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11月, 2020の投稿を表示しています

トランプ米政権がキューバに「最後のちょっかい」

    トランプ米政権が来年1月の任期切れを前に、キューバに対し「最後のちょっかい」を出している。2018年に若手芸術家らによって結成された「サンイシドロ運動」(MSI)という反体制組織があるが、これを米国務省は支援。玖政府は神経を尖らせている。    ミゲル・ディアスカネル玖大統領は11月29日、共産党機関紙「グランマ」で、「MSIは虚偽であり、これを取り上げるのは玖国家や玖史を誤ることになる」と述べ、MSIと大小内外メディアを厳しく批判した。   サンイシドロは、ハバナ市内の一地区の名称。   MSIが最近にわかに脚光を浴びてるのは、MSI要員のラペーロ(ラッパー)、デニス・ソリースが11月9日、「官憲冒涜罪」で禁錮8カ月の実刑に処せられたのが契機。MSIの芸術家ら若手約300人は直ちにソリース釈放を求めて27日抗議行動を開始、それがSNSを通じ内外に知れ渡った。これを受けて、反玖メディアを中心に外国メディアはMSIの行動を大きく伝えた。   キューバ当局は以前からMSIが、CIA(中央情報局)と連携して活動する米対外支援機関「米国際開発局」(USAID)から資金提供など援助を受けていると把握、MSIを監視していた。   玖外務省のカルロス・フェルナンデス=デ・コシ―オ米国局長(元駐日大使の息子)は11月28日、ハバナ駐在のティモシー・スニガブラウン臨時代理大使を呼び、MSI援助、反体制派宅訪問など、把握済みの米国による内政干渉に抗議した。   来年1月20日発足するバイデン次期米政権は、オバマ前政権が着手した「対玖太陽政策」を復活させるもよう。オバマ政策を覆し「北風政策」に回帰したトランプ政権は、政権明け渡し前の「最後のあがき」として、MSI支援を中心にキューバの内政に揺さぶりをかけているわけだ。   キューバは、長年の経済政策失敗、米国による経済封鎖、ベネズエラ原油の供給縮小、コロナ疫病COVID19などで外貨が逼迫し、経済はどん底状態にある。国民の多くが耐乏生活を余儀なくされており、いつになく不満が高まっている。   そんな時だけに、米政府、在米反玖勢力、国内反体制派は、玖政経社会の現状に不満を募らせている若者らの、あわよくば蜂起をも期待して連携している。 ▼大統領がUNEACと会合    ミゲル・ディアスカネル大統領は12月1日、玖作家芸術家連盟(UNE

日本とキューバが保健医療協力で覚書調印

  日本とキューバは11月26日ハバナで、保健・医療協力についての覚書に調印した。保健制度、医療支援、高齢者医療などで協力し、コロナ疫病COVID19でも対処経験を話し合う。  日本の厚生労働省と玖保健省の間での協力関係を定めたもの。調印式でホセ・ポルタル保健相は藤村和広大使に、これまでに日本側が供与したさまざまな保健・医療関係の支援に謝意を表明した。  キューバは世界各国に医療団を派遣し、天変地異に対処してきたが、医薬品や最新の機械器具が乏しく、苦慮してきた。覚書に基づく協力の具体的内容は明らかでないが、玖側が医療人員を、日本側が医薬品などを提供して、国際支援活動を共同で実施する可能性も出てきたと言えるかもしれない。

フィデル・カストロを「第2の父」と仰いだマラドーナ

    世界サッカー界最高のスターの一人、ディエゴ・マラドーナ(60)が11月25日、ブエノスアイレス郊外の自邸で死去した。直接の死因は心肺停止だった。   その邸宅は、ボリビア、パラグアイ方面から流れてくる大河パラナ川の名称がラ・プラタ川に変わる美しい水郷ティグレ地区にある。   マラドーナは、1940年代から50年代にかけて一世を風靡したフアン=ドミンゴ・ペロン将軍(亜国大統領)と夫人エバ・ペロンと並ぶ人気と知名度を内外に誇っていた。   死去した11月25日は、玖革命の最高指導者フィデル・カストロの4回目の祥月命日だった。マラドーナは1986年、メキシコでのサッカーW杯本大会で亜国を優勝に導き、翌87年、「ラ米最優秀競技者賞」を受賞するため初訪玖した。そして初めてフィデルに会った。   その機会にマラドーナは「私は左翼だ」と自己規定し、公言した。「亜国内外の貧しい人々の味方」というニュアンスだった。   以来、2人は親密になり、テレビ対談でラ米情勢、スポーツ、女性観などを語り合った。情勢に疎いマラドーナが「それは何ですか」と問えば、フィデルは細かく説明した。    マラドーナは現役時代から麻薬に冒されていた。2000年ごろから治療のため、頻繁に訪玖、その度にフィデルと会っていた。マラドーナは亜国内外でサッカープロチームの監督を務めたが、彼の右腕には、亜国人同胞エルネスト・チェ・ゲバラ、黄金の左足ふくらはぎには、フィデルの入れ墨を彫っていた。   2016年にフィデルが90歳で死去すると、クロアティア滞在中だったマラドーナは号泣し、ハバナに飛んだ。「第2の父」を失った衝撃は大きかった。   フィデルの盟友ウーゴ・チャベスVEN大統領とも懇意になった。そのチャベスも2013年、フィデルより3年早く死去した。チャベスの後継者ニコラース・マドゥーロ現大統領とも友人関係にある。      マドゥーロは26日、アルべルト・フェルナンデス亜大統領への書簡で、「ディエゴはサッカー場内外で巨人だった。VENの友人にして兄弟であり、我々チャベス主義者の誇りだった。ボリバリアーナ革命の断固たる擁護者だった」と述べた。   サッカーに熱狂し、自身も興じるエボ・モラレス(元ボリビア大統領)とも懇意だった。ルーラ伯元大統領も友人だった。ペロン派の故ネストル・キルチネル亜元大統領、夫人のク

赤道国内相が国会により解任さる

     エクアドール(赤道国)国会は11月24日、マリーア=パウラ・ロモ内相を「職務怠慢」を理由に不信任決議を採択、内相は解任された。国会(定数137)は、賛成104、反対18、棄権12、不参加3で可決した。後任にはパトゥリシオ・パスミーニョ警察将軍が就任した。   内相不信任決議に至る過程は、昨年10月、レニーン・モレーノ大統領が燃料補助金廃止を含む緊縮財政政策を打ち出したのに始まる。モレーノ政権は、対外債務返済と経済再建のためIMF(国際通貨基金)から融資を受けるのと引き換えに、緊縮財政政策を受け入れた。   ところが日ごろ生活苦に苛まれている庶民が怒り激しい反対運動を展開。これに対しロモ内相は警察機動隊を出動させ厳しく弾圧、国軍にも治安出動を求めた。その結果、死者11人、負傷者1340人、逮捕者1192人が出た。負傷者には催涙弾の直撃で片目を失った者11人が含まれている。   赤道国では来年2月7日、大統領、国会議員らを選ぶ総選挙が実施される。モレーノ政権は厳しい選挙戦を迫られている。     

