チリで25日、民主憲法制定の是非問う国民投票

  きょう10月25日チリで、1980年に制定された現行の軍政憲法維持か、それとも現代にふさわしい民主新憲法制定か、その是非を問う国民投票が実施される。現行憲法はピノチェー軍政下に制定されたが、それを維持すべきか否かが40年ぶりに問われる。

 国民投票実施の直接的契機は昨年10月始まった、首都サンティアゴの地下鉄料金30ペソ値上げに大学生と中学校生ら学生層の反対行動だった。政府はカラビネロス(準軍警察、治安警備隊)を出動させ弾圧。30数人が死亡、3500人が負傷した。

 学生たちを労働者ら若者層が支援、料金値上げ反対闘争は、長年続いてきた歴代政府の新自由主義経済政策によってもたらされた貧富格差の大幅な拡大など「社会的不正義」を糾弾、そうした状況を覆す「革命的事態」に発展した。

 大資産家であるセバスティアン・ピニェーラ大統領は保守・右翼勢力に支えられているが、弾圧から対話、対話から譲歩へと進み、事態打開には新憲法制定しかないという若者をはじめ改革勢力の要求に応じざるをえなくなった。

 チリの政治、経済、社会が立ち行かなくなったのを大統領も理解したのだ。

 学生側にしてみれば、この闘争は2006年の教育改革運動に始まり、13年後の昨年、ようやく国民投票実施決定として実ったのだ。当初、ことし4月に実施されることになっていたが、コロナ禍で半年延期された。

 因みにチリはCOVID19ワースト14位で、50万人が感染、1万4000人が死亡している。

 国民投票の設問は、①新憲法制定(軍政憲法廃止)の賛否②新憲法起草を㋐制憲議会(155人、男女半々)が起草㋑国会議員(86人)および同数の制憲議員で構成する起草会議ーのいずれで起草するかー。㋐㋑とも、制憲(議会)議員の選挙が実施されることになる。

 制憲議会選挙は21年4月11日の州知事、州議会、市長、市会選挙と併せて実施される。起草会議議員選挙となる場合も同じ日程で実施される。制憲議会ないし起草会議は5月開設される。草案は3分の2の賛成で成立する。

 ①で新憲法制定が承認されれば、②の投票結果に基づき起草される。①で否定されれば、②は無意味となる。㋐と㋑では、制憲議会議員が起草する㋐の方が世論や社会をより広く反映させることになる。

 有権者は1470万人。世論調査では、「新憲法制定賛成」と「制憲議会開設」が60%以上で勝利すると見られている。

 ピニェーラ政権の主要与党UDI(独立民主連合)は、かつてのピノチェー党で、右翼と極右が支持層。大統領が国民投票を受け入れたのを裏切りと捉えており、極右の一部は離党して「共和党」を結成している。

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