を禁止した。これらの経済封鎖強化策も、玖系有権者の歓心を買う集票戦術だ。   マドゥーロは25日、国軍作戦戦略部隊(CEOFANB)設立15周年式典で、「主権防衛のため」として、武器兵器類を国産化する政策を打ち出した。同部隊は特殊部隊で、今年5月、米国人ら傭兵部隊がVENに上陸侵攻した際、逸早く出動し傭兵らを制圧した。   兵器国産化のため、「軍事科学・工業・技術理事会」が設立される。   大統領はまた、ロシア、中国、キューバ、イランなど友邦や同盟国との協力態勢を強化してゆくと語った。   一方、トランプに関する暴露本を6月に出したジョン・ボルトン元大統領補佐官は24日ラジオインタビューで、「トランプは(自分が支援している)VENの反政府勢力が何をしようとしているのかを理解せず、ひたすら自身への批判書が刊行されないことに関心を抱いていた」と述べた。これは小さいが、新たな暴露だ。   VENでは12月6日に国会議員選挙が予定されているが、欧州連合(EU)はVENに外交使節団を派遣し、同選挙が公明正大に実施されるかどうか、EU選挙監視団を派遣すべきか否かについて調査している。   この時期に合わせスペイン政府は、保守派前政権から任命された駐VEN大使を、サンチェス現政権任命の駐玖現大使と交代させることを決めた。保守派駐VEN大使は、自宅軟禁されていた極右政治家レオポルド・ロペス(LL)を昨年5月初めから大使公邸で匿ってきた。   ロペスは暴力的政変を肯定する極右政党「人民意志」(VP)の最高指導者で、フアン・グアイドー国会議長が政治の師と仰ぐ党内上司。   LLは2004年のチャベス打

キューバが欧亜経済連合のオブザーバー国に

   キューバは9月24日、ユーラシア大陸にまたがる欧亜経済連合(EAEU、西語でUEEA)のオブザーバー国資格を獲得した。同連合は2015年に発足。ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニアの5カ国が加盟している。   東西冷戦期の1972年、キューバはソ連圏の経済連合機構「経済相互援助会議」(コメコン)に加盟、社会主義経済の制度的建設を始めたが、コメコンは89年のベルリンの壁崩壊後、事実上消滅。その後、21世紀に入ってからロシアとの2国間協定を中心に旧ソ連東欧諸国との経済関係を続けてきた。  UAEUへのオブザーバー参加は、旧ソ連圏との広域経済関係を確立する契機になる。モルドバもオブザーバー国。  これまで数次に亘る露中首脳会談で、EAEUと中国の「一帯一路」政策の連携、EAEUと上海協力機構の連携が実現に向けて話し合われてきた。  経済力が極めて弱いキューバは長期的には、露中両国に支えられながらユーラシア構想に参加してゆくことになる。  キューバは地元ラ米では、新自由主義経路線に異議を唱える経済政治外交協力機関「米州ボリバリアーナ同盟」(ALBA)に加盟している。  また欧州連合(EU)がコトヌー協定を結ぶ対象国である旧植民地諸国・地域であるACP(アフリカ・カリブ海・太平洋諸国)にも加盟しているが、同協定は結んでいない。    

キューバ大統領が国連民主化を訴え、米政権を糾弾

   ミゲル・ディアスカネル玖大統領は9月22日、国連総会首脳演説会合に向けハバナから遠隔演説し、「国連憲章違反が恒常的に続いているため、かつ諸国民の要求に応えるため」として、国連の民主化を訴えた。  同時にトランプ米政権を、「顕著に攻撃的かつ腐敗しており、国連機関を財政面で脅している」と糾弾。一方で、世界の軍事費の38%は米国だと指摘した。  大統領は、トランプ政権を「米国に従わない国々を威圧し、一方的制裁を科している」と非難。「(気に食わない国の政権を)非通常戦争的手段を用いて打倒するのを支援している」と告発した。  また、トランプ政権は世界保健機関(WHO)、ユネスコ、人権理事会など国連機関から脱退するという「かつてなかったような勢いで」動いていると指摘した。  コロナ疫病COVID19については、「資本主義の生産・消費システムおよび、市場独裁を押し付けた非人間的政策の失敗によってもたらされた」と、新自由主義経済路線を批判。人間第一主義の総合的政策の策定・実施が急がれる、と訴えた。  ディアスカネルは、玖ヘンリー・リーブ国際医療派遣団49団の医師ら計3700人が現在49カ国でコロナ禍に対応していると紹介。玖の医療派遣協力事業を米国が妨害していると非難した。この事業は玖国庫にとり重要な外貨収入源。  対米関係については、「米政府が反玖声明を出さない週は一週もない」と前置き。「なのに在米・玖大使館銃撃事件をテロリズムと非難しないのはどういうことか」と、米政府を非難した。  この事件は今年4月30日発生、米国人の男一人が自動小銃でワシントンの玖大使館正面に向け30発乱射した。逮捕された男は「殺傷する狙いもあった」と自白している。  玖大統領は、米国は対玖経済封鎖を強化する一方だと指摘しつつ、「玖国民は革命とともにあり、抵抗し勝利する術を心得ている」と強調した。 ▼VEN大統領が演説  ニコラース・マドゥーロVEN大統領は9月23日、国連総会首脳遠隔演説で、12月6日の国会議員選挙を「透明性ある選挙にする」と強調、国連や欧州連合(EU)に監視団派遣を要請した。また、米国による対玖経済封鎖など敵対行為を厳しく批判した。  一方、米国に<暫定大統領>に擁立され、世界190余カ国中50数か国からだけ「承認」ないし「支持」されているフアン・グアイドーVEN国会議長

