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2月, 2021の投稿を表示しています

ドミニカ共和国がハイチ国境に壁建設へ

    ラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国=RD)のルイス・アビナデル大統領は2月27日、国会で施政報告演説をぶち、その中で、ハイチとの国境に壁を建設すると発表した。不法移民、麻薬、盗難車、密輸品などの国境通過を阻止するためと説明した。   同大統領は、ハイチのジョヴネル・モイーズ大統領との1月の首脳会談で、壁の建設方針を伝え、理解を求めていた。   国境線に壁を建設する話は、20世紀半ばからあったが、ドナルド・トランプ前米大統領がメキシコとの国境に壁を建設しはじめたころ、RDでも具体的に発想されつつあった。バイデン現米政権は、米墨国境の壁建設事業を公式に廃止した。   RDの国境の壁の建設は今年半ばに開始、2年をかけて完成させるという。   1937年10月、時の独裁大統領ラファエル・トゥルヒ―ジョは、国境地帯で多数のハイチ流民を虐殺した。犠牲者は9000人ないし2万人と推計されている。   トゥルヒージョは1950年代、ハイチ国境一帯の治安を固めるため、日本などから移民を導入した。荒れ地が多く、日本では政府の調査不足や不誠実な態度が「棄民問題」として大問題となった。21世紀になって小泉政権下で補償が成り、解決を見た。   ハイチは現在、モイーズ大統領の退陣要求、憲法改正国民投票の年半ばの実施、その後の次期大統領選挙実施、実施が大幅に遅れている国会議員選挙の実施など、重要問題が山積している。RDにとっては、動きやすい「好機」ではある。     

ボリビア検察が非合憲政権首班アニェスを召喚

    ボリビア政府による非合憲政権(2019年11月~20年11月)の首班(暫定大統領)だった極右ジャ二―ネ・アニェスへの追及が始まった。彼女は19年11月、当時のエボ・モラレス政権を倒したクーデターの首謀者の一人。  他の首謀者であるサンタクルース市を拠点とする極右ルイス・カマ―チョは依然追及されておらず、20年10月の大統領選挙に出馬している。こうした極右指導者が法で裁かれないかぎり、クーデターはまた起きかねない。  アニェスの拠点は北部のベニ州都トゥリダ―。チェ・ゲバラの部下としてボリビアでゲリラ戦を戦い、1967年8月末に殺された日系二世フレディ前村の出身地だ。  ベニ州検察は2月22日アニェスを召喚、彼女は出頭した。容疑はクーデター首謀、非合憲政権下で起きた一連の流血事件の放置、コロナ禍対策時の不祥事など。アニェスは26日にも召喚されたが、同日、「迫害であり、もう応じない」と表明した。  アニェスは昨年11月、モラレス元大統領の後継ルイス・アルセ大統領が就任して間もなく、ブラジルに逃亡しようとして阻止された。アルセ政権はアニェスを起訴した。  ボリビアでは3月7日、全9州知事や全国の市長を決める地方選挙が実施される。アニェスはベニ州知事選挙に保守・右翼候補として出馬している。万が一当選すれば、無処罰が罷り通ることになり、アルセ政権のクーデター責任の追及は「茶番」に見えてしまう。  知事選間近な2月末時点での検察召喚には、アニェス陣営に揺さぶりをかける狙いも込められてる。   

電子版「ラ米乱反射」に「ラ米情勢とバイデン米政権」公開

  LATINA誌電子版「ラ米乱反射」の第7回「ラ米情勢とバイデン米政権  ボリビア経済モデルに注目」が2月26日公開されました。御覧ください。  なお「週刊金曜日」誌2月26日号書評欄に、在ペルー日本大使公邸占拠事件について詳述されている『外交回想録』(寺田輝介著、吉田書店)の拙評文が出ています。ご参考まで。

墨亜軸にラ米統合をー亜国大統領が強調

   アルゼンチンのアルべルト・フェルナンデス大統領は2月22~24日メキシコを公式訪問し、アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO)大統領、メキシコ財界人らと会合した。    両首脳は23日記者会見し、24日にはそろってゲレロ州イグアラ市を訪れ、メキシコ独立最終段階の重要な出来事だった1821年2月24日の「イグアラ計画」宣言の200周年記念行事を主宰した。    フェルナンデス亜大統領は記者会見で、「現代メキシコに初めて国民にふさわしい大統領が登場した」とAMLOを讃えた。また「ラ米北端のメキシコと南端の亜国が縦軸となってラ米統合に尽くしたい」と強調した。    AMLOはフェルナンデスと共にプーチン露大統領と電話会談し、同大統領がメキシコへのコロナワクチン援助を約束したと明らかにした。    記者団との質疑応答では、大部分の事案はコロナワクチン問題に費やされた。両国とも感染者数と死者数が世界最悪15カ国に名を連ねている。   さいあku  

ベネズエラが欧州連合大使に出国求める

    ベネズエラのホルヘ・アレアサ外相は2月24日、欧州連合(EU)のイザベル・ブリリャンテ=ペドロ―ザ大使(ポルトガル人)に直接、「好ましからざる人物」と言い渡し、72時間以内の出国を求めた。  VEN国会は23日、同大使を「好ましからざる人物」と決議、政府に対処するよう要請していた。論拠は、国連憲章53条の「安保理の承認なしに強制的措置をとってはならない」という規定。一方的「制裁」は、これに反する。  EUは、主としてトランプ前米政権の米国がマドゥーロVEN政権に対し発動してきた約450種の「制裁」に概ね理解を示し、EU独自に55種類の「制裁」を科してきた。最近では、昨年12月のVEN国会議員選挙絡みでVEN人19人に「制裁」を科した。  米国は「平時の戦争手段」として「制裁」を盛んに用いてきた。EUはそれに倣っている。社会主義キューバは、ケネディ政権に経済封鎖を仕掛けられて以来、60年間もその状態が続いている。これを玖側は「経済戦争」と呼ぶ。  アレアサ外相はまた同日、EUに加盟する西仏独蘭4ヵ国の駐VEN大使に抗議書を手渡した。    VENは昨年6月29日に同EU大使に国外退去を求め、7月1日、撤回したことがある。理由は、「対話の可能性に道を開くため」だった。 ▼EUが報復  EUは2月25日、EU駐在のクラウディア・サレルノVEN大使に「好ましからざる人物」と言い渡した。同大使はベルギーとルクセンブルクを兼轄している。 ▼暗殺作戦参加者85人逮捕  タレク・サアブVEN検事総長は2月25日国会で、昨年5月3日のVEN上陸「ㇸデオーン作戦」に参加した容疑者114にんのうち85人を逮捕した、と明かにした。米国人を含むその全員が自供したという。  同作戦はマドゥーロ大統領拉致ないし殺害を狙っていた。トランプ前米政権、ドゥケ・コロンビア政権などが関与していた。巨額の賞金が懸けられていた。   

