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ベネズエラ伝説のゲリラ指導者ドゥグラス・ブラーボ死去

      ベネズエラの伝説のゲリラ指導者ドゥグラス・ブラーボが1月31日死去した。88歳だった。   ファルコン州に生まれたブラボは14歳だった1946年、VEN共産党(PCV)に入党。武闘を施行していたため10年後に党から除名される。   59年元日のキュ―バ革命の影響を受けて62年、「ホセ=レオナルド・チリ―ノス(JLCH)ゲリラ戦線」を結成。同州内の山岳地帯を拠点に、時のベタンクール政権於の国軍と戦った。初期の同志にテオドロ・ペトゥコフ(1932~2018)がいる。   平和共存路線に傾斜し武闘路線を否定する共産党から1966年に分裂したVEN革命党(PRV)の指導者に収まるが、引き続きJLCHゲリラ戦線を指揮。ララ州の「シモン・ボリーバル(SBゲリラ戦線」と連携して戦う。   両戦線は新たなPCV離脱者を含めて「民族解放軍」(FALN) となり、これを指揮。FALNは、民主行動党(AD)極左でチェ・ゲバラ路線の「革命的左翼運動」(MIR)と合同し、「FALN-FLN」を結成する。   67年にゲバラがボリビアで処刑され、経済建設が行き詰まったフィデル・カストロがソ連になびくと、ブラーボらVENゲリラ指導部はキューバと袂を分かった。   その後、「表向きの顔」として合法政党「ルプトゥラ」(決裂)を結成、ブラーボの妻アンへリア・メレーが党首となる。   80年代に陸軍に浸透、尉官だったウーゴ・チャベスら青年将校に「革命」イデオロギーを植え付ける。ブラーボはウーゴの実兄で大学教員だったアダン・チャベス(現キューバ駐在大使)と友人関係にあり、そのつてでウーゴらに接触した。   1992年2月のウーゴ・チャベス陸軍中佐指揮による軍事クーデター(未遂)と、同年11月の軍事クーデター(同)に参加。軍事法廷にかけられ収監されるが、翌年恩赦で釈放された。   94年元日メキシコ南部チアパス州で「サパティスタ民族解放軍(FZLN)が武装蜂起すると、これを支持。同州を訪れ、当時の「マルコス副司令」らと会談した。   99年2月チャベス政権が発足するが、蜜月機関が過ぎると同政権を「ブルジョア新自由主義」と非難。後継のマドゥーロ現政権とも距離を置いていた。   時代は変わり、現在のPCVは「革命的人民連合」路線を取り、チャベス派のボリバリアーナ路線と一線を画している。 ▼極右の国会

ハイチ情勢混迷、大統領への退陣圧力増す

    政情不安に恒常的に見舞われてきたハイチは今、ジョヴネル・モイーズ大統領の退陣を迫る国民と野党勢力の圧力が増し、政情の混迷は危機的状況に陥っている。  ハイチ大統領の任期は5年で、2017年2月7日に就任したモイーズは22年のその日に切れる。だが野党勢力は、モイーズ派がやり玉に挙げられた15年の不正大統領選挙のやり直し選挙が16年に実施され、当選認定されたモイーズが17年に就任するまで暫定政権が1年続いたことから、その期間を計算すれば、モイーズの任期は今年2月7日に切れると主張、退陣を迫ってきた。  このような任期計算の問題だけでなく、モイーズの失政と無能が退陣を求める世論を高まらせている。失政の最たるものは、国会上下両院議員の任期が20年1月に切れながら、国会議員選挙が実施されないまま今日に至ったこと。  大統領は以来、国会審議なしに政令で政治を運営してきた。当然、行政は専横化した。国外からの巨額の援助資金を最高指導部が横領したとされる汚職嫌疑が渦巻き、巷には殺人や身代金誘拐などを恣(ほしいまま)にする多くの暴力組織が暗躍している。  そこに昨年3月来のコロナ禍COVID19が猛威を振るい、社会・経済の危機を増幅させた。  この1月、退陣圧力は一層激しさを増しているが、モイーズは4月25日に改憲国民投票、9月19日に大統領・国会議員選挙をそれぞれ実施し、22年2月に退陣すると表明。あくまで政権に居続ける構えだ。大統領決選は11月21日。  これに対し諸野党をはじめ反大統領勢力は1月28~31日、全国で大統領退陣要求行動を続けつつ、2月1~2日、および7日にゼネストを決行することにしている。  モイーズは、トランプ前米政権に促されてイスラエルや、西サハラを占領してきたモロッコ寄りの外交政策を続けてきた。だが「人権・民主」重視のバイデン政権の発足で、対米関係を従来以上に、また従来とは別の角度で気にしなければならなくなっている。  改憲草案は29日に公表された。①上院を廃止し1院制国会に②大統領は国会に責任を負い国会は重要決定・人事で大統領の権限を制限③大統領任期を5年とし2期連続就任を可④首相府を廃止、副大統領を新設し正副大統領選挙を実施⑤公務員就任年齢を25歳に引き下げ公務員の少なくとも35%を女性にーが骨子。 ▼ゼネスト決行さる  2月1日、ハイチ全土でジ

コロンビアで父親の異なる双子が誕生か

    コロンビアで双子の男児の父親が別々という極めて稀な例が報告された。同国の有力週刊誌セマーナが1月27日報じたところによれば、この事例は国立保健庁の機関誌「生物医学(ビオメディカ)」に発表された。   2018年8月、双子の父親とされた男性がDNA鑑定を求めた。コロンビア国立大学(UNAL)の遺伝学的出生証明研究グループが鑑定したところ、その男性のDNAと一致した男児は一人だけだった。   UNAL教授のリリアン=アンドレア・カサス=バルガス生物学博士によると、希有な例であるため、男性にしかないY染色体を分析したが、結果は変わらなかった。   結論は、母親が一回の排卵期に異なる2人の男性と関係したこと。コロンビアでは愛情問題が複雑で、年間1万1000件もの父親証明検査が実施されているという。

