キューバの詩人エべルト・パディージャ(1932~2000)が1971年3月20日逮捕され、4月27日自己批判させられた「パディージャ事件」から半世紀が過ぎた。この時宜を捉えて25日、同事件の解釈やラ米知識人らの反応を分析した冊子(読本)がハバナで刊行された。 執筆者は、ラス・アメリカス館長アベル・プリエト(作家、元文化相)と、同館幹部ハイメ・ゴメス=トゥリアナ。題名は、『ゲームの外(および内)でー「パディージャ事件」から50年』。 パディージャは1968年に詩集『ゲームの外で』を出版。「ゲーム」とは、進行中のキューバ革命体制の隠喩である。この詩集は同年、玖作家芸術家協会(UNEAC)賞を受賞したが、「反革命」傾向を指摘されていた。 キューバは59年元日の革命当初から経済建設が難航。60年代半ば以降、経済苦が厳しくなっていた。そこでフィデル・カストロは共産党路線を民族路線からソ連寄りに切り替え、72年にはソ連圏諸国の経済相互援助会議(コメコン)に加盟、経済を安定させた。75年には社会主義憲法を制定、76年にソ連型政治機構に移行した。 60年代末には、政経両面の「ソ連近似化」路線が始まっており、思想統制も徐々に厳しくなっていた。コメコン加盟を翌年に控えた71年の3月20日、パディージャは逮捕され、4月27日まで拘禁された。釈放されてすぐにUNEACで自己批判させられ、「反革命の非」を認めた。これが「パディージャ事件」である。 事件を境にラ米や欧州の知識人が少なからずキューバ革命支持を取り下げ、カストロ体制と袂を分かった。刊行された読本は、とくにラ米作家たちの反応を三通りに分けて分析している。 ①はペルーのマリオ・バルガス=ジョサ(MVLL)ら強硬派。カストロ体制を「スターリン主義」と批判して離反した。②は亜国の故フリオ・コルタサル、スペインの故フアン・ゴイティソーロらで、袂を一旦分かった後、キューバと仲直りした。③はコロンビアの故ガブリエル・ガルシア=マルケスのように革命体制支持が明確な者。 興味深いのは、パディージャが自己批判を逆手にとって、キューバが、「スターリンによる粛清が猛威を振るっていた1930年代のソ連のようになってしまった」ということを暗に表示したと、筆者2人が指摘していること。 自己批判を聴いたUN...
はじめまして!
返信削除もともとはディエゴリベラの壁画が好きだったことから始まったのですが、南米がもつ複雑怪奇な魅力にやられている一人です。パトリシオ・グスマンの映画はどう感じられましたか?伊高さんの感想をお聞きしたいです。