グアイドー派がマドゥーロ大統領に対話を持ち掛け
ベネズエラ政府と反政府勢力の対話の可能性が、わずかながら見えてきた。ニコラース・マドゥーロ大統領は5月12日、国営テレビを通じて、「いかなる反政府勢力・野党とも、いつでも、どこででも、どのような形でも話し合う用意がある」と言明した。
これは、反政府勢力のうち極右勢力の指導者フアン・グアイドー前国会議長が11日、「VEN危機打開のため自由で公正な選挙実現を図る目的で、<国家>救済合意>(ASN)を結ぶ話し合いをしたい」とマドゥーロ宛に表明したのを受けた措置。
グアイドーは米国、欧州諸国、リマグルーポ(ラ米保守・右翼諸国)と話し合って、ASNを提唱した。大統領との話し合いのテーマには①大統領、国会議員、州知事、市長・市会議員選挙をやり直す②人道的援助とコロナワクチン援助を受け入れる③政治囚釈放と亡命者帰国④ASN実施状況に応じた封鎖(米国などによる対VEN制裁)の段階的解除⑤大統領との話し合いへの「国際的有力勢力の立ち合い」ーが含まれている。
騒乱教唆罪などで有罪となり、自宅軟禁の形で服役中の昨年、スペインに逃亡したグアイドーの政治的師レオポルド・ロペスは12日、訪問先ポルトガルで①VEN国民へのコロナワクチン接種②自由選挙実施③ワクチン接種と選挙実施の日程策定ーの3つが話し合いの要点と述べた。
マドゥーロ大統領は「全ての反政府勢力と会合する用意がある。欧州連合、ノルウェー、対VEN交渉接触グループによる話し合い支援に同意する」と述べ、ここでは米国には言及しなかった。VEN原油資源確保を狙っていたトランプ前米政権は2019年1月、グアイドーを傀儡として「大統領代行」に擁立、マドゥーロ政権打倒工作を続けた。
後継のバイデン現政権は、トランプほどあからさまではないが、「グアイドー支持」政策を維持している。
マドゥーロは、ロペス、グのアイドー、米国、コロンビアなどが関与した大統領暗殺を狙った昨年VEN侵攻上陸作戦に触れ、「対話路線に転じたのか。何を持参するのか。北(米政府)から命令されているのか。君の大統領(トランプ)の任期は終わっている。君は野党指導者の一かけらにすぎないのだ。そして今、私に話し合いを持ち掛けた」と、嫌悪感を込めて指摘した。
さらに、「良い話が出れば検討する。彼らは戦(いくさ)、侵攻、テロリズム、クーデターの暴力路線を止めて選挙路線に切り替えたのか。選挙路線には同意する」と述べた。
グアイドーの対話持ち掛けは、トランプ政権と組んでのマドゥーロ政権転覆工作がことごとく失敗し、自派の政権獲得の狙いが全く進展しなかったことから、暴力や強硬路線では事態打開が不可能と判断。柔軟路線に切り替えたもの。一方、VEN国会で政権党PSUV(VEN統一社会党)幹部は12日、グアイドーと麻薬組織との関係を国会で質す」と表明した。これは19年にグアイド―がコロンビア麻薬マフィアに関係する人物と一緒に撮った写真が暴露された事件に関連した追及措置。
このほかグアイドーには、トランプ政権と謀ってVEN政権転覆を目指した反逆罪、密出国、公金横領、軍事的侵攻関与、クーデター未遂関与などの容疑や嫌疑がかけられている。
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