米ウェスタンユニオンが対玖送金業務打ち切る

  米電信送金会社大手ウェスタンユニオン(WU)は11月23日、対玖送金業務を打ち切り、玖国内407カ所の支店を閉鎖した。  トランプ米政権は3日の大統領選挙を前にフロリダ州内のラ米系有権者、とりわけ玖系への集票戦術として送金にさまざまな制約を課していたが、トランプ敗北後の今、予定通り、WU業務打ち切りを実行した。  これは対玖経済封鎖の一環だ。在外家族らからの送金に頼る玖人らは、「さようならWU、すぐ戻ってきてね」と、WU各支店前でエールを送った。  来年1月20日、バイデン米政権が発足すれば早晩、経済封鎖は緩和され、WU業務が再開されると踏んでいるからだ。ジョー・バイデン次期米大統領が23日、国土安全保障省長官にハバナ生まれの玖系アレハンドロ・マジョルカス(60)を任命したのを、玖政府は歓迎している。  WUはクリントン政権期の90年代後半キューバに進出。以来、「米ドルの窓口」として重要な役割を果たしてきた。  民間調査機関によると、キューバの今年の送金収入は、29億6700万ドル。昨年の66億1600万ドルから54%も減った。 ▼スリナムから米墨国境へ玖人行進へ  スリナム在住キューバ人720人は11月23日、首都パラマリボに集結。陸路、米墨国境を目指し12月1日出発することを確認した。道中、他の南米諸国にいるキューバ人のうち数百人が合流するという。  一行は米国入りが目的で、バイデン次期政権発足後に米墨国境に到達する計画。陸路は、スリナムーガイアナーベネズエラーコロンビアと大西洋およびカリブ海沿いに進む。コロンビアからパナマへの国境地帯ウラバ地域は危険の多い難所。  パナマからは中米を北上する。コスタ・リカ、ニカラグア、ホンジュラス、エル・サルバドールを経て、中米北端のグアテマラに着く。だがトランプ米政権はグアテマラで移住希望者を足止めにする政策をとってきた。この政策にAMLO墨政権も同調している。  このためメキシコ国境手前のグアテマラが大きな難所となる。トランプ政権のある間はグアテマラでの足止めを余儀なくされる公算が大きい。仮にメキシコに入国できても、米墨国境は遠い。米国への合法的入国はさらに難しい。 ▼内相が死去  フリオ=セサル・ガンダリ―ジャ内相(海軍中将)は11月24日、病死した。同日、ラサロ・アルバレス副内相(57歳、陸軍少将)が内相に昇格した

ボリビア市民組織がアニェス前首班の逃亡を阻止

     ボリビア・ベニ州都トゥリニダ―の市民組織は11月23日、ブラジルに逃亡しようとしていた前非合憲政権の女性首班ジャニーネ・アニェスの出国を阻止した、と発表した。   同州出身の極右アニェスは8日のアルセ新政権発足前に政治首都ラパスを離れ、トゥリニダ―に帰っていた。だが、昨年11月のクーデタ―からほぼ1年間の非合法政権下で起きた一連の市民虐殺事件で追及されるのを恐れていた。   その追及が旧閣僚らに及び始めたため、トゥリニダ―の空港から小型機でブラジル国境に飛び、陸路入国しようと計画。だが逃亡を警戒していた政権党MAS派の市民組織に逸早く察知され、空港で搭乗を阻止された。ジャニーネは同市内の自邸に戻され、監視下に置かれている。   クーデターに先立つ昨年10月以降、コチャバンバ州サカバ、およびラパス州エル・アルト市センカラでの両虐殺事件をはじめ、アニェス暫定政権が犯したさまざまな暴虐事件が追及対象に挙がっている。 ▼大統領が国家警察を粛正  ルイス・アルセ大統領は先ごろ、国家警察長官にジョニー・アギレラ大佐を任命し、将軍階級の上層幹部全員を一挙に退役に追いやった。昨年のクーデターの先鞭を切ったのが、彼ら上層部だったからだ。  大統領は12月1日、国家警察学校で演説。警察官が国民大衆から出てきていること、任務が国民大衆のために働くこと、そのために憲政に忠実でなければならないこと、を忘れるなと訓示した。 ▼モラレスがエル・アルト訪問  エボ・モラレス元大統領は12月4日、政治首都ラパスに隣接するエル・アルト市を訪れ、先住民ら大群衆から歓迎された。モラレスは同日、米州諸国機構(OEA)に駐在するボリビア新大使には(腹心の)アルバロ・ガルシア=リネラ元副大統領が望ましいと述べた。  モラレスはエル・アルト市にある国際空港からカラカスに飛び、VEN国会議員選挙の監視団に加わる。 ▼2021年度予算を練り直し  フレディ・ママ二国会議長は12月5日、アニェス非合憲政権が策定した2021年度予算を「現実にそぐわない」として取り消したことを明らかにした。  議長はまた、アニェス政権下で犯された人道犯罪などでアニェスを裁くか否かについて、国会の憲法委員会が審議中と述べた。 ▼軍部が虐殺資料提出へ  ボリビア軍部は12月8日、昨年の政変過程で軍部が関与した2件の虐殺など重大な人権

ブラジルで警官が黒人を殺害、抗議拡がる

  ブラジル南部の南リオグランデ州都ポルトアレーグレで11月19日、黒人市民が警官らに殴り殺され、全土に抗議行動が拡がっている。  ジョアン・フレイタス氏(40)は同日、市内のスーパーマーケット「カへフォー」で店員といざこざになり、店員が警察を呼んだ。同店警備員と駆け付けた軍事警察官が2人がかりでフレイタスを倒して抑え込み、うち1人がフレイタスの顔面、頭部を執拗に殴った。フレイタスは血だらけになり、窒息死した。殺害容疑者2人は白人系。  一部始終は目撃者に撮影され、その映像は拡散された。人権団体は、今年5月25日、米ミネア―ポリス市で警官に殺害されたジョージ・フロイド氏(当時46)の例を挙げ、フレイタ殺害事件を厳しく糾弾した。  事件の翌日20日は、黒人差別をなくすためにも制定されている「黒人意識の日」だった。  抗議行動は映像拡散を受けて地元ポルトアレーグレをはじめ、サンパウロ、リオデジャネイロ、首都ブラジリア、レシフェなど主要都市に拡がった。  ブラジルでは、微罪の黒人市民を警官が殺害する事件が昔から絶えない。かつては多くの場合、警官は罰せられなかった。副職として警備員を務める警官は少なくない。  警官教育の低さと薄給が多くの警官を、人種差別に基づく過剰暴力という誤った権力行使に走らせる。  

