米政府がハイチ大統領支持政策を転換

  ハイチではジョヴネル・モイーズ大統領の任期をめぐり、反大統領派の抗議行動と政府による弾圧が繰り返され、収拾がつかなくなってる。

 こうした政情混乱と社会不安が、1100万国民の大多数が貧困に苛まれているラ米最貧国を恒常的に覆っている。今また、そんな事態が尖鋭化している。

 大統領任期は5年だが、モイーズは2017年2月7日に就任したから任期は22年のその日までと主張し政権に居座っている。

 これに対し野党など反対派は、現大統領は16年に就任するはずだったが、当のモイーズが最初の大統領選挙で不正を働き、選挙が無効なったことから、暫定政権が1年続いたため、その1年を加算すべきであり、今年2月7日で5年の任期は終わっており、大統領は資格を失っている、との立場だ。

 モイーズは昨年初め国会を解散し、以後、国会審議無しの政令で施政を続けてきた。このため政策は恣意的、非民主的になりがちだ。これに公金横領など腐敗問題がくすぶり、大統領の評判はすこぶる良くない。

 ところがトランプ前米政権と、バイデン政権がモイーズを支持していたため、大統領の立場は揺るがなかった。しかし就任1カ月を機にバイデン政権は2月19日、モイーズ支持を取り下げ、「独立した司法の確立を支持する」と方向転換した。

 米国は、モイーズがこのところ理不尽な理由を付けて反対派の判事たちを更迭している司法介入問題に目をつけ、これをとっかかりとしてモイーズを揺さぶり、退陣、大統領と国会議員の選挙実施を促すという戦略に切り替えたことを意味する。

 「民主・人権重視」を外交政策の売り物にしているバイデン政権は、己の政策とモイーズ支持が矛盾することを認識したわけだ。

 地続きの隣国ラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国=RD)は、ハイチ情勢が緊迫すると、かならずハイチ難民の流入問題が起きるため、米政府の政策転換で一挙に事態が流動的になったハイチの動向を警戒している。

 

 

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