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ハイチ大統領・国会議員選と国民投票は9月同時実施へ

      ハイチ政府は、6月27日に予定していた新憲法制定の是非を問う国民投票を9月26日に延期した。野党勢の反対、コロナ禍、組織暴力団の活動激化などを受けて28日、延期が決まった。   この延期に伴い、9月19日に予定されていた大統領・国会議員選挙も9月26日に延期され、国民投票と同時に実施されることになった。 ▼首都で15人殺害事件   首都ポルトープランス市内で6月30日、組織暴力団員と見られる住民15人が殺害された。クロード・ジョセフ首相は7月1日、警官結社「ファントム509」の仕業と明らかにした。警官労組幹部が殺害された事件の報復として、 住民らを襲撃したという。  

ペルーで子どもにつける両親の苗字の順を自由化

    ペルー人は6月30日から、子供の姓となる父母の苗字を並べる順番を自由に選べることになった。スペイン語の習慣で、従来は名の後にまず父姓、次いで母姓を並べていた。    憲法裁判所は21日、国家身分・婚姻登録庁(RENIEC)を相手取った市民の訴えを要れ、「父姓が先、次いで母姓」と規定していた民法第20条を「ジェンダー平等上、好ましくない」として改正していた。    従来の並べ方は、父姓と母姓が簡単にわかり、便利ではあった。    メキシコの壁画家、故ダビー・アルファロ=シケイロスは、父姓アルファロでなく、ポルトガル系の母姓シケイロスを名乗っていた。    このように、どちらか一方の苗字を名乗るのはスペイン諸国で自由だが、シケイロスの国メキシコでも、公式文書には父姓、母姓の順に書くよう規定されている。    ポルトガル語ではスペイン語とは逆に、名の後に先ず母姓、次いで父姓を並べる。ジェンダー平等が叫ばれる世、苗字の並べ方の自由化は今後進むだろうが、それによって父姓母姓の区別は困難になってゆく。    日本では、「夫婦別姓」問題が起きているが、そのような問題は西葡両語諸国などにはもともとない。ペルーでは、とくに今後生まれる子に父母は自由に苗字の順を決められるようになった。    父親が認知しない子は母姓だけを持つが、今後、父親が認知すれば、子は母姓の後に父姓を付けられるようになった。    この民法改正により、成人は名前を2つまで自由に選べるようになった。両親から来た姓の順序も、正当な理由があれば替えられるようになった。

モンテシーノスの狙いは「対米工作」か

    ペルーでは、アルべルト・フジモリ大統領の元顧問ブラディミロ・モンテシーノス受刑囚が電話を通じて工作していた、決選結果変更を狙った陰謀事件の捜査が進んでいる。国防省は6月26日、捜査当局への全面協力を約束、検察庁は捜査を開始した。    モンテシーノスは、携帯電話を3~4個所持し、外部との連絡に用いていた。刑務所施設内の公衆電話は家族や弁護士との通話に使い、その陰で携帯電話を駆使していた。    28日には、モンテシーノスが米外交当局を通じて、「決選に不正があった」との声明を出させようと画策していたことが明らかになった。    そのためペドロ・ㇾハス元少佐を使って、弁護士やケンジ・フジモリ元国会議員に接触させた。モンテシーノスは、リマの米大使館および、ワシントンでのペルー大使館筋などを通じての米国務省当局者との接触を促すべく指示していたもよう。    在秘・米大使館は、ペルー選挙当局の職務遂行への悪くない評価を表明している。モンテシーノスらの裏工作を察知していたかどうかはわからない。    モンテシーノスは対米工作案と併せて、国家選挙審議会(JNE)の審議員3人を買収する「代替案(B案)」も温めていたという。審議員は全部で5人であり、3人を味方に付ければ、ケイコに有利な判断を下せることになる。3人には一人当たり100万ドルずつ渡す方針だったという。    検察は7月半ばまでにㇾハスとモンテシーノスを尋問する。    ペルーには、「いかにも影響力があるかのように振舞いたがっている」と、モンテシーノスを厳しく評する見方もある。    ペルーは6月29日を迎えており、次期大統領が未定のまま、7月28日の新大統領就任期日まで1カ月を切ってしまった。    一方、ケイコ・フジモリは28日、大統領政庁を訪れ、フランシスコ・サガスティ暫定大統領宛の書簡を渡した。米州諸国機構(OEA)など国際国際機関に決選結果判断について諮問するよう要請する内容と見られている。    OEA本部は、ワシントンの米国務省の近くにある。「OEAへの諮問」は、「対米工作」戦略と密接に絡んでいると言える。    ケイコは大統領との面会を望んでいたが、それは叶わなかった。モンテシーノスの工作が暴露されたことで、決選開票結果を覆しての「逆転当選戦略」は危い状態に陥っている。 ▼カスティージョ当選発表に近

ペルー世論:96%が「次期政権は全国民のためのもの」

      ペルーIPSOS社が6月27日公表した大統領選挙決選と次期政権に関する世論調査結果によれば、有権者の65%は開票結果判明後のケイコ・フジモリ候補の振る舞いに反対している。支持は30%。ケイコの基盤リマ市でも、53%が反対している。   開票結果で優位に立っているペドロ・カスティージョ候補への支持は48%、反対は47%。未知な部分の多い同候補への評価が割れていることを示した。   カスティージョに投票した理由は、「変化期待」が43%、「フジモリ一族政権復活反対」が27%。反フジモリ主義は弱まったとはいえ、依然根強いことを示した。   ケイコ支持の理由は、33%が「反共」、31%が「施政能力」。ケイコが決選で重点的に運動したカスティージョへの反共攻撃がかなりの効果を挙げていたことを表した。   優柔不断の印象を与えてきた国家選挙審議会(JNE)のやり方に53%が反対。選挙庁ONPE(中央選管)には49%が反対した。   また39%は、「決選は公正だったが不正があった可能性はある」とし、13%は「不正があった」と答えた。だが多くは公正だったと見ている。    ★次期政権について、実に96%が「全国民のための政権になれ」と答えた。「大統領独断」政権はわずか2%だった。これは有権者が、カスティージョ政権になる場合は「左翼主義と貧困層優遇政策中心主義は不可」、ケイコの場合は「富裕層優遇と強権支配は不可」と、それぞれ注文を付けたことになる。   カスティージョ政権となる場合、90%は、カスティージョの所属党PLのブラディミロ・セローン書記長を「公職に就けるべきではない」とした。またカスティージョが大統領になった場合、誰の意見を重視すべきかという設問には、36%がセローン、22%が「党派性なき専門家」、21%が穏健左翼政治家ベロニカ・メンドサと答えた。   さらに、次期政権の閣僚については、54%が「超党派で任命」、23%が「党派性なき専門家」、 16%が「大統領所属党政治家」と、それぞれ回答した。  ▼ケイコがOEAへの諮問提案   ケイコは6月26日のリマ支持者集会で、決選結果判断を米州諸国機構(OEA,本部ワシントン)に諮問したく、「カスティージョ候補に同意を求めたい」と述べた。また、フランシスコ・サガスティ暫定大統領に28日にも会って、OEAへの諮問を要請したい

ウルグアイお手盛りクーデターから48年

    ウルグアイは6月27日、軍事クーデター48周年を迎えた。1973年のこの日、ホセ=マリーア・ボルダベリ大統領が軍部・警察と組んで自作自演のクーデタ―を起こし、憲法停止、国会解散、言論の自由停止、軍・警察への治安維持上の自由裁量権授与に踏み切った。    1959年元日のキューバ革命後、ラ米諸国にゲリラ活動が拡がり、ウルグアイでは「民族解放運動ートゥパマロス」(MLNーT)が活動を激化させていた。    ボルダべリの前のホルヘ・パチェコ=アレコ大統領は70年に軍部に治安維持を一任。以後、軍・警察とゲリラの戦闘が日常化していた。72年に就任したボルダベリは73年、クーデタ-に踏み切った。    軍民強権政権は85年まで12年間続き、約200人が抹殺され、多くが拷問された。その殺害・拷問を恣にした軍人の一人、退役大佐ホセ・ガバッソ受刑囚(81)は昨26日、病死した。          2011年当時のホセ・ムヒーカ大統領は、軍部が民政移管の条件としていた「訴因時効法」など人道犯罪免罪のための法的措置を覆し、責任者を起訴。ガバッソも同年、殺人、拷問など28件で有罪となり禁錮25年の実刑に服していた。近年は自宅軟禁だった。    ムヒーカは、キューバ革命やチェ・ゲバラに影響され、トゥパマロスの幹部として戦い、投獄・脱獄を経験。銃弾を浴びせられ、生死の境をさまよった経験の持ち主だ。夫人のルシーア・トポランスキ前副大統領は、ゲリラ時代からの同志。    73年6月のウルグアイ政変は、同年9月11日のチリ軍事クーデターの先駆けとなった。ウルグアイとチリはラ米では長期民政を誇る国だった。    またペルーのアルべルト・フジモリ大統領は92年4月、軍部と組んでお手盛りクーデターを起こし、憲法停止、国会解散により強権政権を築いたが、ウルグアイ型に倣った自作自演の政変だった。

