米主導の「民主サミット」は具体的合意なく終わる

     ジョー・バイデン米大統領主唱の「民主サミット」は12月9、10両日、ワシントンを中心に遠隔で開かれ、約100カ国・地域が参加した。具体的な合意なしに終わり、同大統領は今回の討議事項を踏まえて来年、2回目の会合を開くと述べた。

    今回の「サミット」は、中露両国と対峙する米国が「民主陣営」を固めて対抗する意図が鮮明で、同両国、それに同調する諸国は招かれなかった。また米国が「民主政治」と認めないグアテマラ、エル・サルバドール、ホンジュラスの中米北部3国なども排除された。

    米国の意向に従わないキューバ、ベネズエラ、ニカラグアも除外された。これら3国は中露の友好国で、ニカラグアは、このサミット開会に合わせて9日、台湾と断交、中国との国交を再開させた。台湾総統はサミットに招かれ、注目された。

    バイデンは、ベネズエラからは反体制派のフアン・グアイドー前国会議長を招いた。その「代表団」には、キューバの反体制派活動家ロサ=マリーア・パジャーが入っていた。

    国連総会は、ニコラース・マドゥ-ロ大統領のボリバリアーナ政権にベネズエラ代表権を来年末まで3年連続で認めている。バイデンは、トランプ前米政権が傀儡として擁立したグアイドーを招いたわけだが、明らかな虚構だった。

    ルイス・アルセ大統領のボリビア民主政権も招かれなかった。グアイドーが招かれたことから想像すれば、2019年11月のクーデターで1年間ボリビア政権に就いた非合憲政権首班が、今も政権にあったとすれば、招かれただろう。

    米連邦議会をはじめワシントン政界を取材する「ザ・ヒル」紙は、トランプ政権末期にトランプ支持の暴徒群が米議会に侵入したことで著しく落ちた「米民主」の評価を回復したい思惑がバイデンにあったと見ている。

    伯紙フォーリャデサンパウロは、「民主サミット」について「世界を分断し、覇権を維持するための米国の武器だ。偽装された新植民地主義だ」と糾弾する駐伯中国大使の発言を報じている。

▼亜国大統領が米国含むOEAを批判

    アルゼンチンのアルべルト・フェルナンデス大統領は12月10日、「民主サミット」に遠隔参加し、バイデン米大統領らを前に、「2019年11月のボリビアクーデターは国際社会と米州諸国機構(OEA)加盟国の多くから支持された」と指摘。暗に米国およびOEAによるクーデタ―支援を非難した。

    フェルナンデスはまた、「だが民主は制裁や強硬手段で敷かれるものではない」と指摘。「民主は(他国への)介入を良しとしない。民主は平和と同じで、輸出されたり強制されたりするものではない」と強調した。

    12月10日は、亜国民政復活38周年記念日。大統領政庁前の五月広場一帯には、ペロン派労働者ら市民25万人が集結。フェルナンデス大統領、クリスティーナ・フェルナンデンス副大統領、ルーラ伯元大統領、ホセ・ムヒーカ元ウルグアイ大統領らとともに記念日を祝った。

    ムヒーカは壇上から群衆に向かって演説、「民主制度は完璧ではない。我々人間が完璧でないからだ。だが他に、これより優れた制度はない。だから大切にせねば」と訴えた。そして「ルーラは来年またブラジル大統領になる」と宣言。壇上にいたルーラは、歩みよってムヒーカと抱擁を交わした。

 

       

    

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