ベネズエラ大統領が「反覇権・多極世界構築」訴える

   ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は9月21日、国連創設75周年記念首脳演説に先立ちカラカスから世界に向けてビデオメッセージを送り、国際社会は各国民の自決促進のため活動すべきだと訴えた。この発言は、マドゥーロ政権打倒を狙うトランプ米政権と、それに同調する諸国を牽制したもの。   また、「諸国民の制度が尊重される均衡のとれた多極世界を創るか、それとも過去の遺物である覇権主義に支配された世界にするかだ」と前置きし、「帝国も覇権主義もない新しい世界を創ろう。21世紀は諸国人民のためにある」と強調した。   さらに、「我々人類は生命や経済生活を脅かす疫病に苛まれている。今こそ人類の大連帯が必要だ」と指摘した。   大統領は、12月6日実施予定の国会議員選挙に触れ、「国連事務総長に対し、世界に開かれた選挙過程に参加する技術使節団を派遣するよう要請している」と明らかにした。   [マドゥーロは24日、アントニオ・グテレス国連事務総長と遠隔会談し、選挙監視団などの派遣を直接要請した。 ▼コロンビア人武装集団と戦闘   VEN軍部が明らかにしたところでは、9月19日、コロンビア国境沿いのアプレ州パエス市内で、コロンビア人非正規部隊とVEN軍が戦闘。COL人14人とVEN軍4人が死亡、軍側数人が負傷した。   負傷者と遺体は、タチラ州都サンクリスト―バル市に搬送された。非正規部隊が装備していた自動小銃、弾薬などが押収された。COL人の遺体はCOL人側が引き取った。   VENはチャベス前政権期から、FARCおよびELN(民族解放軍)の「聖域」になっていると見られてきた。今回のVEN軍の戦闘相手がFARC残党などCOLゲリラなのか、VEN不安定化のため送り込まれた極右準軍部隊なのかは明らかにされていない。    一方米政府は21日、ELN幹部ウィルメル・ビジェガス逮捕に繋がる情報の提供者に賞金500万ドルを与えると発表した。 ▼VENが対テロリズム戦略   政権党PSUV(VEN統一社会党)のディオスダード・カベ―ジョ第一副議長(制憲議会議長)は9月22日、米国とコロンビアが関与する対VENテロリズムが激化する気配があるとして「大統領特別部隊」を創設、12月6日の国会議員選挙にかけ全土で厳戒態勢をとると明らかにした。   カベ―ジョは、テロ対象としてPSUVなど政府系政治組

キューバのヘンリー・リーブ医療団が創立15周年

   社会主義キューバが誇る「ヘンリー・リーブ国際災害疫病専門医療団」が9月19日、創立15周年を迎えた。2005年8月下旬、ルイジアナ州をはじめ米南部メキシコ湾岸を見舞い膨大な被害をもたらした大型ハリケーン「カトゥリーナ」の襲来を機に、故フィデル・カストロ玖国家評議会議長が発足させた。   ヘンリー・リーブ(英語ではリーヴ)は1860~70年代の対スペイン第1次玖独立戦争に独立軍側で参戦した米青年の名。リーブは1850年NYブルックリンに生まれ、69年訪玖し玖軍に参加。重傷を負いながら戦功を挙げ、73年准将になるが、76年戦場で武器弾薬が尽き自害、26歳の生涯を終えた。   カストロは「国際協力主義者の走り」とリーブを讃え、新設した医療団にその名をかぶせ、ブッシュ米政権に、最大被災地ニューオーリンズへの派遣を申し出た。だが断られた。    キューバの対外医療協力は、玖革命直後、対仏独立戦争を闘っていたアルジェリア独立軍に医療チームを派遣したのが最初。1979年にハバナで非同盟諸国首脳会議が開かれ、議長に収まったカストロは、非同盟28カ国と医療協力協定を結んだ。   以後、世界各地に医療団を派遣していたが、それをHR(ヘンリー・リーブ)医療団として制度化した。旅費、滞在費、医薬品など派遣費用は派遣先が負担するが、玖側が一部ないし全額を負担する場合もある。   HR医療団は05年10月大洪水に見舞われたグアテマラに初出動、医療要員700人を送り込み、1300人の命を救った。   次いで同月激震の起きたパキスタンに延べ2000人の要員を長期間送り込んだ。この地震では死者7万人、負傷者10万人、家屋喪失者300万人が出た。玖医療団は負傷者160万人を手当、手術を計1万4000回施した。ほかに一般患者16万6000人を診察、2000人の命を救った。   2010年のハイチ大地震では、WHO(世界保健機関)は創立70周年を機に、HR医療団に「DRリ―ジョイク賞」を贈って表彰した。   今年3月以降のコロナ禍COVID19との闘いでは、HR医療団52チームを編成、39カ国に派遣し、感染者計55万人を手当て、1万2500人の命を救った。延べ3800人の玖医療技術者が参加、その61%は女性。   現在もHR医療団43チームが33カ国でコロナ禍に対応している。世界の多くの国は、今年の