コロンビアの人権状況は依然極悪

    国連人権高等弁務官事務所コロンビア支所は2月23日、2020年度の同国人権状況報告を公表した。それによると、虐殺事件が76件発生し、計292人が殺害された。2014年以来、最悪の数で、とくに地方や農村部で多く発生した。  また、2016年の和平によって復員した元ゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)の要員248人が昨年暗殺された。  社会活動家や人権擁護活動家に対する死の脅迫などが795件あった。これらの活動家133人が殺された。  農村部を中心に2万5000人が強制的に立ち退かされて土地を奪われた。他の7万4000人は極右武装組織や犯罪集団によって居住地から追い出された。  今年に入ってから起きた虐殺事件は5件で、計21人が殺されている。

「南米南部の民衆音楽」をどうぞ

   ユーチューブジャーナリズム「デモクラシータイムス伊高」で2月22日夜、「南米南部の民衆音楽」(1時間)が公開されました。「あなたに知ってほしいラ米」シリーズの第4回としてです。   高瀬毅さんとの対談形式で、亜国タンゴ(生い立ち、亜欧タンゴの違い、4主要楽器、カルロス・ガルデル、アストル・ピアソーラ、藤沢嵐子ら)、ウルグアイの「ラ・クンパルシータ」、亜国フォルクローレ(アタウアルパ・ユパンキ、メルセデス・ソサら)、パラグアイの「ウパカライの思い出」などを語っています。   NY在住のギタリストでシンガーソングライターのシロー・エル・アリエロがユパンキの「コオロギのサンバ」を演奏し、同「トゥクマンの月」と「きょうだいたち」の弾き語りをしています。   どうぞ、ご覧ください。    

所得分配不公平5カ国のうち4国はラ米

  南アフリカ、ハイチ、ホンジュラス、コロンビア、チリ。 世界で所得分配が最も不公平な5カ国という。世界銀行が2月22日発表した。  何と、南ア以外の4ヵ国はラ米諸国だ。  

米政府がハイチ大統領支持政策を転換

  ハイチではジョヴネル・モイーズ大統領の任期をめぐり、反大統領派の抗議行動と政府による弾圧が繰り返され、収拾がつかなくなってる。  こうした政情混乱と社会不安が、1100万国民の大多数が貧困に苛まれているラ米最貧国を恒常的に覆っている。今また、そんな事態が尖鋭化している。  大統領任期は5年だが、モイーズは2017年2月7日に就任したから任期は22年のその日までと主張し政権に居座っている。  これに対し野党など反対派は、現大統領は16年に就任するはずだったが、当のモイーズが最初の大統領選挙で不正を働き、選挙が無効なったことから、暫定政権が1年続いたため、その1年を加算すべきであり、今年2月7日で5年の任期は終わっており、大統領は資格を失っている、との立場だ。  モイーズは昨年初め国会を解散し、以後、国会審議無しの政令で施政を続けてきた。このため政策は恣意的、非民主的になりがちだ。これに公金横領など腐敗問題がくすぶり、大統領の評判はすこぶる良くない。  ところがトランプ前米政権と、バイデン政権がモイーズを支持していたため、大統領の立場は揺るがなかった。しかし就任1カ月を機にバイデン政権は2月19日、モイーズ支持を取り下げ、「独立した司法の確立を支持する」と方向転換した。  米国は、モイーズがこのところ理不尽な理由を付けて反対派の判事たちを更迭している司法介入問題に目をつけ、これをとっかかりとしてモイーズを揺さぶり、退陣、大統領と国会議員の選挙実施を促すという戦略に切り替えたことを意味する。  「民主・人権重視」を外交政策の売り物にしているバイデン政権は、己の政策とモイーズ支持が矛盾することを認識したわけだ。  地続きの隣国ラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国=RD)は、ハイチ情勢が緊迫すると、かならずハイチ難民の流入問題が起きるため、米政府の政策転換で一挙に事態が流動的になったハイチの動向を警戒している。    

