キューバ政府が必需物資持ち込み制限を緩和
キューバ政府は7月14日、帰国する玖人旅行者や来訪する外国人らが入国時に持ち込める食品、薬品、洗面用品を19日から年末まで無税・無制限とすると発表した。薬品の場合、従来1人1回10㎏までだった。この緩和政策の結果を見て、来年元日以降の政策を決めるという。
この「個人輸入」に対する規制の大幅緩和は、11日の全国的な対政府抗議と反体制決起の両要素が混在した街頭行動事件を受けた緊急措置。多くの国民が、コロナ禍下での生活必需物資の欠乏にたまりかねて不満を爆発させた。
緩和政策は、マヌエル・マレーロ首相(共産党政治局員)が、国営TV定例政治番組「円卓会議」で発表した。明らかに、政府の不満国民に対する「譲歩」と言える。緩和策は、主要な海浜観光地であるバラデロとカヨココの空港には適用されない。
首相はまた、約30万人の国民に月ごとの生活必需物資を居住地で供与すると明らかにした。外貨に接近できず、外国旅行も外貨店での物資購入も叶わない底辺層を慮った政策だ。
一方、アレハンドロ・ヒル経済企画相は、 国営企業の画一的な賃金体系を止め、今後は各企業の生産実績に応じて賃金を決める、と発表した。
11日の街頭行動は12日にも波及、計約40市で起きたことが判明。12日の抗議行動では、反体制派の男性1人の死亡が確認されている。
街頭動員を誘発したインターネットは政府によって遮断されたが、14日には一部で遮断が解除されつつある。だがスマホや携帯電話器による情報発信は困難になっている。
「円卓会議」に出演したミゲル・ディアスカネル大統領は、米国による経済封鎖を激しく非難してきたが、★ついに「自己批判」した。
「物資欠乏、若者の活動の場が少ないこと、顧みられない人々の存在を認める。だが蛮行はいけない。11日の出来事から我々は経験を得なければならいし、問題を乗り切り、再発を防ぐため、我々は厳しく(自己)批判せねばならない」ーこう明言した。
「玖社会は憎悪を醸す社会ではない。だが彼らは憎悪から行動した。玖人の心は連帯の心だ。だが彼らは蛮行で武装していた。SNSなどで殺人や私刑を呼び掛けていた。公共の場を襲い破壊し、盗み、投石し、警察警邏車をひっくり返した」ーこう指摘した。
「だが玖国民が平和裡に問題解決に合意することが必要だ。すれ違いを解消するため、解決策を見出そう」ーこう呼びかけた。
「思うに今回の街頭行動の参加者は4グループに分けられる。①対米併合派②秩序破壊に乗じた蛮行犯罪者③物資不足に不満な市民④社会活動不参加の若者」ーこう分析した。
大統領はまた、メディアテロリズムにありがちな憎悪と虚偽に晒されながらキューバには平和がある、と述べた。
内務省高官は14日、「逮捕者は25~37歳の若い世代が多い。秩序破壊、襲撃、官憲侮辱、窃盗、器物損傷などにより法で厳しくさばく」と述べた。
これについて大統領は、「街頭行動時の逮捕者は法によって厳格に裁かれるが、彼らに対し権力を乱用することはない」と強調した。
著名なブロガー、ジョア二・サンチェスは、「パンのかけらなど要らない。街頭で血が流れたのは、物資持ち込みのためではない。自由のためだ」と注文を付けた。
▼玖電子メディアにサイバー攻撃
キューバ電子メディア「クーバデバテ」は7月15日、30分間に58万回のアクセスに見舞われた。米国からが最も多く、加仏印フィンランドなどからも発信された。
▼BLMが封鎖解除要求
米市民運動「黒人の命は大切だ」(BLM)は7月15日、米政府に対玖経済封鎖の解除を要求した。
ジョー・バイデン米大統領は同日、「キューバは残念ながら、自国民を弾圧する失敗国家になった」と述べた。来訪中のアンゲラ・メルケル独首相と共に臨んだ記者会見で語ったもので、「11日の弾圧の後では対玖送金の規制緩和はない」とも明言した。
また米大統領政庁(ホワイトハウス)のジェン・サキ報道官は15日の記者会見で、「我々は、共産主義はイデオロギーとして失敗したと考えている。そのイデオロギーが経済機会を失わせ、薬品やコロナワクチンを入手困難に陥らせ、それが11日の抗議行動を招いた」と論評した。
バイデン政権は20日で発足後半年となるが、同報道官は「対玖政策は依然検討中」と述べた。
▼茂木敏充外相が18日訪玖へ
茂木外相は7月18日、キューバを公式訪問する。
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