ペルー政情、重大局面に向かい始める

      ペルーのペドロ・カスティージョ大統領は8月10日、オンブズマンと会計検査院長と会談し、国家評議会を来週招集すると約束した。マリーアデルカルメン・アルバ国会議長が9日、招集を求めたのを受けた決定。

  アルバ議長は「国家の安定」について意思を表明するよう大統領に求めている。

  一方、ギド・べジ―ド首相は11日、自身の信任投票を求めて23日、国会本会議に出席すると明らかにした。政情は重大な局面に向かい始めた。【13日首相出席は26日に決まる。】

  検察は、べジ―ドを「テロリズム団体礼賛」容疑で捜査中。また同首相、および政権党PL(自由ペルー)党の党首ブラディーミル・セローン書記長を「不正選挙資金洗浄」容疑で捜査している。べジ―ドはセローンの側近だ。

  反べジ―ド気運が高まっている国会で信任投票が実施されれば、解任される公算が大きい。政権党と協力政党を合わせた議席が定数の3分の1にも満たないからだ。解任されれば、カスティ―ジョ政権は発足1カ月も経たずに重大な危機に陥ることになる。

  カスティージョ大統領は、「国会による不信任を待たず、任務を遂行しない者は辞任することになる」と語っている。セローンの意向を受けて任命したべジ―ド首相に対し、暗に辞任を求めているのかどうか定かでない。

  べジ―ド首相就任に反対していたペドロ・フランケ経済・財務相は11日、英紙フィナンシャルタイムズによるインタビュー記事で、「カスティージョ大統領が考えている経済改革に限っては、拳法を替えなくても遂行可能だ」と述べている。

  カスティージョは、ボリビアMAS(社会主義運動)政権に倣った民族主義経済路線を志向し、同国のエボ・モラレス元大統領が新憲法制定によって、その経済路線を確立したように新憲法制定を目指している。

  新憲法制定は、単に経済路線確立に留まらず、ペルーを「多民族国家」と公式に規定するなど、独立200周年を機に国の在り方を変える狙いを持つ。

  だがべジ―ド首相とセローン党首の問題に象徴されるように、カスティージョ政権は発足時から危機にのめり込みつつある。カスティージョが信頼する重鎮フランケは、現時点では制憲議会開設による新憲法制定は不可能に近いと見ており、敢えて改憲なしでも経済改革は可能と述べたわけだ。

  エボ・モラレスは、カスティージョ派教組に招かれてリマ滞在中で、同教組会合に出席している。

▼政権党が議長らの解任動議提出に動く

  カスティージョ政権の党PLは8月12日、国会のアルバ議長、およんび3人の副議長の解任を求める動議提出に向けて多数派工作を開始した。

▼教員人民党が政党登録手続き

  カスティージョ派教組FENETEを基盤とする新党「教員人民党」(PMP、メリー・コイラ党首)が8月13日、国家選挙理事会(JNE)で政党登録手続きを開始した。1年以内に党員2万4000人以上の名簿を提出する。PMPは全国に拠点20カ所を持つ。

▼セローンが次期大統領選挙出馬の意向

  ブラディーミル・セローンPL党首は8月14日、「条件が整えば2026年の大統領選挙に出馬する」と述べた。「それが整わなければ別のPL党員が出馬することになり、PLは今から男女2人ずつの候補者候補を養成しておく必要がある」とも語った。

▼秘海軍がべハル外相発言を糾弾

  ペルー海軍は8月16日、声明を発表し、エクトル・べハル外相が就任前の今年2月27日、左翼との会合で「ペルーでのテロリズムは海軍が始めた。海軍はCIAから訓練されてきた」と述べたことに公式に反論、その発言を糾弾した。

  べハルは同じ発言機会に、「センデロ・ルミノソ(SL、輝く道)の多くはCIAと諜報機関がでっちあげたものだ」とも語っている。

 

  

コメント

このブログの人気の投稿

ラ米学徒、久保崎夏の思い出

『ホンジュラスに女性大統領誕生』公開のお知らせ

メキシコ外相が「メリダ計画」終了を宣言