グアテマラ副大統領が大統領に辞任呼び掛け

   グアテマラのギジェルモ・カスティージョ副大統領は11月20日記者会見し、国民不満が渦巻いているため共に辞任すべきだ、とアレハンドロ・ジャマテイ大統領に呼び掛けた。副大統領は話し合いを求めたが大統領が拒否したため、呼び掛けを公開した。   18日に国会で成立した2021年度予算は、教育と保健の予算が大幅に削られた。COVID19による経済停滞に加え、ハリケーン襲来で社会は混乱、国民不満は増幅している。   今年1月就任したジャマテイは右翼で、昨年の大統領選挙前から政治資質を危ぶむ指摘があた。今回の辞任呼び掛けの背景には、国会決議によるペルー大統領解任・交代劇の影響もあるはずだ。   予算歳出への怒りなどから青年数百人が21日、グアテマラ市中心部にある国会に押しかけ、その一部が乱入し放火、国会の一部が燃焼した。   一方、先住民運動女性指導者リゴベルタ・メンチュ―(1992年ノーベル平和賞受賞者)は同日ジャマテイ大統領に対し、拒否権を行使して予算成立を阻むよう訴えた。 ▼国会が予算決定過程を中断  グアテマラ国会は11月23日、国会を18日通過した21年度予算の最終的決定過程を停止sさせた。一方、副大統領らから退陣を迫られているジャマテイ大統領は22日、「米州民主憲章」適用を米州諸国機構(OEA)に要請すると述べた。  2001年に制定された同憲章は、OEA加盟国の民主状況が危機に瀕した場合、OEA多国籍軍の投入を含む民主回復活動の発動を謳っている。  

ボリビアがラ米地域3機構に全面復帰

        アルセ・ボリビア政権は11月20日、ALBA(米州ボリバリアーナ同盟)、CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)、ウナスール(南米諸国連合)に全面的に復帰すると発表した。   昨年11月のクーデタ―で発足し、さる11月7日まで続いたアニェス非合憲暫定政権 は同ラ米地域3多国間機構から脱退したが、この決定をアルセ新政権は覆した。   ボリビア・コチャバンバ市郊外には、新設されながら使われてこなかったウナスール議会議事堂がある。クーデターで倒されたモラレス政権期に建設された。 ▼テレスールも復活   ボリビア政府は11月25日、ラ米多国籍TV放送 「テレスール」(南方TV)の放映を復活させた。昨年11月のクーデタ―直後、非合法政権は放映を打ち切り、以来遮断されていた。

ベネズエラが「ドローン国産化」を発表  

    ニコラース・マドゥーロVEN大統領は11月19日、国営VTV番組を通じて、国防のため純国産の多目的ドローンを生産すると発表、操縦訓練用に試作した2機を公開した。   「技術の独立」を目指して2020年2月に設立されたEANSA(エアンサ=国営航空会社) がドローン生産に当たる。   試作機2機は「EANSA1号」、「EANSA2号」と名付けられ、VEN国営航空CONVIASAの色と標識が描かれている。自動で5時間は飛行可能、という。   マドゥーロ大統領は18年8月、カラカスでの軍事式典中、反政府勢力、米国、コロンビアなどが関与した、ドローン爆弾による暗殺未遂事件に遭っている。この事件が強迫観念となってドローン国産に走ったという側面がある。   ロシア、イラン、中国などから技術協力を受けている可能性がある。   「VEN国民の多くが生活物資や医薬品の不足に苛まれているときに不急のドローンを生産するとは」と、国内外から批判が出ている。   マドゥーロはまた、ドナルド・トランプ米大統領が何度も対話を求めてきたが、トランプ政権が「グアイドー派を支援しているため」対話は実現しなかった、と明らかにした。    大統領は20日には、政権党連合GPP(大愛国軸)の集会で、VENは内需用のガソリンをすべて国産化した、と発表した。   一方、ホルヘ・アレアサVEN外相は19日、トランプ派が敗北した米大統領選結果を覆すための策略として「VENの選挙介入」を口にしていることについて、「まったく馬鹿げている」と一蹴した。 、

ベネズエラがグアテマラと事実上断交

   ベネズエラ政府は11月18日、在グアテマラ大使館の業務を19日正午をもって打ち切り、大使館を閉鎖すると発表した。これはグアテマラのアレハンドロ・ジャマテイ大統領が10月19日、グアイドー派の「大使」を信任したのを受けた措置。    トランプ米政権に近い右翼のジャマテイは今年1月に就任したが、すぐにマドゥーロVEN政権との関係が悪化した。ジャマテイは次期大統領に決まっていた2019年10月、就任式にフアン・グアイドーVEN国会議長を招こうとVEN入国を試みて拒否された経緯がある。   VENでは12月6日国会議員選挙があり、グアイドーの議長任期は来年1月5日に終わる。トランプ政権に擁立された傀儡である「暫定大統領グアイドー」という虚構は、任期切れと後ろ盾のトランプ敗北で雲散霧消する瀬戸際にある。なのにジャマテイは虚構を選んだ。   トランプ当選時の16年11月ごろから「ポスト・トゥルース」(真実なき時代)という虚偽に満ちた時代が始まったとされるが、ラ米における最大の虚構はグアイドーだ。トランプ政権は、この虚構をもってラ米を分断し、影響力を行使してきた。   バイデン政権が始まれば、米VEN関係の様相が変わる。ジャマテイは「トランプ再選」を見越してグアイドーを「承認」したのだが、道を誤ったと言えよう。  

ボリビア政権党MASの党首にモラレスが復帰

  ボリビア政権党MAS(社会主義運動)の党首に11月17日、エボ・モラレス元大統領が復帰した。モラレスは昨年11月のクーデタ―で政権を追われメキシコ市、次いでブエノスアイレスで亡命生活を送り、党首の座を離れていた。だが10月の大統領・国会議員選挙に際し、亜国に居ながら選対委員長を務め、アルセ現政権を勝利に導いた。  MASは21日、モラレスの拠点であるコチャバンバ州チャパレ―市で、10月選挙の選挙戦や結果について分析する党幹部会合を開く。ルイス・アルセ大統領、ダビー・チョケウアンカ副大統領、アンドロニコ・ロドリゲス上院議長、フレディ・ママ二下院議長が招待されている。 【正副両大統領は21日のMAS会合に出席し、モラレス帰国後初めて再会した。】  モラレスはアルセ就任式翌日の9日、アルゼンチンから陸路帰国し、11日にチャパレ―に着くまで途中の各地で歓迎集会に臨んだが、正副大統領も国会両議長も馳せ参じなかった。アルセらは、MASの総帥モラレスと一線を画そうとしているかに見える。  モラレスは、新政権の閣僚人事に際しアルセと2度電話で話し合った、と明かにしている。  しかし来年3月7日には、州知事、州会議員、市長、市会議員を選ぶ統一地本選挙が実施される。アルセ政権の国内統治強化には圧勝せねばならず、モラレスのカリスマと政治力に頼る必要がある。 ▼モラレスが亡命時の出来事を明かす  エボ・モラレス元大統領は11月16日、チャパレ-市の拠点でテレスールのインタビューに応じ、昨年11月のクーデタ―当時、護衛8人は5万ドルの報酬と引き換えにモラレスの身柄をクーデター側か米国のいずれかに引き渡すよう2度買収されそうになった、と明かした。  極右が政権を乗っ取ろうとしていた時であり、身柄引き渡しはモラレスの暗殺を意味していた。そこで自らの命と、ボリビア変革過程の将来の再開・継続のために辞任した、と明らかにした。  一方、クーデターの陰謀に加担したルイス・アルマグロOEA(米州諸国機構)事務総長は、最近刊行されたインタビュー集の中で、昨年10月のボリビア大統領選挙の前、モラレスの連続再選出馬を促したことについて、当選させたうえで政変を起こす筋書きに沿っていたと告白した。その通りに事は運んだ。 ▼ボリビア軍部最高幹部決まる  ルイス・アルセ大統領は11月17日、国軍最高司令官にハイメ・