中米議会がルベーン・ダリ―オを顕彰

   中米議会(本部グアテマラ市)は2月19日、ニカラグアの詩人ルベーン・ダリ―オ(1867~1916)に「中米統合の偉人にして西語文学の第一人者」の称号を与えることを決議した。中米諸国独立200周年の記念行事の一環。  ダリ―オは、モデルニズモ(近代主義) の旗頭としてラ米と欧州の文学史に名を刻まれている。一時「ウニオン(統合)」紙を主宰、中米統合実現への論陣を張り、詩「中米統合への頌歌」などを書いた。  一方、ニカラグア国会は19日、アウグスト=セサル・サンディーノ将軍(1895~1934 )、および同将軍麾下の国家主権防衛軍(EDSN)を国の無形文化財に指定した。  同将軍はニカラグアを占拠した米海兵隊にEDSNを率いてゲリラ戦を挑み、勝利した。だが米側の陰謀で、米側が「米軍代理」としてニカラグアに残した国家警備隊の司令官アナスタシオ・ソモサ=ガルシアに暗殺された。  ソモサ3代独裁が始まったが、サンディーノの遺志を継ぐゲリラ軍サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)は1979年7月、3代目のアナスタシオ・ソモサ=デバイレ独裁政権を倒し、革命に成功した。  ソモサは米国に逃げたが、カーター米政権に亡命滞在を拒否され、アルフレド・ストロエスネル将軍の独裁下にあったパラグアイに移住した。  だが1980年9月、首都アスンシオンの高級住宅街で暗殺された。サンディニスタは、サンディーノ将軍の「仇討ち」を果たしたわけだが、バズーカ砲を用いた暗殺実行コマンドは、サンディニスタ革命に参加したアルゼンチンのゲリラだった。 ▼サンディーノ没後87周年記念行事  マナグア市中心部の革命広場にある英雄廟前で2月21日、アウグスト・サンディーノ将軍暗殺87周年の記念式典が催され、ダニエル・オルテガ大統領、ロサリオ・ムリージョ副大統領(オルテガ夫人、詩人)、国軍幹部らが出席した。  式典終了後、ムリージョは、「サンディーノは生きている。愛と正義へのための闘いは続いている」と述べた。   

エクアドール決選はアラウスとラソの左右対決へ

   エクアドール(赤道国)の国家選挙理事会(CNE=中央選管)は2月19日、大統領選挙決選投票に進出する2番手の候補は、ギジェルモ・ラソ(65、CREO)に決定した、と発表した。   ラソの第1回投票(7日)の得票率は19・74%(183万票)。同19・38%(179万票)の先住民候補ヤク・ペレス(51、パチャクティク)と超僅差で2位の座を争っていた。  約4万枚のアクタ(開票結果記録表)の電脳集計率は100%に達し、2、3位が確定したという。    決選1位進出は、アンドレス・アラウス(36、UNES)で、得票率は38・72%(303万票)。4月11日に予定される決選は、左翼・中道左翼・進歩主義路線のアラウスと、財界出身で保守・右翼のラソの左右対決となった。   アラウスにとっては、中道左翼系の先住民候補ぺレスが相手でなく、戦いやすい。決選の当落決定票のかなりの部分を握るぺレスは、ラソと2週間も2位争いをしたため、決選ではどちらかと言えば、アラウスを支持しやすい。   決選に向け、ぺレスは3位を不服として決選ボイコットに出ないかぎり、アラウスと支持を巡って条件闘争に入るはずだ。   一方、太平洋岸グアヤキル市を勢力基盤とするラソは、保守・右翼に加え中道派の取り込みを図り、さらに中道左翼に切り込むだろう。   4月の決選はアラウスが有利には違いないが、ラソはが北の隣国コロンビア政府の支援も得て、猛烈な上げ足取りの攻撃戦法を展開するはずだ。政権の座に挑戦すること3度目のラソだ。形振り構わぬネガティヴ運動に出るだろう。   対するアラウスは、師と仰ぐラファエル・コレア前大統領の存在が強すぎると不利になるとの計算からか、バイデン米政権との融和的関係樹立など穏健的外交方針を示唆している。 ▼OEAが選管に勧告   赤道国大統領選挙に監視団を派遣している米州諸国機構(OEA)は2月22日、CNE(中央選管)に対し、4月11日の決選までの選挙日程を完全に実施するよう勧告した。   アンドレス・アラウス候補も指摘しているが、モレーノ保守政権が選挙過程に介入し、決選進出候補2人が決まったいまもCNEは決選実施日程を明確にしていない。このため勧告することなった。 ▼選管が一部開票記録書の再点検を承認   赤大統領選挙第1回投票で3位となり決選進出を阻まれたヤク・ペレス候補は、開票不

ボリビアが経済主権守るためIMFに融資突き返す

   ボリビア政府は2月17日、軍事クーデターで生まれたアニェス前非合憲暫定政権が国際通貨基金(IMF)から昨年3月受けた融資を全額返した、と発表した。経済主権を守つため、また憲法条項に違反する融資をなくすため、と説明した。   中央銀行によれば、融資額は3億4670万ドルで、利子が加算されて3億5100万ドルになっていた。これをIMFに突き返した。   中銀は、この融資導入に関与した非合法暫定政権の担当職員らを取り調べる方向にある。    一方、ボリビア国会上院のアンドロ―二コ・ロドリゲス議長は18日、IMFから不要な融資を受けて利子、手数料などを支払わされ、国庫に損害を与えたとして、ジャニーネ・アニェス前非合憲暫定大統領を裁く方針を明らかにした。   アニェスは昨年11月、アルセ現政権が発足した後、ブラジルに逃亡しようと試みて阻止され、出身地のベニ州に留まり、監視下に置かれている。       