国連人権理事会がVEN報告公表、VEN政府が反撃

    ジュネーブの国連人権理事会の調査団は9月16日、ベネズエラ人権状況報告書を公表した。調査団はVENを訪れ現地調査を計画していたが、VEN政府の許可が得られなかった。このため、逮捕された32人が受けた監禁状態、拷問、強姦などをはじめ約100人の当該被害者から遠隔聴取してまとめた。   調査対象のVEN国家機関として、国家警備隊(GNB)を含む国軍(FANB)、国軍防諜局(DGCIM)、国家軍法起訴者収容所(CENAPROMIL)、国家諜報局(SEBIN)、国家警察(PNB) 、警察特殊部隊(FAES)、科学刑事犯罪捜査隊(CICPC)などが出てくる。   カラカス市内にあるSEBIN本部地下5階にある尋問室(通称「墓場」)での拷問の様子が細かく記されている。「法律外処刑」で殺された容疑者らの遺体を葬る大きな穴についての記述もある。   米国や、ブラジルなど米国寄り諸国は、この報告をマドゥーロVEN政権攻撃に早速用いている。   一方、ホルヘ・アレアサVEN外相は16日、報告を「対米従属諸国に支配されている幻の反VEN調査団による虚偽に満ちた報告だ。遠隔作成され、調査の方法論も欠けている」と反撃した。   同外相は、「極悪の人権記録を持つ諸国がイデオロギー目的で書いた、政治化され異端尋問的ないかなる機関もVENは認めない」とも述べた。   アレアサはさらに、「国連高等弁務官事務所のミチェル・バチェレ―弁務官(前チリ大統領)とVENの関係を阻碍しようとしている」と報告を非難した。 ▼5カ国に選挙監視団派遣を要請   VEN国家選挙理事会(CNE)は9月16日、イラン、ロシア、中国、キューバ、南アフリカの5か国に12月6日実施予定の国会議員選挙に監視団を派遣するよう要請した。   欧州連合(EU)にも要請しているが、EUは「準備時間が足りない」と難色を示している。           

菅政権最初の対外援助はキューバ向け医療器具

   日玖両国は9月16日ハバナの日本大使館で、日本がCOVID19用医療器具をキューバに贈る覚書に調印した。無償協力で、500億円(470万ドル)の援助となる。    この調印は日本時間16日夜の菅政権発足後のことで、在京キューバ大使館は、菅新政権最初の日本の対外援助となったと喜んでいる。   玖国営通信プレンサ・ラティーナは東京通信員発で、菅政権発足を詳しく伝えている。   キューバでは16日現在、コロナ疫病感染者は4876人、109人が死亡している。 ▼玖大統領が祝電   ミゲル・ディアスカネル大統領は10月1日、菅義偉首相に就任の祝電を送った。首相は礼電を返した。両首脳ともに、「両国間の長い友好関係」を讃えている。

メキシコ大統領が過去5人の大統領断罪を要請

  メキシコのAMLO大統領が、過去5人の大統領を腐敗、公共資産私物化などの罪で裁くため動き出した。同大統領は9月15日、断罪の是非を有権者に問う「国民への諮問」(コンスルタ・ポプラル)を実施するよう国会上院に要請した。  大統領は、国民投票に似た同諮問投票を、来年6月6日の下院議員、州知事らの選挙日に実施するよう提案している。  過去5人の大統領は、カルロス・サリーナス(制度的革命党=PRI)、エルネスト・セディージョ(PRI)、ビセンテ・フォックス(国民行動党=PAN)、フェリーペ・カルデロン(PAN)、エンリケ・ペニャ=ニエト(PRI)。いずれも新自由主義経済政策を推進、富の少数者への集中と大多数の貧困を招いた。  サリーナスの前の大統領で、新自由主義に着手したミゲル・デラマドリー(PRI)は死去している。その前のルイス・エチェベリ―ア(PRI)までは、民族主義的な開発独裁路線が主流だった。  AMLOの要請は16日、上院から最高裁に送られた。最高裁が要請を合憲と判断すれば、上下両院が審理。可決されれば、中央選管が投票実施を図る。  前任者5人を腐敗罪で一挙に裁くというAMLOの前代未聞の決意からは、「新生メキシコ建設には悪しき過去との決別が不可欠」という大統領の信念が窺える。 ▼最高裁が認める  墨最高裁は10月1日、AMLO大統領の上記要請を、判事11人中6人が賛成して可決した。反対した判事たちは「違憲」と主張した。

