チリ検察が利益相反でピニェーラ大統領を捜査へ

      チリ検察庁の特別汚職取締班は10月8日、セバスティアン・ピニェーラ智大統領を利益相反容疑で捜査すると発表した。同大統領は3日報じられた「パンドラ文書」で、租税回避地である英領ヴァージン諸島での取引に関与した と指摘されている。

  大統領を総帥とするピニェーラ一族はチリきっての富豪家系の一つ。報道によれば、大統領1期目の最初の年である2010年12月に一族が保有していた企業が、国内での鉱山開発計画における開発権を売却した際、贈収賄と脱税がなされた可能性があり、それに関与した容疑が大統領にかけられている。

  検察は、以前からこの事件を捜査していたが、ヴァージン諸島で調印された英文契約書の存在が「パンドラ文書」で明らかになり、新たに同契約書も捜査対象に加えた。

  野党勢力は、ピニェーラを国会で弾劾する方向で事件を追及することを決めている。

  ピニェーラは今回の「パンドラ文書」報道を受けて記者会見し、大統領1期目が終わった後の17年に検察から事情聴取を受けたこと、および、一族の事業には現在まで12年以上も関与していない、と述べている。

  これまでに判明している事実として、ピニェーラの息子が株の一部を所有する鉱山会社ドミンガは10年12月、ピニェーラの親友カルロス=アルべルト・デラノ所有の鉱山会社アンデス・アイアンと1億5200万ドルの開発権売買取引をした。

  ドミンガは、総額25憶ドルに及ぶ銅と鉄鉱石の開発調査をしていたが、その開発地域は、国立フンボルトペンギン保護区の隣接地期にある。同保護区にはペンギンの他、クジラ、イルカ、野鳥などが生息している。

  1億5200万ドルの取引額のうち、①1億3800万ドルはヴァージン諸島の弱小会社を通じて支払われた②そのうち990万ドルには自然保護区などの存在によって開発が妨げられない場合に限って支払われるとの条件が課された③残りの1400万ドルはチリ国内で支払われた。

  ①は脱税、②は贈収賄の容疑が、それぞれかけられている。こうした支払い条件を定めた細部は、英文契約書に明記されている。

  チリでは来月21日、大統領選挙が実施される。ピニェーラの不正捜査開始の検察決定により、政権党連合を組む保守・右翼陣営の候補は、一層の苦戦を余儀なくされそうな気配だ。

  ピニェーラの他、赤道国のギジェルモ・ラソ、ドミニカ共和国のルイス・アビナデルの両大統領や、ペルー作家員作家マリオ・バルガス=ジョサらも「パンドラ文書」で脱税した可能性が暴かれている。

▼全野党が大統領弾劾を要請

  左翼の共産党(PCCH)から中道保守のキリスト教民主党(DC)まで、国会議席を持つチリ全野党は10月13日、下院に大統領弾劾審議を開始するよう要求した。

  

  

 

 

  

    

  

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