デモクラシータイムスが「ラ米シリーズ」開始

   動画ジャーナリズム「デモクラシータイムス」に11月17日、ラ米シリーズ「あなたに知ってほしいラテンアメリカ~情熱と闇の大陸」第1回が公開されました。   進行役の高瀬毅さんの質問に、私(伊高)が答える形で語ります。「バイデンとラ米」、「ラ米の魅力」、「核兵器禁止条約の批准国になぜラ米・カリブ諸国が多いのか」、「ホセ・ムヒーカの清貧性について」、「元ゲリラが大統領になる下克上の世界とは」などがテーマです。   デモクラシータイムス、で検索すれば、出てきます。御視聴ください。  

ペルーのF・サガスティ新暫定大統領が就任

  ペルー国会は11月16日、マヌエル・メリーノ暫定大統領の15日の辞任を受けて急遽、政権首脳陣を選出。次期暫定大統領にモラード党所属のフランシスコ・サガスティ議員(76歳、元世銀勤務)を選んだ。サガスティは17日国会で宣誓し、就任した。  就任演説でサガスティは「国民の信頼と希望を取り戻すことが最優先課題だ」と強調した。 サガスティは国会でのマルティン・ビスカラ大統領解任投票時、解任に反対票を投じた。  第1副大統領に選ばれたミルタ・バスケス議員(拡大戦線)が国会議長を兼務する。第2、第3副大統領には、それぞれルイス・ロエル(人民行動党)、マティルデ・フェルナンデス(我々はペルー党)の両議員が選ばれた。  2016年に発足したクチンスキ保守政権は、クチンスキとビスカラが解任、メリーノが辞任。4人目のサガスティの下で、来年4月の次期大統領選挙を迎えることになる。7月28日、サガスティの任期は終わる。   モラード党は2017年11月結党、中道右翼路線。「モラード」には「暗紫色」の意味がある。  

ペルー暫定大統領が街頭抗議受け就任6日で辞任

  ペルーのマヌエル・メリーノ暫定大統領が11月15日、辞任した。メリーノは9日のマルティン・ビスカラ大統領の国会における解任を受け、10日、国会議長から昇格就任したばかりだった。副大統領がいなかったためだ。メリーノは国会議長を兼務してきた。  その直後から首都リマをはじめ主要都市で連日、大規模な就任への抗議行動が展開され、死者2人、負傷者100人が出た。所属する人民行動党(AP)もメリーノ支持を取り下げていた。   国会では急遽、政党間の話し合いが始められ、メリーノ執行部に替わる新しい国会執行部が選ばれ、新国会議長が新たな暫定大統領に就任することになるもよう。   ビスカラは知事時代の収賄を暴かれ、国会は「倫理的資格」なしとして「大統領不在」を決議。ビスカラは事実上弾劾され、解任された。   ペルーでは2021年4月11日、5年に一度の大統領選挙が実施され、選ばれる新大統領は独立記念日の7月28日に就任する。   秘政界の現在の混乱は、1990年代に10年間政権にあったアルべルト・フジモリ大統領が1期目に、軍部と組んで国会を解散させた「お手盛りクーデター」、2000年に憲法規定を強引に変え3選出馬し当選したフジモリが国会議員買収など不正を暴かれ日本亡命後、解任されたことに始まる。   パニアグア暫定政権に続くトレード、ガルシア、ウマ―ラ、クチンスキ、ビスカラの5大統領はみな、土木工事絡みの収賄事件で追及された。80年代後半に続き2期目にあったアラン・ガルシアは汚職で逮捕される直前に自邸で拳銃自殺した。   フジモリの娘ケイコ、息子ケンジはいずれも政界に進出。ケイコは大統領選挙に2度出馬し、惜敗した。ケイコ自身も収賄で追及されて影響力を殺がれ、ケンジもクチンスキとの議員買収工作に関与し、追及された。

ベリーズのジョン・ブリセーニョ新首相が就任

  中米のベリーズ(旧英領ホンジュラス)で11月12日、人民連合党(PUP)党首ジョン・ブリセーニョ新首相が就任した。任期は4年。同党は11日実施の国会下院(定数31)議員選挙で26議席を得て圧勝、政権交代を果たした。  これまで政権にあった連合民主党(UDP)は5議席で惨敗、野に下った。主要産業は観光、農業、水産業だが、コロナ禍COVID19で観光はとくに打撃を受けた。経済規模は16%縮小を余儀なくされ、これがUDPに響いた。  ベリーズは1981年に英国から独立、英連邦に加盟。人口は40万人。面積は四国程度。メキシコとグアテマラに隣接、カリブ海に面している。  スペイン植民地時代はヌエバ・エスパーニャ(新スペイン、現在のメキシコ・中米地域)内のグアテマラ領に属していたが、武力で英国に占領され、英植民地から独立した。  この歴史的経緯からグアテマラとのべリーズ領有権問題があり、未解決のまま。だが1991年にグアテマラはベリーズを承認。英駐留軍は94年に撤退。ベリーズは2000年、中米統合機構(SICA)に加盟、中米の一員として認められた。   

チリ大統領がトランプを「潔く敗北受入れを」と説得

    チリのセバスティアン・ピニェーラ大統領は11月12日、中南部ビオビオ州都コンセプシオンでの記者会見で、米大統領選挙での敗北を認めないドナルド・トランプ大統領向けに発言、「友情ある説得」をした。   「トラウマになるような政権移行があってはならない。米国だけでなく世界全体に影響を及ぼすからだ」と前置きし、「民主精神を尊重してほしい。それは勝利を気品をもって迎え、敗北を高潔さをもって受け入れることだ」と呼び掛けた。   また、「当選者決定過程に宙づり案件があるのは承知しているが、その案件によって選挙結果が変わる可能性は極めて小さい。それゆえに、米民主過程が正常に進むことと、政権移行が民主的に行われることを希望する」と述べた。   この国指折りの富豪ピニェーラは、ピノチェー軍政(1973~90)の流れを汲む保守・右翼・極右勢力を政治基盤とする大統領で、現在は2期目。だが昨年10月以降の激しい反政府行動を受けて、軍政憲法に替わる民主憲法制定の要求を潔く受け入れた。   その結果、先月10月25日、新憲法制定の是非を問う国民投票で制定派が圧勝。来年4月11日、制憲会議議員選挙が実施される。   バイデンの心証を良くしたい思惑がピニェーラにあるのかもしれないが、「暴君トランプ」への勇気ある説得は、ラ米諸国で称賛されている。ピニェーラはバイデン当確後、 逸早く祝意を伝えている。 ★★★「バイデン米次期政権とラテンアメリカ」という分析記事を本日11月13日、「月刊LATINA誌電子版」に掲載しました。参照してください。 ▼ピニェーラとバイデンが電話会談  両者は11月17日電話会談し、バイデンはCOVID19 で経済が打撃を受けたラ米を支援することを伝え、併せてチリが民主憲法制定過程に入ったことを祝福した。ピニェーラは米国留学経験もあって米語を流暢に話す。バイデン当確後、最初に電話会談したラ米首脳となった。    

