ジェニファー・ロペスが大統領就任式で心の叫び

   ジョセフ・バイデン新米大統領が1月20日就任した。JST21日未明の就任式典で米国歌、愛国歌、宗教歌が3人の歌手によって歌われたが、最も際立ったのはレディー・ガガの国歌に次いで愛国歌「ディス・ランド・イズ・ユア・ランド」と「アメリカ、ザ・ビューティフル」を歌ったジェニファー・ロペス(51)が歌の合間に、「ウナ・ナシオン・バホ・ディオス、インディビシーブレ、コン・リベルター・イ・フスティシア・パラ・トドス」と西語で叫んだ場面だった。

  「神の下で、分割できない、すべての人にとって自由と正義(公正さ)のある国に」という意味の、強いメッセージだった。

  女優・歌手であるジェニファーはカリブ海アンティージャス諸島にあるプエルト・リコ(PR)出身の両親の間に生まれたPR系米国人である。両親の第一言語はスペイン語、次に英語だった。娘ジェニファーの言語は共通語が英語、PR系地域社会と家庭では西語だった。

  PRはコロンブスのカリブ海航海以後、400年に亘ってスペイン植民地だった。1898年に米国が仕掛けた「米西戦争」で米国はキューバを属領化し、PRを領有した。PRはその後、自治領(米自由連合州)という名の植民地であり続けてきた。

  PR人は国政参政権上の差別を受けている。またPR人とPR系は米本土で人種的に差別されてきた。

  押しも押されもせぬ大女優になったジェニファーは、大統領就任式で歌うという、この上ない栄光の舞台で、PR差別、人種差別、コロナ禍で浮き彫りになった貧富格差という構造的差別、トランプ前政権下での米社会分断、虚偽・虚言が幅を利かせる不自由な世に反逆し、警鐘を鳴らしたのだ。

  PR系を含めラテン系(ヒスパニック)と括られて差別感を味わってきたLAC(ラ米・カリブ諸国)の多くの新聞は、ジェニファーの心の叫びを特筆している。自分たちの気持を代弁してもらった、という意識があるからだろう。

  米黒人もアジア系もアラブ系もジェニファーに共感を思えただろう。

  全米と全世界が注視している晴れの大舞台に悠然と現れ、悠然と去るジェニファーに、人々は「これぞ大女優」を観たはずだ。

   

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