ボリビアのルイス・アルセ新大統領が就任

    ボリビアのルイス・アルセ大統領が11月8日就任した。任期は5年。最終年の2025年、独立200周年を迎える。昨年11月、極右勢力と軍・警察が連携しトランプ米政権に支持されたクーデターで当時のエボ・モラレス大統領が打倒されてから1年、先住民族・貧困大衆重視路線の社会主義運動(MAS)党政権が復活した。

   クーデターによる非合憲暫定政権の大統領にお手盛りで就いた極右女性ジャニーネ・アニェスは6日に政治首都ラパスを離れ、出身地ベニー州に去った。国会議事堂での就任式ではまず、ダビー・チョケウアンカ副大統領が就任し、アルセは同副大統領から大統領肩章を懸けてもらった。

   大統領はダークスーツに白のYシャツ姿だったが、ネクタイはしなかった。この点では、ウルグアイのホセ・ムヒーカ元大統領に倣っている。

   就任式は先住民族の長老たちが仕切った。本会議場正面には巨大なボリビア国旗と先住民族旗ウイパラが掲げられ、MAS復権を印象付けた。アルセは「母なる大地、迫害に斃れた人々に誓って」宣誓した。

   外国からは、アルゼンチンのアルべルト・フェルナンデス、コロンビアのイバン・ドゥケ、パラグアイのマリオ・アブドの3大統領、西国王フェリーペ6世、ペルー首相、ベネズエラ、ウルグアイ、チリ、イランなどの外相らが参列した。キューバからは外相の祝辞が伝えられた。

   モラレスが最初に亡命したメキシコのAMLO大統領はアルセに8日、祝福のビデオメッセージを送った。

   大統領政庁、国会議事堂、大聖堂などのあるムリージョ広場は、国内各地から結集したアイマラ人ら先住民族で埋め尽くされた。

   アルセ新政権の最優先政策は、クーデター政権によって破壊されたうえ、コロナ禍COVID19で動かなくなった経済の再建だ。先住民族や貧困大衆を主要な受益者とするモラレス前MAS政権で経済・財務相を務めたアルセは、経済専門家で最適の人物だ。

   これに対しチョケウアンカは元外相で、モラレスにより近い政治性の高い人物。就任式ではMAS式に左拳を掲げて宣誓した。副大統領は国会議長を兼ねる。国歌斉唱時にはアルセも左拳を掲げた。

   ブエノスアイレスで亡命生活を送ってきたモラレスは9日、アルゼンチン北端のフフイ州から陸路、ボリビアに帰還する。モラレスは同州内で8日、亜国前右翼政権に迫害、投獄され現在は自宅軟禁となっている亜国社会活動家ミラグロ・サラと会合した。

   アルセは30分間の就任演説を「きょう新しい時代が始まる」と切り出し、クーデター政権によって殺傷され迫害された人々の思い出のためにも働くと強調。同政権と、それを生んだ少数派である極右勢力を厳しく糾弾した。「われわれ(MAS)は多数派だ。だが政権はボリビア国民全員のために働く。憎悪を捨てよう」と、国民の一体化を訴えた。

   外交は「一極覇権主義」でなく多極主義に基づき、広範かつ多国間主義的に展開すると述べた。モラレスの氏名は一度も口にしなかった。拡声器で伝えられる演説を聴いていたムリージョ広場の群衆は、しばしば拍手したり法螺貝を吹いたりして、新大統領への賛同を著した。

▼新閣僚就任

   アルセ政権の閣僚16人(男13、女3)が11月9日就任した。民族主義経済の再建と、非合憲暫定政権下で殺傷され迫害された遺族や市民の人権・名誉回復と賠償・保護に重点が置かれた布陣。外相は人権派弁護士ロへリオ・マイタ。

▼VEN政府が大使館奪回

   アルセ就任式に出席したホルヘ・アレアサVEN外相は11月9日、ラパスのVEN大使館をグアイドー派から奪回した。外相は、電脳機器、テレビ受像機、シモン・ボリーバル胸像など多くの備品が略奪され、一部館内が破されていたと明らかにした。

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