ニカラグアがクリミアに領事館を開設

  ニカラグアが世界に先駆けて11月10日、ロシアを構成する「クリミア共和国」の首都シンフェローポリに領事館を開設した。クリミアは、プーチン露政権が2014年に武力でウクライナから奪取併合した問題の地。黒海に面した要衝だ。  ダニエル・オルテガ大統領のニカラグアは2008年、ロシアの軍事支援を受けて「独立」した南オセチアとアブハジアをロシアに次いで逸早く承認。10年外交関係を樹立した。これによってニカラグアはロシアにとり、ラ米で最も緊密な同盟国となった。  クリミア側はニカラグア領事館開設に感謝し、黒海、地中海、大西洋、カリブ海経由でニカラグアに直行する海運関係を開く方針を明らかにした。ニカラグア最重要港コリントは太平洋岸にあり、同港への航路はパナマ運河経由となる。  ニカラグアの領事館開設は、ウクライナだけでなく米国やNATO諸国を刺激する。オルテガ政権は、バイデン米次期政権がトランプ政権同様に厳しく接してくるのを覚悟し、「後ろ盾」としてのロシアに一層接近したと言える。  ロシアからの経済援助はニカラグアにとって重要であり、断続的なロシア艦隊の来訪は心強い。

モラレスが政治基盤のチャパレ―に帰還

  エボ・モラレス元ボリビア大統領は帰国3日目の11月11日、政治基盤のコチャバンバ州都コチャバンバ市郊外のチャパレ―市に到着。市郊外の国際空港滑走路での歓迎大集会で演説した。  先住民ら数万人が滑走路を埋め尽くし、スコールに見舞われながら1時間余り、モラレスの帰還演説を聴いた。カラカスに本局を置く多国籍テレビ放送「テレスール」が中継した。  モラレスはMAS改革政権の復権を強調するとともに、1年前のクーデター直後、暗殺される危機に直面していたことや、チャパレ―空港をメキシコ政府機で辛くも離陸できたことなど「出ボリビア」時の出来事を語った。  アルバロ・ガルシア=リネラ元副大統領はモラレスに促されて演説。「この空港を発つ時、ボリビアの土を一握りつかんで国旗にくるみ携行した」と逸話を明し、「母なる大地」と共に亡命生活を送ったことを語った。その土をモラレスに渡し、モラレスはそれをチャパレ―の大地に還した。  壇上にはエクアドール(赤道国)からの来賓、「先住民連盟」(CONAIE)のハイメ・バルガス議長と、ラファエル・コレア前大統領派の大統領候補アンドレス・アラウスも並び、発言した。アラウスは「希望のための連合」(UNES)から出馬、当選を目指している。  チャパレ―は、コカ葉の一大生産地。モラレスはコカ葉生産農民組合連合会を足場に政界入りし、大統領まで上り詰めた。  【余談だが、私(伊高)はチャパレ―の事務所でモラレスにインタビューしたことがあるが、モラレスの背後には、コカ葉で作ったチェ・ゲバラの肖像が掲げられていた。】  ▼モラレスの弁護士が検事総長に就任  ルイス・アルセ大統領は11月12日、ウィルフレド・チャベス元内相を検事総長に任命した。チャベスはエボ・モラレス元大統領の弁護士も務めた。    

モラレス:「米テスラ社がリチウム狙いクーデター支援」

  ボリビアのエボ・モラレス元大統領(2006~19)は帰国2日目の11月10日、戦略的希少資源リチウムの一大埋蔵地ポトシー州ウユニ塩湖畔で記者会見し、自身が政権を追われたちょうど1年前(昨年11月10日)の軍・警察クーデタ―について、「多国籍大資本がリチウムを奪取するために策謀した」と述べた。   モラレスは、米電気自動車製造大手テスラ社の経営者イーロン・マスク(南ア系米国人)は「リチウム確保のためだけにクーデター派に資金を与えた」と語っている、と指摘した。   続けて、「2~3の多国籍資本がリチウムの国際価格を決めるのを防ぐため、我々ラ米の資源保有諸国は資源主権を守ってゆかねばならない。我々はラ米全体のために闘う」と強調した。   さらにクーデター前まで、日韓の企業とボリビアでのリチウム電池生産の話し合いが続けられていたと明らかにした。    凱旋に相当する「帰国行進」を続けるモラレスは同日、故郷オル―ロ市に移動し、サッカー場での帰国歓迎大集会で演説。「米政権はMAS(社会主義運動)党をつぶそうと画策したが、見事に失敗した。今再びMAS政権が復活し、私も帰国している」と述べた。   モラレスは、人民の社会・政治・思想・労働・選挙闘争は、新自由主義との闘いで極めて重要だと前置きし、「特に資本主義と帝国主義が我々の自然資源を奪取しようと狙っているときに闘争は深化する」と謳い上げた。   また、「ボリビアでの新自由主義による資源搾取は1985年から2005年まで続いた」とし、そうした策謀に対し団結して対抗せねばならないと呼び掛けた。だが「我々は新しいボリビア、新しい世代を考えながら政治的に対処し、この点において間違わなかった」と強調した。    「クーデター派は資本家による支配を復活させるためMAS側指導層200人を逮捕した」と糾弾。彼らを引き続き解放してゆくと述べた。   次いでモラレスはオル―ロ市郊外の生まれ故郷オリノカを訪れ、大歓迎された。   一方、フェリーぺ・ソラ―亜国外相は10日、「OEA(米州諸国機構)の言明がなかったらボリビアクーデターは起こらなかった」と述べ、米国寄りの極右ルイス・アルマグロOEA事務総長を批判した。   アルマグロは昨年10月、モラレスが当確となった大統領選挙直後、あたかも不正があったかのように発言。これが極右勢力の暴動を喚起、クー

エボ・モラレス元大統領がボリビアに帰還

   ボリビア先住民族の指導者エボ・モラレス元大統領が11月9日、ほぼ1年ぶりに故国に帰還した。昨年11月クーデターで政権を奪われた直後メキシコ市に亡命、亜国ペロン派政権が復活した12月ブエノスアイレスに亡命拠点を移していたが8日、クーデター政権が終わり、モラレス後継のアルセ政権が発足したたため、帰国した。   モラレスの右腕として変革政権を支えたイデオローグのアルバロ・ガルシア=リナレス元副大統領も同時に帰国。モラレスと共にポトシー、オル―ロ、コチャバンバの3州を自動車行進する。    モラレスは亜国最北端のフフイ州の国境の町ラ・キアカで、アルべルト・フェルナンデス亜国大統領に国境橋の半ばで見送られ、国境を越え、大群衆が待つボリビア・ポトシー州ビジャソーン市に帰国第一歩を刻んだ。   モラレスは市中心部のボリーバル広場で演説し、「我々は非暴力で民主政治を復活させた。我々は祖国を奪回した」と強調。AMLO墨大統領、フェルナンデス亜大統領、ニコラース・マドゥーロVEN大統領、ミゲル・ディアスカネル玖大統領への謝意を表明した。   記者団には、「政権奪還を信じていたが、これほど早く実現するとは思っていなかった。世界中で革命家や反帝国主義者を倒すクーデターが起き、彼らが早期復権するのは容易でない」と語った。   また昨年のクーデタ―について、「単に階級闘争の結果だけでなく、先住民族支配を受け入れたくないからだけでもない。我々の資源防衛など人民のための経済モデルを潰したかったからでもあった。このモデルを帝国主義やIMF(国際通貨基金)は認めたくなかったのだ」と分析した。     