米公開文書:「ニクソンがチリクーデター決行を命じた」

   50年前の1970年9月15日、リチャード・ニクソン米大統領はホワイトハウスでリチャード・ヘルムズCIA長官に、次期チリ大統領の座に近づいていたサルバドール・アジェンデ社会党首の大統領就任を阻止するよう命じた。  米国家安全保障文書館は9月15日、暗号化されていたヘルムズの極秘メモ「究極の選択肢」を公開した。それによれば、ニクソンは20分間の会談で、チリでのゴルぺ・デ・エスタード(クーデター)決行を命じた。  CIAは70年8月半ば、当時のエドゥアルド・フレイ大統領にゴルぺを主導させる案と、米国がゴルぺを主導する「混沌方式」を策定、これをニクソンに提示した。フレイ案は、在チリ米大使館とCIAがフレイを当てにすることはできないと判断していたため、却下された。  ゴルぺ決行案は、チリ軍部に決起の口実を与えるためチリで攪乱工作を展開するというもの。命令されたヘルムズは、「リスクは問題ではない。時間いっぱいかけて最良の人材をもってけ対処する。チリ経済が危うくなると騒がせよう」とメモした。  だが「混沌方式」には国務省、在智大使館、CIAの少なからぬ要員が異議を唱えた。国務省ラ米局は、「現実的でない。米国益を上回る失敗を犯す可能性があり、外交的に危険だ。ゴルぺはチリ、西半球(ラ米)、世界との関係上、極めて高い代償を招く」と反対した。  国家安全保障担当のヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官の部下たちも、同補佐官に対し押し黙っていたという。ヴァイロン・ヴァッキーという側近は、「米国の原則に違反する」と抗議した。  またエドゥワード・コリー駐智大使は、「ゴルぺが失敗し、<第2の豚湾事件>になってはならない」と強い懸念を表明した。「豚湾事件」とは、1961年4月、米傭兵部隊がキューバ・カリブ海岸のコチーノス(豚)湾ヒロン浜(プラヤ・ヒロン)一帯に侵攻し、玖革命軍に制圧された出来事を指す。玖政府は「ヒロン浜侵攻事件」と呼んでいる。  文書館員は、「このヘルムズメモは、米大統領が選挙で選ばれた他国の指導者を倒すよう命じた事実を示す唯一の文書だ」と指摘する。  CIAはチリの極右軍人を使って、レネ・シュナイデル陸軍司令官を暗殺、チリを大混乱に陥れた。70年10月のチリ国会での大統領決選投票の直前だった。  だが、アジェンデは決戦で、米国が望んでいた保守・右翼候補を破り当

米軍が国務長官のVEN周辺諸国歴訪に合わせ軍事演習へ

   米国務省は9月15日、マイク・ポンぺオ国務長官が17~20日、スリナム、ガイアナ、ブラジル、コロンビアを歴訪すると発表した。またコロンビア政府は15日、スクレ州コベーニャス沖のカリブ海で18~21日、同国軍と米南方軍が合同で軍事演習「ポセイドン」を実施すると発表した。   ベネズエラのマドゥーロ政権は、ポンペオ歴訪の狙いを「VEN包囲網」構築と捉え、警戒している。とくに軍事演習は「軍事攻撃」に転じることがあり、VEN軍は厳戒態勢を維持している。   スリナム(旧蘭領ギアナ)は今年、VENに近かったボーターセ政権が終わり、米国は新政権へのテコ入れをする。西隣のガイアナ(旧英領ギアナ)も政権が交代。ポンぺオはアファーン・アリ大統領と、対VEN宣伝用に米国営放送VOA(米国の声)のラジオ・テレビ局を設置する懸案について話し合う。   ガイアナは西隣のVENと長年、エセキーボ地域の領有権問題を抱える。米石油会社は同地域沖の海域で油田開発中。VENは激しく抗議しており、デイヴィド・ブレンジャー前大統領は対VEN関係が一層こじれるのを避けるのため、VOA局設置を拒否していた。   ポンぺオはVENの南の隣国ブラジルでは、国境地帯の中心地ボアヴィスタを訪問する。次いで、VEN西隣コロンビアの首都ボゴタに飛ぶ。コロンビアは米軍共用基地7か所のある米国の軍事同盟国で、NATO(北大西洋条約機構)の域外協賛国。   今回の合同演習は「NATO国際水準の空中給油、捜索・救助活動」が目的とされている。コロンビアはしばしば米軍と合同演習をしてきており、7月から米軍特殊部隊要員48人が国内で「対麻薬訓練」をコロンビア軍に施している。   コロンビアの野党は、米軍要員48人を領内に長期滞在させているドゥケ極右政権を厳しく批判し、外国軍要員滞在を厳しく規制するよう政権に圧力をかけてきた。   トランプ米政権は11月3日の大統領選挙で優位に立つ戦略の一環として、敵視してきたマドゥーロ政権を窮地に陥れる工作を続けている。   別件だが、コロンビアの左翼政党「人民革命代替勢力」(FARC)のロドリーゴ・ロンドーニョ代表ら最高幹部8人は9月14日、同国社会に対し、旧ゲリラ組織「コロンビア革命軍」(FARC)が犯した拉致・誘拐事件を謝罪した。同党は、政府とゲリラが和平に達した後の2017年に、ゲリラ政

