キューバ政府、「反体制行進」を封じ込める

           キューバ政府は、反体制派、対政府不満派らが昨11月15日に予定していた全国的な「変革のための市民行進」を実力で封じ込めた。政府は何事もなかったかのように「国境を開き」、国際観光を15日再開させた。

    またコロナ禍COVID19が下火になったのを受けて、政府は学校教育での対面授業を再開。ミゲル・ディアスカネル大統領(共産党第1書記)は、学生・生徒らと歓談した。

            大統領は夜には、昨年7月死去したハバナ市の変遷を記録していた著名な公式歴史家エウセビオ・レアルの立像の除幕式を同市旧市街で挙行した。 

    「15N」の略称で内外に広く報じられた今回の反政府デモ行進計画は、「アルチピエーラゴ」(多島海)という若手芸術家らの団体が組織していた。これを米政府をはじめ、世界各地の市民団体などが支持支援していた。

    玖政府は、7月11日に全国で1万人前後の国民がSNSで連携し合って対政府抗議行動を決行した「不意打ち」に遭って狼狽。「革命体制」(共産党一党支配体制)が危機に陥ったと認識し、「反革命行動」再発に全力を挙げた。

    今回は「予告された行進」だったため、政府はまず行進を「非合法」とし、内務省軍、警察特殊部隊、有事即応青年部隊、革命防衛委員会などを総動員して、「革命体制防衛」の準備を整えた。それが奏功した。

    カトリック教会のカマグエイ大司教区は、司祭らが後進に参加するのを阻止された、と明らかにした。青年共産主義者同盟(UJC)の若者らが教会施設前で「くたばれグサーノス(反革命派)」などと叫び、外出を阻んだという。

    「多島海」の指導者である劇作家ジュニオール・ガルシアらは自宅から一歩も出られなかった。厳戒態勢下で行進は不可能となり、政府側の行事だけが目立った。国営メディアに対抗するフリージャーナリストたちも自宅に留められた。

    玖民間団体「玖人権監視」の集計では、13日から15日朝にかけて約200件の弾圧があった。49人が自宅軟禁、25人が脅迫に遭った。カトリック司祭数人も脅された。インターネット切断が相次ぎ、SNSによる情報伝播が途切れた。 

    一方、玖国営通信プレンサ・ラティーナは15日、米国内から膨大な数量のインターネット攻撃があった、と報じた。

    米国の国営放送「ヴォイス・オブ・アメリカ」(VOA)は、ラ米各地での玖反体制派支持の言動を細かく伝えるなどして、キューバ国内での行進不発で生じた「空白」を補った。欧米やラ米のメディアは一様に「当てが外れた」観がある。

     だが、玖国民が「革命体制」支持・反対両派に分断されている状況は変わらない。今回の行進不発で不満派の心情や反感は一層鬱積し、そのエネルギーが爆発する可能性は将来に持ち越された。

    政界から引退したラウール・カストロ陸軍司令官(90)は、2009年に自ら追放したカルロス・ラヘ元国家評議会副議長(元党政治局員)の「復活」を示唆するなどして、子飼いのディアスカネル大統領を刺激した。

    今回の反体制運動の抑止に失敗したら、経済政策で既に失敗している同大統領に明日はなかった、と見られている。

    今後、政府は国民生活向上策などを絡めた国民懐柔策を強化しつつ、反体制派への弾圧をさらに強化してゆくだろう。

 

    

 

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