赤道国大統領選はアラウスとラソが決選進出か

   エクアドール(赤道国)で2月7日、大統領、国会議員、アンデス議会議員を選ぶ総選挙が実施される。10日後に迫っているが、大統領選挙には女性1人を含む16人が出馬している。   これまでの支持率調査で当選条件である①過半数得票②得票率が40%以上で2位候補に10ポイント差、の条件に達する可能性のある候補は見当たらない。   このため得票上位2候補が4月11日に予定される決選に進出する公算が大きい。支持率調査に基づけば、最高支持率39%のアンドレス・アラウス(希望連合戦線=UNES)、同22%のギジェルモ・ラソ(CREO運動)の両候補が決選で争うことになる公算が大きい。3番手は、14%の先住民ヤク・ペレス(パチャクティク他民族統合運動)。   アラウスは、ラファエル・コレア前大統領の息のかかった候補。コレアの後継者として4年前に出馬し当選したレニーン・モレーノ現大統領はコレアの政敵と化し、今選挙でのコレアの副大統領候補、国会議員候補としての出馬を禁止した。   一方、ラソは太平洋岸グアヤキル市の財界を基盤とする右翼で、前回選挙でレーノに惜敗するなど過去2回敗北しており、今回が3度目の出馬。   「パルティートクラシア」(政党乱立政治体制)と呼ばれる赤道国ゆえ、コレア期にような例外的な協力政党がないかぎり、決選で3位以下の候補の得票分を集める戦いとなる。決選ではパチャクティクがアラウス支持に回る可能性が濃厚なため、アラウスが有利との見方が有力だ。   決選の4月11日には、ペルー大統領選挙とチリ制憲会議議員選挙も予定されており、取材記者や観察者には忙しい日になる。とくにラ米駐在が1~2人しかいない日本各メディアの通信員(コレスポンサル=コレスポンデント)は、どの国に特派員として出張取材するか選択を迫られる。      なお2月7日の選挙は、国内監視団2134人、国際監視団225人が監視する。 ▼テレビキャスター暗殺さる   グアヤキル市内で1月27日、地元のエクアビサTV放送の番組キャスター、エフライーン・ルアレス(35)が車で走行中、待ち伏せされ多数の銃弾を浴びせられて殺害された。ルアレスは番組で、地元有力者の絡む腐敗事件について伝えており、昨年7月以来、死の脅迫を受けていた。

キューバ法廷がマルティ像汚した犯人に厳しい判決

  2020年元日、キューバ史上の偉人ホセ・マルティ(1853~95)の胸像がハバナ市内数カ所で豚の血を塗られて冒涜された。その元日は玖革命61周年記念日であり、フィデル・カストロら革命の志士たちは、マルティ生誕100周年の1953年は7月26日に陸軍モンカーダ兵営を襲撃し、革命の狼煙を上げたことから「100年世代」と呼ばれる。   元日は、革命とマルティ、あるいは社会主義キューバにとり、極めて重要な日だ。その日に首都でマルティ像が汚されたのは、玖体制にとって重要かつ深刻極まりない事件だった。   ハバナ市の法廷は、事件から1年余り経った1月26日、事件の真相と犯人3人の処分を公表した。26日はモンカーダ襲撃を記念する「民族蜂起の日」まで半年の日であり、マルティ生誕168周年記念日(1月28日)の直前でもある。   同法廷によれば、犯人3人は昨年12月21日、ハバナ市革命広場区裁判所で裁かれた。3人は、パンテル・ロドリゲス=バロー、ジョエル・プリエト≐タマヨ、ホルヘ=エルネスト・ペレス=ガルシア。   ロドリゲスとプリエトは、在米キューバ人からもらった現金でコカインを買い、それを消費してから犯行に及んだ。その様子をぺレスが映像として記録し、それを在米キューバ人に送信。世界中に映像が流された。マルティと玖革命体制を貶める宣伝のためだった。   実行犯のロドリゲスには禁錮15年、プリエトには同9年、ぺレスには同2年の判決がそれぞれ下された。   事件後、首都以外の都市で同種の冒涜事件が続発した。ディアスカネル政権は、マルティ冒涜を戒め、反体制言動が顕著になっている若い世代に警告する狙いを込めて、厳しい禁錮刑を科した。 ▼バイデン米政権が対玖経済封鎖緩和へ   ジェン・サキ米大統領報官は1月28日、トランプ前政権が対玖経済封鎖強化のため発動した242種類の政策を見直すと発表した。    サキは、バイデン政権の対玖政策の柱は、①玖の民主と人権を支援②米国人とくに玖系米国人が玖の自由のための最良の「大使」と捉えること、の2点だとし、これに沿って対玖関係を構築してゆくと述べた。

「ラ米文化シリーズ③メキシコ壁画運動」公開

   ユーチューブ・ジャーナリズム★「デモクラシータイムス」の「伊高;ラ米文化・歴史シリーズ」第3回として、「造形芸術を変えたメキシコ壁画運動」(46分)が1月26日夜、公開されました。   シリーズ①は「ゲリラの下克上」、②は「亡命の文化」 でした。これらも併せてご覧ください。   今回の③では、言い間違い箇所をテロップで修正しました。発言の音声は修正しにくいためとった措置です。調子に乗ってしゃべると、気が付かないまま言い間違いが生じやすく、しかも話の流れの中での言い間違いは修正が難しい。このことを実感しました。   ご容赦願います。20210127 伊高浩昭

東京五輪中止なら代替開催を;フロリダ州高官表明

  東京五輪が中止されたら、代わりに開催したい。米フロリダ州の財務長官が1月25日そう表明し、内外世論を驚かせている。  表明したのはジミー・パトロ二ス長官で、米五輪委員会(USOC)に事前相談せずに国際五輪委員会(IOC)に申し出た。  ところが米国はコロナ疫病COVID19の感染者と死亡者が世界最悪最大で、フロリダ州も感染者が多い。東京五輪が中止される場合、原因はCOVID19抑え込みの失敗に帰されるが、この疫病に見舞われているフロリダ州が代替適地とは考えられない。  同長官は、日本の一部高官が東京五輪中止の可能性に触れたことから代替開催を提案したと明かしている。  フロリダ州はドナルド・トランプ前米大統領の居住地であり、マイアミを中心にラテン系住民が固まっている。 

