メキシコ外相が「メリダ計画」終了を宣言

      メキシコと米国の間には、「メリダ計画」という麻薬取締協力の枠組みがあった。マルセロ・エブラ―ル墨外相は9月29日、メリダ計画は終わったと宣言した。 

  フェリーぺ・カルデロン大統領期のメキシコ政権(2006~12)は発足直後の2006年12月、「麻薬戦争」を開始した。当時コロンビア政府が展開していた対ゲリラ戦を柱とする「麻薬戦争」に、米国はクリントン政権末期から「コロンビア計画」を通じて肩入れしていたが、時のブッシュ息子米政権は07年、メキシコの麻薬戦争への支援を決めた。

  米政府は、メキシコの後背地である中米北部を、コロンビア、ペルー、ボリビアなどで生産されるコカインの中継地と見なし、メリダ計画の枠組みに含めていた。

  米議会の承認を得て 08年、正式に「メリダ計画」は発足した。米軍が巨額の資金を投入して、メキシコ軍・警察に、戦略・戦術、軍事訓練、兵器、諜報などの分野で支援。カルデロン政権の麻薬戦争は激化し、全土で夥しい数の人道犯罪が起きた。

  軍隊出動で一般市民の犠牲が最悪の状態になった半面、麻薬マフィアは、カルデロン政権に協力するものと、そうでないものとに分かれ、反逆するマフィアが主として攻撃された。その状態はカルデロン政権終了と共に麻薬戦争が終わった後へと続き、今日に至っている。

  エブラ―ル外相は、「メリダ計画は終わった。我々は別の次期に入りつつある」と述べ、従来の「計画」終了が墨米間で共通の認識になっていることを指摘した。外相は理由として、10月8日メキシコ市で墨米政府間の高級会合が開かれ、新しい枠組みが形成されることを明らかにした。

  会合には米側からアントニー・ブリンケン国務長官、アレハンドロ・マヨルカス国土安保長官、メリック・ガーランド司法長官らが出席する。会合では「合意文書」が調印されるが、それは終焉したメリダ計画に替わる新しい治安協力の枠組みを創るものという。

  新文書は、「相互に敬意を払い合う相互尊重」を基本精神として協力し合うのが主眼。外相は、「共同行動をとるという点でメリダ計画と大きく異なる」と強調した。

  外相は、現在のメキシコの最大の治安問題は暴力事件と殺人事件の減少を図ることとしながらも、会合では、なぜ米墨両国で麻薬消費が増えているのか、についても議論すると述べた。

  会合で文書内容が正式に策定された後、墨米両国統領が大統領が署名することになる。

  

  


 

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