ペルー大統領解任されメリーノ暫定大統領就任

    ペルーのマルティン・ビスカラ大統領が11月9日、国会で不信任され、解任された。ビスカラはペルー南端に近いモケグア州の知事時代(2011~14)に土木工事を巡り収賄、それを理由に「倫理的資格無し」とされ、事実上の弾劾となる「大統領不在」決議案を可決されてしまった。  定数130の1院制国会は賛成105、反対19、棄権4、不参加2で決議案を可決した。この重大決議には3分の2の86議員の賛成が必要だが、それを大幅に上回った。  ビスカラ退陣と新しい暫定大統領は官報記載によって確定するが、マヌエル・メリーノ国会議長が暫定就任するもよう。   ビスカラは2016年の大統領選挙に保守派のP・P・クチンスキ大統領候補の副大統領候補として出馬し当選。だがクチンスキがやはり腐敗などを追及されて18年3月辞任したのを受け、大統領に昇格した。  今年半ば国会での追及が激しくなてからは、任期が切れる来年7月末まで政権に留まりたい意向を表明、延命工作を続けていた。それが叶わなかったわけだ。  次期大統領選挙は4月11日に予定されており、7月末に就任する次期正大統領が決まる。  ビスカラは、マドゥーロVEN政権打倒を目指すトランプ米政権に同調する保守・右翼・極右米州諸国が構成する「リマグループ」(グリマ)の主導的立場にあった。トランプ敗北、MASボリビア政権復活に続く自身の解任決定で、グリマが弱体化することは否めない。  ▼メリーノ暫定大統領が就任  ビスカラ解任を受けて11月10日、マヌエル・メリーノ国会議長(59)が暫定大統領に就任した。任期は来年7月28日まで。メリーノは、来年4月の大統領選挙実施を確認した。  メリーノは中道右翼の人民行動党(AP)所属。同党からは、創党者の故フェルナンド・べラウンデが1960年代半ばと80年代前半の2度、政権に就いている。    その後、ビスカラ解任を「国会クーデター」と非難し、メリーノ暫定大統領就任に反対する勢力がリマをはじめ数都市で激しい街頭行動を展開、リマでは12日、数万人が抗議行動に参加した。警官隊が出動、市民と警官の双方に負傷者が出ている。  

ボリビアのルイス・アルセ新大統領が就任

    ボリビアのルイス・アルセ大統領が11月8日就任した。任期は5年。最終年の2025年、独立200周年を迎える。昨年11月、極右勢力と軍・警察が連携しトランプ米政権に支持されたクーデターで当時のエボ・モラレス大統領が打倒されてから1年、先住民族・貧困大衆重視路線の社会主義運動(MAS)党政権が復活した。    クーデターによる非合憲暫定政権の大統領にお手盛りで就いた極右女性ジャニーネ・アニェスは6日に政治首都ラパスを離れ、出身地ベニー州に去った。国会議事堂での就任式ではまず、ダビー・チョケウアンカ副大統領が就任し、アルセは同副大統領から大統領肩章を懸けてもらった。    大統領はダークスーツに白のYシャツ姿だったが、ネクタイはしなかった。この点では、ウルグアイのホセ・ムヒーカ元大統領に倣っている。    就任式は先住民族の長老たちが仕切った。本会議場正面には巨大なボリビア国旗と先住民族旗ウイパラが掲げられ、MAS復権を印象付けた。アルセは「母なる大地、迫害に斃れた人々に誓って」宣誓した。    外国からは、アルゼンチンのアルべルト・フェルナンデス、コロンビアのイバン・ドゥケ、パラグアイのマリオ・アブドの3大統領、西国王フェリーペ6世、ペルー首相、ベネズエラ、ウルグアイ、チリ、イランなどの外相らが参列した。キューバからは外相の祝辞が伝えられた。    モラレスが最初に亡命したメキシコのAMLO大統領はアルセに8日、祝福のビデオメッセージを送った。    大統領政庁、国会議事堂、大聖堂などのあるムリージョ広場は、国内各地から結集したアイマラ人ら先住民族で埋め尽くされた。    アルセ新政権の最優先政策は、クーデター政権によって破壊されたうえ、コロナ禍COVID19で動かなくなった経済の再建だ。先住民族や貧困大衆を主要な受益者とするモラレス前MAS政権で経済・財務相を務めたアルセは、経済専門家で最適の人物だ。    これに対しチョケウアンカは元外相で、モラレスにより近い政治性の高い人物。就任式ではMAS式に左拳を掲げて宣誓した。副大統領は国会議長を兼ねる。国歌斉唱時にはアルセも左拳を掲げた。    ブエノスアイレスで亡命生活を送ってきたモラレスは9日、アルゼンチン北端のフフイ州から陸路、ボリビアに帰還する。モラレスは同州内で8日、亜国前右翼政権に迫害、投獄され現在は自

ラ米諸国の「バイデン当確」反応はまちまち

   ジョー・バイデン民主党候補の次期米大統領事実上確定に対するラ米諸国の反応はまちまちだ。トランプ米政権は米国内の分断状況をさらに深い亀裂に陥れたが、ラ米をマドゥーロVEN政権の親派と反対派に分断し、これをラ米政策の中心に置いてきた。  トランプ政権は昨年1月、暴力的政変肯定路線のVEN政党「人民意志」(VP)のフアン・グアイドー国会議長に「大統領代行」を宣言させ、「暫定大統領」として擁立した。世界190余か国中、50数か国がグアイドーを「承認」もしくは「支持」してきた。  日本は米国の圧力を受けて「支持」した。だがマドゥーロ政権を承認しており、東京には同政権派遣のセイコウ・イシカワ大使が駐在している。菅首相がバイデンに祝意を表した意図には理論的には、VEN問題を含むトランプ政策の継続に賛同しないことも包含されている。  ニコラース・マドゥーロ大統領は7日昼の「バイデン当確」を受けて逸早く祝意を伝え、「対話復活」を呼び掛けた。「再選されたらVENに何かが起きる」と軍事介入を示唆するような脅しをかけていたトランプの後には、トランプ以下の政権は現れないと踏んで、強圧外交でない対話外交をバイデンに期待している。  グアイドーもバイデンに祝意を伝えたが、自身の政治生命は風前の灯だ。12月6日にVEN国会議員選挙が実施されるが、選挙をボイコットしているグアイドーは議席を失い、無論、国会議長ではなくなる。後ろ盾のトランプが消えれば、政治的孤児になってしまう。  そうなれば、グアイド―支持の米州「リマグループ」(グリマ)諸国も空中分解するだろう。グリマの要であるルイス・アルマグロOEA事務総長は「トランプの回し者」と見られてきたが、これもまた苦境に陥るだろう。アルマグロの事務局はバイデン当確を受け、「米大統領選挙には特に不正はなかった」と、見当違いの表明をするのが精いっぱいだった。 【★ベネズエラ情勢詳細については、「ベネズエラ大使館ホームページ、ニュース&イベント欄オピニオンの項に転載された拙稿をご参照ください。】  社会主義キューバは沈黙している。共産党機関紙「グランマ」は8日付紙面に「資本主義は馬鹿げている」と題した論評記事を掲げ、「トランプ主義は資本主義の解体であり、全体主義とファシズム世代の解体である」と強調した。  ミゲル・ディアスカネル大統領の玖政権は、米