欧州連合諸国がグイアドー首班支持を取り下げ

   欧州連合(EU)加盟27国政府は1月25日、フアン・グアイドー前VEN国会議長をもはや「VEN暫定大統領」とは認めないとする声明を発表した。6日に同趣旨の立場を打ち出していた。EU諸国は今後、グアイドーを「特権を持つ重要な対話相手」と定めた。   理由は、グアイドーの国会議長任期が1月4日で切れたこと。グアイドーは昨年12月6日のVEN国会議員選挙をボイコットしたが、出馬したとしても、ラ・グイアラ州内の自身の選挙区からニコラース・マドゥ―ロ大統領の息子ニコラース2世が出馬していたため、苦戦が予想された。同2世は対抗馬が事実上いなかったため圧勝した。   一方、保守・右翼勢力が多数派の欧州議会は先週「グアイド―支持」を決議している。同議会と加盟諸国政府の決定は相反するが、国連はVEN代表権をマドゥーロ政権に認めており、EU諸国政府決定は国連決定に合致する。   EUを離脱した英国はグアイドー支持を継続している。20日にバイデン政権が発足したばかりの米国は、トランプ前政権が傀儡として擁立したグアイドーの政治的資格に対する判断をまだ下しておらず、「グアイドー支持」の立場が技術的には続いている。   EU諸国政府は、VENに政治民主化などを引き続き要求してゆくとの立場も併せて表明した。   当のグアイドーはEU決定を受けて、次期米国務長官が私を支持してくれることを期待していると述べた。   これに対し、極右のグアイドーと野党勢力の主導権争いをしてきた右翼のエンリケ・カプリレス元大統領候補は25日カラカスで外国メディア通信員たちとの会見で、野党は戦略を練り直し、問題解決を図るためマドゥーロ政権との交渉過程を構築すべきだ、と述べた。 ▼ドイツが欧州理事会に提議   ドイツ外務省は1月27日、欧州理事会(EU首脳会合)に対し、フアン・グアイド―を「VEN暫定大統領」と認めるのを打ち切るよう提議した。 ▼米政府は「グアイドー支持」の意向  ジェン・サキ米大統領報道官は1月26日、バイデン政権は「自由で公正な選挙を通じて民主的かつ平和裏にVEN体制を変えてゆく」と述べた。  アンソニー・ブリンケン国務長官は、19日の上院外交委員会公聴会で、対VEN制裁を効果的に実施してゆくと言明。グアイドーを引き続き「VEN暫定大統領」として認めてゆく、とも述べている。同長官は26日、上院で就

ブラジル先住民がアマゾニア破壊でボウソナロを提訴

  ブラジルアマゾニアの先住民族の指導者の立場にある著名な族長2人が1月22日、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に、アマゾニアでの人道犯罪や自然破壊に関与したとして、ジャイール・ボウソナロ伯大統領を訴えた。訴えたのは、ラオ二・メトゥクティレ、アルミル・ナラヤモガ・スルイの両人。   訴状は、2019年元日にボウソナロが大統領に就任して以来、アマゾニアでの森林破壊が前例のないほど急速に進み、先住民族の古来の居住環境が破壊され、先住民族が殺戮に遭ってきたとし、アマゾニア破壊政策を推進する大統領に責任がある、と指摘している。   「ボウソナロはコロナ疫病COVID19 の蔓延状況を悪用して、先住民族を殺戮している」と、ラオ二は語っている。仏人ウィリアム・ブルドン弁護士が訴状を書いた関係で、ル・モンド紙やAFPが逸早く報じた。   アマゾニアの森林破壊は2020年に8426平方kmが破壊されたが、破壊率は前年比35%増という。   伯アマゾニアの先住民族がボウソナロをICCに訴えたのは、昨年7月以来2度目。   世論調査では、COVID19 対策の無策などから現在、ブラジル人10人中7人がボウソナロの退陣を求めている。   ジョー・バイデン米大統領は、就任前から「世界の心臓」アマゾニア熱帯雨林の破壊を厳しく批判してきた。ドナルド・トランプ前大統領と「蜜月」状態にあり、トランプ再選に懸けていたボウソナロ政権は、アマゾニア政策でも新たな対米対応を迫られている。 

世界社会フォーラム遠隔会合が開会

    ラ米諸国の左翼・進歩主義勢力を中心とする政治経済社会思想協議調整のための国際会合「世界社会フォロ(フォーラム)」(FSM)の年次会合が1月23日開会した。31日まで続く。メキシコ主催で、テーマは「我々は現代から未来にかけて、どのような世界を望んでいるのか」。   ダボスで開かれる資本主義陣営の「世界経済フォーラム」(WEF)に対抗して2001年1月、伯南部ポルトアレーグレ市で第1回会合が開かれてから20周年を記念する会合だ。だがコロナ疫病COVID19 により、初の遠隔画面会合となった。   テーマからもわかるように、FSMの基盤は、弱肉強食の新自由主義経済世界に替わる「もう一つの世界」の実現を理想とする「アルテルムンディズモ」(代替世界構想)。   とくに昨年来、世界中がCOVID19に冒され、貧困大衆層が最大の打撃を受けていることから、貧者の人権、少数富裕層への課税強化による富の再分配が中心議題となる。トランプ反知性・フェイク米政権後の国際社会の在り方も重要議題だ。   21日に遠隔開催された記者会見で、個人および団体計6000人、推薦された活動家600人が遠隔参加することが明らかにされた。参加者・団体は、政治、労働、農民、先住民、人権、自然保護、女権、性的平等主義、学生、芸術家、知識人、中小企業などの当事者。   現職や元職の大統領ら首脳級がしばしば参加する。諸外国の賛同者も少なからず参加する。FSMとWEFの両方に参加した首脳級や経営者が過去にわずかにいた。両方を取材する記者も多くはないが居る。      