来年ホンジュラスで選挙、早くも公正性に危惧

  オンドゥーラス(HON=ホンジュラス)の国家選挙理事会(CNE)は9月12日、来年の総選挙日程を発表した。2021年3月14日に各党は予備選で候補者を決定、本選挙は11月27日実施される。  総選挙では大統領、および国会議員128人、中米議会議員20人、298市長、2142市会議員を選ぶ。      だが政界は新選挙・政治組織法をめぐって荒れており、公明正大な選挙が実施されるか、危惧されている。それというのも前回17年の大統領選挙で、国民党のホセ・エルナンデス大統領が選挙規定を最高裁判断で強引に解釈変更して出馬し、不正な開票操作で「再選」を果たしたからだ。  エルナンデスは13年選挙で初当選したが、麻薬汚染、腐敗、反対は弾圧などで不評だった。そこでジャ―ナリスト、サルバドール・ナスララは「反独裁野党同盟」を組んで17年選挙に出馬し、5ポイント差で当確と見られていた。ところがエルナンデス派は電脳開票を止め、後に開票が再開されると、エルナンデスが勝ったことになっていた。  エルナンデスは憲法規定解釈を変えて出馬し、不正により「再選」されたが、大統領の再選や出馬回数を制限する明確な規憲法定が欠けているという法的不備がある。  そこで国会は新しい選挙・政治組織法制定を審議したが、政権党の国民党(PNH)と、2大野党の自由党(PLH)および自由・再建党(LIBRE)が対立、法は成立しなかった。PNHは決選投票制導入や投開票技術刷新などに反対した。  PNHがとくに決選に反対するのは、次期大統領選挙で3大政党候補がいずれも過半数得票に達することなく上位3位までを占めた場合、PLHとLIBREが連携してPNH候補を落とすことが可能になるからだ。  エルナンデス自身、2013年の選挙前に「選挙倫理・公明選挙規約」に署名しながら、大統領就任後、これを守らなかった。それどころか、3選出馬を可能にするため、国会に審議を再三要求してきた。  この国の政治は、マヌエル・セラヤ大統領がウーゴ・チャベスVEN大統領に接近し、再選希望を表明したことから2009年6月、保守・右翼勢力と米国が組んだクーデターで政権を追われた時から混乱してきた。  この政変には、当時のオバマ米政権のヒラリー・クリントン国務長官が深く関与。セラヤは自宅からパジャマ姿のまま連行され、HON国内中部あるパルメローラ米軍基

キューバがASEAN友好協力条約に加盟

  キューバが9月12日、ASEAN友好協力条約(TAC)に加盟した。ASEANは輪番制議長国ヴェトナムの首都ハノイで9~12日、第53回外相会議を開催、キューバとコロンビアの条約加盟を承認した。  この条約は1976年に締結され、ASEAN加盟10カ国のほか、日中韓朝印米露豪乳伯EUなどが加盟している。  玖外務省は声明で、「ASEANとの関係が活発化する」と歓迎しつつ、「条約加盟国間の相互内政不干渉を謳っている」とし、同じく加盟している米国を牽制した。 

ペルー国会が「大統領不在状態」を決議

   ペルー国会は9月11日、「道徳的不能」を理由に、マルティン・ビスカラ大統領の資格停止=「大統領不在状態」を決議した。これによりビスカラは本会議での釈明を義務付けられた。   ビスカラは2016年4月の大統領選挙に、PPK(ペルー人は変化を求める)党からPP・クチンスキ(PPK)大統領候補とともに副大統領候補として出馬し当選。クチンスキ大統領が収賄容疑で18年3月退陣したのを受けて、大統領に昇格した。   16年の選挙戦には、あまり知られていなかったペルー人歌手リチャード・シスネロス(芸名リチャード・スウィング)が応援。そのとき知り合ったビスカラは、大統領就任後、シスネロスに文化省の仕事を9回も与え、総額17万5000ソル(約5万米ドル)を支払った。   ところが、この契約には不可解な点があると指摘され、文化省は最新の契約を解除した。今年6月から国会で取り上げられ、「大統領の醜聞事件」として膨らんだ。   AP(人民行動党)、Alpro(進歩のための同盟)、FP(人民勢力=フジモリ派党)、UPP(ペルーのための連合)、SP(我々はペルー)、PP(ペルーは可能だ)野野党6党は9月10日、国会に「大統領不在状態」を決議する緊急動議を出していた。動議は定数130のところ、賛成65、反対36、棄権24で可決された。   国会はまた、この決議を第1回投票時に可決された者は公職に就けないとする決議をも、賛成111、反対8、棄権8で可決した。       国会が大統領を弾劾する場合、定数130の3分の2の87議員の賛成が必要。ペルーでは来年4月11日に次期大統領選挙を含む総選挙が予定されている。 ▼国会が「弾劾」否決  ペルー国会は9月18日、野党側の「大統領不在動議」を賛成32、反対87で否決した。マルティン・ビスカラ大統領は、事実上の弾劾決議を乗り切った。         

