トランプ政権が米州開銀の不文律破る

  米州開発銀行(BID、本部ワシントン)の総裁選挙は9月実施されるが、トランプ米政権が従来の不文律を破って「米国第一主義」に出たため、ラ米側の疑念や反感を招いている。

 BIDは1959年元日のキューバ革命成功に驚愕した米国が同年、米州諸国機構(OEA,本部ワシントン)を動かして設立した国際金融機関。翌60年に開業、61年に就任したジョン・ケネディ大統領は「ラ米共産化を防ぐため」としてLAC(ラ米・カリブ地域)の開発を急ぐ「進歩のための同盟」 (Alpro)を掲げたが、その財政基盤がBIDだった。

 Alpro事業は総額200億ドルの基金づくりを目指し、日本も資金提供を求められた。日本はBID加盟国であり、東京・内幸町にBID支店がある。投票権は出資額に応じており、日本は5%。最大の米国は30%、次いで亜伯両国が10・75%ずつ。

 BIDは発足当時から、主要な開発対象であるラ米諸国の政経畑から総裁を選んできた。現在の総裁は2005年就任のルイス・モレーノ。コロンビア人で、駐米大使、経済開発相などを務めていた。

 ところがドナルド・トランプ大統領は、ホワイトハウス・ラ米担当顧問のマウリシオ・クラベルカロ―ネ(クレイバーカローン)をBID総裁候補に擁立し、集票運動を展開してきた。

 これに対し、亜国(アルゼンチン、アルヘンティーナ)ペロン派政権のアルべルト・フェルナンデス大統領は、同派キルチネル政権期の司法相だったグスタボ・べリスを出馬させた。べリスは現在、フェルナンデス大統領の戦略問題担当官。

 総裁選当選には加盟国投票権全体の3分の2の獲得が必要。亜国は3分の1強を獲得し、少なくとも第1回投票でトランプの候補の当選を阻みたい作戦だ。

 ラ米では元大統領、BID総裁経験者、財界人らの間で、トランプは11月選挙で敗れる公算が大きいのに自分のお気に入りをBID総裁に据えようとしている、と厳しい批判が渦巻いている。

 またベネズエラのBIDでの代表権はOEA代表権同様、米国の傀儡で政権実体のない「フアン・グアイドー」派に与えられているという歪んだ側面もBIDは抱えている。BID加盟国の中国は、それを理由に、上海でのBID総会開催を拒否したことがある。

 OEAを追放されて以来、復帰を拒否してきた社会主義キューバは、BIDに加盟していない。

▼欧州連合が総裁選は延期すべきと表明

 EUは8月3日、BID総裁選を2021年3月まで延期すべきだ、と表明した。今年11月の米大統領選挙の勝者が決まってからの方が望ましいとの考えに立っている。EUのかなりの国がBIDに加盟している。


▼米国候補を総裁に選出
 
 米州開銀(BID)は9月12日、総会を開催。10月1日就任する次期BID総裁に米国候補マウリシオ・クレイバ―クローンを選出した。加盟48カ国の66%と、米州28加盟国の23カ国の賛成票を得た。

 米州の亜智墨秘TT5カ国は棄権。全体の31%に当たる同5カ国と欧州連合(EU)13カ国は棄権した。

 米国とエル・サルバドール、ハイチ、パラグアイ、ガイアナ、イスラエルが共同提案し、これをCOL伯BOL・URUが賛同した。


 

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