ニカラグア刑法に終身刑導入さる

    現代のニカラグア刑法に初めて終身刑が導入された。ニカラグア国会はダニエル・オルテガ大統領が提案していた終身刑を盛り込んだ刑法改正を1月18日可決、改正刑法は19日発効した。   終身刑の対象は、2件以上の殺人を犯した者や、重大な憎悪犯罪者に適用される。従来の最高刑は禁錮30年だった。ただし、導入された終身刑は減刑可能だ。   国会で絶対多数派の政権党FSLN(サンディニスタ民族解放戦線)の賛成で可決されたが、野党勢力は「憎悪犯罪」への終身刑適用に反対していた。   それはオルテガ大統領が、2018年4月以降に激化した反政府街頭行動を念頭に「オルテガ体制への憎悪」を取り締まるために終身刑を導入しようとしていると捉えていたからだ。   ニカラグアでは今年11月7日、正副大統領 や国会議員を選ぶ総選挙が予定されている。連続4選を目指すオルテガは、それを脅かしかねない反政府行動の再発を未然に抑え込もうと改正刑法を施行した、と野党勢力は非難している。   トランプ前米政権はオルテガ体制潰しに力を注ぎ、反政府行動を支えていた。改正刑法は、ドナルド・トランプ大統領最後の日に発効、同大統領へのしっぺ返しとなったが、ジョー・バイデン大統領就任の前日であり、新大統領への「配慮」が窺える。

ジェニファー・ロペスが大統領就任式で心の叫び

   ジョセフ・バイデン新米大統領が1月20日就任した。JST21日未明の就任式典で米国歌、愛国歌、宗教歌が3人の歌手によって歌われたが、最も際立ったのはレディー・ガガの国歌に次いで愛国歌「ディス・ランド・イズ・ユア・ランド」と「アメリカ、ザ・ビューティフル」を歌ったジェニファー・ロペス(51)が歌の合間に、「ウナ・ナシオン・バホ・ディオス、インディビシーブレ、コン・リベルター・イ・フスティシア・パラ・トドス」と西語で叫んだ場面だった。   「神の下で、分割できない、すべての人にとって自由と正義(公正さ)のある国に」という意味の、強いメッセージだった。   女優・歌手であるジェニファーはカリブ海アンティージャス諸島にあるプエルト・リコ(PR)出身の両親の間に生まれたPR系米国人である。両親の第一言語はスペイン語、次に英語だった。娘ジェニファーの言語は共通語が英語、PR系地域社会と家庭では西語だった。   PRはコロンブスのカリブ海航海以後、400年に亘ってスペイン植民地だった。1898年に米国が仕掛けた「米西戦争」で米国はキューバを属領化し、PRを領有した。PRはその後、自治領(米自由連合州)という名の植民地であり続けてきた。   PR人は国政参政権上の差別を受けている。またPR人とPR系は米本土で人種的に差別されてきた。   押しも押されもせぬ大女優になったジェニファーは、大統領就任式で歌うという、この上ない栄光の舞台で、PR差別、人種差別、コロナ禍で浮き彫りになった貧富格差という構造的差別、トランプ前政権下での米社会分断、虚偽・虚言が幅を利かせる不自由な世に反逆し、警鐘を鳴らしたのだ。   PR系を含めラテン系(ヒスパニック)と括られて差別感を味わってきたLAC(ラ米・カリブ諸国)の多くの新聞は、ジェニファーの心の叫びを特筆している。自分たちの気持を代弁してもらった、という意識があるからだろう。   米黒人もアジア系もアラブ系もジェニファーに共感を思えただろう。   全米と全世界が注視している晴れの大舞台に悠然と現れ、悠然と去るジェニファーに、人々は「これぞ大女優」を観たはずだ。    

米国目指す中米難民、グアテマラで足止め食らう

   米国入国を目指すホンジュラス人ら難民7000~8000人がホンジュラス・グアテマラ国境地帯で難渋している。一行は隊列を組んで15日ホンジュラス西部からグアテマラ東部に越境したが、グアテマラ警察部隊により17、18両日、行進を阻まれた。   ホンジュラス人のうち約2000人はホンジュラスに追い返されたが、他は散開し、グアテマラおよびエル・サルバドール領内に留まっている可能性がある。   難民は、経済苦、暴力、コロナ禍を逃れ、豊かな暮らしを求めて米国行きを志すが、今回の難民群は、難民や移民受け入れに厳しく対処してきたトランプ政権が終わり、リベラルなバイデン新政権が1月20日に発足する時期を捉えて組織された。   トランプ政権はメキシコ、および「中米北部三角形」(グアテマラ、エル・サルバドール、ホンジュラス)と協議の上、グアテマラで難民を食い止める政策を定めた。だがグアテマラとしては、大量の難民を長期間収容する余裕はなく、今回のように実力で難民を追い返さざるを得ない。   バイデン次期政権が、中米とメキシコ経由で陸路米国入りを目指す難民群に対し、どんな政策を打ち出すのか、メキシコ、中米、カリブ、南米北部諸国は強い関心を抱いている。      