キューバで物価高騰、国民生活を圧迫

   社会主義キューバで物価が高騰、国民生活を圧迫している。ディアスカネル政権は昨年末、賃金大幅引き上げと通貨一本化を決め、元日から実施しているが、賃金上昇で増えた需要に供給がはるかに及ばないため、物価上昇に拍車がかかってしまった。   エコノミストらの試算では、値上げは物資によって異なるが、4倍から9倍に跳ね上がり、国民の実質購買力は半減している。   内需充足生産の弱さ、外貨欠乏による必需物資輸入の停滞、補助金廃止、賃金上昇が物価を高騰させている。   玖国民経済は、リーマンショックのあった2008年以降、15年まではそう悪くはなかった。だがマドゥーロVEN政権から供給される原油量が激減、トランプ前米政権による経済封鎖強化もあり、経済は下降を余儀なくされた。   キューバは、VEN原油の一部の再輸出、ニッケル、砂糖などの輸出、医療協力、観光、外貨送金などで外貨を稼いでいた。だが観光はコロナ禍COVID19によりほぼ全面休止、医療協力はトランプ派遣先が前政権の圧力で派遣先が減り、外貨送金も縮小、伝統産品輸出も落ち、VEN原油は減った。   玖政権は方向性としては「社会主義市場経済」化を目指している。だが革命一世世代が依然権力を握っており、中越両国のようには市場開放が進まない。このため、小刻みの改革は時々の問題に対処する弥縫策になりがちだ。   最近、自営業の職種が従来の127から2100に増やされ、124の禁止職種も定められた。自営業者は全就労人口の13%に当たる60万人だが、まだ少ない。国家公務員でもなく自営業者や協同組合員でもない実質的失業者は30%に及ぶとの見方もある。   4月半ば、4日間に亘って第8回共産党大会が開かれ、ラウール・カストロ第1書記が引退するが、これと並ぶ注目点は、革命第1世代がどこまで退くのか、および、新しい経済政策が打ち出されるか否かだ。 ▼核実験全面禁止条約に加盟   キューバは2月18日、同条約に加盟した。この点では、同盟国の北朝鮮よりも韓国の立場に歩み寄った印象がある。 ▼米政府が「対玖緊急事態」延長  バイデン米政権は2月24日、1996年にフロリダ州を発信した在米反玖組織の反玖宣伝軽飛行機2機が玖空軍機に撃墜されて以来発動されていた「緊急事態」を1年間延長した。その規定により、米国で登録されている船舶は許可なしに玖領海内に入る

エクアドール大統領選決選2位進出者、依然未定

      エクアドール大統領選挙は2月7日実施されたが、ほぼ10日経った16日になっても、決選に進出する2位候補が誰なのか、決まっていない。   7日の第1回投票では、アンドレス・アラウス候補(36、UNES)が得票率37・71%で、4月11日予定の決選進出を決めた。ところが2位は、19・74%のギジェルモ・ラソ(65、CREO)と19・38%のヤク・ペレス(51、パチャクティク)が僅差で並び、判定できないままだ。ぺレスは先住民の政治家。   国家選挙理事会(CNE=中央選管)は両候補および、米州諸国機構(OEA)選挙監視団の同意を得て、大票田グアヤス州の全票と、他の16州の票の半分の数え直しを決めた。これは「不正があった」と異議を唱えたぺレスの申し立てが受理されたため。   ところが、「数え直しのための設備などが十分でない」との理由でCNEは15日、数え直し開始のための会合を中止。準備段階がまだ続いている。   ラ米では今世紀になってから特に、接戦の大統領選挙では、当選者が圧勝しないかぎり、僅差で敗れた2位得票者が敗北を認めず、大荒れになる傾向がある。無論、不正がある場合も少なくない。今回は、混乱が決選前の段階で現れた。   決選にラソが進出すれば、左翼アラウス対右翼ラソという左右対決構造になるが、アラウス対ペレスとなれば珍しい左翼同士の対決となる。   開票に異議申し立てが出るのは、公明正大性、透明性が欠けるからだ。背景には、前回選挙でラソを決選で破ったレニーン・モレーノ現大統領の思惑があるようだ。   モレーノは、左翼進歩主義路線のラファエル・コレア前大統領の後継候補だったが、政権に就いた後、政策を巡ってコレアと袂を分かち、政敵同士となった。今や政策的には財界出身のラソに近い。   決選1位進出のアラウスはコレアの申し子で「若きプリンス」だ。アラウス対ペレスならば左傾大統領が生まれることになり、万が一、ぺレスが勝てば先住民大統領が生まれる。一方、ラソが決選に出れば、番狂わせで当選する可能性がある。   このように複雑な状況のため、2位候補が決まりにくいのだ。だがモレーノの本音は、コレアの「プリンス」の決選当選を阻止することだろう。「最悪のアラウス」でなければ、「次悪のラソとぺレス」のいずれかで構わないというところだろう。   モレーノは、コロンビアゲリラ組織

元アルゼンチン大統領カルロス・メネム死去

   亜国大統領を1989~1999年務めたカルロス=サウール・メネム(90)が2月14日死去した。長らく糖尿病を患っていたが、腎臓障害で昨年12月、首都ブエノスアイレス(BsAs)の病院に入院。その病院で死亡した。毀誉褒貶が際立ち、「光と陰」の政治家と呼ばれた。    西北部のラ・リオハ州に1930年、シリア移民の子として生まれた。コルドバ大学法学部に学び、弁護士になる。その学生時代、バスケットボール選手として首都での大学生大会に出場、当時のフアンド=ミンゴ・ペロン大統領とエバ夫人に会い、魅せられてペロン派政治運動に関与するようになる。    1973年、故郷ラ・リオハ州の知事選挙にペロン派の正義党候補として出馬し当選、就任したが、76年の軍事クーデターで逮捕、拷問され投獄された。この時の体験が反軍政・反左翼という政治的体質をもたらした。    3万2000人を殺し内外世論から厳しく糾弾されていた軍政は1982年、対英マルビーナス(フォークランド)戦争に打って出て敗北、多数の戦死者を出し、対外債務が嵩んで、経済を破綻させた。    83年の民政移管で、急進市民同盟(UCR)党を率いるラウール・アルフォンシン大統領の政権が発足。メネムは同年、ラ・リオハ州知事選に当選、再び知事になる。    オールバックの長髪、あるいは額に垂らした紙を波立たせ、太いもみあげの濃い風貌と、ぎらぎらした伊達男ぶりで有名になり、軍政に弾圧された経歴が物を言って、正義党内の有力政治家になる。    89年正義党予備選で伝統派を破って大統領候補に指名され、当選。軍部極右の反乱や経済破綻で苦しんでいたアルフォンシン大統領から任期終了前に政権を譲渡された。    大統領となったメネムは国際通貨基金(IMF)に強調し、緊縮財政政策を導入。1ペソ=1米ドルの公定交換率とした。国また有資産を次々に払い下げ、民営化した。こうした新自由主義経済政策で、超インフレは収まり、「亜国経済モデル」がもてはやされた。    一方で、投獄されていた軍部極右分子や人道犯罪関与者を恩赦した。    だがメネムはその陰で公金横領など汚職・腐敗にまみれた。また首都のユダヤ人協会とイスラエル大使館が相次いで爆破され、死傷者多数が出る重大事件2件が発生。イラン系と目された犯人が浮上しながら、両事件とも事実上、迷宮入りした。    

