ハイチ情勢混迷、大統領への退陣圧力増す

    政情不安に恒常的に見舞われてきたハイチは今、ジョヴネル・モイーズ大統領の退陣を迫る国民と野党勢力の圧力が増し、政情の混迷は危機的状況に陥っている。

 ハイチ大統領の任期は5年で、2017年2月7日に就任したモイーズは22年のその日に切れる。だが野党勢力は、モイーズ派がやり玉に挙げられた15年の不正大統領選挙のやり直し選挙が16年に実施され、当選認定されたモイーズが17年に就任するまで暫定政権が1年続いたことから、その期間を計算すれば、モイーズの任期は今年2月7日に切れると主張、退陣を迫ってきた。

 このような任期計算の問題だけでなく、モイーズの失政と無能が退陣を求める世論を高まらせている。失政の最たるものは、国会上下両院議員の任期が20年1月に切れながら、国会議員選挙が実施されないまま今日に至ったこと。

 大統領は以来、国会審議なしに政令で政治を運営してきた。当然、行政は専横化した。国外からの巨額の援助資金を最高指導部が横領したとされる汚職嫌疑が渦巻き、巷には殺人や身代金誘拐などを恣(ほしいまま)にする多くの暴力組織が暗躍している。

 そこに昨年3月来のコロナ禍COVID19が猛威を振るい、社会・経済の危機を増幅させた。

 この1月、退陣圧力は一層激しさを増しているが、モイーズは4月25日に改憲国民投票、9月19日に大統領・国会議員選挙をそれぞれ実施し、22年2月に退陣すると表明。あくまで政権に居続ける構えだ。大統領決選は11月21日。

 これに対し諸野党をはじめ反大統領勢力は1月28~31日、全国で大統領退陣要求行動を続けつつ、2月1~2日、および7日にゼネストを決行することにしている。

 モイーズは、トランプ前米政権に促されてイスラエルや、西サハラを占領してきたモロッコ寄りの外交政策を続けてきた。だが「人権・民主」重視のバイデン政権の発足で、対米関係を従来以上に、また従来とは別の角度で気にしなければならなくなっている。

 改憲草案は29日に公表された。①上院を廃止し1院制国会に②大統領は国会に責任を負い国会は重要決定・人事で大統領の権限を制限③大統領任期を5年とし2期連続就任を可④首相府を廃止、副大統領を新設し正副大統領選挙を実施⑤公務員就任年齢を25歳に引き下げ公務員の少なくとも35%を女性にーが骨子。

▼ゼネスト決行さる

 2月1日、ハイチ全土でジョヴネル・モイーズ大統領の退陣を求めるゼネストが決行された。大統領は7日の期限までに退陣するのを拒否している。

▼大統領退陣せず

 ジョヴネル・モイーズ大統領は2月7日、辞任せず、主張を押し通し任期最終年の5年目に入った。首都では警官の一部が暴力沙汰を起こし、1人が死亡した。

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