キューバが元日から1米ドル=24ペソの唯一交換率実施へ

  キューバのミゲル・ディアスカネル大統領は12月10日、ラウール・カストロ共産党第1書記の立ち合いの下、複数ある為替相場を来年元日から「1米ドル=24ペソ(CUP)」の唯一の公定交換率にすると発表した。これは新しい「通貨・交換率規定」実施過程の始まり。

 同過程には、外貨と通貨ペソ(CUP)の間にある「兌換ペソ(CUC)」(公定で1CUC=1米ドル)使用打ち切り、過剰な補助金と不当な無料サービスの廃止、所得配分の変更などが含まれている。

 CUC使用は今年末で打ち切られ、銀行預金者らCUC所有者は、元日から180日以内に1 CUC=24ペソでペソに交換せねばならない。期限後まで通知のなかった預金者のCUC口座は自動的にペソ口座に変更されるが、遅れた期間に応じて手数料を銀行に支払わねばならない。

 CUC預金を外貨に替えてほしい預金者には、銀行が「外貨換金済み証明書」を発行する。

 玖政府は経済「改革」という言葉を使わず「経済現代化(最新化)」という表現で改革を進めてきたが、CUP、CUCの「国内二重通貨制度」の一本化が最重要課題の一つだった。10年近い試行錯誤の末に、ようやく実現することになった。

 中国のかつての「兌換元」に倣って設けられたCUCだが、その使用は昨年末から制限され、今日ではペソとドルが中心的通貨になっており、CUCからペソへの早期交換が奨励されてきた。CUCは既にほぼ使用されなくなっている。

 CUC廃止の理由の一つは、本来、外貨保有量の裏付けをもって発行量が決まるはずの「代用外貨」CUCでありながら、その裏付けなしに発行され、インフレを招いたこと。市井の購買力が商品供給量を大幅に上回ってしまったのだ。

 米ドルは1993年に使用、貯蓄が合法化され、CUCは外貨に裏付けられた代用通貨だった。だが2004年にドルは非合法とされ、CUCが表面に出て1ドル=1CUC=売り24ペソ・買い25ペソの固定交換率が定められた。

 この交換率はペソ貨価値の実勢を反映せず過大評価したもので、玖経済の実勢を示す統計も意味を失った。 コロナ禍で観光産業が麻痺したためドル流入が大幅に減少したため、1CUC=36~40ペソまで価値が下落していた。

 これとは別途に、1959年元日のキューバ革命の後に設定された「1ペソ=1ドル」の交換率は国営部門には今日まで適用されてきた。実勢をはるかに上回るペソ高は輸入には有利だが、輸出には不利だった。これも統計を無意味にした。

 それどころか、生産するより輸入する方が得、という考え方がはびこり、食糧生産不足に象徴されるように、キューバ人に自力更生精神を失わせる原因ともなってきた。国営部門にとってペソは24分の1に切り下げられることになる。これは「画期的」な改革ではある。

 今後は輸出産業が一層奨励され、輸入部門は代替国産や輸入縮小を迫られよう。

 2013 年に決まった当初の政府計画では「生産を上げて交換率を1ドル=10ペソ程度にし、徐々に1対1に近づける」ことだったが、それは画餅に終わった。 

 今回の通貨政策に伴い、職業や就労時間に基づく32種類の新しい賃金体系が10日官報に記載された。最低賃金月額(週44時間労働)は従来の4倍近い2100ペソ(87・5ドル)に引き上げられた。40時間労働は1910ペソ。最高月額は9510ペソ(396ドル)だ。

 食品など生活必需物資の新価格は10日官報に記載されたが、補助金廃止で値上げされており、最低賃金や、1582ペソになる年金だけの生活者の暮らしの苦しさは和らがないだろう。

 物価は全般的に値上がりするが、例えばパスポート取得料は何と2500ペソで、最低賃金を400ペソも上回る。また旅券とともに携行すべき「身分・旅行証明証」は1250ペソ、在外玖人は3750ペソになる。旅券は2年ごとに有効期限延長手続きが必要で、手数料が要る。

 パスポートの3回延長の際には3000ペソが要る。玖旅券は、ラ米ではハイチやRD(ドミニカ共和国)と並んで有効性に乏しい。

 

▼マイアミ市が「反共の日」制定

 米フロリダ州マイアミのフランシス・スアレス市長は12月10日、「国際人権日」に当たるこの日を「反共産主義の日」と制定する公式文書に署名した。 

 

 

 

 

 

 

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