ベネズエラが米海兵隊員をスパイとして逮捕

   ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は9月11日、CIA要員である元米海兵隊員1人をスパイとして10日逮捕した、と発表した。ファルコン州内のアムアイ、コルドン両製油所に近い場所で逮捕したが、重火器や大量の米ドル紙幣を携行していた、という。   マドゥーロによれば、このCIA要員は過去にイラクで海兵隊員として勤務していた。身柄は直ちに送検された。アムアイ製油所は2012年に破壊工作により爆破されている。今回も製油所爆破を狙っていた、と見られている。  大統領は、カラボボ州内のエル・パリ―ト製油所の爆破を狙った破壊工作を2日前に未然に摘発したとし、一連の陰謀工作は「VEN石油および石油製品の生産を麻痺させたい米帝国主義による対VEN報復戦争だ」と糾弾した。  「報復」とは、マドゥーロ政権打倒を図りながら実現できないトランプ政権の「腹いせ」を意味するとも受け取ることができる。  捕まった米国人は、軍事的作戦会社に所属するマシュー・ジョン・ヒース。同行していたVEN人3人も逮捕されたが、うち一人は国家警備隊(GNB)の軍曹。 

ルセーフ元伯大統領を陥れた元下院議長に長期刑

 ブラジル法廷は、ヂウマ・ルセーフ元大統領を弾劾裁判にかける議会手続きを2015年末に始めた当時の国会下院議長エドゥアルド・クーニャ被告に重刑を言い渡した。ルセーフは翌16年8月、弾劾され政権を追われた。  法廷は9月9日、クーニャが伯国営石油会社ペトロブラスに海底油田探査船2隻建造を認可する際、同社に賄賂を要求し500万ドルを受け取った収賄罪で禁錮15年11カ月を言い渡した。法廷はコロナ禍に鑑み、クーニャを自宅軟禁に処した。  法廷は翌10日、クーニャがペトロブラスの外国油田買収に際し、数百万ドルを収賄した罪で別途、15年余の禁固刑を言い渡した。クーニャは、ペトロブラス関連の贈収賄事件で金額が最も多い収賄犯の一人。その油田はアフリカのべニーンにある。  ルセーフは、腐敗したクーニャを毛嫌いしていたが、クーニャは逆恨みし、ブラジル政界ではごく些細な理由でルセーフの弾劾手続きを進めた。ルーラ、ルセーフと2代13年に及んでいた労働者党(PT)政権をつぶしたい財界、大土地所有者ら保守・右翼陣営は米国の後押しを得て、ルセーフを弾劾に追い込んだ。  選挙ではPTに勝てない同陣営は、ルセーフ弾劾の延長線上で、早くから「当確」と見られていたルーラを18年の大統領選挙に出馬できないよう画策した。その結果、悪名高い極右元軍人ジャイール・ボウソナロ現大統領が勝って政権を握った。  ルーラは依然、幾つかの腐敗事件との関連で被告の立場にあるが、徐々に22年の次期大統領選挙の最有力候補にのし上がりつつある。 ▼伯最高裁長官が「腐敗に厳しく」と表明  伯最高裁長官に9月10日就任したルイス・フシュ判事は、法廷批判や民主非難を許さず、腐敗を厳しく取り締まる、と述べた。  

キューバの通貨一本化作業「10月開始」の見方流れる

  キューバ政府が、通貨ペソ(CUP)と兌換ペソ(CUC)の2種類の通貨を一本化する政策を来年にも実施する可能性が出てきた。政府は2011年の新経済指針に通貨一本化方針を盛り込み、13年10月公式に一本化を決め、19年末にCUC使用を部分的に禁止した。  ミゲル・ディアスカネル大統領は今年7月、通貨一本化のための最終的分析作業を開始すると明らかにしている。  電子紙「ディアリオ・デ・クーバ」が9月7日付で報じたところでは、最近開かれた通過一本化を巡るセミナリオ(セミナー)で、ある経済学者 は「10月1日から6か月間(来年3月末まで)にCUCをCUPに両替するか使い切るかするよう国民に近く伝えるかもしれない」と述べた。同期間内、全国に展開されているCUC店は、CUC回収のため営業を続けるという。  CUCは1990年代に国民の間に出回っていた米ドルを国庫に吸い上げるために導入され、今日まで流通してきた。交換率は1米ドル=1CUC =24~25CUPだが、昨年来、1ドル=1・5CUCなど、CUCの価値が下がっている。  国営両替店CADECAは9月9日、CUCをCUPに替える人々の予想される殺到に備え、窓口要員の増加を政府に求めた。  CUC廃止後は、米ドルとCUPの併存状態となるが、CUPの対ドル切り下げが予想されている。国営企業部門は従来、「ICUP=1米ドル」の等価を政治的に維持してきたが、キューバの生産力、経済力からすれば非現実的な為替レートであり、この見直しも急がれている。  このような虚構によって、玖経済の統計は実勢を反映しない不正確なものなっており、それがマクロ経済の分析や経済計画策定の障害になってきた。  通貨一本化に備え、最低賃金の上昇が見込まれるが、外貨準備という裏付けなしにペソ紙幣が発行されてきたため、物価上昇がひどくなっている。品不足、物資欠乏は日常的で、購買力に乏しいCUPしか持たない庶民は青息吐息だ。  だが政府は今年7月、MLC(自由交換通貨。事実上、米ドル)のキャッシュカードでのみ物資を買える輸入物資などの小売店をハバナ、サンティアゴなどに開設。全国に拡げつつある。CUC廃止に備え、米ドルをはじめ外貨を国庫が直接的に吸い上げる仕組みである。  米ドルなど外貨を潤沢に持つ富裕層と、そうでない庶民の「経済階級格差」が日々に膨らみつつある。この

