米軍が国務長官のVEN周辺諸国歴訪に合わせ軍事演習へ

   米国務省は9月15日、マイク・ポンぺオ国務長官が17~20日、スリナム、ガイアナ、ブラジル、コロンビアを歴訪すると発表した。またコロンビア政府は15日、スクレ州コベーニャス沖のカリブ海で18~21日、同国軍と米南方軍が合同で軍事演習「ポセイドン」を実施すると発表した。

  ベネズエラのマドゥーロ政権は、ポンペオ歴訪の狙いを「VEN包囲網」構築と捉え、警戒している。とくに軍事演習は「軍事攻撃」に転じることがあり、VEN軍は厳戒態勢を維持している。

  スリナム(旧蘭領ギアナ)は今年、VENに近かったボーターセ政権が終わり、米国は新政権へのテコ入れをする。西隣のガイアナ(旧英領ギアナ)も政権が交代。ポンぺオはアファーン・アリ大統領と、対VEN宣伝用に米国営放送VOA(米国の声)のラジオ・テレビ局を設置する懸案について話し合う。

  ガイアナは西隣のVENと長年、エセキーボ地域の領有権問題を抱える。米石油会社は同地域沖の海域で油田開発中。VENは激しく抗議しており、デイヴィド・ブレンジャー前大統領は対VEN関係が一層こじれるのを避けるのため、VOA局設置を拒否していた。

  ポンぺオはVENの南の隣国ブラジルでは、国境地帯の中心地ボアヴィスタを訪問する。次いで、VEN西隣コロンビアの首都ボゴタに飛ぶ。コロンビアは米軍共用基地7か所のある米国の軍事同盟国で、NATO(北大西洋条約機構)の域外協賛国。

  今回の合同演習は「NATO国際水準の空中給油、捜索・救助活動」が目的とされている。コロンビアはしばしば米軍と合同演習をしてきており、7月から米軍特殊部隊要員48人が国内で「対麻薬訓練」をコロンビア軍に施している。

  コロンビアの野党は、米軍要員48人を領内に長期滞在させているドゥケ極右政権を厳しく批判し、外国軍要員滞在を厳しく規制するよう政権に圧力をかけてきた。

  トランプ米政権は11月3日の大統領選挙で優位に立つ戦略の一環として、敵視してきたマドゥーロ政権を窮地に陥れる工作を続けている。

  別件だが、コロンビアの左翼政党「人民革命代替勢力」(FARC)のロドリーゴ・ロンドーニョ代表ら最高幹部8人は9月14日、同国社会に対し、旧ゲリラ組織「コロンビア革命軍」(FARC)が犯した拉致・誘拐事件を謝罪した。同党は、政府とゲリラが和平に達した後の2017年に、ゲリラ政治部門を基に結党された。

▼米伯外相会談

 マイク・ポンぺオ米国務長官は9月18日、スリナム、ガイアナ両国訪問後、ブラジル北部のVEN国境沿いのロライマ州都ボアヴィスタでエルネスト・アラウジョ伯外相とVEN問題で会談した。

 両外相は記者会見に臨んだが、ポンぺオは「マドゥーロは何時退陣するのか」と質問され、「退陣する日に退陣する、としか今は答えられない」と応じた。

  一方、ブラジルのロドリーゴ・マイア国会下院議長や外相経験者らは、「伯の良き外交実践の伝統にそぐわない」と、ポンぺオ長官の対伯外交姿勢を批判した。

 同長官は19日、コロンビア訪問を終え、帰国の途に就いた。 

  

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