「太平洋同盟」(AP)が加盟国拡大に動く

       チリのセバスティアン・ピニェーラ大統領(71)は来年3月11日の任期終了まで半年を切ったが、現在は2期目。最高指導者としての「有終の美」を飾ろうと動き始めた。大統領は9月24日、ラ米3カ国歴訪に出発、最初の訪問国コロンビアはカリブ海岸のカルタヘーナ市に到着、イバン・ドゥケ大統領と会談した。

  議題は、通商をはじめとする両国関係、コロナ疫病COVID19対策協力、対ベネズエラ関係、および、両国がペルー、メキシコと共に構成している「太平洋同盟」(AP=アリアンサ・デル・パシフィコ)拡大構想だった。

  ピニェーラは会談に先立ち、カナダ、豪州、乳国(ニュージーランド)、シンガポールの4カ国をAPに招き入れ、次いで赤道国(エクアドール)の加盟実現に向かうという構想を公表している。

  APは2011 年に発足。ラ米太平洋岸4大国がすべて保守政権だった時期には頻繁に首脳会議を重ね、域内の通商を活発化。TPP諸国とラ米諸国を経済的に結ぶ役割を自認していた。だがメキシコに進歩主義・民族主義路線のAMLO政権が登場した18年末から変調をきたし、ペルーに今年7月、カスティージョ左翼政権が出現すると、状況はさらに変わった。

  実業家出身で富豪のピニェーラは、政治的に肌の合わないAMLOとカスティージョよりも、新規加盟国を増やしてAPを拡大、活性化を図る方向に転じた。

  今月18日メキシコ市で開かれたCELAC首脳会議にチリは副外相(日本では審議官級)、コロンビアは運輸相を派遣、AMLOに対し冷淡な態度を示した。

  ピニェーラはコロンビアに続き、ウルグアイとパラグアイを訪問する。両国は伯亜両国と共に関税同盟「南部共同市場」(メルコスール)を構成するが、極右のジャイール・ボウソナロ伯大統領と中道左翼のアルべルト・フェルナンデス亜大統領が対立し、機能が滞っている。

  APは以前からメルコスールと対話を続けてきたが、ピニェーラはコロンビアの意向も容れて、メルコスール内で伯亜両大国に挟まれたウルグアイ、パラグアイの保守・右翼系両国との接近を図ったのだ。

  ピニェーラには、分裂し活動が停止状態にある「南米諸国連合」(ウナスール)に替わる「プロス―ル」創設を提唱しており、その運動も今歴訪に含めている。

  南米は来年、ブラジル大統領選挙でルーラ元大統領が復権する公算が大きく、コロンビアでも中道左翼勢力の進出が著しい。ピニェーラは南米の近未来を展望しつつ、外交戦略を実行しているわけだ。    

 


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