「トランプ再選」警戒するVENをイラン外相が訪問

   ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は、米軍による軍事介入がないまま11月3日(米大統領選挙)が過ぎたことにひとまず安堵している。世論調査で不利とされていたドナルド・トランプ大統領が人気回復策として、マドゥーロ体制潰しの荒業を使いかねないと危惧していたからだ。

   米選挙は大接戦の裡に、当確の出ないまま4日にのめり込んでいる。この日、マドゥーロ大統領は、「我々は米内政に干渉しない。これは相互主義であるべきだ」と述べ、これまでVEN内政にさんざん介入してきたトランプ政権を牽制した。

  VENでは12月6日、国会議員選挙が実施される。マドゥーロが言う「相互主義」は、同選挙に介入するなと、米政府に警告しているのだ。

  というのも、トランプが選挙戦中、「私が再選されたらVENで何かが起きる」と、軍事介入を含む重大事態が起きるのを示唆しているからだ。有権者を気にする必要がなくなるトランプが、原油をはじめとする豊富なVEN資源を狙って軍事介入する公算は増す。

 このためVENは、トランプ再選が決まれば、12月6日の選挙までが「国防の正念場」になると見て、従来からの厳戒態勢を維持している。マドゥーロがジョー・バイデン民主党候補の勝利に期待しているのは想像に難くない。バイデンはVENに甘くはないが、トランプが繰り返してきた軍事的脅迫は一度もしていない。

  そんなVENを4日、イランのムハマド・ジャバド・ザリフ外相が訪問した。8日のアルセ・ボリビア新大統領の就任式に出席する途次に立ち寄ったもので、5日キューバに行く。いずれも公式訪問だ。イランはロシア、キューバ、中国と並ぶVENの同盟的友好国。カラカス郊外のシモン・ボリーバル国際空港には、ホルヘ・アレアサ外相が出迎えた。

  次いでカラカス市内の大統領政庁(ミラフローレス宮殿)で、ニコラース・マドゥーロ大統領、デルシー・ロドリゲス副大統領、アレアサ外相らとイラン外相一行は会談した。

  イランからは今年半ば以降、数次に亘ってタンカー船団が到着、VENに原油やガソリンを届けている。石油産業が最盛期の8分の1に縮小されているVENを救うためだ。

  VEN軍の防衛態勢の主力は、ロシア製の地対地、地対空両ミサイルだが、最近は「イラン製ミサイル搬入」の未確認情報が流れている。今回のVENイラン外相会談で「ミサイル」についても話し合われる可能性はありうるだろう。

  マドゥーロもアルセ就任式にアルセ本人から招かれている。ボリビアの非合憲暫定政権がマドゥーロを招かず、フアン・グアイドー国会議長を招いたからだ。グアイドーはトランプ米政権と連携した策略で「大統領代行」を宣言したが、トランプが11月3日実施の大統領選挙に敗れれば後ろ盾を失い、政治生命は風前の灯火となるだろう。

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