亜国タンゴダンスの巨匠JCコぺスが死去

    アルゼンチンタンゴのトップダンサーの名声を70年近く維持したフアン=カルロス・コぺスが1月15日、コロナ疫病COVID19 により死去した。89歳だった。  ブエノスアイレスで1931年に生まれたコぺスは少年時代、タンゴ好きの祖父の影響で、ミロンガとタンゴに魅せられた。電気技師の道を志したが1945年ダンサーとなり、20歳だった1951年、首都ルナパークでのタンゴコンクール踊りの部で優勝、「エル・メホール・バイラリン」(最高の踊り手)となった。  踊り相手のマリーア・ニエベスとは結婚・離婚を繰り返したが、長らく踊りのパートナー同士だった。1990年代、私(伊高)は東京で両人にインタビューした。その内容は別途紹介したい。「踊りは4つの足で描く芸術だ」と言っていた。  「タンゴ舞踊ほど創作的で個性的なものはない。電脳時代の現代は画一的過ぎる。それは丹後には合わない」という言葉も心に残った。  コぺスは、オスバルド・プグリエセ、フランシスコ・カナロ、アストル・ピアソーラら巨匠の楽団で踊り、世界各地で名声を博した。踊りの振り付け師としても活躍した。  高齢のため2015年に現役を引退。17年ごろから体調を崩し、昨年末にCOVID19 に冒された。 ★LATNA電子版「ラ米乱反射電子版」に本日1月18日、コぺス・ニエベス組にインタビューした記事が採録掲載されました。御覧ください。  

マドゥーロVEN政権がバイデンに向け打診気球

   ニコラース・マドゥーロ大統領のVEN政権が、1月20日発足するバイデン米新政権に対し、関係正常化を望む意向を表明した。マドゥーロ大統領の側近中の側近であるホルヘ・ロドリゲス国会議長は15日カラカスでAP通信のインタビューに応じ、米新政権が残酷な対VEN制裁政策を覆せば、国交正常化やVENで服役中の米国人釈放が可能になる、と述べた。   ロドリゲスは憲法規定で、実妹のデルシー・ロドリゲス副大統領に次いで大統領位を継ぐ第2の地位にある。   同国会議長はまた、トランプ政権の傀儡フアン・グアイドー前国会議長を「逮捕せよという政権党PSUV(VEN統一社会党)の声には与しない」と前置きし、「広範な対話に応じる用意がある」と語った。   ただしグアイドーおよび、その仲間たちがマドゥーロ政権打倒の陰謀を何度も企てたことや、外国政府によるVEN国営石油会社PDVSA(ぺデべサ)の在外資産凍結を支持したことを謝罪するのが先決だ、と強調した。   マドゥーロ政権は、暴力的政変を謀ったトランプ政権と断交。ワシントンにはグアイドー派の<大使館>がある。米国務省は、コロンビアのボゴタにある米大使館内で対VEN業務を遂行している。 【バイデン次期政権とVEN政権との関係改善の鍵を握る米側人物の一人は、NY州選出の民主党下院議員グレゴリー・ミークスだ。ミークスは2013年3月のウーゴ・チャベス大統領の葬儀に、バラク・オバマ前大統領に派遣され参列した。】 ▼VEN外相が対米非難    ホルヘ・アレアサVEN外相は1月16日、トランプ米政権がテキサス州ヒューストンにあるPDVSA子会社CITGO石油会社(CPC)の売却を促進していることを、「不法売却であり著しい内政干渉だ」と、米政権を糾弾した。 ▼VENがブラジルの疫病対策支援へ   ホルヘ・アレアサ外相は1月16日、カラカスにあるラ米医科学校(ELAM)の新卒者が、隣国ブラジル・アマゾナス州に行き、COVID19と闘うため、国境の伯ロライマ州ボアヴィスタに15日到着した、と明らかにした。   新卒者はブラジル人とVEN人の計107人。VEN外務省は、アマゾナス州のウィルソン・リマ知事と、新卒医師団の受け入れについて話し合い、合意に達した。   アレアサ外相は、VENは既にアマゾナス州に欠乏している酸素ボンベを大量に発送したと述べた。同州で

プエルト・リコ独立派のE・エスコバル死去

  米植民地プエルト・リコ(PR)独立派の著名な元政治囚で画家のエリサム・エスコバル(72)が1月15日、癌により死去した。  エスコバルは 、PR大学在学中に独立運動に関与し、地下結社「民族解放軍」(FALN)に参加した。卒業後、ニューヨークで大学や美術学校で教鞭をとった。  だが1980年4月イリノイ州内で、米連邦政府施設に対する爆弾テロ謀議の容疑により他の10人のFALN要員とともに逮捕された。11人は法廷で「戦争捕虜」であると主張した。  エスコバルらは禁錮68年の判決を受けてオクラホーマ州内の刑務所に収監された。そして1999年9月、ビル・クリントン大統領によって仲間とともに恩赦され、故郷PRに帰った。  その後は造形作家、および造形理論家として活躍。PR造形芸術大学絵画学部長も務めた。

米国が玖VENなどへの諜報技術移転を阻止

  米商務省は1月14日、中露朝イラン玖VEN6か国を「外敵」と見なし、「情報・通信サービスおよび技術の供給の安全性と信頼性を高めるため」として、同サービスおよび技術の移転を阻止する、と発表した。  「米国の声」(ヴォイス・オブ・アメリカ)放送が伝えた。同省は、これはトランプ政権の当初からの政策に沿うものだと説明。とくに同6か国の軍事諜報産業を利さないためとしている。シリアも措置の対象になるという。  任期切れ直前で、弾劾訴追されているドナルド・トランプの<放屁作戦>の一環だ。 ▼米政府が玖内務省を「制裁」  米国務省は1月15日、玖内務省(ラサロ・アルバレス内相)を、具体的証拠を挙げずに「人権侵害」を理由に、一方的制裁を科した。  これに対しミゲル・ディアスカネル玖大統領は、「マイアミのキューバ系反玖マフィアの味方をしている失敗した腐敗政権による最後の尻尾打ちの新たな一例だ」と、トランプ政権を糾弾した。「尻尾打ち」は「放屁」とほぼ同義だ。 