エル・サルバドールが改憲作業進める

   エル・サルバドール改憲特別委員会は2月13日、これまでに提起された改憲案を公表。現在5年の大統領任期を6年に延長すること、大統領罷免条項盛り込みなどが提案されていることを明らかにした。   同委は28日までにナイブ・ブケーレ大統領に改憲案を最終的に提示する。これに基づき国会審議を経て改憲草案がまとまれば、国民投票にかけられる。   大統領任期6年はメキシコ、ベネズエラで制度化されている。 5年はハイチ、ニカラグア、ペルー、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、キューバ、エル・サルバドール。     任期4年はブラジル、アルゼンチン、チリ、エクアドール、コロンビア、ドミニカ共和国、パナマ、コスタ・リカ、ホンジュラス、グアテマラ。

国連人権記録官が対VEN強制措置解除を要求

  米国と欧州連合(EU)は「制裁」というベネズエラに対する一方的強制措置を解除すべきだー国連のアレーナ・ドゥーハン人権問題特別記録官が2月12日記者会見し表明した。同記録官はこのほど2週間に亘ってVENを現地調査した。9月に公式な報告書を発表するという。   記録官は、VEN国民の食糧事情や健康状態は著しく悪化していると指摘。他国へのこうした強制措置は人権蹂躙だと批判した。  またマドゥーロVEN政権の在外資産凍結も人権蹂躙に繋がるとして、英国とポルトガルの銀行に対し、凍結中のVEN資金を返却するよう求めた。VEN政権はその資金を国民救済に使うことができる、と述べた。 ▼対回VEN封鎖は解除方針ない、と米政府  米国家安全保障会議の西半球(ラ米・カリブ)担当官フアン・ゴンサレスは2月18日、バイデン政権には当面、マドゥーロVEN政権に対する「経済制裁」(経済封鎖)を解除する方針はない、と表明した。  

トランプ前政権は対玖外交縮小に「音響攻撃」事件利用

  2016年末から17年初めかけハバナの米大使館員、その家族らに「音響攻撃による健康被害」がでたという、原因不明の事件が問題化した。科学的解明が繰り返しなされたが、解明は成らなかった。   このほど公開された米国家完全保障会議(NDC)機密文書によれば、17年1月発足したトランプ前政権は証拠なしに「音響攻撃は玖当局の責任」との見方をし、これを同大使館の人員60%削減と業務極小化する理由に用いた。   実際、在玖・米大使館は人員を大幅に削減、業務を極小化し、対米移住を希望する玖人の書類申請、面接などを南米北部ガイアナの首都ジョージタウンの米大使館で行うなどの無茶な変更をし、米玖外交関係を最小限に縮めた。   玖側は一貫して「音響攻撃」関与を否定、与り知らないでっちあげとの見方をとってきた。   ドナルド・トランプ前大統領はマイアミをはじめとするフロリダ州内の玖系やラ米系の有権者票を重視し、とくに玖系極右勢力の言動に影響されていた。 ▼CIAが捜査へ   米国務省は2月25日、CIAが特別捜査チームをつくって「音響攻撃」の真相を探ってゆく、と発表した。  ▼玖兌換ペソ(CUC)の半分は回収済み   キューバ政府が元日から実施中のペソ(CUP)への通貨一本化政策により、昨年まで同時に流通していた総額7億兌換ペソ(CUC、公定交換率で7億米ドル)の半分以上が既に回収され、使用不能となった。   ディアスカネル政権の経済社会改革指針の実行責任者マリーノ・ムリージョ政治局員が2月10日明らかにした。CUCは今年5月末までCUPか、外貨預金口座の外貨に交換可能。   ムリージョはまたインフレが昂進していることについて、通貨一本化に伴い実施された大幅賃金上昇により急拡大した需要に供給が追い付かないため、と説明した。   また補助金廃止や民間部門の生産コスト上昇、および財政赤字増大によってもインフレが進んでいると指摘した。   在米同胞などからの外貨送金を受けている者は物価高騰を凌いでいけるが、そうでない者の日常生活は青息吐息だ。   4月半ばには第8回共産党大会が開かれ、通貨一本化政策を含む経済建設状況の分析、見直し、展望がなされる。   米国に対玖経済封鎖緩和の方針を打ちだしているバイデン政権が出来たのは、キューバにとり当面最大の好条件だ。だがコロナ禍COVID19で基幹産業の

