★ペルー次期大統領はペドロ・カスティージョ

  ペルーの国家選挙審議会(JNE)は7月19日夜(JST20日午前)、6月6日に実施された大統領選挙決選の当選者を自由ペルー(PL)党候補ペドロ・カスティージョ(51)と発表した。カスティージョは28日のペルー独立200周年記念日に就任する。任期は5年。

 またしても苦杯をなめたケイコ・フジモリ(46、人民勢力(PL)党候補)は、「結果を認める」と表明した。

 カスティージョは北部出身の農村小学校教師。穏健左翼だが、急進的左翼党PLの党首ブラディーミル・セローン書記長が選挙出馬を禁止されたため、同党候補に招かれ、出馬。4月11日の第1回投票で1位になり、決選に進出した。これは「大番狂わせ」と受け止められた。

 新自由主義陣営のダークホース的存在だった保守・右翼陣営のベテラン候補ケイコ党=は前回に次いで、またも僅差で敗北した。ケイコは連続3回、決選で敗れた。

 今回は政治生命をかけて「僅差の敗北」を認めず、「開票集計の不正」を約300件もJNEに申し立てた。その審査に時間がかかりすぎ、当選者確定に1カ月半以上かかり、「民主制度が危うくなった」との懸念が国内に渦巻いていた。

 通常は最終得票数が公表された段階で、負けた側が相手を祝福して決着する。ケイコは、それをしなかった。 

 ケイコは、今回を除く過去2回の大統領選挙時にブラジルの建設大手オデブレシ―社から受け取った巨額の資金を使い、「収賄(資金不正受領)」や「資金洗浄」で起訴され、1年半収監された後、仮釈放されて今回の大統領選挙に臨んだ。

 検察はケイコに対する公判の再開を待ち構えており、禁錮30年の実刑を求刑する方針。ケイコが最後まで敗北を認めなかったのは、それが大きな理由だったと受け止められている。 

 ケイコの決選進出決定後の選挙戦略の失敗は、農村対策や貧困対策として現金のバラマキ程度の弥縫策しか打ち出せず、左翼党の「雇われ候補」カスティージョに反共攻撃を仕掛けるだけだったことだろう。

 また、ケイコは第1回投票前から服役中の父親アルべルト・フジモリ元大統領の恩赦を公約していたが、国内に依然根強い「反フジモリ感情」を考慮すれば、「勇み足」に過ぎたと言える。

 これに対しカスティージョは、ケイコの作戦に乗らず、独自の農村・貧困対策政策を掲げ、自身の路線を淡々と貫いた。その違いが、4万数千票の僅差ながら、勝敗を決することになった。

  ラ米諸国首脳や外相から祝福がカスティージョに続々届いている。真っ先に送ったのは、ボリビア、ベネズエラ、アルゼンチン、メキシコ、キューバの「左翼・進歩主義」陣営。国連も祝意を表明した。

▼大統領と会談

 ペドロ・カスティージョ次期大統領は7月21日、成長を訪れ、フランシスコ・サガスティ暫定大統領と2時間に亘り、政権引き継ぎや国の懸案について話し合った。

 カスティージョは23日、国家選挙審議会(JNE)から当選証書をもらい受けた。

▼ケイコはカスティージョに敵対か

 ワシントンに本部を置く米NGO「ラ米問題ワシントン事務所」(WOLA)は7月22日、大統領選挙決選3回連続敗北が耐えがたいケイコ・フジモリは、国会でカスティージョ政権潰しにかかる可能性があると指摘した。

 ペルーの1院制国会は、定数130の3分の2の87票があれば、大統領を「道徳的無能者」と糾弾して解任することが可能。カスティージョの政党PL(自由ペルー党)は37議席で第1党だが、連携を表明している小さな2党の8票を加えても45票にしかならない。

 ケイコが保守・右翼諸党をまとめ多数派を結成すれば、87票を集めるのは難しくない。マルティン・ビスカラ元大統領もPLの多数派工作で「無能者」と決議され、解任された。

 だが国会議員でもないケイコは、過去の選挙資金不正で裁判にかけられる公算が大きく、有罪となれば長期禁錮刑が科せられる。事はそう簡単にケイコの思い通りには進まないはずだ。

 現在、国会各党は連立を含む多数派工作過程にあり、ケイコ党FP(人民勢力)は孤立状態にある。

 WOLAは、ケイコが昨年の米大統領選挙で根拠なしに「選挙不正」を訴えてジョー・バイデン当選決定を大幅に遅らせたのと同じ戦略をとって敗れたことを指摘。「選挙結果を盗もうとして失敗した」と断じた。

▼カスティージョ支持率は53%

 7月24日公表のIPE調査によれば、28日就任するペドロ・カスティージョ次期大統領の支持率は53%だった。決選時の得票率50%強と比較し、3ポイント増えている。



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