「メヒコの衝撃」ー展示会と書籍出版が同時に始まった!

   「メヒコの衝撃」という名の作品展が始まった。場所は、千葉県市原市の市原湖畔美術館。「メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる」という副題がついている。9月26日まで続く。

   北川民次(1894~1989)、岡本太郎(1911~1996)、利根山光人(1921~1994)、深沢幸雄(1924~2017)、水木しげる(1922~2015)、河原温(1932~2014)、スズキコージ(1948~)、小田香(1987~)の8人の芸術家の作品が展示されている。

   7月10~11日、スズキコージは制作を実演する。これは既に終わったが。17日には、文化人類学者の今福龍太が「薄墨色の智慧のくにー<メヒコ>の衝撃を語る」と題して講演する。8月1日には、小田香監督作品『セノーテ』の上映会が催される。そして28日は「メヒコ・デイ」。

   6人の大家の古典化した作品群と、今を生きる現役2人の作品群が眼前に展開され、迫ってくる。見逃すべきでない独特な展示会だ。

   7月10日の開会式には、私伊高も出席した。東京駅前をバスで出発し、海ほたる経由で1時間半ないし2時間で美術館に着くことができる。バスの運転手によれば、千葉県湾岸沿いを通るよりも早く着けるそうだ。

   開会式で挨拶したメルバ・プリ―ア駐日メキシコ大使は、「日本がメキシコに、メキシコが日本にと相互に影響を及ぼし合う。まさにこれこそが友情というものでしょう」と結んだ。素晴らしい挨拶だった。

         この作品展と、この後に述べる書籍出版は、いずれもメキシコ独立200周年に合わせた記念企画だ。

   メキシコ滞在が長いヴァイオリニストの黒沼ユリ子、スズキコージ、小田香、市原湖畔美術館の北川フラム館長も出席した。千葉県知事、市原市長、ヌエバ・エスパーニャ時代からメキシコと縁の深い大多喜町と御宿町の両町長も出席した。

   私はメキシコでの駆け出し記者時代に河原温、岡本太郎、利根山光人に会い、黒沼ユリ子にも会った。取材以外でもお付き合いいただいた。今は亡き作家3人の人間が脳裏に生き生きと蘇り、黒沼ユリ子には四半世紀ぶりに再会できた。帰途のバス車内で、けだるさを打ち払って、はるばる市原まで出かけてよかったと思った。

   開会式の日に合わせて、東京の現代企画室が『メヒコの衝撃 メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる』(143頁)を刊行した。画集とエッセイ集を兼ねた書籍だ。

   巻頭には、市原湖畔美術館の前田礼館長代理の「メヒコの衝撃ーまだ見ぬ<メヒコ>への旅」と題した解説が掲げられている。メキシコ前史、日墨交流史、および今回展示されている8人と作風について説いている。

   北川民次については、田中敬一が「北川民次とメキシコ・ルネサンス」を書いている。岡本太郎は、メキシコ市で制作した壁画「明日の神話」と、メキシコで本人が撮った写真が並べられている。人物エッセイはない。不要なのだろう。

   河原温については、平出隆が「河原温とメキシコ」を添えている。水木しげるは、今福龍太が「仮面たちの叛乱ー水木しげるのメキシコ」を掲げている。

   スズキコージは、野谷文昭が「祝祭的メキシコが溢れるスケッチブック」を、小田香については、港千尋が「霹靂の国へ」を、それぞれ書いている。

   次は「エッセイ篇」。吉田喜重「回想のメキシコ、追想のメヒコ」、黒沼ユリ子「メキシコ人と音楽ーわが心のメキシコ」、渡辺庸生「奇跡のメキシコ料理」、太田昌国の長物「メヒコの衝撃/衝撃のメヒコ」と続く。

   私も飛び入り的に参加し、「死があやしく騒ぐ街」を寄稿した。

   

   

   

    

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