ルセーフ弾劾の真相をテメル元伯暫定大統領が告白

  リオ五輪閉幕後の2016年8月末、ヂウマ・ルセーフ大統領を「国会クーデター」で弾劾し、暫定政権を握ったミシェル・テメル元副大統領の告白で、隠されていた事実が明るみに出た。最近刊行されたインタビュー集『<選挙>あるいは最良の<クーデター日誌>』の中でテメルは告白している。  テメルは15年末、自身を含む政治家らの不正を追及しようとしていたルセーフ大統領に反感を抱き弾劾工作に着手、ルセーフが不注意から怠った些細な義務違反を理由に起訴しないまま弾劾裁判に持ち込み、暫定大統領に収まった。   ルセーフは11月6日、テメルの告白を受けて、「(16年当時)録音されたロメ―ロ・ジュカー上院議員の通話で<テメルは軍部に支援を要請、それを軍部は受け入れ、軍事クーデターに賛成していた。庶民の抗議行動を抑え込む狙いがあり、土地無し農業労働者運動(MST)を監視するためでもあった>と同議員が語っていたのがテメルの告白で裏付けられた」と指摘した。  一方、ルーラ、ルセーフ両政権の政権党だった労働者党(PT)は、「テメル(副大統領)は2014年にルセーフ大統領とともに再選された時点で、弾劾によるルセーフ追い落としの策謀を開始していた」と論評した。  テメル自身は、2015年時点でルセーフ大統領打倒のため軍部と接触していた、と明らかにしている。テメルもジュカ―もブラジル民主運動党(PMDB)に所属していた。   テメルは18年元日、ジャイール・ボウソナロ現大統領に政権を引き継いだ後の3月、収賄罪容疑で一時収監された。500万ドルを超える賄賂を受け取ったととして起訴されていた。  ルセーフ弾劾は、恥ずべき重大な汚点として伯現代政治史に刻み込まれている。  ジャーナリスト、ホベルト(通称べト)・アルメイダは、ルセーフ追い落としの策謀には石油利権を狙う外国も関与しており、オバマ前米政権の副大統領だったジョー・バイデンも一枚かんでいた、と語っている。  アルメイダはまた、ウラディーミル・プーチン露大統領はルセーフにクーデターの危険があると忠告したが、ルセーフはそれを防止する対策を取らなかった、とも述べている。

セントヴィンセントで統一労働党が連続5度目の勝利

  カリブ海アンティ―ジャス諸島にある島国セントヴィンセント&グラナディーンで11月5日、一院制国会(定数15)の選挙が実施され、ラルフ・ゴンザルべス首相の統一労働党(ULP)が1議席増やす9議席を得て勝利、同首相の政権維持が決まった。  ULPは2001年に初勝利、以後勝利を続け、今回が連続5度目の勝利。野党の新民主党(NDP)は6議席となった。  英連邦に加盟するこの島嶼国は人口11万人。うち18歳以上の8万9000人が有権者。カリブ諸国の中で、キューバやベネズエラの友好国として知られる。  昨年1月から21年末まで国連安保理非常任理事国で、輪番制議長国に今月就任した。  

ボリビア次期大統領の身近でダイナマイトテロ発生。

    ボリビアの政治首都ラパス東部にある社会主義運動(MAS)党選挙対策事務所前で11月5日、手製ダイナマイト爆弾1発が爆発するテロ事件が起きた。事件当時、ルイス・アルセ次期大統領は同事務所内でMAS幹部らと会合していた。だが死傷者はなかった。    10月18日の大統領選挙に出馬し3位で敗れた極右候補ルイス・カマチョ派の暴力活動家らの仕業と見られている。カマチョは昨年10月、エボ・モラレス前大統領が当選した大統領選挙を「不正」と根拠なしに主張し武装蜂起。全土に混乱を起こし、11月の軍・警察クーデターに繋げ、モラレスを追放した主人公。   今選挙の結果判明後、牙城のサンタクルース州都サンタクルースデラシエーラと、コチャバンバ州都コチャバンバで、またも根拠なく「不正」を喧伝、蜂起を扇動した。だが内外の主要権威がアルセ当選を認めたため、武装決起は不発に終わった。   しかし諦めず、その後も自動車道封鎖、ストライキなどで次期政権に揺さぶりをかけてきた。それらに続いて、ダイナマイトテロとなった。米大統領選で劣勢にあるトランプ陣営の「選挙否定」の言動が、ボリビアの極右に影響を及ぼしているのは否めない。   アルセは11月8日就任するが、これを阻止しようと極右はあがいているわけだ。昨年の武装蜂起と政変によって、お手盛りで非合憲暫定大統領となった極右のジャニーネ・アニェスはアルセ当選は認めたが、その後の極右の違法行為を本気で取り締まってはいない。   就任式まで2日余り、ボリビア国民は一抹の不安を抱えたまま当日を迎える。前日7日には、アルべルト・フェルナンデス亜国大統領ら、式典に出席する外国要人らが続々ラパスに到着する。過去1年間で右傾化した軍・警察の警備の「万全さ」にMASは疑いを抱いている。   モラレス政権期に次いで再び政権党になるMAS内には、極右武装勢力に対抗してMAS独自の民兵団を組織する案も出ている。だが同党指導部は今事件後、民兵団を組織するつもりはないと否定した。   一方、昨年11月の政変直後からラパスのメキシコ大使館に亡命していたモラレス前政権の閣僚2人が、安全性が確保されたため大使館(公邸)を出た。当初は閣僚5人と高官らが亡命していたが、2人は最後まで残っていた。 ▼アルセが先住民族の「長」に就任  ルイス・アルセ次期大統領とダビー・チョケウアンカ同副大統

「トランプ再選」警戒するVENをイラン外相が訪問

   ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は、米軍による軍事介入がないまま11月3日(米大統領選挙)が過ぎたことにひとまず安堵している。世論調査で不利とされていたドナルド・トランプ大統領が人気回復策として、マドゥーロ体制潰しの荒業を使いかねないと危惧していたからだ。    米選挙は大接戦の裡に、当確の出ないまま4日にのめり込んでいる。この日、マドゥーロ大統領は、「我々は米内政に干渉しない。これは相互主義であるべきだ」と述べ、これまでVEN内政にさんざん介入してきたトランプ政権を牽制した。   VENでは12月6日、国会議員選挙が実施される。マドゥーロが言う「相互主義」は、同選挙に介入するなと、米政府に警告しているのだ。   というのも、トランプが選挙戦中、「私が再選されたらVENで何かが起きる」と、軍事介入を含む重大事態が起きるのを示唆しているからだ。有権者を気にする必要がなくなるトランプが、原油をはじめとする豊富なVEN資源を狙って軍事介入する公算は増す。  このためVENは、トランプ再選が決まれば、12月6日の選挙までが「国防の正念場」になると見て、従来からの厳戒態勢を維持している。マドゥーロがジョー・バイデン民主党候補の勝利に期待しているのは想像に難くない。バイデンはVENに甘くはないが、トランプが繰り返してきた軍事的脅迫は一度もしていない。   そんなVENを4日、イランのムハマド・ジャバド・ザリフ外相が訪問した。8日のアルセ・ボリビア新大統領の就任式に出席する途次に立ち寄ったもので、5日キューバに行く。いずれも公式訪問だ。イランはロシア、キューバ、中国と並ぶVENの同盟的友好国。カラカス郊外のシモン・ボリーバル国際空港には、ホルヘ・アレアサ外相が出迎えた。   次いでカラカス市内の大統領政庁(ミラフローレス宮殿)で、ニコラース・マドゥーロ大統領、デルシー・ロドリゲス副大統領、アレアサ外相らとイラン外相一行は会談した。   イランからは今年半ば以降、数次に亘ってタンカー船団が到着、VENに原油やガソリンを届けている。石油産業が最盛期の8分の1に縮小されているVENを救うためだ。   VEN軍の防衛態勢の主力は、ロシア製の地対地、地対空両ミサイルだが、最近は「イラン製ミサイル搬入」の未確認情報が流れている。今回のVENイラン外相会談で「ミサイル」についても

