VEN大統領が「反経済封鎖法」案を制憲議会に提出

  ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は9月29日、「反経済封鎖法」案を制憲議会(ANC)のディオスダード・カベ―ジョ議長に提出した。大統領は、「米国による経済・金融・貿易封鎖に制度的かつ法的に対処するための立法」と説明した。同様の法律はキューバにあり、VENが玖法を参考にしているのは間違いない。

【★法案は10月8日、ANC全会一致で可決された。大統領は経済政策実施上、強大な権限を得た。新法の正式名称は「国家開発とVEN国民の権利保障のための反経済封鎖法」。】

      法の目的は:①国民を守り、封鎖の影響を和らげ、封鎖によって被った損害(年間約300億米ドル)を補償し、人権を保障する、②資源を国内に行き渡らせ、生産的経済を促進し、国の資産と資源を守り、MCU(一方的強圧措置=制裁)とそれに付随するさまざまな脅威に対し経済を防備する、③ VEN国民・国家・祖国の主権と自由な自決を、それを蹂躙し破壊しようとする意図から守るー。

  法は;①対VEN経済封鎖とMCUが続く限り存続する、②封鎖とMCUの及ぼす影響と衝撃を防ぎ和らげ減らす法的手段を国に付与する、③他国・他国集団・公私国際組織が及ぼすMCU・抑圧・脅威がVEN国民への人道犯罪になるのを阻止する、④全公的機関はこの法の下に置かれ法を適用し、また公私個人・法人も同じ立場に置かれるー

      ★法案の最重要点の一つは、国営石油会社PDVSA(ペデべサ)が内外の民間企業と設立した合弁企業の所有権の変更。この合弁ではPDVSAが最大株主になっているが、それが変更され経営権が民間に移る可能性がある。米国による経済封鎖に対し、合弁企業の体質を強化するのが狙いらしい。

  総じて新法は、内外の民間投資を引き付け、経済生産の活性化を図るのが狙い。

  マドゥーロによれば、VENは2014~19年の6年間に外貨収入の99%を失った。すなわち560億ドルから4億ドルに激減した。15年の石油収入は300億ドルも減った。原油生産は66%も減り、19年の生産は14年の3分の1に落ちた。 

  VENは外貨準備高の急減で、対外債務を金塊で返済せざるを得なくなっているが、それも滞る傾向にある。最大の原因は経済政策の失敗および制度的腐敗にあるが、これに次のが米国による経済封鎖だ。トランプ政権はVENの石油資産を接収したり、石油貿易を困難にしている。

 世界最大の原油確定埋蔵量を誇る産油国でありながら石油不足に陥っているVENは、イランから原油や石油製品の供給を受けつつ、急場を何とか凌いでいる。当面、10月5日~11月5日、ガソリン販売を新たに規制する。

 反経済封鎖法案がANCを通過し成立するのは疑いない。野党が多数派の国会に対抗するANCは、全議席が政府系だからだ。

 大統領は、11月の米大統領選挙でバイデンかトランプか、誰が勝とうが米帝国主義には対VEN強迫観念があり、いかなる状況にも対応できるよう方策を整えつつある、と述べた。

 一方、VEN経団連のリカルド・クサンノ会長は28日、国民の8割方は変化を望んでいると指摘しながらも、「国民共生のための合意」が不可欠だと強調した。

 マドゥーロ政権打倒を狙う米政府は29日、「麻薬取引関与」などを理由に、VEN高官らの逮捕に巨額の懸賞金をかけた。ペドロ・マルティン元国家諜報局(SEBIN)経済諜報局長に賞金1000万ドル、 ロドルフォ・マターク元国際刑事警察機構(インターポール)VEN支部代表と、へス―ス・イトゥリアゴ元科学警察(CICPC)麻薬局長に、それぞれ500万ドルずつだ。

   [10月1日には、ルイス・モッタ=ドミンゲス元VEN電力相とエウステキオ・ルーゴ元副電力相の逮捕にも、それぞれ500万ドルずつの賞金を懸けた。在米企業を通じての公金横領容疑で米当局は19年に逮捕状を出している。]

 米政府は今年3月には、マドゥーロ逮捕・拉致・暗殺などに1500万ドルの賞金を懸けた。これが5月の傭兵部隊侵攻を招いた。だが同部隊は水際で制圧された。

 VENでは12月6日に国会議員選挙が実施される。29日には全立候補者名が公示された。選挙実施を阻もうと必死のトランプ政権は「不正選挙になる」と決めつけている。

 しかしトランプは、米大統領選挙に敗れた場合、これを認めないキャンペーンを展開し、社会を混乱させ、決着を最高裁判断に持ち込む狙いを込めて、保守派の最高裁判事を新たに任命した。

 ★大勢の国際監視団の監視が不可欠なのは、今や米大統領選挙だろう。

▼米海軍艦がVEN沖に接近

 VEN政府は10月1日、VEN沖16・1海里のカリブ海に米南方軍のミサイル搭載駆逐艦1隻が航行中と発表した。マドゥーロ政権打倒を目指すトランプ米政権の軍事圧力外交の一環と、VENは見ている。

 南方軍は駆逐艦展開を認め、「麻薬取締りと、航行の自由のため」と展開理由を説明した。だが南シナ海などと異なり、米国が「内海視」しているカリブ海に「航行の自由」は当たらない。

 ブラディミロ・パドゥリーノ=ロペス国防相は、「VEN国軍は主権を守る。米国は介入するな」と警告した。

▼大統領が経済封鎖の実態を説明

 ニコラース・マドゥ―ロ大統領は10月9日、米国による経済封鎖と一方的強圧措置(制裁)について説明。オバマ前政権期の2014年からトランプ政権下の現在まで、米政府はVENに対し、「1法、7政令、300を超える行政措置をとった」と明らかにした。

▼国警隊将軍、殺害さる

 VENスリア州統合防衛作戦区参謀長のセルヒオ・ネグリン国家警備隊少将が10月13日未明、カラボボ州内の自動車道で殺害された。自動車で走行中、障害物に阻まれて停車したところを銃撃された。軍は13日中に、同少将を殺害した一味を突き止め、3人を殺害した。

▼投資受入れを発表

 マドゥーロ大統領は10月18日、VENは内外から投資を受け入れると発表した。詳細は明らかにしていない。これを受けてデルシー・ロドリゲス副大統領は、投資の安全を保障する措置を講じると述べた。

   保守派の退役軍人や予備役軍事らの組織から、投資は外資介入による民営化を招くとして「国有資産の売り渡し」に反対する声が出ている。

 

 

 


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