ケイコ派の背後に「モンテシーノスの影」

       ペルー最高裁リマ支部は6月25日、ケイコ党FP(人民勢力)が国家選挙審議会(JNE)に提出していた投開票文書保護の要請を却下した。さらに、提出書類に不備があり、3日以内に修正しなければ、この案件を閉じる(御蔵入り)と発表した。   JNEは同日、検察代表の前審議員ルイス・アルセの規律違反についての審議を開始した。   決選終了後のケイコ派の一連の異議申し立ての背後に、アルべルト・フジモリ元大統領の側近中の側近だったブラディミロ・モンテシーノス元補佐官の策謀がうごめいていたことが明るみに出された。モンテシーノスは国家諜報機関の長でもあった。   ★フェルナンド・オリべ―ラ元内相は24日から25日にかけて、カヤオ海軍基地内の最重要犯罪者収監用刑務所にいるモンテシーノスが電話で画策していた事実を、音声記録とビデオ映像を公表して暴露した。   それによると、モンテシーノスは6月10日、刑務所内の公衆電話で、かつての部下、ペドロ・ㇾハス退役少佐と通話し、保守派弁護士ギジェルモ・センドーンと接触するよう指示した。同日夜、元少佐はリマ市内で同弁護士と会合したが、その場でルイス・アルセJNE審議員(当時)の名前が出た。   翌11日、JNEは、ケイコ派の「開票不正異議申し立て」書類の受理期限を延長すると発表した。   ㇾハスは23日、ケイコの実弟ケンジ・フジモリ元国会議員と会合した。その日、モンテシーノスは再びㇾハスと通話し、弁護士センドーンにJNE工作をさせるよう新に指示した。   ケイコの父アルベルトは2000年大統領選挙に強引に出馬、3選を果たしたが、モンテシーノスが国会議員買収工作をしているビデオ映像が暴露されたのをきっかけに失脚した。   モンテシーノスは、ケイコが大統領になったら父親を恩赦すると公約していることから、ケイコの「決選勝利」が自身の禁錮刑短縮にも好影響を及ぼすと踏んでいるはずだ。   元内相の告発に、カヤオの海軍司令部は25日、「モンテシーノスの通話は家族や弁護士とのやり取りだと承知しているが、(告発を受けて)調査する」と表明した。   ケイコ党FPの多数派工作により国会で弾劾されたマルティン・ビスカラ元大統領は25日、「ケイコは三度敗れたが、敗者としていかに振舞うべきかをまだ学んでいない」と批判した。   16年の前回大統領選挙決選にケイコは

カラボボの戦い200周年にALBA首脳会議開く

   ベネズエラの独立を決定づけ「大コロンビア」建国に道を開いた1821年の「カラボボの戦い」200周年記念日の6月24日、カラカスで米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)の第19回首脳会議が開催された。   その間、VENカラボボ州の古戦場跡で国軍3000人が軍事行進した。ニコラース・マドゥーロ大統領はカラカスの首脳会議上から記念演説し、軍事行進開始の号令をかけた。ALBA首脳らは、マドゥーロとともに中継大画面で軍事行進を見守った。   首脳会議にはマドゥーロ以下VEN政府高官、ボリビアのルイス・アルセ大統領、ドミニカのルーズヴェルト・スケリット首相、セントヴィンセント&グラナディーンのラルフ・ゴンサルヴェス首相、ボリビアのエボ・モラレス元大統領、赤道国のラファエル・コレア元大統領、コロンビアの人権活動家ピエダー・コルドバ元上院議員らが出席した。   ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領とキューバのブルーノ・ロドリゲス外相は遠隔参加した。   各首脳は演説し、共同声明を発表して終了した。声明には、米政府による強制措置(制裁)糾弾、コロナワクチンの公平分配、ALBA加盟諸国の統合促進などが盛り込まれた。   ▼対VEN経済封鎖見直しか   米加両国政府とEU(欧州連合)は6月25日、「ベネズエラ民主化促進のため、同国への経済制裁(封鎖)を見直す可能性の検討を早める」と表明した。

ペルー選挙審議会の「ケイコ派」審議員を更迭

      ペルーの国家選挙審議会(JNE)ホルヘ・サラス議長は6月24日、検察庁代表の審議員ルイス・アルセ検事の審議員資格停止を発表した。アルセは23日、審議員を続ける意欲がなくなったと表明、交代を求めていた。   アルセは「ケイコ陣営に肩入れし、審議会による当選者決定を遅らせてきた」と批判されていた。検察庁は24日、アルセの後任にビクトル・ロドリゲス検事を指名した。   一方、ケイコ・フジモリ候補(人民勢力党)の過去の資金洗浄事件(不正選挙資金問題)を担当しているホセ・ペレス検事は24日、ケイコ再収監を求めて裁判所に控訴した。法廷は21日、ぺレスによるケイコ再収監要請を退けている。   24日は南半球の冬至で、旧インカ帝国首都クスコで恒例のインティ・ライミ祭が催された。式典に出席したフランシスコ・サガスティ暫定大統領は、「我々の真の敵は不寛容、人種主義、差別、暴力だ」と指摘。次期大統領が決まらない状況を踏まえて、国民に寛容と団結を訴えた。   この日、首都リマにある国家選挙審議会(JNE)前の路上で、決選進出両候補支持の若者たちが棍棒をもって渡り合った。   カスティージョ支持派は7月6日、決選開票結果が出た後も当選者が決まらず民主が危機に瀕しているとして、全国ストライキを計画。ペドロ・カスティージョ候補の所属政党PL(自由ペルー)もスト参加を表明している。   リマ駐在の欧州連合(EU)およびEU加盟諸国大使たちは24日、決選は正常に実施されたと表明。JNEやONPE(国家選挙過程事務所=選挙庁=中央選管)の立場を支持した。   ニューヨークタイムズは23日、「ケイコの戦略は明白だ。選挙結果を否定するトランプ型の虚偽戦術を展開している」と指摘。「ケイコ陣営の法律チームは、社会に不安を広め、暴力、軍事介入を招くような選挙結果否定の意図を持っている」と非難した・   ペルーの保健衛生当局は、次期大統領が決まらない混迷状況が、コロナ禍COVID19の異株増殖の懸念が高まっている折、対策を怒らせかねない、と強い懸念を表明した。      

国連が29回連続でキューバ封鎖解除要求決議採択

      国連総会は6月23日、1992年以来29回連続で、米国による対玖経済封鎖の解除を要求する決議を採択した。賛成184カ国、反対2(米国、イスラエル)、棄権3(ブラジル、コロンビア、ウクライナ)だった。    昨年2020年10月に採決されるはずだったが、コロナ禍COVID19蔓延により中止され、今回に延期されていた。今年10月に2021年分の決議が採決されるかどうかは定かでない。    ブルーノ・ロドリゲス玖外相は採決に先立ち演説。ケネディ政権期の1962年2月に全面経済封鎖されてから59年間、封鎖がいかにキューバを害してきたかを訴えた。とりわけ昨年来のコロナ危機で打撃が大きいことを強調、「大量虐殺的政策を直ちに廃止すべきだ」と訴えた。    これに対し米国は、「封鎖は玖国民のためになる」と、独自の論理を展開した。封鎖はあくまで共産党一党体制に対する政策、という立場だ。    米国はオバマ政権期に一度、棄権したことがある。その時はイスラエルも棄権した。    極右政権下にあるブラジルとコロンビアは棄権した。とくにコロンビアは米国の軍事同盟国であり、米軍の南米戦略の要として、棄権によって米国に寄り添った。    ウクライナは、対露戦略上、米国の支援が不可欠との立場から棄権した。    この総会決議には遵守義務はない。だが、米国の孤立を際立たせる効果を持つ。堅固な日米安保体制を組む日本さえも、米国の対玖封鎖には反対している。 ▼ロシアが対玖支援を語る    セルゲイ・ショイグー露国防相は、モスクワで6月22~24日開催の安全保障会議で、軍事を含むさまざまな外部圧力に直面してきたキューバ、ニカラグア、ベネズエラは、歴史的にソ連ーロシアと協力関係にある、と述べた。    また、ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領が、ロシアに最新兵器供給とニカ軍要員への専門的訓練を求めてきたことも明らかにした。 ▼フロリダ州で「反共教育」法成立    米フロリダ州で6月23日、全州立学校で反共教育を授業科目に組み込む法律が成立、施行された。同州在住のキューバ、ニカラグア、ベネズエラ出身者らがロビー活動した結果で、同3国、特にキューバでの「人権蹂躙」などが授業で取り上げられることになった。 

