キューバ政府が急場しのぎの「太陽政策」

   キューバ共産党政権は7月11日の、「反体制」を含む全国的な対政府抗議行動を受けて、国内向けに「太陽政策」を取り始めた。

  政府は、キューバ在住の国民や在外国民、外国人旅行者らがハバナ国際空港などから入国する場合、食品・食糧、薬品、洗面用品を無制限・無関税で持ち込めることにした。この優遇制度は大晦日までの実験的措置で、来年はどうなるかわからない。

  持ち込まれた物資が転売されるのは必至で、政府は車庫販売を許可した。これは、引っ越す人が台所用品、家具などを安く売りさばく「ガレージセール」ではなく、小売店のような役割を国民に許したことを意味する。「車庫販売者」は、自営業者のように政府当局への登録を必要としない。

【7月19日~8月2日にハバナ空港から入った無関税持ち込み荷物は112トンに達した。】

  抗議行動は日常生活の必需品の欠乏とコロナ禍によるところが大きく、新たな措置は物流の一部を国民の手に委ねたことになる。「国家による独占」は経済面で少しずつ崩れつつある。

  しかし、米ドルなど外貨を持つ者は外国へ買い出しに出かけたり、国内の外貨店で物資を入手したりすることが可能。だが外貨に接近できない者は生活苦に苛まれる一方だ。そこで政府は、最貧層向けに生活必需物資を配給することにした。

  さらに外国からの緊急援助物資を国民に分配する政策にも着手した。ロシア、メキシコ、ボリビア、ベネズエラ、ニカラグア、ドミニカ共和国、ジャマイカなど友好国から食糧、薬品、雑貨、コロナ禍対策器具、燃料などが続々到着している。これらを配給するのだ。

  だが政府は米国系NGOなどによる物資搬入「SOS作戦」に対しては、受け入れを拒否してきた。その援助搬入が「トロイの馬」の役割を果たすと見るからだ。

  しかし、始まった国民向けの一種の「太陽政策」は自力更生策とはほど遠い、時間稼ぎのための対症療法に過ぎない。やはり市場化促進、自由をはじめ基本的人権を認める範囲を広げるなど、根本的な方策が不可欠だ。それがなければ、事態は悪化するばかりだろう。

▼猛威振るう疫病

  玖保健省は8月4日、前日3日、9363人がCOVID19に感染、98人が死亡したと発表した。1日の死者数としては、昨年3月以来最大。死者は累計3091人に達した。1日に9000人以上が感染するのは4日連続。感染者は累計42万2600人となった。

▼UJC第1書記が交代

  玖共産党青年部UJC(青年共産主義者同盟)の第1書記が8月3日、ディオスバニー・アコスタからアイリーン・アルバレス(これまで第2書記)に交代した。7月11日の抗議行動を受けた交代劇と見られる。

▼米上院が対玖決議

  米上院本会議は8月3日、7月11日の玖国内抗議行動への弾圧を非難する決議を全会一致で採択した。また玖国民に連帯を呼び掛けた。

  一方、首都ワシントン市当局は2日、キューバ大使館前の通りの名を「オスワルド・パジャー通り」と改名した。従来の「16NW通り」の一区切りを改名したもの。パジャー(1952~2012)はキューバの著名な反体制活動家だった。道路名改名は、米政府による明らかな嫌がらせだ。玖系共和党議員らが運動していた。 

▼ソーラーパネルの個人輸入を認める

  玖政府は8月4日、個人が国外で買ったソーラーパネルを非商業用に限って持ち込むことを認めた。12月31日までは無関税。手荷物、船便、郵送が可能。

▼中小零細企業が経済当事者に

  玖国家評議会は8月6日、非公営部門の中小零細企業、非農牧業協同組合、自営業の3経営形態を「経済活動の当事者」として正式に承認した。また同3者の労働者に社会保障を受ける権利を与えた。

  規定では零細企業は従業員が1~10人、小企業は11~35人、中企業は36~100人。

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