トランプ米政権がキューバに「最後のちょっかい」

    トランプ米政権が来年1月の任期切れを前に、キューバに対し「最後のちょっかい」を出している。2018年に若手芸術家らによって結成された「サンイシドロ運動」(MSI)という反体制組織があるが、これを米国務省は支援。玖政府は神経を尖らせている。

   ミゲル・ディアスカネル玖大統領は11月29日、共産党機関紙「グランマ」で、「MSIは虚偽であり、これを取り上げるのは玖国家や玖史を誤ることになる」と述べ、MSIと大小内外メディアを厳しく批判した。

  サンイシドロは、ハバナ市内の一地区の名称。

  MSIが最近にわかに脚光を浴びてるのは、MSI要員のラペーロ(ラッパー)、デニス・ソリースが11月9日、「官憲冒涜罪」で禁錮8カ月の実刑に処せられたのが契機。MSIの芸術家ら若手約300人は直ちにソリース釈放を求めて27日抗議行動を開始、それがSNSを通じ内外に知れ渡った。これを受けて、反玖メディアを中心に外国メディアはMSIの行動を大きく伝えた。

  キューバ当局は以前からMSIが、CIA(中央情報局)と連携して活動する米対外支援機関「米国際開発局」(USAID)から資金提供など援助を受けていると把握、MSIを監視していた。

  玖外務省のカルロス・フェルナンデス=デ・コシ―オ米国局長(元駐日大使の息子)は11月28日、ハバナ駐在のティモシー・スニガブラウン臨時代理大使を呼び、MSI援助、反体制派宅訪問など、把握済みの米国による内政干渉に抗議した。

  来年1月20日発足するバイデン次期米政権は、オバマ前政権が着手した「対玖太陽政策」を復活させるもよう。オバマ政策を覆し「北風政策」に回帰したトランプ政権は、政権明け渡し前の「最後のあがき」として、MSI支援を中心にキューバの内政に揺さぶりをかけているわけだ。

  キューバは、長年の経済政策失敗、米国による経済封鎖、ベネズエラ原油の供給縮小、コロナ疫病COVID19などで外貨が逼迫し、経済はどん底状態にある。国民の多くが耐乏生活を余儀なくされており、いつになく不満が高まっている。

  そんな時だけに、米政府、在米反玖勢力、国内反体制派は、玖政経社会の現状に不満を募らせている若者らの、あわよくば蜂起をも期待して連携している。

▼大統領がUNEACと会合

   ミゲル・ディアスカネル大統領は12月1日、玖作家芸術家連盟(UNEAC=ウネアック)の会員と4時間に亘って会合し、革命政権の文化政策を確認し合った。これは、政府がMSIの活動よりもMSIが内外に報道されていることに神経を尖らせていることを窺わせる。

▼文化相がMSIとの話し合い打ち切る

 アルピディオ・アロンソ玖文化相は12月4日、MSI代表らとの話し合いを打ち切った。理由は、「彼らが一方的に自分たちの考えを押し付けようとしたこと」。文化相は11月27日のMSIの抗議行動を受けて、同代表らと話し合いを続けていた。

 文化相はまた、「米国と直接連絡を持ち、資金供与や兵站的支援を受けている者や、米機関から資金支援されているメディアとは話し合わない」と述べた。

 一方、UNEACは4日声明を発表。「いわゆるMSIは、玖社会の現実と玖文化を曲解し強弁するための鋳型を国際社会に押し付けようとしている」と述べ、MSIを糾弾した。

▼大学生ら数千人が行進

 オリエンテ大学生ら若者数千人が12月5日、サンティアゴ市内をアントニオ・マセオ革命広場から、フィデル・カストロの遺骨が眠る聖母イフィヘニア墓地まで行進した。11月25日が4度目の祥月命日だったフィデルに敬意を表す行進で、学生らはフィデルの写真などを掲げていた。

 行進は政府の意向に基づいている。無論、MSI支持派の若者や内外メディアの言動への対抗措置である。

 玖当局は2018年に携帯電話機とインターネットの接続を許可。この手段を持つ400万人をはじめ700万国民がインターネットを利用している。MSIが政府を慌てさせたのは、SNSの伝播力の凄さを政府当局があらためて認識したからだ。

 

 

 

 

 

  

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