ペルー決選:ケイコ陣営、「再収監なし」で勢いづく

      ペルー社会は、大統領選挙決選から2週間が過ぎてもの勝者が決まらず混迷の度が深まっている。そんな状況下の6月21日、法廷判事は、仮釈放中の候補ケイコ・フジモリ(46)の再収監を求めた検察の要請を却下した。   ケイコは、今回を除く過去2回の大統領選挙で決選まで進んで敗れたが、これら両選挙で用いた選挙資金に含まれていた120万ドルが伯建設大手オデブレシ―(オデブレヒト)社からの賄賂で、それを選挙資金に回したことから「資金洗浄」、「組織犯罪」として19年に起訴され投獄された。   1年を超える収監を経て仮釈放され、今選挙に出馬し、三度決選に進出した。その当選者が決まらない間、禁錮30年の実刑を求刑したい構えの検察は、法廷にケイコの再収監を求めていた。法廷は、「検察の要請には根拠がない」として却下した。   無罪になったのではなく、裁判が再延期されただけだが、ケイコは大統領になれば、任期の5年間は不逮捕特権を享受できることになる。落選すれば収監される公算が大きい。   当面、再収監されないことになったケイコの陣営は勢いづき22日、国家選挙過程事務所(ONPE、選挙庁=中央選管)に対し、決選投票に参加した有権者の名簿ないし住所録の開示を目的とする「文書保護」を法廷に要求した。投票結果を精査するためという。   同陣営はまた、ONPE(オンぺ)の上部機関で選挙裁判所でもある国家選挙審議会(JNE)に対し、決選開票結果に関する異議申し立て書類提出期限を延長するよう求めている。   決選投票を振り出しに戻すようなケイコ派の動きに、「当確者」がいつ発表されるのかわからなくなり、ペルー社会の混迷と不満は高まる一方だ。   そんな状況を静観していた米国だが、リマの米大使館は22日、「ペルーの制度を信頼し、JNEの判断を待ちたい」と表明した。これは、時間をかけて投票結果を精査すべきだ、との意思表示でもある。   一方、ONPEの開票集計で優位に立つペドロ・カスティージョ候補(51)の支持者は、アンデス山岳・高原地帯など遠隔地からリマに駆け付け、自由ペルー(PL)党本部前に集結して、公式発表を待っている。   カスティージョは、政財界人らとの会合を重ね、7月28日の就任に備えつつある。 ▼軍事基地を開設   ペルー軍は6月22日、山岳渓谷地帯のサンミゲル・デル・エネ村に対ゲリラ戦

モラレス大統領は暗殺の危機にあったと元内相明かす

      2019年11月当時、ボリビア大統領だったエボ・モラレスが暗殺される危機に瀕していた。当時の内相だったカルロス・ロメ―ロが6月19日、同国メディアに明らかにした。   警察は、その前月10月段階から政府に反逆し、最高上司の内相にもモラレス大統領にも従わず、反政府右翼勢力と連携して、政権打倒工作をしていた。   モラレスもロメ―ロも殺害の陰謀を察知し、捕らわれないよう細心の注意を払いながら、行動していた。やがて軍部が、右翼勢力や警察などの意向を代表する形でモラレスに退陣を迫った。モラレスは、既に始まっていた流血の拡大を回避するため辞任、クーデターが成立した。   その後、メキシコ政府機で亡命するため、コチャバンバ州内の空港に向かうモラレス一行は、引き続き暗殺の陰謀を恐れて、迂回路をとったり森林地帯に隠れたりしながら、空港に接近していたった。   メキシコ機に搭乗した後にも、クーデター派の空軍司令官が離陸許可を出さないなど、ぎりぎりの駆け引きが続いたが、結局は離陸。モラレスは側近らとメキシコに到着した。   モラレスは、このボリビア脱出行について著書で詳しく語っているが、ロメ―ロが証言したのは初めて。   昨年11月、アルセMAS政権が発足。クーデター政権下の1年間に破壊された経済・社会建設を再開、事業復旧に全力を挙げている。   ペルーのペドロ・カスティージョ次期大統領候補が模範にしているのは、モラレスーアルセ両政権による反新自由主義の民族主義経済路線である。   元大統領となったモラレスは依然、政権党MAS(社会主義運動)の重鎮だが、コチャバナンバ州内で淡水魚養殖業を営み、生計を立てている。  

チリ制憲会議が新憲法起草に向け7月4日初会合

   チリがいよいよ、現行軍政憲法に替わる民主憲法制定に向け、その新憲法の起草作業を開始することになった。セバスティアン・ピニェーラ大統領は6月20日、制憲会議(CC)は7月4日、首都サンティアゴ市内にある国会議事堂(上院)で初会合を開き、正副議長を選出する、と発表した。(下院はバルパライソ市にある。)   CC代議員155人は「ジェンダー平等選挙」として5月15~16両日実施された選挙で、男性78人、女性77人が選出された。CCは立法権を持たないため、「議会」でなく「会議」。   同会議は9ヶ月ないし12カ月で起草作業を終え、終えた日から60日後に国民投票で承認の是非を問う。各条項は3分の2(104)の多数決で決められる。   ピノチェー軍政期の1980年に制定された現行憲法は、大規模な民営化を柱とする新自由主義に立つ。制定から41年、弱肉強食の新自由主義により貧富格差が拡大固定化した。   生活苦に怒った多数派は2019年10月から20年3月まで5カ月に及ぶ反政府街抗議行動を展開した。それは「反乱」と呼ばれた。   「反乱」鎮圧が不可能となったピニェーラ保守・右翼政権は同年19年11月15日、政権党と野党諸党との会合で新憲法制定の是非を問う国民投票実施を決めた。その国民投票は20年10月実施され、賛成80%で新憲法制定とCC開設を決めた。   全国化した街頭での「反乱」から生まれたCCだけに、政権党代議員は単独で拒否権を握るのに必要な52人に遠く及ばぬ37人に留まった。   代議員17人は、マプーチェなど先住民族に割り当てられ、各民族内の選挙によって選ばれた。最大民族のマプーチェは、軍政憲法下で制定された弾圧法の廃止や自治権、領土権などを求めている。         

米紙Wポストも「トランプ型」とケイコを批判

      ペルー大統領選挙決選結果に対するケイコ・フジモリの異議申し立てについて、「証拠なしに選挙結果を覆そうと謀るトランプ型」との批判が秘国内ですでに出ている。米紙ワシントンポストも6月17日、敗北が明白な選挙結果を認めない「トランプ型」だと指摘した。   同紙は、こうした傾向はケイコだけでなく、イスラエルのネタニヤフ前首相にもあったように世界で広範に観られる、とした。「トランプの悪い模範が拡散している」との見方は、あちこちで出ている。   ラ米では4月11日、エクアドールで大統領選挙決選が実施されたが、激戦に敗れたアンドレス・アラウス候補は潔く敗北を認めている。   一方、ペルーのエコノミストにしてジャーナリストのアウグスト・アルバレス=ロドゥリッチは17日、ケイコがこの先も政治家であり続けたいのならば「潔い敗北者」になるべきだと述べた。   アルバレスはまた、長年の取材経験から、イプソスの結果速報は過去30年間、間違ったことがなく、今回も、中央選管(ONPE)の開票結果はイプソス速報に収斂した、と語っている。   イプソスは6月6日の決選投票終了直後、ぺドロ・カスティージョ50・2%、ケイコ49・8%という勝敗速報値を公表。「誤差は1%」としていた。 ▼ケイコ党は「JNE判定を受け入れる」   ペルーのRPP(ペルー番組放送)が6月17日伝えたところでは、人民勢力(FP)党の法律顧問フリオ・カスティリョ―二は同放送に対し、JNEが「カスティージョ当選」という最終判断を下した場合、FPは法的手段に訴えることなく、受け入れるだろう、と述べた。  ★JNEは、決選投票半月後の21日にも当選判断を打ち出す可能性がある。そんな情報が流れている。   

