ドレーク海峡沖領海線を巡り亜智両国が争う

     アルヘンティーナ(亜国)とチレ(智国)がまたパタゴニアの領海問題で争っている。南米南端のホーン岬沖の智領ディエゴラミレス諸島から南極半島にかけて拡がるドレーク海峡と南氷洋の海底に連なる大陸棚とその海域の領有権が問題の中心にある。

  アルべルト・フェルナンデス大統領の亜国ペロン派政権は、大陸棚と海域の領有権を主張、一帯での資源開発に道を開きたい構えだ。これに対し、セバスティアン・ピニェーラ大統領の智国保守政権は、ディエゴラミレス諸島を起点とする南方海域での領海および200海里経済水域の境界線は画定しているとして、譲らない。

  チレ官報に8月記載された領海線に関する記事が、亜国を刺激し反発させた。

  専門家は、両国は同一の海底(大陸棚)を基に領海・経済水域を主張しており、解決は極めて難しいと見ている。チリには「地球最南端の独立国」という自負と誇りがあり、それが領海権主張の根底にある。

  一方、亜国には、かつて領有していたパタゴニア東方のマルビーナス(フォークランド諸島)を英国に奪われて久しい歴史があり、ホーン岬沖海域で領海線を拡げたいのだ。

  1982年4~6月、当時のガルティエリ亜国軍政はマルビーナス諸島奪回のため戦争を起こしたが、サッチャー英政権の英軍に敗れた。この戦時、ピノチェー軍政の智国は英国を支援した。

  亜国、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ4か国で構成する関税同盟メルコスール(南部共同市場)の議会は、今回の問題解決のため亜智双方に対話を求めている。だが智国はメルコスールの協賛国であって、加盟国ではない。同議会の要請に応じる気配は見られない。

  ビデラ亜国軍政とピノチェー軍政は1977~78年のビーグル水道領有権紛争で一触即発の事態に陥ったが、ローマ教皇の仲介で話し合い、和解した。現在は両国とも民主政権であり、軍部の睨み合いはない。

     だが8月31日、智バルパライソ港に入港した亜海軍練習帆船リベルタ―は着岸できず、公式歓迎行事もなかった。領海線問題だけに、両国海軍の関係は冷え込まざるを得ない。

  亜国政府は、ハーグの国際司法裁判所に提訴する選択肢も温めている。

  チレでは11月21日大統領選挙が実施される。同国の2大課題は大統領選挙と、来年の制定に向けて進行中の新憲法起草作業だ。

  ピニェーラは来年3月11日、任期を終えて退陣する。レームダックしつつある同大統領だが、幸か不幸か、対処すべき隣国との外交案件が出来たわけだ。


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