赤道国大統領選挙決選、2位進出者は誰か

   エクアドールで2月7日実施された大統領選挙は、4月11日実施予定の決選に2位で進出する候補が12日時点で決まらず、国家選挙理事会(CNE=中央選管)は部分的に開票をやり直すことになった。     選管は11 日、開票率99・94%に達した。うち13・64%ポイント分がどの候補の得票かを同会合は判断する。開票の集計はアクタ(一定票数の結果をまとめた文書)ごとに電脳で行われるが、残るアクタは約1000だけとなっている。     1位進出者は、得票率32・70%のアンドレス・アラウス候補(36、UNES=希望連合)が確定している。だが2位は、ギジェルモ・ラソ候補(65、CREO=希望創出運動)が19・74%となり、ヤク・ペレス候補(51、パチャクティク)の19・38%を追い抜いた。    両候補の得票差は0・4ポイント以下という超僅差。「疑問票」も含め点検される。選挙前の支持率調査では優位を保っていたラソは、「番狂わせ」と受け止められるほどに躍進したぺレスの前で苦戦した。    逆転されたペレスは11日、選管に「開票不正」を訴え、2位を争う両候補の票を数え直すよう要求した。その結果、★ラソ、ぺレス両候補陣営の合意の下、CNEは12日、グアヤス州の全票と他の16州の半数票を数え直すと発表した。グアヤス州都グアヤキル一帯はラソの地盤。    4位にも左翼系候補ハビエル・エルバスが付けており、アラウス、ぺレスが左翼系であることから、今選挙の「左傾傾向」が明確になっている。    左翼進歩主義者を自認するラファエル・コレア前大統領の後継者として政権に就いたレニーン・モレーノ現大統領は、国際通貨基金(IMF)から対外債務返済のための緊縮財政政策を迫られて実施。コロナ禍COVID19による経済社会の停滞と相俟って、国民生活は苦しい。    このため、モレーノよりも一層保守的で右翼性の強い富裕な銀行家ラソに逆風が吹いたと言える。ラソは前回選挙でモレーノに惜敗したが、最後まで敗北を認めなかった。 ▼アラウスが大同団結呼び掛け    決選進出が決まっているアンドレス・アラウス候補は2月10日記者会見し、今選挙で多人種国民団結と社民主義(左翼・進歩主義)の支持票が70%に達したと前置きし、4月の決選に向けて同じ傾向にある者は団結しよう、と呼び掛けた。 ▼「アラウス政権が出来ても関与しな

エクアドールで大統領選挙実施、決選へ

    エクアドール(赤道国)で2月7日、正副大統領、137国会議員、5アンデス議会議員を選ぶ総選挙が実施された。中心は大統領選挙で、16人が出馬した。有権者は1310万人。  当選条件は得票率50%以上、もしくは40%以上で2位候補に10ポイント差をつけること。最有力候補アンドレス・アラウス(36)=希望連合(UNES)=が「40%・10ポイント差」を満たして当選するか、そうならずに4月11日の決選に向かうかが焦点だった。  ★だが8日、開票率99・25%段階でアラウスは32%で第1回投票での当選はなく、1位で決選進出が確定した。2位は最終確定はしていないが、20・10%のヤク・ぺレスが19・49%のギジェルモ・ラソを僅差でリードしている。   アラウスは、ラファエル・コレア前大統領を師と仰ぐ左翼進歩主義者。留学中だったメキシコ市で出馬登録したため、エクアドール国内では投票できなかった。  決勝進出が決まった8日の記者会見でアラウスは、「中央銀行民営化に反対する」と表明。新自由主義経済政策を規制する方向性を示した。   ラソ(65)は商都グアヤキルを地盤とする右翼・保守派の銀行家で、機会創出運動(CREO)候補。3度目の出馬だ。ぺレス(51)は、中道左翼の先住民運動パチャクティクの候補。  ぺレスは8日、決選進出を意識して、「コレア(前大統領)はラソが決選に進出するよう画策している」と、アラウスの背後にいるコレアを非難した。アラウスにとり、左翼傾向の同じぺレスよりも、右翼ラソの方がやりやすい相手だからという理由からだ。  当選者は5月、レニーン・モレーノ大統領に替わって政権に就く。任期は4年。国会は1院政。  この国ではコロナ疫病COVID19に26万人が感染。投票所にはマスク姿が行列をつくっていた。

米民主党が対玖経済封鎖解除法案を上院に提出

   米上院に対玖経済封鎖解除法案が2月5日提出された。1961年にケネディ政権が封鎖を発動して以来、上下両院で民主党が決定権を持つ状況下で、この種の法案が提出されたのは初めて。   提出したのは上院財務委員長ロン・ワイデンら4議員。法案名は「2021年玖米通商法」案。大統領権限で決まる封鎖以外の、封鎖を法制化してきた1961年対外援助法第620章a、92年キューバ民主法(通称トリチェリ法)、96年キューバ自由民主連帯法(ヘルムズ・バートン法)は、新法が制定されれば失効する。   バイデン米政権は、大統領権限で決まる封鎖については緩和する方針を明らかにしているが、封鎖諸法廃止という議会決定に挑む根本的な封鎖解除政策を、民主党が政権補足後20日足らずで打ち出したことで、米政府と政権党の対玖政策の輪郭が明瞭になった。 ▼玖政府が新たな自営業枠組策定   玖政府は2月5日、自営業者に従来認可されてきた127事業種を廃止し、新たに自営業が禁止される124事業種を定めると発表した。124種以外の2100職種は自営業が可能となり、国民は歓迎している。禁止124種は後日公表される。   4月の第8回共産党大会で公式決定されるもよう。政府は最近、獣医の自営化を厳しく罰する決定を下している。これが124種に含まれるのは疑いない。   一方、マルタ・フレイター労働・社会保障相は5日、労働者60万人が自営業者に雇用されていると明らかにした。就業者の13%に当たる。被雇用者も自営業者に含まれてきた。 ▼バイデン政権が封鎖一部緩和へ   ロサンジェルスタイムズが2月12日報じたところでは、バイデン米政権は近く、米国人による対玖旅行と送金を自由化する見込み。オバマ元政権が両方を自由化したが、トランプ前政権が極度に制限、事実上、禁止状態にある。