原油輸出は14カ月間全くないとVEN大統領明す

     ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は6月15日、国営テレビを通じ、「VENは過去14カ月にわたり、原油を一滴も輸出していない。米国の制裁のせいだ」と述べた。     トランプ前米政権から続く経済封鎖(米国の一方的制裁)により、VEN国庫輸入は2013年度と比べ99%も減ってしまった、とも明らかにした。             VENは世界最大の原油確定埋蔵量を誇る大産油国でありながら、イラン原油を輸入している。国庫収入が激減したため原油採掘現場への投資が出来ず、生産も激減したためだ。苦しい原油事情でありながら、同盟国キューバに原油を送っている。       

赤道国前政権がボリビアに武器送り政変に加担か

    ルイス・アルセ大統領のMAS(社会主義運動)党ボリビア政権は、2019年10~11月の政変過程で、当時のレニーン・モレーノ赤右翼政権がボリビア軍と警察に弾圧用資材や機関砲弾を渡していた「多国間犯罪」を捜査中。人道犯罪として米州人権裁判所もしくは国際司法裁判所に訴えることを検討している。   武装決起した極右勢力は、軍・警察と結託。11月の政変に漕ぎ着けた。モレーノ政権は政変を側面援助したことで、政変に加担したことになる。   ボリビア政府の捜査では、19年10月の大統領選挙直前、アクアドールのモレーノ大統領はボリビア軍・警察に弾圧用の催涙ガスと銃弾を「貸与」した。   またエボ・モラレス大統領を追放したクーデターが起きた11月には、37ミリ長距離機関砲弾2400発、同短距離機関砲弾560発、手榴弾5000個、音響閃光弾500発を、やはり「貸与」した。事実上の武器輸出だった。極秘取引のため「国家関与の密輸」でもあった。   これらの弾圧資材や弾薬は、ボリビアでの一連の虐殺事件や弾圧に使われた。少なくとも37人が殺されている。   赤道国だけでなく、コロンビアとブラジルからも武器類がボリビアに送り込まれた。11月の政変後は、お手盛り就任したジャ二―ネ・アニェス非合憲政権暫定大統領が武器類の受け手だった。アニェスは逮捕され、さまざまな容疑で起訴された。   モレーノは任期切れの5月24日に退任。武器「貸与」でのコロンビアとの連携がエクアドール国内で暴かれた。     

「新時代が始まった」ーカスティージョが再び勝利宣言

      ペルー次期大統領候補ペドロ・カスティージョ(51)は6月15日、選管による決選得票再集計結果を受けて、あらためて勝利を宣言した。リマ市内の自由ペルー(PL)党本部で支持者の大群衆に向けて語りかけた。    カスティ―ジョは、「我々は共産主義者でもチャビスタでもない。労働者、闘士、企業者だ」と強調。対立候補ケイコ・フジモリ(46)が展開してきた反共攻撃を一蹴した。チャビスタは、故ウーゴ・チャベス前VEN大統領の作風や思想を支持する人々。    また、「ペルー国民の尊厳と一体化を強化する。だが政経利害を望んではならない。我々全員がきょうだいとして、祖国を発展させなければならない」と述べた。    さらに、「新時代が始まった。何百万人ものペルー人が尊厳と正義のために立ち上がった。多様性と歴史的な力を持つペルー国民は私を信頼してくれた。私の政府は全国民のためのものだ」と続けた。    カスティージョの経済顧問ペドロ・フランケは、「カスティージョ政権」は複数政党間の連立政権になると述べた。    だが国家選挙審議会(JNE)は、ケイコ陣営が申し立てた「開票時の不正」を精査中のため、当選者を依然発表していない。PL党幹部は16日、「2度目の開票結果も出ている」として、「カスティージョ当確」を宣言するようJNEに求めた。    JNEは別件として、「開票をめぐる虚偽情報が出回っている」と世論に警告している。    一方、ケイコは15日、「慎重に平和的にJNE審査結果を待とう」と、支持者に呼び掛けた。    アンデス高地では、カスティージョ支持の先住民や農民が各地で結集している。その一部がリマに到着しつつある。    その一人である52歳の女性は、「私たちは蔑まれ無視されてきた高地の怒れる人民だ。それを表明するためにリマに来た」と語っている。 ▼大統領らが選挙結果尊重を呼び掛け    フランシスコ・サガスティ暫定大統領、マヌエル・バレート枢機卿、オンブスマンのワルテル・グティエレスは6月15日、それぞれ個別に、決選結果を尊重するよう訴えた。枢機卿は、カスティージョ、ケイコ両候補が決選の前、宗教界代表の前で選挙結果尊重を誓い合ったことを指摘した。    

ペルー決選再集計:カスティージョが4万4000票勝る

     ペルー国家選挙審議会(JNE)は6月15日、中央選管ONPEによる決選開票のやり直しの終了を受けて、ペドロ・カスティージョ50・125%(883万5579票)、ケイコ・フジモリ49・875%(879万1521票)と発表した。得票差は4万4058票。    集計対象のアクタ(開票集計表)は8万6488枚だった。ペルー含むラ米諸国では、1票ずつでなく、100票単位ごとなどに開票結果をまとめたアクタを電算機にかけて集計する。    カスティージョは15日、在秘外国プレス協会(APEP)で会見し、「我々は民主の枠内で得票を守る。選挙機関がくだす最終判断を待つだけ」と述べた。    また、一部極右勢力が「決選無効」化を呼び掛けていることに触れて、「クーデターは許さない」と警告した。    これに対しケイコは同日夜、「集計されずに観察対象となっている約800のアクタが依然集計されていない」と指摘した。今回の再集計では、観察対象だったアクタ8枚も集計されたが、うち5枚はケイコ陣営が「不正」を指摘していた。    ケイコが「不正」を指摘し「無効」を主張するアクタには、山間部などの20万票が盛り込まれている。カスティージョの弁護士ロナルド・ガマラは、「独立後200年間、疎外され続けてきた僻地の民が今また権利を奪われようとしている」と抗議している。    一方、カスティージョ陣営は7月末の政権発足に備えて、閣僚候補らを集めながら、「政権担当後100日間」の政策策定に取り掛かっている。それを取り仕切る穏健左翼のベロニカ・メンドサは、カスティージョ発言の「穏健化」に努めてきた。    決選の選挙戦の中盤までカスティージョは、所属政党PL(自由ペルー)党首ブラディミロ・セローンの急進左翼政策を唱えていたが、終盤で穏健化した。国会で政権党が3分の1にも達しない状況下で、カスティージョは「現実的進歩主義」路線をとらざるを得ない。    メンドサは、その点を押さえて政策策定を進めている。セローンとの確執が表面化する可能性がある。    カスティージョの党PLは、7月からの新国会で37議席を持つ第1党ではある。べツィー・チャベス次期議員は、セローン党首が同党所属の国会議員を指揮管理することはない、と述べた。  

