チリ決選3日前に故独裁者ピノチェーの妻死去

   チリ軍政期の独裁者、故アウグスト・ピノチェー将軍の妻、ルシーア・イリアルト=デ・ピノチェー(98)が12月16日、老衰による心臓麻痺で死去した。19日の大統領選挙決選の3日前という、政治的に極めて微妙な時期だ。

   軍政期の創設された「母親セントロ」(母の会)の理事長として「国母」を演出、保守・右翼陣営の女性たちに強大な影響力を行使した。同セントロは1990年の民政移管後も、2004年のピノチェー死去後も閉鎖されず、2016年末まで続いた。

   妻は夫の独裁政策にも影響を与え、夫妻で巨額の公金を横領蓄財した嫌疑がかけられていた。妻も捜査当局から数次に亘り尋問された。

   決選は、穏健左翼で旧ユーゴスラヴィア系のガブリエル・ボリッチ下院議員(35、拡大戦線)と、極右でドイツ系のホセ=アントニオ・カスト弁護士(55、共和党)の戦い。数次の支持率調査では、押しなべてボリッチ優勢。

   勝敗の鍵は、11月21日の第1回投票で棄権した有権者53%の評をより多く獲得すること。カスト陣営は、ルシーア・イリアルトの死去が保守系浮動票を「同情票」として固めるのを期待している。

   カスト支持派は、イリアルト追悼を名目に首都サンティアゴ中心部にある広場に集まり花を飾るなどの運動をした。これには「選挙戦終了後の選挙運動」という批判が出ている。

   カスとは第1回投票で1位になり、2ポイント差で2位につけたボリッチと共に決選に進出した。だがピノチェー礼賛の発言が厳しく批判され、ボリッチに逆転される可能性が出ている。 

▼選挙戦終了

   決選の選挙戦は12月16日終了した。ボリッチの拡大戦線(FA)が共産党などと組む「ディグニダー(尊厳)連合」(AD)と、カストの共和党が保守・右翼陣営と組む「キリスト教社会戦線」(FSC)は、それぞれサンティアゴ市内の公園で最終決起集会を開いた。

   年末帰国中のミチェル・バチェレ―前大統領(現・国連人権高等弁務官)は、このほどボリッチと会談、ボリッチ支持を表明している。

   一連の支持率調査で劣勢にあるカスト陣営は、焦りからか、さまざまな攻撃的言動を仕掛けている。

   政治評論家らは、支持率が60%以上に上がり、若者と女性が大挙して投票すれば、ボリッチ勝利と見る。カスト勝利は保守的な中年と老年の票に懸かっている、と見る。

   

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