VEN国会ビル爆破未遂事件が発覚

    ベネズエラのホルヘ・ロドリゲス国会議長は2月5日記者会見し、米諜報謀略機関CIAの在コロンビア要員からそそのかされたVEN人元国会警備職員が国会施設を爆破しようと謀った、と明らかにした。  容疑者リカルド=アルべルト・グリジェー=アルバレスは逮捕され自白したという。その「自白録音音声」が公表された。  グリジェーは1月26日に爆弾事件を決行する手はずだった。爆弾は、カラカス市内中心部にある国会議事堂に付随する国会ビルの5,6両階で、そおには国防委員会などある。議事堂で本会議が開かれている時間帯を狙っていた。  グリジェーは5000米ドルで犯行を請け負っていた。一般公務員給与がドル換算で月数ドルのVENで5000ドルは大金だ。  キューバ諜報機関に支援を受けているVEN諜報機関はCIAコロンビア要員とグリジェーの関係を探知、容疑者逮捕に漕ぎ着けたもよう。  ロドリゲス議長は、対VEN謀略を続けてきたイバン・ドゥケCOL大統領の関与は明らかだとして、その解明を要求した。  VENでは1月5日、マドゥーロ政権の政党PSUV(VEN統一社会党)以下の政権党連合GPP(大愛国軸)が絶対多数の新国会が開会。トランプ前米政権が傀儡として支援していたフアン・グアイドー派が多数派だった旧国会はついえた。  CIAが今爆破未遂事件に関与したとすれば、トランプ期か1月20日発足のバイデン現政権下でか、いつCIAが関与を決定したかが問われることになる。 ▼グアイドー派の反国家行動を調査  VEN国会の「反国家重大犯罪調査特別委員会」は2月5日、グアイドー前国会議長派による反国家行動に関する報告書を11日に提出する、と明らかにした。  一方、パナマ政府は2月4日、パナマ駐在の「グアイドー派VEN大使」の外交官資格を1月8日に取り消した、と発表した。 ▼FARC残党と戦闘  VEN陸軍密林歩兵旅団は2月5日、オリノコ川に面したアマソニア州都プエルト・アヤクーチョ近郊で、COLゲリラ「FARC」(コロンビア革命軍)のイバン・マルケス司令率いる残党部隊の細胞部隊と戦闘、少なくとも死者6人が出ている。死者が兵士かゲリラかは公表されていない。 ▼大統領がノルウェー代表と会談  ニコラース・マドゥーロ大統領は2月7日、来訪中のノルウェー代表団と会談したと明かにした。同代表団はVEN政府・反政府野

ブラジル検察庁「ラヴァ・ジャト」捜査チームが解散

   ブラジル検察庁は2月3日、伯内外に波及した一大贈収賄事件「ラヴァ・ジャト」特別捜査検察官チームが1日解散したと明かにした。今後は組織犯罪取締活動検察官グループが同事件を担当する。   同チームは、ヂウマ・ルセーフ政権下の2014年に結成され、伯大手建設会社オデブレシ―や国営石油ペトロブラスなどの絡み、内外の政治家ら多数が関与した贈収賄事件の解明に当たった。   チームの中心にいたのはセルジオ・モロ検事で、同検事の最大の狙いは、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァの政治生命を断ち、労働者党(PT)政権に終止符を打つことだった。   ルーラは大統領を2期8年務め、後継のルセーフ大統領の2期目任期終了後、再び政権に復帰する準備を進めていた。財界、軍部、米国と通じる伯保守・右翼勢力は、連続5期20年に及びかねないPT政権を潰すため、ルーラを汚職容疑で投獄、ルセーフを些細な嫌疑でリオ五輪直後の2016年8月末、国会で弾劾、解任した。    ルーラは当選確実だった18年の出直し大統領選挙出馬を禁じられ、極右の元軍人ジャイール・ボウソナロが当選、19年元日から政権にある。   モロ検事はボウソナロ大統領から論功行賞として司法相に抜擢されたが、ボウソナロの息子の不正事件のもみ消しを巡って対立、更迭された。モロは過去を反省、20年後半からルーラに「和解」の歩み寄りを見せている。   伯検察チームには、オバマ元米政権をはじめ米当局が協力、証拠情報などを提供した。その効力もあって、ブラジルではルーラ元大統領、国会上下両院高官、オデブレシ―社長ら要人多数が逮捕、起訴され、収監された。   ルーラは法廷闘争で容疑の約半分は晴らしたが、依然保釈の身。だが22年の大統領選挙出馬を目指し運動している。ルーラが出馬を認められれば、再選を狙うボウソナロはコロナ禍対策の無策などで評判が悪く、当選が難しくなる。   ラヴァ・ジャト事件で、伯国内では約500人が起訴され、200人弱が有罪となったが、国外ではアレハンドロ・トレード秘、リカルド・マルティネリ巴、マウリシオ・フネスESの各大統領経験者が投獄された。アラン・ガルシア秘元大統領は逮捕される当日、リマの自宅で拳銃自殺した。   またアルべルト・フジモリ元秘大統領の娘ケイコ・フジモリ元国会議員(現大統領候補)も収監された。PPクチンスキ元秘大統領

米国の対玖経済封鎖59年の「損害1444億ドル」

   ケネディ米政権が1962年2月3日に最初の対玖経済封鎖令(政令3447)を発動してから、この2月3日で59年が過ぎた。ブルーノ・ロドリゲス玖外相は同日、「この封鎖は東西冷戦期に始まり依然続いている最も長い(経済)戦争だ。だが失敗が証明されている」と述べた。    玖側統計では、過去約60年間の封鎖による被害は総計1444億1300万ドルに及ぶ。1992年以来、一昨年まで国連総会は連続28回、米国の対玖経済封鎖に反対する決議を可決してきた。昨年はコロナ禍により、討議と採決が今年6月に延期された。    バイデン米政権は、トランプ前政権がマイアミを中心とする玖系市民らの要望を容れて形振り構わず強化した封鎖政令を解除する方針だ。ドナルド・トランプは昨年11月の大統領選挙で敗北したが、フロリダ州では勝っている。    玖外相発言は「封鎖記念日」恒例の行事ではあるが、今回は米新政権の封鎖緩和策を待つ身であるため、発言は控えめだ。 ▼玖情勢専門家を起用    バイデン政権はこのほど、国務省キューバ問題・移民調整官に専門家のエミリー・メンドゥララを任命した。ジョンホプキンス大学で、玖問題専門家ウェイン・スミス教授の教え子だった。スミスは1979~82年、ハバナの米利益代表事務所長を務めた。 ▼「テロ支援国家」指定を外せと前COL大統領    ノーベル平和賞受賞者のフアン=マヌエル・サントス前コロンビア大統領は2月2日、バイデン米政権に向けて、トランプ前米政権が退陣間近だった先月、キューバを「テロ支援国家」に再指定した決定を理不尽として早急に覆すよう要請した。 ▼玖芸術家らが文化相更迭を要求    玖反体制派芸術家らの集団「11月27日運動」(M27N)は2月3日、人民権力全国会議(ANPP、立法府)に対し、アルピディオ・アロンソ=グラウ文化相を更迭するよう要望書を提出した。民間の集団が閣僚更迭を権力機関に求めるのは極めて異例。    同運動の芸術家らが先月27日、対話を求めて文化省前に結集したところ、アロンソ文化相と部下たちから暴力を振るわれた。ただし、この出来事を大きく伝えた「視聴覚雑誌・玖ADN」の当事者は、取材前に200ドルの現金を受け取ったと明かにしている。    