ペルー軍部元高官らが「開票不透明性」で異議唱える

     ペルー大統領選挙決選(6月6日実施)は、当選者が公式に決まらないまま1週間が過ぎる異常事態に陥っている。   9日夜(日本時間10日朝)、国家選挙過程事務所(選挙庁=中央選管=ONPE)は、ペドロ・カスティージョ(51)が6万8000票差でケイコ・フジモリ(46)を凌いでいるという最終開票結果を発表した。   これに対しケイコは、選挙裁判所でもある国家選挙審議会(JNE)に「開票不正」を訴えた。JNEは「不正」の訴えを9日までに限って受け、現在、当該アクタ(開票集計表)を精査している。   敗北を認めないケイコの在り方を、「トランプ型」と形容する論評が、ペルージャーナリズムに目立ちつつある。   昏迷状態が進行、両候補の陣営はリマ市内に待機し、公式発表を待っている。そんな状況下の14日、陸海空3軍司令官経験者である退役将官約60人が連名で、開票過程が不透明だと異議を唱える声明を発表した。   その筆頭は、フランシスコ・モラレス=ベルムーデス元軍政大統領が占めている。モラレス=ベルムーデスは1975年、米国と謀ってべラスコ=アルバラード将軍大統領の「軍事革命政権」をクーデターで倒した。   南米軍事政権諸国の「コンドル作戦」に加担し、左翼暗殺などの人道犯罪に関与した。このため国際刑事裁判所から終身刑を言い渡された。   近く満100歳に達する元軍部高官の最長老で、今回の決選投票も車椅子で投票所に行き、投票している。   声明は、「開票過程は透明性に欠け、異常で、不正があり得る状態だった」と指摘。ケイコ陣営に利する内容になっている。   これに対し、カスティージョ陣営の法律顧問フリオ・アリビスは14日、「クーデターを醸すような声明だ。退役軍人は介入すべきでない」と反駁している。   また同陣営の自由ペルー(PL)党は同日、「カスティージョが勝っている選挙区の票を無効にするという画策は絶対に受け入れられない」と表明した。 ▼国防省が退役軍人声明に遺憾表明   国防省は5月14日、「軍部の名前を政治目的に使ったのは遺憾だ。声明と国防省とは全く無関係だ。何らかの措置をとる」と表明した。

ニカラグア政権が、かつての「恩人同志」を逮捕

      11月7日に大統領選挙のあるニカラグアでは、連続4選を目指すダニエル・オルテガ大統領のサンディニスタ政権による反対派への弾圧が激化している。    5月13日には、ウーゴ・トーレス退役少将(73)が「反逆罪」容疑で逮捕された。トーレスは1960~70年代、ソモサ独裁政権と戦う「サンディニスタ民族解放戦線」(FSLN)のゲリラだった。74年12月、獄中にいたオルテガら同志を救出するため、パーティーをしていた内相邸を襲撃、多数の要人を人質にしてオルテガらの解放を勝ち取った。    79年7月の革命でソモサ体制が倒された後、トーレスらコマンドは、国軍となったFSLN軍で出世。トーレスは国軍諜報機関の長となった。    だがその後、政権党FSLNは反オルテガ派が離脱し分裂する。トーレスは、サンディ二スタ刷新運動(MRS)として分派し、現在は「刷新民主連合」(UNAMOS)の副党首。    今回の逮捕を予知していたトーレスはビデオメッセージを作成、「この年になって、新しい独裁(オルテガ体制)と闘うことになろうとは」と語っている。「ソモサは私を投獄できなかった。革命期は激しい戦いだったが、いまは平和裏の闘いだ」とも述べている。    トーレスの同志アナ・ビヒルは、トーレス逮捕について、「オルテガ退陣に至る過程の一つの出来事」と位置付けている。    一方、反政府勢力の大統領予備選出馬希望者のうち、クリスティーナ・チャモーロ、アルトゥーロ・クルース、フェリックス・マダリアガ、フアン・チャモーロの4人が逮捕されている。 ▼元ゲリラら女性2人も拘禁    ニカラグア検察庁は6月14日、元サンディニスタゲリラ、ドーラ・テジェス、および野党政治家タマラ・ダビラの両女性を90日間拘禁すると発表した。「外国の内政介入」と「外国軍の導入」を謀った容疑がかけられている。               

ケイコは依然「不正」訴え、混迷深まる 

   ペルーで異常事態が続いている。大統領選挙決選から小一週間経った6月12日、ケイコ・フジモリ候補(46)はリマで外国メディア記者団と会見し、「不正開票は20万票ある」と強調。「外国共産主義が介入した」と証拠を示さずに指摘した。   ケイコの狙いは「不正票を排除し、逆転勝利する」ことなのか、決選そのものを無効としたいのか、いまひとつ定かでない。ペルー社会は混迷の度を深めている。   中央選管ONPE(オンぺ)は9日夜、100%開票で、ペドロ・カスティージョ候補(51)の得票が7万票近く上回っていると発表している。だがケイコの意義申し立てを受けて、「当確」判断はしていない。   選管の上位にあって、選挙裁判所の機能を持つ国家選挙審議会(JNE)はケイコの申し立てを審理し、近く最終判断を下すことになっている。JNEは11日、異議申し立ては当初の期限だった9日以降も可能、と変更した。      ケイコは保釈中の身であり、担当検事は身柄最収監を求めている。ケイコが「不正開票」告発に固執するのは最収監を先延ばしたいからとの見方も出ている。無論「逆転当選」すれば、5年の任期が終わるまでは不逮捕特権が認められる。   検察はケイコに禁錮30年、夫にマーク・ビラネラに22年を求刑する構えだ。夫はイタリア系米国人で、ペルー国籍を取得している。裁判所は今月21日にケイコの処遇を判断すると見られている。    一方、イベロアメリカ(ラ米とイベリア半島諸国)の左翼・進歩主義の首脳経験者らがつくる「グルーポ・デ・プエブラ」(プエブラグループ)は11日、ペルー各方面に向けて「有権者の意思を尊重すべきだ」とする声明を発表した。ONPE発表で得票の勝るカスティージョを当選者と認めるべきだ、という立場だ。   この声明には、ヂウマ・ルセーフ元伯大統領、ラファエル・コレア元赤大統領、フェルナンド・ルーゴ元パラグアイ大統領、エルネスト・サンペル元コロンビア大統領、ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテロ元西首相、アンドレス・アラウス元赤大統領候補らが署名している。   2019年10月の大統領選挙に当選しながら「不正」をでっちあげられ翌11月、クーデターで追放されたボリビアのエボ・モラレス元大統領は、異議申し立てによって政変を謀っていると、ケイコ派を非難した。    ▼次期国会議席が確定   JNEは6月1

ペルー決選100%開票、カスティージョが「当確」

   ペルー選管(ONPE)は6月10日夕(JST11日朝)、開票率100%に達し、ペドロ・カスティージョ50・196%(880万票)、ケイコ・フジモリ49・804%(873票)と発表した。得票差は6万8775票。事実上のカスティージョ「当確」だ。   だが、ケイコ陣営が敗北を認めず、国家選挙審議会(JNE)に「大量の開票不正」を訴えていることから、JNEはカスティージョを当選者とは認定していない。公式な当選が決まるには10日はかかるとの見方が出ている。   JNEがケイコ派の訴えを受けて、指摘された開票部分を精査するからだ。   選挙管理政権の長であるフランシスコ・サガスティ暫定大統領は10日、ONPE(オンぺ)からの報告では「不正」を裏付けるような不祥事はなく、開票は整然かつ平静に実施された、と表明した。   カスティージョには、ニコラース・マドゥーロVEN大統領、アルべルト・フェルナンデス亜国大統領、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元伯大統領、ボリビアのルイス・アルセ大統領とエボ・モラレス元大統領、ニカラグアのロサリオ・ムリージョ副大統領、ラファエル・コレア元赤大統領らから祝電が届いている。   モラレスは、ケイコを支持した作家マリオ・バルガス=ジョサを「大なる敗北者だ」と指摘した。   一方、極右のジャイール・ボウソナロ伯大統領は、カスティージョ政権誕生を何としても阻止すべきだと発言している。   これに対し、ケイコを支持するラ米やスペインの保守・右翼系の元首脳クラブは、当選者が公式に決まるまで「当確」宣言をしないよう求めている。   ペルーの大手メディアの大部分は、ケイコ派による対カスティージョ「反共攻撃」を支えていたため、開票結果に戸惑っており、報道ぶりも、いまひとつ冴えない。       独メディアチェーン「ドイッチェ・ヴェレ」は10日、「ケイコは、米国のトランプがしたように選挙結果を覆そうと試みている」と指摘した。