パラグアイ特殊部隊が亜国籍少女2人を殺害

  パラグアイの軍と警察で構成する対ゲリラ戦特殊部隊「合同作戦部隊」(FTC)が、同国北部コンセプシオン県内森林地帯のゲリラキャンプで、アルゼンチン国籍を持つ11歳と12歳の少女2人を殺害、国際問題になっている。   FTCは9月2日、キャンプを急襲。ゲリラ「パラグアイ人民軍」(EPP)の「要員2人を殺害し」、武器、弾薬、米ドル、カール・マルクスの『資本論』、チェ・ゲバラの著作などを押収したと発表、「作戦は大成功だった」と自賛した。少女2人の遺体は、キャンプ近くの穴に埋めた。  ところが間もなく、2人が未成年の少女で亜国籍と判明。首都アスンシオンの刑務所に収監されている2人の叔母(もしくは伯母)でEPP幹部のカルメン・ビジャルバが亜国弁護士会の問い合わせに対し、「2人は姪で、誕生日祝いを兼ねて、父親に会うためキャンプに来ていた」と明かした。  2人は、パラグアイ南部を流れるパラナー川の対岸、亜国ミシオネス州プエルト・リコに住んでいたリリアン=マリア―ナ(12)とマリーアデルカルメン(11)だった。  同地に住むリリアンの母ミリアムによれば、2人の少女は昨年11月、(EPP要員である)父親たちに会うためパラグアイ入りしたが、コロナ禍で国境が閉鎖され、帰国できずにいた。  フェルナンデス亜政権はパラグアイのアブド=ベニーテス政権に抗議、早急に事件を調査して解明、裏付けの証拠を提示するよう求めた。  パラグアイ当局は遺体を掘り出し、解剖した。少女たちは背後から多くの銃弾を浴びせられ、前方からも撃たれていたことが判明。さらに衣服は焼かれて失われていた。至近距離から銃撃した「処刑」だったことを隠ぺいする狙いからと見られている。  国連人権高等弁務官事務所南米支部(智サンティアゴ)と、米州諸国機構(OEA)米州人権裁判所(CIDH)も事態を重視、パラグアイ政府に事件の公正な解明を求めている。  FTCは「少女はゲリラで、先に撃ってきた」と<偽情報>を流していた。キャンプ急襲の成果が武器などの押収だけだったため、キャンプにいた少女2人を殺害、証拠隠しのため地中に埋めたとの見方が出ている。  EPPは1990年代半ばから活動。勢力は50人以下と見られている。軍・警察襲撃、大土地所有者襲撃、身代金誘拐などを戦術としてきた。21世紀20年代の今、ラ米の農村ゲリアの活動はEPPのほかは、

アジェンデ勝利のチリ大統領選挙から半世紀

 チリにサルバドール・アジェンデ大統領を生む重要な契機となった1970年9月4日の大統領選挙から50年が過ぎた。首都サンティアゴでは、9月4~5日、「UP(人民連合)勝利50年、人民政権、UPの有効性、今日の課題」と題したテレセミナリオ(セミナー)が開かれ、内外の多くの識者が発言した。  70年の大統領選挙には左翼アジェンデ(UP)、中道トミッチ(キリスト教民主党)、右翼アレサンドリ(国民党)が出馬、アジェンデが僅差で1位になった。このため10月、国会議員投票による決選がアジェンデと2位アレサンドリの間で実施され、トミッチ票を得たアジェンデが当選、11月初め政権に就いた。自由選挙による初の社会主義政権の誕生だった。  70年9月の選挙には当初、共産党(PCCH)のパブロ・ネルーダも出馬していたが、左翼票が社会党(PSCH)のアジェンデとの間で割れ共倒れになるため、ネルーダが譲歩。アジェンデがUP候補とって、当選を果たした。  アジェンデはネルーダを駐仏大使に任命、ネルーダはパリで、ストックホルムからのノーベル文学賞受賞決定の電話通知を受けた。  だが3年後の73年9月11日、ニクソン米政権と連携したチリ軍部極右による流血クーデターでアジェンデは銃で抵抗した後、自害した。その後、軍政により少なくとも3200人が殺害された。  アジェンデ政権誕生もクーデターによる終焉も20世紀の世界史に刻まれている。50周年の日、大統領政庁前の広場に建つアジェンデ像に多くの献花が為された。  セミナリオで発言したアジェンデ政権閣僚の最後の生存者であるハイメ・トアー元農相(85)は、「(73年7月に任命されたが)連日、敵対行動に攻勢をかけられていた。クーデター当日モネーダ宮殿(大統領政庁)で大統領に寄り添っていたが、大統領から未来ある身だから政庁を離れなさいと命じられ、結果的に生き延びられた」と述懐した。  トアーの実兄ホセ・トアーはアジェンデの側近で、内相と国防相を務めた。  PCCHのギジェルモ・テイジエル書記長は、「UPを勝利させた人民の願いを現代に具体化させれば、多数派国民の利益に適う新憲法の制定過程にある今、新しい道が開かれる」と述べた。チリでは10月25日に新憲法承認の是非を問う国民投票が実施される。  VENのニコラース・マドゥーロ大統領はセミナリオへのメッセージで、「アジ

