ハイチ大統領殺害は辞任求めた野党勢力関与か

      ハイチ上院は7月9日、暫定大統領にジョセフ・ランベール議長を任命した。上院議員総数の3分の1の任期内にある議員による決議で決まった。だが定足数には達しておらず、決議が公式なものとして認めらえるかどうか定かでない。

   国会上下両院は2000年1月、7日に暗殺されたジョヴネル・モイーズ大統領によって解散させられ、機能していない。

  この決定への支持は少なく10日、ランベールは「就任延期」に追い込まれた。 

   暗殺事件後、暫定政権は実質的にクロード・ジョセフ暫定首相が握っている。上院は、正式に首相に就任したい意志を表明している同暫定首相に対し、あからさまに権力闘争を挑んだ形になった。

   だがモイーズは殺害される2日前の7月5日、新首相にアリエル・アンリを任命しており、ジョセフとアンリの間にも権力闘争がある。

   暫定首相ジョセフは、「私は権力には興味はない。次の大統領派選挙で決まる」と述べた。ジョセフは国軍と国家警察の支援を得て当座の権力を固め、戒厳令を発動することが可能になった。その事実が9日明らかにされた。

   ジョセフは9日、暫定政権が事態の正常化を図る間、公官庁警備など治安確保のため国連軍と米軍にハイチへの派遣を要請した。

   これに対し米国務省は、連邦捜査局(FBI)と国家安全保障関係の要員を近くハイチに派遣したいと述べた。

   事件に巻き込まれ撃たれて重傷となったマルティーヌ夫人は、マイアミの病院で手当てを受けている。故大統領の葬儀は、夫人の退院を待って挙行される。

   一方、首都ポルトープランスの台湾大使館は9日、暗殺事件に関与したコロンビア人容疑者のうち11人は保護を求めて同館に駆け込んでいたが、8日ハイチ警察に逮捕、連行された、と明らかにした。

   コロンビア人容疑者は26人で、うち15人は逮捕されたが、残る11人は射殺されたか逃亡中かであり、数字は定かでない。

   コロンビア人コマンドの通訳として陰謀に参加し逮捕されたハイチ系米国人2人は、1か月前にハイチ入りし、コロンビア人たちは3カ月前から入国していた、と供述している。

   暗殺事件は、「ある勢力」がコロンビア人傭兵コマンドを使って実行したことが明らかになっているが、事件の黒幕である肝心の「ある勢力」は不明なままだ。

   ハイチのマティアス・ピエール選挙担当相は9日、「大統領は片脚と片手を拷問され、辞表に署名するよう迫られたが、これを拒否したため、12発撃ち込まれて死亡した」と明らかにした。

        この「辞任強制」から、今年2月7日までの辞任をモイーズに迫っていた野党勢力が事件に関与していた可能性が浮上した。当局は12日から、その捜査を開始する。

   しかし、コロンビア国家警察のホルヘ・バルガス長官は9日ボゴタで記者会見し、コロンビア人容疑者たちは4つのコロンビア企業から雇われ、2つの集団に分かれて、パナマおよびRD(ドミニカ共和国)経由でハイチに入国した、と明らかにした。第2集団は7月4日に入国したという。同長官は、同4社の企業名を把握していると言明した。

   容疑者のコロンビア人の妻は9日、「夫はCTUという会社から月給2700ドルで雇われた。RDに行くとだけ聞いている」と述べた。

   傭兵雇い主は傭兵たちとインターネットを使うなどして巧妙に契約したもようで、コマンド要員らは雇い主が誰だか知らない可能性がある、との見方が出ている。

   コロンビア軍兵士は米軍顧問から厳しく訓練されているため、退役軍人は民間の警備会社や準軍作戦会社から引っ張りだこという。

   昨年5月、べネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領の拉致連行ないし殺害に米国が懸けた巨額の賞金を狙って、コロンビア人、米国人らのコマンドがVENに上陸し、VEN軍に制圧される事件が起きている。

   ハイチ国家警察のレオン・シャルル長官は、容疑者たちは貧困、暴力、政治的不安定に苦しむ国に、新たに大統領暗殺事件をもたらした、と語った。

   

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