デモクラシータイムスがペルー決選分析を公開

   ユーチューブジャーナリズム「デモクラシータイムス」の「あなたに知ってほしいラテンアメリカ~情熱と闇の大陸」⑦として6月10日、ペルー大統領選挙決選投票結果を分析する「緊急特番 前途に暗雲 次期ペルー政権」(46分)が公開されました。   いつものように高瀬毅さんとの対談です。ご覧ください。   これが現時点での、私の大まかな分析です。   幾つかの、あるいは、幾つもの、言い間違いがありますが、画面修正が出来ないため、ご容赦ください。   6月10日 伊高浩昭

グアテマラ内戦期の183人暗殺事件で元軍人6人起訴

   グアテマラ内戦期(1960~96)の暗黒の1ページが新たに解明されつつある。1983~85年に陸軍を中心とする軍部が、軍政や軍部に批判的な市民183人を「内敵」として逮捕、拷問、強制失踪・殺害した「軍事日記事件」は、米ジョージ・ワシントン大学にある国家安全保障文書館が1999年に解禁した極秘文書で明らかにされた。   同文書に基づき22年に亘る断続的な調査の結果、この6月9日、グアテマラの法廷は、事件に中心的に関与した退役軍人12人の内、病気などで療養中の半数を除く6人を起訴した。   同6人は、D2(軍部技術捜査局)、国家警察特殊作戦旅団、大統領親衛隊地下諜報網に所属していた。担当判事は、起訴するに十分な証拠があると明らかにした。   5月26日から6月1日にかけて12人は逮捕されたが、内6人だけが身柄を拘禁され、今回起訴された。   軍部は、こうした極秘作戦に「軍事日記」、「公文書」など文書関連の暗号を付けていた。 軍事日記事件では実際、73頁に亘る文書に一連の人道犯罪の模様が記されていた。   「内敵」の名の下に内戦中、少年少女・未成年計28人も殺害されている。

カスティージョが開票率99%でケイコに7万票差

       ペルー選管ONPE(オンぺ)は6月9日夜(JST10日朝)、大統領選挙決選(開票率99・998%)はペドロ・カスティージョ50・212%(878万票)、ケイコ・フジモリ49・806%(871万票)と発表した。   既に「勝利宣言」したカスティージョが、約7万票上回っている。全体の投票率は74・7%だった。   カスティージョの経済政策顧問でエコノミストのペドロ・フランケ(60)は、「カスティージョ政権」は市場経済体制を尊重すると述べた。ペルーの都会・財界の不安感をなくすためであると同時に、「政権党」が少数派となる次期国会対策を遠望しての発言だ。      選挙裁判所に該当する国家選挙審議会(JNE)は9日、次期国会(7月開会)の新議員130人に当選証書を渡した。4月11日の選挙で当選していた。マルティン・ビスカーラ元大統領は当選したが、「不適格者」として当選無効となった。   一方、ケイコは9日リマで記者会見し、「約50万票が不正に相手候補に加算された」と言い、「不正があった802の投票箱の開票結果を無効にせよ」と訴えた。      これに対しJNEは同日、「あまりにも異常な訴えだ」と述べながらも、決定を下すには3日以上はかかる、との見方を示した。 ▼JNE法廷がケイコ派を糾弾   JNE名誉法廷は6月10日、「決選に不正があった」と告発する無責任な政治的声明を断固糾弾する、と表明。不正を訴えているケイコ陣営を厳しく批判した。   一方、ケイコの過去の選挙資金不正取得・洗浄事件を担当している検察官は10日、ケイコの仮釈放に止め再収監するよう法廷に要請した。    。  

エル・サルバドールが仮想通貨を日常使用へ

   エル・サルバドール国会は6月9日、仮想通貨ビットコインを通貨として使用することを認める新法を可決、成立させた。   この国の通貨は米ドルだが、新法が官報に記載されてから90日後、米ドルと並んで仮想通貨の使用が可能になる。中央銀行は、その3カ月の間に細則を決める。   仮想通貨を通常の通貨と同格で使用できるようにした国は世界で初めて。米ドルと仮想通貨の間に自由変動相場制の交換率が設定される。   独裁色の強いナジブ・ブケレ大統領は「風変わりな政治家」と見られている。だが本人にとって今回の立法措置も、決して風変わりではないのだ。  

ペルー決選: ペドロ・カスティージョが勝利宣言

     6月8日夕(JST9日朝)の中央選管ONPE(オンぺ)発表(開票率98%)では、ペドロ・カスティージョ50・241%、ケイコ・フジモリ49・759%。カスティージョが0・482ポイント上回っている。得票はカスティージョ858万票、ケイコ852万票というところだ。   未開票選挙区のほとんどはカスティージョの票田。このためカスティージョは同夕、逸早く「勝利宣言」した。「一部財界人と話し合った」とも明らかにした。   未集計のアクタ(投票集計表)は1500以下。ONPEは30分ごとに、新たな開票結果を発表している。リマ市内のONPE前には、両派支持者たちが集結している。   選管は、未確定票を精査したり、異議申し立てに対応したりするため、 当選者の公式発表までには数日かかると見られている。   米州諸国機構(OEA 、本部ワシントン)は8日、「ONPEの堅実な開票」を公式に讃えた。   一方、ラ米地政学戦略センター(SELAG)は、カスティージョは4万票差で当選すると予測している。

ケイコがカスティージョ陣営の「開票不正」を告発

   ケイコ・フジモリ候補は6月7日夜リマ市で記者会見し、「自由ペルー派(ペドロ・カスティージョ候補陣営)が開票で不正を働いている」と告発、映像と音声の記録を「証拠」として提示した。   ケイコは、「人民勢力(自党)票の多いアクタ(投票集計票)」が電算機にかけられなくなっていると非難した。ラ米では、得票計算は票ごとに数えるのでなく、100票単位などにまとめられたアクタごとに数えるのが一般的だ。   これに対しカスティ―ジョは、「あなたは昨日、選挙結果を尊重すると誓った。あなたはその言葉を守ると、我々は信じている」と反論した。   一方、国家選挙理事会(JNE)は、ケイコの告発に対し、「国際監視団は選挙過程が正しく成功裡に遂行された、と指摘している」と表明した。   またフランシスコ・サガスティ暫定大統領も、「選挙結果は明白であり、和解と団結を堅固に呼び掛けている」と述べた。   このほか、透明性協会(ACT)も「不正など起きていない」と、ケイコの訴えを否定した。      ONPEの開票率96・41%段階で、カスティージョ50・29%、ケイコ49・71%。差は0・48ポイント。

昨今のキュ―バ情勢、「世界」誌が掲載

   本日8日発売の★「世界」誌(岩波書店)7月号「世界の潮」欄に、拙稿「<カストロ後>のキューバ」が載っていますので、どうぞ。中見出しは「<頑迷な守旧派>去る」、「形成された<国民世論>」、「民主的社会主義への胎動」です。   第8回共産党大会を機に書いたキュ――バ物は、このほか以下の通りです。 ★月刊「社会民主」6月号(6月1日刊)「カストロが退陣したキューバ」「制度疲労著しい<長すぎた革命体制>」「新指導部は当面、現状維持か」。中見出しは、「長老指導部が退陣」、「ラウールの元女婿が台頭」、「深刻な経済苦」、「<脱革命>の波紋」、「国民のために必要な譲歩」 ★LATINA電子版6月初旬「ラ米乱反射」題9回「<革命体制>に変化求める国民世論ー新指導部に試練の経済建設」 ★ビデオジャーナリズム「デモクラシータイムス」5月「あたに知ってほしいラテンアメリカ」第6回「難題山積のキューバ新体制」(53分)  ★「週刊金曜日」誌4月9日号「キューバ 共産党大会でカストロ第1書記、引退へ」「高まる体制不満、経済浮揚待ったなし」。中見出し「若者が異議申し立て」  キューバ以外のテーマでは;「週刊金曜日」6月4日号「チリ、<脱新自由主義>の新憲法起草に動く」「ジェンダー平等の制憲会議を開設」。中見出し「フェミニズムは革命」        