ガイアナと米南方軍が軍事協力で調印

  ガイアナ国軍と米南方軍は1月13日、首都ジョージタウンで軍事協力合意に調印した。ガイアナは西隣のベネズエラと長年、15万平方kmを超える広大なガイアナ・エセキーボ地域の領有権を巡って対立してきた。同地域を実効支配してきたガイアナは、その防衛のため米軍と合意を結んだ。  調印は、クレイグ・フォーラー南方軍司令官のジョージタウン訪問に合わせて行われた。同司令官はトランプ米政権の対VEN強硬策を実行してきた主要な人物の一人。調印も、下野寸前のトランプの「サヨナラ放屁」の一つ。  ガイアナ当局と米沿岸警備隊は、合意に基づき、エセキーボ地域沖の大西洋で合同演習を開始した。VENとの領海線(国境)付近での「麻薬密輸取締」が名目。  南方軍は、この演習を、南大西洋海域における麻薬取締作戦「南十字星作戦」の一環と位置付けている。

トランプが捨てっ屁、キューバを「テロ支援国」に再指定

   トランプ米政権は1月11日、社会主義キューバを「テロリズム支援国」に指定した。今月20日で任期の切れる同政権の「最後の捨てっ屁」だ。   オバマ前政権は2015年、指定を取り上げ、同年7月、対玖復交を果たした。   マイク・ポンぺオ国務長官は、指定復活の理由として、コロンビアゲリラELN(民族解放軍)への支援、米国人逃亡犯ジョアン・チェシマードを長年匿っていること、マドゥーロVEN体制延命支援などを挙げた。   とくに「VEN体制支援」からは、トランプ政権がグアイドー派やコロンビア政府と組み、CIA、傭兵部隊などを使って何度も試みたクーデター計画が悉く失敗したことへの恨みが窺える。玖諜報機関がVEN諜報機関を支えていると見るからだ。   新しさはなく、トランプ下野直前の対玖嫌がらせだ。マイアミなどの反カストロ派玖人社会への贈り物でもある。   米政府は長らく、反体制玖組織を支援し、玖人テロリストを米国内に匿い、 VEN体制暴力的打倒を画策してきた。米国の玖テロ支援国再指定の正当性は希薄だ。 ▼玖政府が反撃   ブルーノ・ロドリゲス玖外相は1月11日、「テロ支援国再指定」について、米政権を「偽善的にして冷笑的」と批判した。   同外相は、1959年の玖革命後、米政府絡みのテロ・破壊活動により、玖人3478人が死亡、2099人が身体不自由者になったと指摘、「キューバこそ、米製テロの犠牲者なのだ」と反撃した。 ▼玖大統領が米支援の破壊活動を警告   ミゲル・ディアスカネル大統領は1月11日、米国家民主財団(NED)や米国際開発局(USAID)に資金支援された反革命派による破壊活動が起きる可能性を指摘し、国民に警戒を呼び掛けた。 ▼米上院議員らが異議表明   米上院民主党議員9人は1月12日、マイク・ポンぺオ国務長官に書簡を送り、キューバを一方的に「テロ支援国」に再指定する手続きが議会の意向を全く聞かずに行われたと、異議を表明した。   またNYT紙は15日、今回の対玖措置はバイデン次期政権の対玖外交をやりにくくするための効果しか持たないと、トランプ政権を批判した。         

バイデン次期米政権のラ米政策の要はJS・ゴンサレス

  ジョー・バイデン次期米大統領は1月8日、国家安全保障会議(NSC)西半球(ラ米・カリブ)局長に、コロンビア出身のフアン=セバスティアン・ゴンサレスを任命した。国家安全保障担当の大統領補佐官ジェイク・サリヴァンの直属となる。  ゴンサレスはオバマ政権期に、国務省西半球担当国務次官補や、バイデン副大統領とNSC西半球局長の補佐官を務めた。  コロンビア・カリブ海岸のカルタヘーナに生まれ、父親の仕事の関係で幼少時代からNYで暮らし、ジョージタウン大学を卒業した。米平和部隊員としてグアテマラで活動したこともある。  バイデン次期次期政権のLAC(ラ米・カリブ)政策の課題は、移民、麻薬、貧困、「民主化」など。中米諸国に対しては、貧困・治安対策用に40億ドルを投下する。  社会主義キューバに対しては、トランプ現政権が厳重化した対玖送金・旅行の制限を止め、オバマ政権が始めた「太陽政策」に戻る。マドゥーロVEN政権には、民主化を促しつつ、貧困国民支援を重点政策とする方針。 ▼ベネズエラが「国家開発戦略的地域」設定  ニコラース・マドゥ―ロVEN大統領は1月7日、同国大西洋岸領土に「国家開発戦略地域」を設定した、と発表した。これは東隣のガイアナが実効支配している「ガイアナ・エセキーボ地域」の領有権をVENが従来通り主張してゆく意思表明でもある。   大統領は次いでアントニオ・グテラス国連事務総長に、同領有権問題でのVEN・グアイアナ対話の再開を支援するよう要請した。  ▼ニカラグアが「米国民主神話は崩壊」と批判  ニカラグアのロサリオ・ムリージョ副大統領は1月8日、暴徒化したトランプ支持者らによる6日の米議会乱入事件を受け、「完璧な民主の国・米国という神話は崩れ去った。あるのは傲慢、虚栄、人種主義、絶対提優越主義だけだ」と厳しく批判した。  このような見解はラ米全土に拡がっており、バイデン次期政権は、ラ米に対し「民主化」を訴えにくい状況が続くはずだ。米議会占拠事件は、まさにトランプ政権下の米国が「バナナ共和国」に成り下がった事実を余すところなく示したと言える。

亜国大統領と外相が茂木外相と会談

   ラ米諸国歴訪中の茂木敏充外相は1月7日、ブエノスアイレスの亜国大統領政庁カサ・ロサーダで、アルべルト・フェルナンデス大統領と会談した。    亜国営通信TELAM(テラム)は、双方は気候変動との闘い、国際規範・平和・人権尊重で一致した、と報じた。「国際規範尊重」には、日本側の対中牽制の狙いが込められている。  フェルナンデス大統領は、日本が最近実施した医療器材援助に謝意を表した。両者は、今年7~8月の東京五輪開催についても話題にした。  茂木外相は別途、亜国外務省でフェリーぺ・ソラー外相と会談、貿易・投資の拡大で一致した。また亜国地方自治体の生産促進と競争力強化のための「改善・タンゴ事業」の推進を話し合った。  また第三国への日亜共同支援計画も議題になった。両国は既に、モザンビークでの生産技術向上協力事業を手掛けている。  茂木外相はソラ―外相の先導で、外務省脇にあるサンマルティン広場で、独立の英雄ホセ・デ・サンマルティンの乗馬像に献花した。           