ベネズエラ主要野党勢力が選挙めぐり分裂

   ベネズエラ主要野党「まず正義を」(PJ)の元党首エンリケ・カプリレス前ミランダ州知事 と、同「新時代」(UNT)のスターリン・ゴンサレス国会議員はこのほど、トルコ当局者と会合し、12月6日のVEN国会議員選挙への両党の参加条件の一つ「国際監視団導入」でマドゥーロVEN政権と合意した。  これは9月1日、トルコのメヴリュット・チャヴシュオール外相がアンカラで記者会見し、明らかにした。カプリレスは、トルコのレジェップ・エルドアン大統領と並んだ写真を公開している。カプリレスらは8月下旬、トルコを訪れたと見られている。   VENとトルコは同盟的関係にあり、トルコはマドゥーロ政権と反政府野党との間で仲介の労をとった。   カプリレスは2日、「我々野党は<政権ごっこ>をしている場合ではなく、選挙に参加すべきだ。同時に<政権>と<野党>であることはありえない」と述べた。トランプ政権の傀儡である「暫定VEN大統領」を自認するフアン・グアイドー国会議長に<政権ごっこ>を止めるよう求めたのだ。  これに対し、トルコ外相の発表に不意打ちをくらわされたグアイドーは「彼らは我々の知らない間にマドゥーロ政権と話し合った」と怒り、カプリレスとゴンサレスを批判した。  トランプ米政権のマドゥーロ体制否定・暴力的政変路線に乗ったグアイドーは、PJ、UNT両党を含む27野党・政治運動の選挙ボイコットを固めたとしていたが、それがほころんでいることが明るみに出た。  カプリレスは「野党勢力代表(統一候補)」として、ウーゴ・チャベス前大統領とニコラース・マドゥーロ現大統領に大統領選挙で一度ずつ挑戦し、いずれも敗れている。  「野党代表」の政治的地位にカプリレスにとって代わって収まったグアイドーは、暴力による政変を肯定する極右「人民意志」(VP)党に所属。米国に担ぎ上げられて2019年1月「大統領代行」就任を宣言したが、それには実効支配の実体/実態がない。  カプリレスが<政権ごっこ>を批判した裏には、野党代表としてマドゥーロの対抗馬になるのは自分だとの自負とライバル意識がある。カプリレスは過去の反政府行動から参政権を剥奪されており、このまま進めば、グアイドーないし別の人物に「野党代表」に復活する可能性を封じ込められてしまうという焦りがある。

ブラジル司法が検察にFBIとの協力関係の捜査求める

  ブラジル高裁のセルジオ・クキナ判事は9月1日、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ被告(元大統領)の起訴の基になった伯最大の建設会社オデブレシ―(オデブレヒト)の暗号化されていた機密文書類に検察当局が米FBI(連邦捜査局)の協力で接近できたことに関し、伯検察庁とFBIが協力関係を結んだ経緯を捜査するよう求めた。  ルーラ弁護団の要請を受けての判断だが、クキナ判事は、これまで弁護団が触れることのできなかったオデブレシ―機密文書を読むことを認めた。  同判事は、FBIは所定の手続きを経ずに機密文書を入手し伯検察に渡したとの弁護側意見を受け入れた。クリスチアーノ・マルチンス弁護団長は、クキナ判事の判断を高く評価している。   「ラヴァ・ジャト」(オデブレシ―絡みの一大贈収賄事件)でのルーラ断罪は、2018年の大統領選挙で当選が確実視されていたルーラの出馬を阻むのが主目的だった。少数派の保守・右翼陣営は2015年末にヂウマ・ルセーフ大統領(当時)の些細な出来事による弾劾の策謀を開始、ルセーフはリオデジャネイロ五輪直後の16年8月末に解任された。  この「国会クーデター」に次ぐ陰謀の第2段階がルーラ出馬阻止だった。ルーラもルセーフも労働者党(PT)の社民主義路線で、貧困大衆の救済に務めた。これを嫌う新自由主義路線の財界をはじめとする保守・右翼勢力は米政府と連携、FBIからオデブレシ―機密文書の提供を受けた。米国はラ米政策の邪魔になるルーラを嫌っていた。  ルーラが出馬できなかったため、極右で反知性派の元軍人ジャイール・ボウソナロが当選し、19年元日就任。内外が驚くほどの悪政を敷いてきた。  ルーラの裁判は終わっていないが、ボウソナロの暴政もあって、ルーラの立場は徐々に良くなっている。   一方、伯連邦地裁は9月1日、ルーラが大統領だったころ影響力を行使してオデブレシ―社にアンゴラでの土木事業落札に便宜を図ったとする腐敗罪容疑による2016年の起訴を「証拠不十分」により却下した。