メキシコで大統領経験者5人断罪の是非問う諮問投票

   メキシコのAMLO政権は8月1日、選挙庁(INE)による初の国民投票と言うべき「国民諮問」投票を実施した。重要政策を巡って全有権者の意思を確認するための国政手法である。

  是非を問われるのは、1988~2018年の30年間に政権を担った5人の大統領経験者の在任中の犯罪を裁くか否か。権力者とくに最高権力者である大統領は絶対に裁かないという、伝統的な無処罰主義の不文律に挑戦する初の試みだ。

  国民が断罪すべきか否かを問われているのは、カルロス・サリーナス(73、PRI=制度的革命党)、エルネスト・セディージョ(69、PRI)、ビセンテ・フォックス(79、PAN=国民行動党)、フェリーぺ・カルデロン(58、PAN)、エンリケ・ペ-ニャ=ニエト(55、PRI)の5人。

  投票結果が拘束力を持つには、登録有権者の40%(3700万人)が投票しなければならない。投票は、5人を裁くかどうかについて用紙に記された「はい」「いいえ」のいずれかを選ぶだけ。

  世論調査によれば、77%が大統領経験者たちの断罪に賛成しているが、コロナ禍COVID19が猛威を振るっているため、投票所に行くと回答したのは31%にとどまっている。

  今回の投票実施に執着するAMLOは支持率が57%。「はい」が過半数を占めるのは確実視されているが、投票率が4割に達するか否かは予測が難しい。

  5人の「罪状」:サリーナスは当選したとされる1988年選挙が不正選挙だったこと。国庫資産の浪費など。セディージョは人道犯罪、民間部門債務を国庫債務にしたことなど。

  初代PAN大統領フォックスは、人道犯罪、2006年大統領選挙不正介入など。その不正選挙で勝ったとされたカルデロンは「麻薬戦争」で暴力構造を全国に広げたことなど。

  PRI復活政権のペーニャ=ニエトは、12年大統領選挙時の不正資金投入などによる金権選挙、腐敗、14年9月発生のアヨツィナパ事件への陸軍・連邦警察関与など。

  AMLOが前任者ら5人の裁判の固執するのは、墨政治の民主化を促進するために他ならない。 

  だが、88年選挙不正により当時所属していた民主革命党(PRD)候補が勝利を奪われたこと、06年選挙で自身の当選を奪われたこと、12年選挙で相手の金権攻勢で敗れたことが大きい。18年選挙には自党MORENA(国家刷新運動)から出馬、当選した。

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