ベネズエラ国会が開会、政府との捻じれ解消さる

  ベネズエラ新国会が1月5日開会し、前日決まったホルヘ・ロドリゲス議長、2人の副議長ら議会執行部が就任した。ニコラース・マドゥーロ大統領を支える政権党連合議会内会派「祖国ブロック」の議院団長には、大統領に次ぐ第2の実力者と見なされてきたディオスダード・カベ―ジョ元国会議長が収まった。  ロドリゲス新議長は就任演説で、トランプ米政権に従属してマドゥーロ体制転覆を何度も謀った4日までの国会を糾弾。「新しい国会は人民のために活動する」と強調するとともに、「国民和解」を呼び掛けた。  定数は277人で、昨年12月6日実施の選挙で選出された。政権党連合GPP(大愛国軸)は256議席を占有。穏健野党は残る21議席にすぎない。  前回2015年12月の選挙で発足した国会は反政府野党が多数派で、政権との間に捻じれが生じ、そこをトランプ米政権に付け込まれ、傀儡の「グアイドー暫定政権」を擁立されてしまった。だがグアイドーの国会議長任期は今月4日で終わり、傀儡政権の虚構も事実上終わった。  カべ―ジョは新議長になりそこなったことで、実力者の地位が揺らいでいる。マドゥーロ大統領の意中の「第2の実力者」は、ロドリゲス議長の妹デルシー・ロドリゲス副大統領や,タレク・エルアイサミ石油相と見られている。  だがカベ―ジョは陸軍尉官出身で、故ウーゴ・チャベス前大統領の直系の部下だった。このため軍部内に基盤がある。マドゥーロ体制が国軍を最重要基盤としていることから、カベ―ジョの「実力」は依然侮れない。国会議員にはカベ―ジョの他、軍部出身者が14人いる。  国会開会式には、アナ・マリー玖国会副議長が来賓として出席。エステバン・ラソ玖国会議長は、ホルヘ・ロドリゲス議長に祝辞を送った。  一方、マドゥーロ大統領は「自分たちの利益しか考えなかった旧国会は失敗に終わった」と指摘。今年第1四半期に国民生活の向上を図る「カラボボの戦い200周年記念計画」に着手すると述べた。  シモン・ボリーバル麾下(きか)のVEN独立軍が1821年にスペイン植民地軍を撃破したカラボボの戦いは、VEN独立を決定づけた。  国家諜報局(SEBIN)は5日朝、カラカス市内サンタフェ地区にあるグアイドー前国会議長宅のある建物を警戒態勢下に置いた  デルシー・ロドリゲス副大統領は5日、電力施設が破壊活動に遭い、カラカス市内の地域や地方部に

茂木外相が、日本はグアイドー派支持と表明

  スペイン国営通信社EFEが12月4日報じたところでは、茂木外相は同日東京でEFEの質問に答え、日本はVENに民主化努力を費い続き要請するとともに、フアン・グアイドー「暫定大統領」を支持すると表明した。  日本は、グアイドーを傀儡として擁立したトランプ米政権の圧力を受け2019年に「グアイドー支持」を表明した。だが「グアイドー政権」を承認してはいない。  しかし国連は19、20年と2回続けて「VEN代表権はニコラース・マドゥーロ大統領の政権にある」と決議している。「国連外交」を重視する日本にとり、「グアイド―支持」は国連決定にそぐわないと言えよう。   一方、VEN新国会は1月5日開会するが、これに先立ち政権党連合の統一会派「祖国ブロック」は4日、国会議長にホルヘ・ロドリゲス情報通信相を選んだ。    ロドリゲスは昨年12月6日の国会議員選挙で政権党PSUV(VEN統一社会党)の選対本部を務めた。妹はデルシー・ロドリゲス副大統領。兄妹は、ニコラース・マドゥーロ大統領の側近中の側近。   第一、第二副議長には、それぞれイリス・バレーラ(PSUV)、ディダルコ・ボリーバル(PODEMOS=社民主義党)が選ばれた。   昨年まで制憲議会(ANC)議長だった実力者ディオスダード・カベ―ジョ議員(元国会議長)は「祖国ブロック」代表になる。 ▼茂木外相がラ米4か国訪問に出発   茂木外相は12月4日、メキシコ、ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジル4か国歴訪の途に就いた。10~13日にはブラジルからセネガル、ナイジェリア、ケニアのアフリカ3国を歴訪する。 ▼トランプ政権はグアイドー承認継続   米財務省は4日、トランプ米政権が2019年1月に擁立した傀儡の、フアン・グアイドー現国会議長(21年1月4日任期切れ)を「暫定大統領」として承認する政策を継続すると発表した。この虚構は20日に発足するバイデン新政権の下で覆される可能性がある。   一方、ワシントンポスト紙は3日、グアイドーはVEN在外資産4000万ドルを不正に私した、とする調査報道記事を掲げた。    バイデン次期大統領の政権移行チームは、接触を試みるグアイドーの申し出に回答していない。   

