「資産接収ない、外資歓迎」と秘大統領が米国で強調

    ペドロ・カスティージョ秘大統領は9月20日、ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部での常設理事会(大使会議)に出席し、演説した。「我々は共産主義者ではない。誰の資産も接収しない。外資を排除するのではなく、大型投資を導入したい。とくに鉱業部門に投資が必要だ」と強調した。

  カスティージョは、ペルーが長年苛まれてきた腐敗問題にも触れて、「ペルーにはあらゆる大きさの腐敗がある。輸出できるほどある。腐敗はパンのない者からパンを奪い、人民への福利の多くを奪ってきた」と述べた。

  この演説は、自国ペルーと、OEA非加盟の社会主義キューバを除く、米州33カ国大使を意識し計算してのもので、「急進左翼」という誤った印象が報道で拡がったのを正し、前政権までと同じように外資導入を図る基本的立場を明らかにした。

  米財界、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、米州開発銀行(BID)などの懸念を払拭するため、ペドロ・フランケ経済・財務相が練った演説だった。フランケはカスティージョに随行している。カスティージョは訪米前に滞在したメキシコでは、実業家で大富豪のカルロス・スリムと会談した。

  米政府の代弁者と呼ばれるルイス・アルマグロOEA事務総長(元ウルグアイ外相)は、「(カスティージョは)コロナ禍問題、国民の不平等をなくす問題、ラ米多国間機関の問題などを語った。特別の政治家による、とても良い演説だった」と評価した。

▼「制憲議会開設は目標課題にない」

  在秘・米商業会議所のアルド・デヒリッピ会頭は9月21日、カスティージョ大統領がワシントンで米財界と20日会談した内容を明らかにした。それによると、随行しているフランケ経済相は、カスティージョ政権の優先的目標課題に制憲議会開設は含まれていないと述べた。

  同会頭は、「大統領は外資導入が秘国貧困緩和と福利拡大に利すると述べたが、外資導入の明確な法的規約が必要だ。それによって外資は、安心してペルーの輸出と福利拡大に貢献できるようになる」と語った。

▼ベネズエラ政権を「承認していない」と言明

  ペルーのルイス・チャベス副外相は9月20日、今年1月5日以降、いかなるVEN政府をも承認していない、と述べた。「1月5日」は、フアン・グアイドー前VEN国会議長の任期が切れた日。副外相は、「リマグループがVEN政権の正統性について語ることもない。その問題は、ノルウェー仲介によるメキシコ交渉でのみ話し合われる」と強調した。

  しかし7月28日のカスティージョ就任式には、マドゥーロ政権のホルヘ・アレアサ外相(当時)が出席しており、カスティージョ政権は対VEN関係正常化に動いている。

  案の定、ギド・べジ―ド首相は怒り★副外相発言を否定、しかるべき職位にない者が重要発言をしてはならないと厳しく警告。CELAC首脳会議が18日開催されたメキシコ市でカスティージョ大統領がマドゥーロ大統領と会談した事実を明らかにした。

  一方、ハロルド・フォーサイス秘OEA大使は21日ワシントンで、「リマグループの活動期間は終わった。今はメキシコ会議がVEN問題を話し合う場だ」と述べた。

▼政権党の次期大統領候補は「セローンを」

   カスティージョ政権与党PL(自由ペルー)党のブラジーミル・セローン党首の側近アルトゥーロ・カルデナスは9月20日、2026年の次期大統領選挙のPL候補はセローンだ、と述べた。セローンは現在、被選挙権を剥奪されているが、カルデナスは「その状態が続けば、ギド・べジ―ド首相や、ギジェルモ・ベルメホ、シルバーナ・ロブレスの両国会議員がいる」と指摘した。(ペルーはアルべルト・フジモリが連続3期政権に就いた悪しき事実から改憲し、連続再選を禁止している。)

▼報道規制法案に反対

  ペルー報道理事会(CPP)は9月21日、カスティ―ジョ大統領に、PL党策定のメディア伝達内容規制法案に反対する立場を伝える、と表明した。

▼カスティージョが国連総会で演説、テロを糾弾

  大統領は9月21日、アントニオ・グテレス事務総長と会談後、国連総会で演説した。要旨は、①世界各国首脳と製薬特許権保持者が話し合い、ワクチンが世界中のあらゆる人々に平等に行き渡るようにしよう②いかなるテロリズムをも糾弾する。テロは社会変革に寄与することはなく破壊を拡げるだけだ③ペルーは気候変動対策に貢献するためカーボンニュートゥラルに努める④民主制度を尊び法治と3権分立を強化するとともに政治を実効化する④女性と子供は創造、労働、経済、社会精神において決定的に重要であり女権拡大を急がねばならないー。

  またニューヨークで世銀総裁、米州開銀総裁、IMF専務理事と会談した。21日夜半、NYを出発、22日朝、リマに帰着する予定。

▼政府支持紙が出現

  カスティージョ政権と政権党PLを支持する日刊紙「エル・ソンブレロ」(帽子)と週刊紙「エル・プカ」が最近出現、リマ市内をはじめ街頭のキオスコで売られている。「帽子」はペドロ・カスティージョ大統領が公の場で被り続ける農民帽を指す。「プカ」はケチュア語で「赤」を意味し、PLの象徴色。

     

  

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