米政府がVEN港湾空港業務取引禁止を解除

     米財務省は2月2日、ベネズエラの港湾と空港の業務に関わる資材の商取引再開を(希望する法人などに)許可した。これはバイデン政権によるマドゥーロVEN政権に対する最初の経済封鎖緩和策であり、国交が途絶えている両国関係の打開に向けVEN政権の出方を探る米側が打ち上げた最初の打診気球である。   だが、VEN側が欲しくてたまらない、重質油を軽質油に変える希釈剤の取引をはじめ重要物資の輸出入の禁輸は再確認された。   港湾に関して米側は、VEN港湾庁(INEA)との取引を禁じた2019年8月の決定および、同年11月の別の決定を見直した。   アンソニー・ブリンケン米国務長官はマドゥーロ政権に対し厳しく対応する方針は明らかにしているが、対VEN政策の具体的内容は明示していない。ジョー・バイデン大統領は、国務省の政策決定に先立ち、財務省を使ってVENに一定の歩み寄りを誘いかけた形だ。   VENは2019年1月、当時のトランプ米政権がグアイドー傀儡政権を擁立したため米国と断交。その後、対VEN軍事侵攻を支援したコロンビアと断交。先月には、東隣のガイアナの漁船を拿捕したことから、同国に断交された。 ▼ノルウェーが対話仲介か   ノルウェー政府特使が1月末にカラカス入りし、VEN政治状況の打開を図るためマドゥーロ政権と話し合いに入った、との情報が2月3日流れた。ニコラース・マドゥーロ大統領は、自身の2025年までの任期完遂を欧米が認めるのと引き換えに「自由な地方選挙実施」をまず提案した模様という。   ▼グアイドー逮捕を、と国会副議長   イリス・バレ―ラVEN国会第1副議長は2月3日、「フアン・グアイドーに遭遇したら直ちに手錠をかけ、検察庁に引き渡す。彼は人民の敵だ」と述べた。グロボビシオンTVの定例番組によるインタビューで語った。   グアイドは国会議長だった2019~20年、トランプ前米政権の支援を受けて、軍事クーデターなど暴力的政変の陰謀に何度も加担、ことごとく失敗した。 ▼「民族尊厳の日」祝う   故ウーゴ・チャベス前大統領の「ボリバリアーナ革命」の原点となった「4F」(1992年2月4日の軍事クーデター(未遂)記念日)29周年の2月4日、カラカス市内の丘陵にある「山の兵営」(チャベス廟)で記念式典が催された。  ディオスダード・カベ―ジョ政権党国会議員団長(元陸

エル・サルバドール選挙戦で銃撃、7人死傷

  エル・サルバドールでは2月28日、1院制国会の議員84人、全国262市長、262市の市会議員、および中米議会議員(約20人)を選ぶ大型選挙が実施される。これを前に極右のナイブ・ブケレ大統領の政党「新理念」(NI)党と、左翼のFMLN(ファラブンド・マルティ民族解放戦線)との間で激しい選挙戦が展開されている。  そのような状況下で1月31日、首都サンサルバドール市内で、FMLNの同市長候補ロヘリオ・カナレス陣営の情宣車が3人組に銃撃され、FMLN党員2人が死亡、5人が負傷し病院に搬送された。  警察は3人組を逮捕したが、うち2人は負傷している。この2人に反撃し負傷させたFMLN党員2人も逮捕されている。銃撃容疑の負傷者が入院した5人に含まれているか否かは不明。容疑者の一人は、保健省配属の内務省要人警護局員と判明している。  FMLNのオスカル・ディアス書記長は、「1992年1月の内戦和平合意以来最悪の事件の一つ」と指摘した。また同党の二ディア・ディアス国会議員団長は、ブケレの不寛容な言動が今回の事件を誘発したと、大統領を糾弾した。二ディアは内戦中、伝説的なゲリラ幹部の一人だった。  ラウール・メララ検事総長は全政党の党首に対し、2月1日会合し善後策を練るよう要請した。  2期10年のFMLN政権の後を受けて一昨年就任したブケレは少数与党のため、最大野党FMLNと国会審議で対立してきたが、2月末の選挙ではNI党が躍進する公算が大きい。  それを見越して強気の大統領はこの1月、恒例の和平記念式典を中止した。これにより、白熱する選挙戦と相俟ってNIとFMLNの間に一層険悪な空気が醸されていた。  ブケレは昨年、組織犯罪撲滅のための予算1億900万ドルを国会で成立させるため、本会議場に重武装の陸軍部隊を配置するという暴挙に出た。  ラ米でブケレは、ボウソナロ伯、ドゥケCOLの両大統領らと並んで評判が良くない。 ▼対外債務膨らむ  エル・サルバドール中銀は2月2日、同国の対外債務は2020年末、226億2253万ドルに達したと明かにした。昨年はコロナ禍対策費がかさみ、28億ドル強の記録的債務膨張を招いたため。21年には対外債務がGDPの94%にも達する可能性があるという。