ペルー決選、開票95%でカスティージョ優勢続く

     中央選管ONPEは6月7日夜(日本時間7日午後)、開票率94%段階で、ペドロ・カスティージョ50・076%、ケイコ・フジモリ49・924%と発表した。地方票、農村票が開き、そこに支持基盤があるカスティージョがケイコに僅差ながら勝っている。   さらに95・75%段階でも、カスティージョ50・26%、ケイコ49・73%で、趨勢は変わらない。 92%段階ではケイコが僅差でまさっていた。   投票直前の調査で、カスティージョは地表部で80%を固め、ケイコは首都リマを中心に都市部で68%を固めていた。この差が開票での僅差に表れている。   世論調査機関IPSOSは、7日の投票終了後、早い段階で「100%開票速報」として、カスティージョ50・2%、ケイコ49・8%で、カスティージョ優勢と発表していた。最終的にそうなれば、ONPEはまたも調査機関に先を越され、出し抜かれたということになる。   前回2016年選挙では、ケイコは圧倒的強さで決選に1位進出しながら、反フジモリ主義にやられ、2位進出のPPクチンスキに0・25ポイント(約4万票)差で惜敗した。今回、その二の舞を演じる公算が大きくなった。   

ペルー決選:開票92%、カスティージョがケイコに肉薄

   ペルー国家選挙過程事務所(ONPE=オンぺ=中央選管)が6月7日夜(日本時間午後)に開票率92%で発表した得票結果は、ケイコ・フジモリ50・17%、ペドロ・カスティージョ49・83%。0・34ポイントの僅差。投票率は77・8%だった。       開票率85%で既にケイコ51・01%、カスティージョ48・98%で、2・03ポイントに縮まっていた。   ONPEの開票率68%段階では、ケイコ52・475%、カスティージョ47・525%。同56%段階ではケイコ52・4%、カスティージョ47・5%。42%段階では、ケイコ52・905%、カスティージョ47・095%だった。   カスティージョは、68%段階時点での結果に、「我々の地方票、農村票がまだ開票されていない」と述べていた。僅差となったのはカスティージョの支持基盤票が開いたからだ。   大統領選挙第1回投票(4月11日)で敗退した左翼のベロニカ・メンドサ(「共にペルーのために」党)は、「ONPEの100%開票まで静かに待とう」と述べた。メンドサは、カスティージョと選挙協力合意を結んでいる。   一方、ケイコについて、有力紙エル・コメルシオは、「ラ・テルセーラ・セア・ラ・ベンシ―ダ(3度目の正直になる)のを狙っている」と報じている。

ペルー決選、IPSOS速算値はカスティージョ優勢

   6月6日のペルー大統領選挙決選は、投票終了後の同夜11(日本時間7日午後1時)過ぎの世論調査会社ペルーIPSOS社の「100%開票」速報によれば、ペドロ・カスティージョ50・2%、ケイコ・フジモリ49・8%で、カスティージョが僅差で勝っている。   同社は夜7時の出口調査結果発表では、ケイコ50・3%、カスティージョ49・7%で、ケイコがリードしていた。   同社のアルフレド・トーレス社長は、開票速報は誤差1%、出口調査は同3・3%で、いずれも<事実上の>互角の域を出ないとして、「現段階で勝敗は決められない」と述べている。   一方、中央選管ONPE(オンぺ)の最初の開票結果の発表は遅れている。   コロナ禍により夜間外出禁止令が各地に発動されているが、政府は6日23時から全土に夜間外出禁止令を敷くと発表した。開票結果が暴動などを招きかねないためだ。リマ首都圏は21~04時の外出禁止令が既に出ており、21時から外出は禁止される。

ペルー決選投票終了;まずケイコリード

      きょう6月6日、現地時間7時~19時、ペルー大統領選挙決選投票が実施された。既に開票が始まっている。   ★世論調査機関IPSOSは6日夜、出口調査結果としてケイコ50・3%、カスティージョ49・7%と発表した。   フランシスコ・サガスティ暫定大統領は投票後、「選挙結果を尊重してほしい」と両候補に向けて勧告した。激戦の場合、負けた候補が居直ったり、暴動を起こしたりすることがあるからだ。    4月11日に18人が出馬しての第1回投票で1位になった左翼の農村小学校教師ペドロ・カスティージョ(51、自由ペルー党)、同2位の右翼政治家ケイコ・フジモリ(46、人民勢力党)が政権の座をかけて臨んだ。   当選者は、7月28日の独立記念日に就任する。任期は5年。   選管要員のほか、15の国際監視団の計約150人が投開票を監視する。欧州連合(EU)、米州諸国機構(OEA )、米州選挙機関連合(UNIORE)などが含まれている。   カスティージョは50日を超える決選選挙戦で当初20ポイント差をつけていたが、終盤戦で5ポイント差までケイコに詰め寄られた。その差は5月末から6月初めにかけて2ポイント差前後にまで縮んだ。「ケイコが上回った」とする調査も1~2ある。   「差は1ポイント以下」、「ケイコがかすかに優勢」との情報もある。激戦、接戦であり、どちらが勝ってもおかしくない。   投票は義務制。18歳以上の有権者2520万人がコロナ禍を超えて、どこまで投票所に足を運ぶか。投票率が上がれば、浮動票と棄権票が減り、確定票になる。それをより多く引き寄せた方が勝つだろう。   真に激戦となれば、出口調査は意味を失い、最終結果は中央選管発表を待つことになる。混乱すれば、敗者側が異議を唱えるかもしれない。また、99万7000人の在外有権者の票も重要となる。   最大の争点は、地下資源などを国有化し、富を国民の再分配するというカスティージョの民族主義経済路線か、31年続く従来の新自由主義路線維持のケイコか、の選択肢にある。   カスティージョは「資源豊かな国に貧困はもうたくさんだ」と新自由主義を批判、ボリビア型の「市場重視の貧困救済政策」を前面に出している。ケイコはカスティージョの政策を「共産主義」と、ネガティブ攻撃に全力を挙げた。   カスティージョは政策実現のため、制憲議会を

キューバが「私企業」(法人)を認める

    キューバがついに「私企業」という企業形態を公認した。ミゲル・ディアスカネル大統領は4月の共産党大会で第1書記に就任したが、ソ連消滅後の90年代と並ぶ極悪の経済困難から脱出し、物資不足と自由の欠如への国民不満の高まりに対処するため、就任後最初の「新しい措置」をとった。    同大統領とマヌエル・マレーロ首相が主宰した拡大閣僚会議は6月3日、零細および中小企業を私企業として存在させることを認めた。    今年2月、政府は零細(自営業)部門の業種を2000強に拡大、党大会で承認した。90年代に始まる自営業はまさに「自営」であって、「法人」資格は認められていなかった。それが今後は法人資格を得ることになる。中小企業は長年求められていた。    ただし、電子プログラマー、報道機関、翻訳・通訳業、獣医、会計士などは「戦略的分野」とされ、私企業資格は与えられない。    政府は、国営企業が経済の中心であり、民営化はしない、との立場は維持している。今後、国営企業傘下や、政府要員による「偽装私企業」が出てくる可能性は否めない。    これでキューバの企業体は、国営、協同組合、私企業の3種になった。革命直後の農地改革で生まれた小農は従来、唯一認められた私企業だった。零細・中小企業は1968年にすべて接収され、事実上閉鎖された。    故フィデル・カストロは、その政策が過ちだったことを後年認めた。 ★6月8日発売の月刊誌「世界」(岩波書店)7月号「世界の潮」欄掲載の拙稿「カストロ後時代のキューバ」を参照されたい。     

