トランプ米政権が「新しいラ米政策」打ち出す

  トランプ米政権が「新しいラ米政策」を発表した。その骨子は、①国家の安定、②経済成長促進、③民主および法治の促進、④外国(ラ米域外)の影響力阻止、⑤思想の近い諸国との同盟、の5点。政策は「西半球戦略枠組み」と銘打たれている。

 これはドナルド・トランプ大統領のロバート・オブライエン国家安保担当補佐官が8月16日、マイアミ北方ウェストパームビーチのコロンビア・ベネズエラ系社会で打ち出した。「新しい」というのは、ブッシュ政権が2005年に発表して以来の総合的なラ米政策だからという。

 注目される④は、モンロー教義宣言を踏まえており、ラ米からロシア、中国、イランなどの政経両面の影響力を排除ないし規制するのが狙い。具体策としてたとえば、「対中交渉能力をラ米に備えさせる」ことを挙げている。

 国別ではベネズエラが最大の標的で、「圧力強化、グアイドー(国会議長)支持、麻薬取締強化、VEN人の対米移住保証」を具体策として並べている。米国はすでにグアイド―傀儡政権擁立、軍事クーデター、ニコラース・マドゥーロ大統領暗殺、軍事侵攻などの手を打ち、ことごとく失敗してきた。経済封鎖による「兵糧攻め」は効果を発揮している。

 社会主義キューバについては、「オバマ前政権の無残な対玖政策を見直す」と明記。すでに対玖経済封鎖を厳しくしてきた。ニカラグアに対しても締め付けを強化する方針。

 オブライエンは翌17日、コロンビアとパナマを歴訪した。ホワイトハウス拉米室のマウリシオ・クレイバーカロ―ネ室長、クレイグ・フォーラ―米南方軍司令官が同行した。

 11月の大統領選挙でトランプが再選を阻まれれば、このラ米政策も意味を失うことになる。現時点で打ち出したのは、フロリダ州内のラ米系有権者の気を引きたいトランプ陣営の思惑による。

▼コロンビア大統領が「虚偽発言」

 反マドゥーロの急先鋒を自認するイバン・ドゥケCOL大統領は8月20日、「VENはイランから中・長距離ミサイルを買おうとしている。ロシア・ベラルーシ両国製の武器を在VENコロンビアゲリラに与えている」と述べた。

 「イランからのミサイル買い付け」の証拠や証言を示しておらず、虚偽発言と受け止められている。ホルヘ・アレアサVEN外相は20日、「ドゥヶはまたも自身を恥にまみれさせた」と非難した。

 ドゥケは17日ボゴタでロバート・オブライエン米大統領補佐官と対VEN戦略をめぐって会談しており、米国の「対ラ米新政策」が早くも動き出したと言えよう。「意図的偽情報」を流すのも重要な戦術だ。

 一方、サムエル・モンカーダVEN国連駐在大使は20日NYで、「米政府はCOVID19を経済封鎖とともに対VEN工作の武器に使っている」と非難した。

 VENのコロナ感染者は20日時点で3万7500人、治癒者2万6300人、死亡311人。キューバが近く臨床試験するコロナワクチンやロシア製コロナワクチン「スプートニク」はVENでも試験される見込み。

 一方、キューバ人民権力全国会議(立法府)のエステバン・ラソ議長は20日、第5回世界国会議長会議(テレ会議)で、「国家テロリズム取締り」の法制化を呼び掛けた。この会議は 国連、列国議会同盟、オーストリア議会の肝いりで設立された。

 ラソ議長の脳裏には、革命後に米政府絡みのテロ事件で玖人3478人が死亡、同2099人が身体障碍者になった事実がある。

 


 


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