沖縄で「世界ウチナーンチュセンター」建設目指し冊子刊行

    日本の代表的な海外移民県の一つ沖縄県の民間団体「世界のウチナ―ンチュセンター設置支援委員会」が「世界のウチナ―ンチュの日」の10月30日、『世界ウチナ―ンチュセンター 沖縄に本家(むーとぅやー)をつくろう!!』を刊行した。   ウチナ―ンチュ(沖縄人)は明治維新直後からハワイ、太平洋諸島、米カリフォルニア州、ラ米諸国などに移民を送り出してきた。移住者には、「日本にいれば<沖縄差別>があるが、国外の移住地では日本人差別はあっても、沖縄人差別は消えてなくなる」という悲痛な思いもあった。   私(伊高)が記者として最初に「沖縄」を取材したのは、ラ米取材の拠点だったメキシコ市で1967年9月、米州歴訪中の松岡政保琉球政府行政主席(当時)にインタビューした時である。主席は、「沖縄人口90万人の40%は日本本土なり外国に移住させるのが望ましい。<宿命の島>沖縄から裸一貫で異国に出て、今日の生活を築いた移住者の皆さんに敬服している」と述べた。私は「40%」の数字の大きさに驚いたことを記憶している。   沖縄は1972年5月、米国から施政権を返還され、日本に復帰した。復帰からしばらくの間は知識人の間で「反復帰論」が盛んで、「平和憲法下に復帰できると思ったのに、日米安保条約の下の復帰した。騙された」と、「日米の軍事植民地」状態の強化に怒る県民が多く、本土との経済格差と相俟って、「反ヤマト」感情が沸き立っていた。   だが80年代半ばごろから沖縄人は「日本の彼方の海外に多くの同胞子孫がいる」のを再認識し、琉球新報、沖縄タイムス、沖縄テレビなどは特派員を次々に移住地に送って、「沖縄県系人」の暮らし考え方を伝えた。   熱い報道に煽られて1990年、沖縄県・市町村の共催により「第1回世界のウチナ―ンチュ大会」が宜野湾市で開かれた。以後ほぼ5年ごとに開催されてきた。 次回第7回大会は2022年に催される。コロナ禍もあって、1年延期されたのだ。   90年代以後の過程で、「華僑」に倣った「琉僑」という言葉が生まれた。「世界ウチナ―ンチュ・ビジネス協会」(WUB)や、「世界若者ウチナ―ンチュ連合会」(WYUA)などが組織された。「世界ウチナ―ンチュセンター」は「WUC」である。   私は、第1期ラ米取材(メキシコ時代、67~75年)後の77~79年の3年間、那覇に

マチュピチュ観光が7か月半ぶりに再開

  ペルーが誇る世界的観光名所、アンデス亜山脈山中にあるインカ・マチュピチュ遺跡が11月1日、観光客に久々に開放された。インカ帝国の首都だったクスコとマチュピチュを結ぶ鉄道の途中にあるオジャンタイタンボ遺跡も併せて開放されている。これは山の斜面に造られた巨大な遺跡だ。    マチュピチュ観光は、コロナ禍COVID19蔓延によりで3月半ばに停止されたが、約7カ月半ぶりの再開となった。観光当局は11月前半をペルー人の遺跡入場を無料にしており、普段は外国人で賑わう列車や遺跡はペルー人が目立つ。外国人は出入国、空路に依然制限が設けられている。    遺跡観光の規制も厳しい。列車は乗車客を30%に抑えており、全員がマスク・顔覆い着用、体温測定、消毒を義務付けられている。向かい合う4人掛け席は1人だけだ。    遺跡入場は、1日675人、1時間75人。集団はガイドを含めて8人以内、各自2メートルの距離を取り、集団間の間隔は20メートル以上とする。    観光は鉱業に続くペルーの重要産業だが、コロナ疫病で休止状態にあった。外貨をたっぷり稼ぐには、昨年までのように外国人の殺到が不可欠だが、早期には望めそうもない。    観光当局者は、開放は慎重に進めてゆくと強調している。    

元ゲリラ戦士らがコロンビア政府に命の保障訴える

  復員したコロンビア革命軍(FARC)の元ゲリラ戦士たちが生命の安全保障を同国政府に求めるため、全国各地から首都ボゴタに集結している。サントス前政権との2016年の和平実現後から翌年にかけ武装解除された元ゲリラ1万3000人のうち、234人が極右勢力から殺害されている。  復員者たちの多くは新生政党FARC(人民革命代替勢力)の党員で、既に参政権を行使している。ところが和平に反対するウリーベ元大統領派の極右は、殺し屋や準軍部隊を使って元ゲリラ要員の殺害を続けてきた。人権活動家、環境保護運動家、労組幹部らも多数殺されている。  同志たちの相次ぐ殺害にたまりかねた元戦士たちは10月半ば、和平時の集結地24カ所から首都に向けて抗議行進を開始した。31日から11月1日にかけて各地代表の約800人が到着している。  アラウカ州内で仲間20人と小さな靴製造作業所を営む女性は、ボゴタで「命なくして平和も人生計画も家族もない」と訴えた。彼女らが作る靴の銘柄は「ピサンド・フィルメ」。「大地をしっかり踏んで」という意味だ。  死と背中合わせの戦場で長年、戦闘、行軍、逃亡の生活を送った元ゲリラ戦士たちが辛くも得た平和な生活への思いと、「私たちが作った靴だから頑丈」という自信が窺える。だが、この作業所にも極右は押しかけ、仲間らを殺害した。  政府の和平安定化顧問エミリオ・アルチ―ラは、「復員者たちから望みや要求を直接聴く好機だ」と1日表明した。同顧問は10月31日にイバン・ドゥケ大統領から、それらの声を報告するよう指示されたと明らかにした。  FARC戦士の一部は和平時に、それを拒否し武闘を継続。さらに和平に応じた後、ドゥケ現政権が和平合意を順守しないことに怒り、再び武器を手にした一派もある。  極右のドゥケは、ウリーベ元大統領の子飼いで、和平反対派だった。元戦士や人権活動家らの相次ぐ殺害事件を本気で取り締まる気配はなく、こうした「私刑」は野放しになっている。だがドゥケは今、弾劾を要求する署名運動に遭っており、強権的立場は従来より弱くなっている。  しかし、復員者らの悲痛な声を耳にしても、真摯に対応するとは考えにくい。   、