アサンジを亡命者として受け入れたいと墨大統領表明

   ロンドン中央刑事裁判所は1月4日、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ被告(49、豪国籍)の身柄引き渡しを求める米政府の要請を退けた。これを受けて同日、メキシコのAMLO大統領は記者会見し、アサンジを政治亡命者として受け入れたいと表明した。   AMLO(アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)は「英司法の勝利だ。英政府がアサンジを恩赦し釈放することを望む」とし、マルセロ・エブラ―ル墨外相に必要な外交手続きを取るよう命じると述べた。  大統領は、政治亡命を与えるのはメキシコの伝統だと強調。メキシコ政府の庇護を受ける亡命者はいかなる国の内政にも干渉することはできない、と「条件」に触れた。  メキシコは亡命者受け入れの長い歴史を誇る。古くは1875年、反逆罪でキューバを追われたホセ・マルティを迎え入れた。新しくは2019年11月、クーデターで打倒され生命の危険に瀕していたエボ・モラレスボリビア大統領(当時)を、政府機を派遣して救い、身柄をメキシコ市に移し、亡命者とした。  スペイン内戦中(1936~39)から内戦後にかけては、内戦に敗れた共和国支持派を多数迎え入れた。同じころ、スターリンの魔の手を逃れたレオン・トロツキーや、演劇家・佐野碩を亡命者として受け入れた。  1955年には、モンカーダ兵営襲撃蜂起に失敗し逮捕されたフィデル、ラウールのカストロ兄弟らを亡命者として迎えた。志士たちは56年12月キューバに上陸し、59年元日にキューバ革命勝利に漕ぎ着けた。  60年代には、ブラジルの農民運動指導者フランシスコ・ジュリアンを迎え入れた。  1973年9月のチリ軍事クーデター直後から、抵抗し自殺したサルバドール・アジェンデ大統領の夫人オルテンシア・ブッシら多くのチリ人亡命者を受け入れた。  枚挙にいとまがないが、多くの場合、亡命者は文化的な質が高く、メキシコに計り知れない恩恵を持たした。 ★ビデオジャーナリズム「デモクラシータイムス」の「ラ米文化シリーズ」第2回「亡命は文化」(20年12月)をPCで参照されたい。 ▼英法廷は保釈を否定  ロンドンの法廷は12月6日、保釈金支払いによるアサンジ仮釈放は、米政府の控訴を待ち、その審理が終わるまでは認めないと判断した。    

VENが支払いの完全ディジタル化へ

   ベネズエラ政府は、銀行に「ディジタル払い用外貨口座」の開設を認可することを決めた。ニコラース・マドゥーロ大統領がスペイン人ジャーナリスト、イグナシオ・ラモネによるインタビューで明らかにし、VEN通信(AVN)とテレスール放送が元日に伝えた。    VENでは支払い総額の77%強は通貨ボリーバルのディジタル払いで、18%強が米ドルを中心とする外貨での現金払い。残る3%余りはボリーバルの現金払い。   ボリーバル紙幣は、VEN経済の低迷や、米側による連日の為替操作によって購買力を大きく失っており、支払いには大量の紙幣を持ち運ばなければならず、実用性が小さくなっている。政府は、3%強のボリーバル現金払いもディジタル化する方針。   だが大統領は、「新たな政策は、VEN経済がパナマやエクアドールのように完全米ドル化することを意味するのではない」と述べ、通貨ボリ―バルの存在を強調した。エル・サルバドールやバハマも経済がドル化されている。   マドゥーロはまた、今年は700万家庭にCLAP(地区供給生産委員会)による食料品低価格配給を継続する、と発表した。      大統領は累積対外債務問題にも触れ、自ら政権に就いた後の2014~17年に760億ドル、故ウーゴ・チャベス前大統領期の2010~13年には560億ドルを、それぞれ返済。合わせて2010~17年に1320億ドルを返済した明らかにし、債務返済が経済の足かせになっていることを示唆した。      

2021年のラ米展望

 謹賀新年2021.野蛮な人間格差の暴虐を超えて、共感と連帯の心が拡がることを年頭に祈ります。伊高浩昭 ▼社会主義キュ―バ  ラ米の2021年は、元日のキューバ革命62周年行事に始まった。国立バレエ団はアリシア・アロンソ劇場で記念公演を開始した。ミゲル・ディアスカネル大統領は、記念日を祝い、依然続く「革命過程」にける国民の「閃き」を讃えた。  この日、通貨一本化政策が施行され、国内通貨はペソ(CUP)だけとなり、兌換ペソ(CUC)は公式通貨ではなくなった。ただしCUCは今年前半にペソか外貨口座に交換できる。また全国の指定店舗で同期間、使用できることになった。  交換率は24ペソ=1米ドル。革命以来、国営部門では1ペソ=1米ドルという途方もないペソ高レートだったが、この特別レートは廃止され、1ドル=24ペソに統一された。  だがパリクラブ諸国は実勢を、1ドル=40~50ペソと見て、ペソ切り下げが必要と主張している。2017年時点の玖対外債務は180億ドル。今の財政赤字はGDPの18~20%に及ぶと見られている。  最低賃金も元日に2100ペソ(87・5ドル)に引き上げられた。給与は32段階に分かれており、最高は9510ペソ(396ドル)。大統領や共産党第1書記ら最高幹部の給与額は明らかにされていない。  ロシア革命体制は74年で崩壊した。中国共産党政権は71年続いてきた。62年続いた玖体制は経済危機にあり、どこまで続くのか。当面は、今月20日に発足するバイデン米政権の対玖「太陽政策」に経済封鎖緩和の期待をかけている。  4月16~19日には、ハバナで第8回共産党大会が開かれ、高齢のラウール・カストロ第1書記が引退する。これによりカストロ兄弟が占めてきた最高指導部は、ディアスカネル次期第1書記を頭として若返る。   アフリカ系宗教サンテリーアを司るヨルバ人の祈祷師は恒例の年頭予言で、「官憲侮辱が増える」と言い、反体制言動が一層活発化するとの見方を示した。また「不法出国者が増え、(小舟転覆などによる)死者も増える」と述べた。  反体制派ジャーナリスト、ジョア二・サンチェスは元日、「カストロ体制は完全に化石化している。玖革命モデルは今や、弾圧になった」と指摘した。 ▼バイデン米政権発足  1月20日、ジョー・バイデン大統領が就任する。米国は反知性、虚言、虚構、唯我独尊の孤立