ニカラグア政府がラ・プレンサ紙を発行不能に追い込む

    ニカラグア警察は8月13日、首都マナグア市内の日刊紙ラ・プレンサ本社を家宅捜査し、フアン=ロレンソ・ホルマン社長を拘禁した。電源は切られ、電脳機器類は押収され、社員同士の連絡は困難になった。

   同紙は12日、税関で新聞用紙が差し押さえられたため13日以降、新聞発行は不可能になると表明していた。検察は同紙に「資金洗浄」、「税関詐欺」の容疑をかけ、13日の家宅捜査となった。

   だがオルテガ政権の狙いは、11月7日の大統領選挙に備え、政府批判の中心的存在であるラ・プレンサを黙らせること。

   今年5月以来、当局による政敵弾圧が続いており、これまでに大統領選挙出馬希望者7人をはじめ32人が逮捕拘禁された。ホルマンは33人目となる。

   ラ・プレンサは、この国で最も長い歴史を誇る最大の新聞。ソモサ独裁期には反独裁の論陣を張り、1978年、ペドロ=ホアキン・チャモーロ社主がソモサ派に暗殺された。

   この事件を契機に国民が反独裁で団結、ゲリラ組織FSLN(サンディニスタ民族解放戦線)を前衛とするニカラグア革命が79年7月勝利し、FSLN主体の政権が発足した。だがレーガン米政権が81年から革命体制破壊のため反革命軍コントラを送り込み、80年代は内戦に明け暮れた。

   チャモーロ社主の妻ビオレタは1990年の大統領選挙に出馬。日米両国の強力な支援を得て勝利し、85年に就任したダニエル・オルテガ大統領のサンディ二スタ政権は潰えた。

    3代の新自由主義政権を経た2006年、オルテガが当選。07年1月、オルテガ派FSLN 政権が復活し、これまで連続3期続いてきた。オルテガは11月選挙で連続4選、通算5期目を目指す。オルテガの妻で詩人のロサリオ・ムリージョは現在、副大統領1期目にある。

   オルテガ政権はニカラグアの太平洋岸とカリブ海側を結ぶ両洋間「大運河」建設を試みたが、技術的困難や資金不足から挫折。18年4月からは反政府街頭行動に遭ってきた。

   トランプ前米政権は反政府行動を支援、これはバイデン政権に引き継がれている。

▼作家セルヒオ・ラミレスに逮捕状

   1979~90年にサンディニスタ政権に参加し、80年半ばからダニエル・オルテガ大統領の下で副大統領を務めたが、サンディニスタ下野後の95年サンディニスタ刷新運動(MRS)を結成しオルテガと袂を分かった作家セルヒオ・ラミレス(79)に9月9日、逮捕状が出された。容疑は「資金洗浄、国民団結破壊、挑発」など。11月の大統領選挙前の反対派弾圧の一環。

   ラミレスは9月10日、亡命先のコスタ・リカのウニベルサル紙に、「グアテマラにはキューバよりも自由がある。ハイチはニカラグアよりも、ホンジュラスはベネズエラよりも自由だ」と語っている。逮捕状の執行は難しい。

   代表作は「天罰」、「海がきれいだよ、マルガリータ」など。ロムロ・ガジェゴス賞(VEN)、カルロス・フエンテス賞(メキシコ)、セルバンテス賞(スペイン) などを受容してきた。

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