ペルー選挙戦互角で終わる:鍵は経済路線選択

   6月6日のペルー大統領選挙決選まで3日となった3日、両候補は50日を超える長い選挙戦を閉じた。これまでなされた多くの支持率調査を基に計算された非公式の予測によれば、左翼の新人ペドロ・カスティージョ50・4%、決選進出3度目の右翼ケイコ・フジモリ49・7%。わずか0・7ポイント差で、事実上の互角だ。   戦いの本質は、民族主義経済路線への変更を唱えるカスティージョと、新自由主義路線維持のケイコという構図。それをケイコは「共産主義」と決めつけている。   カスティージョ陣営は、リマ市中心部の「5月2日広場」で最後の大集会を開いた。農村教師カスティージョは、この国最大の労連CGTP(秘労働者総同盟)本部のバルコニーから演説。「人民の叫びは間もなく具体化する。イデオロギーや肌の色の違いで物事を観る時代は終わった。工業化された繫栄する国を造るために国の資源を奪回する政府を」と訴えた。   また、制憲議会を開設し、1993年のフジモリ憲法に替わる新憲法を制定しようと呼びかけた。だが現行憲法が存続する間は、それを尊重すると述べ、自分と共産主義やベネズエラと結びつけるキャンペーンは偽りだと強調した。さらに、年末までに18歳以上の国民へのコロナワクチン接種を終える、と公約した。   カスティージョはこの日、元ウルグアイ大統領ホセ・ムヒーカと遠隔対談した。ムヒーカは、カスティージョが決選進出を決めたときからの支持者だ。   一方、元大統領の娘ケイコはリマ南方郊外のビジャ・エルサルバドールで最終集会を開き、「共産主義から国を救おう」と、いつも通り呼びかけた。作家マリオ・バルガス=ジョサの息子アルバロが「反共戦線」を象徴するかのように、ケイコの傍らに立った。   ケイコは、「改革は無論必要だが、過去に戻るためでなく、未来に進むためだ」と強調。ポピュリストとの批判も物かは、零細企業支援に25億ドル、コロナ禍で家族が死んだ各家庭に2500ドルずつ支給するとの公約を再確認した。コロナ死者は18万5000人に達している。   有権者は2520万人。コロナ禍状況下で、投票率がどれだけ伸びるが問題だ。   支持率調査の公表は選挙戦とともに禁止された。CPI最終調査ではケイコ50・1%、カスティージョ49・9%で、0・2ポイント差でケイコが上回っている。      

ラウール・カストロ前玖第1書記が90歳に

    キューバ革命の覇者ラウール・カストロ陸軍大将(前共産党第1書記、元国家評議会議長)が6月3日、満90歳になった。ミゲル・ディアスカネル第1書記兼大統領をはじめ支配層は一斉に祝意を表明している。  ウラジーミル・プーチン露大統領、ニコラース・マドゥーロVEN大統領、ダニエル・オルテガNICA大統領らから祝電が届いている。  玖大統領府歴史問題事務所は前日2日、ラウールの演説や会見発言などをまとめた『革命ーそれは最も美しい事業』2巻本を刊行した。大統領以下、政治局員、革命司令官、閣僚らにまず配布された。  ラウールは食道癌、直腸癌、肝硬変に冒されている、という情報が流れている。無論、未確認情報だ。兄フィデルは2016年11月、90歳3カ月余りで人生を閉じた。死因は直腸癌と老衰だった。  ラウールの業績は、兄が重病に倒れた06年7月末以降、政権を担い、破綻状態にあった経済の改革に乗り出したこと、対米国交正常化の実現、支配体制を制度化し支配的地位に期限を設けたこと、国外渡航の自由化、新憲法制定など。  だが経済改革は緒(ちょ)に就いたばかり。必ずしも成功しておらず、国民には物資欠乏への不満が渦巻いている。また革命後ほぼ一貫して革命軍と内務省を指揮していたため、治安重視に傾斜しすぎ、自由の欠乏も国民不満の基にある。  国民とりわけ若い世代には「脱革命」意識が強まっている。制度疲労の著しい「長すぎた革命体制」の矛盾は、かつてなかったほ度に顕在化している。そこをバイデン米政権下の保守勢力に付け込まれている。  ラウールに残された役割は、健康の続く限り、子飼いの最高指導者ディアスカネルを支えて、大胆な経済改革に一時も早く着手させることだろう。  

ジェンダー平等のチリ選挙記事を「週刊金曜日」が掲載

   チリで4月11日、ジェンダー平等の制憲会議代議員選挙が実施されました。定数は155人で、男性78人、女性77人が当選しました。この6月中に会議は発足、9~12カ月をかけて新憲法草案を起草します。   この出来事を歴史的経緯を踏まえて解説する拙稿が、6月4日発売の「週刊金曜日」誌に掲載されています。   「チリ、「脱新自由主義」の新憲法起草に動く」、「ジェンダー平等の制憲会議を開設」の見出しに、「フェミニズムは革命」という、チリ人女流作家イサベル・アジェンデの指摘を中見出しにしてあります。   どうぞ、ご一読ください。  

チリ大統領が同性婚合法化に意欲表明

    チリのセバスティアン・ピニェーラ大統領は6月1日、2期目任期最後の施政報告演説を上院内での縮小会合でぶち、その中で、「我々は、愛の自由を含む自由の価値を深めなければならない。愛のあらゆる形、2人の間の愛の在り方における尊厳という価値をも深化させねばならない」と述べ、「同性結婚を合法化すべき時が来た」と強調した。    国会は2017年から合法化法案を審議してきた。大統領は、それを緊急課題として進展させる方針を示した。同性婚は2015年以来、「民事婚」(「事実婚」)として法的には認められている。    同性婚は、ミチェル・バチェレ―前大統領の2期目に提起された。保守的なカトリック教会が国民精神をかなり支配するチリで、右翼諸党を政権党とする富豪ピニェーラは、来年3月11日に次期大統領に政権を渡す前に、自らの業績として同性婚合法化を実現させたいのだ。大統領選挙は11月21日実施される。    チリでは4月11日の選挙で選ばれた代議員155人の制憲会議が6月中に開設され、新憲法草案の起草作業を開始する。代議員は男性78人、女性77人。実施された「ジェンダー平等選挙」で、そうなった。代議員の多数派は反政権派で、進歩主義色が濃い。    新憲法草案には同性婚合法化が盛り込まれる公算がかなりある。新憲法は、次期政権下での国民投票で承認の可否が決まるが、任期中に合法化法を成立させたいピニェーラは、その意欲を表明したわけだ。    同性愛婚を合法化しているラ米の国は、亜伯ウルグアイ墨コロンビア赤コスタ・リカの7カ国。     ★ピニェーラはまた、ピノチェー軍政期の1983年に出された政令1086号(街頭動員規制法)を廃止し、平和裏の街頭行動を認める法案を議会に提出する考えを示した。    だが先住民族マプーチェらによる土地奪回運動など抗議行動を「テロリズム」と見なして弾圧、悪法と非難されてきた「反テロ法」については言及しなかった。          

玖反体制芸術家オテロ=アルカンタラ解放さる

     現代キューバで最も有名な反体制芸術家ルイス=マヌエル・オテロ=アルカンタラ(33)が5月31日、当局による4月来1カ月半に及ぶ迫害から、ひとまず解放された。   オテロ=アルカンタラ(OA)は、ハバナ旧市街サンイシドロ地区に生まれた芸術家、フリージャーナリストらが「言論・表現の自由」を求めて活動する「サンイシドロ運動」(MSI)の指導者。   マイアミで2月発表され大ヒットしているラップ作品「祖国も命も」にカメオ出演している。同作品に参加した5人のラッパーのうちのマイケル・オソルボとエリエセル・マルケス(エル・フンキー)もMSIに参加している。   当局は第8回キューバ共産党大会があった4月、サンイシドロ地区にあるOAの自宅に侵入、OAが制作し自宅に展示していた絵画など造形作品十数点を破壊。OAを連行した。   MSIが昨年11月、会員のうち約300人を動員し、文化省前で政府の芸術政策に反対し抗議したのに続き、マイアミ在住のキューバ人ラッパー、ジョトゥエル・ロメ―ロら3人とオソルボ、マルケス両人の計5人が「祖国も命も」を発表し、内外キューバ人反体制派の象徴的作品となったことに神経を尖らせている共産党指導部が取締りに動いたのだ。   党大会で第1書記に就任したミゲル・ディアスカネル大統領(61)は、就任演説で反体制派取締まり強化を示唆する発言をしていた。   OAは当局に作品の賠償と謝罪を求めて4月24日、刑務所内で断食ストライキに入った。容体急変を恐れる当局は5月2日、OAの身柄を大学付属病院に移した。強制入院だった。   国際アムネスティ―、欧米政府、欧米メディアなどがOAの身を案じて解放を求めるキャンペーンを張った。OA問題は国際化した。   OAの動向に関する情報は遮断されていたが、5月31日、「退院」を許された。親戚宅に身を置き、メディアの取材に応じている。   入院には、断食ストで弱った体の回復という意味はあった。だが5月後半の2週間の入院は、まったくの監禁のための期間だったという。   OAの発言によれば、病室は24時間点灯され、常時3人の警察要員が監視したり尋問したりしたが、拷問はなかった。インターネット、メディア、電話、友人らによる見舞いは一切禁じられていた。例外は、親族の見舞いで、「5分間だけ距離をとって」だった。   退院直前、警察要員