メキシコ独立200周年、玖元首迎えたAMLOが対米説得

      メキシコは9月16日、独立戦争開始211周年記念日を迎え、首都メキシコ市中心部の憲法広場(ソカロ)からチャプルテペク公園に隣接する陸軍第1基地まで軍民行進が催され、アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO)大統領は、来賓のミゲル・ディアスカネル大統領とともに観閲した。

      行進は2時間半に及び、陸海空3軍部隊と国家警備隊の1万5000人とチャロ(民間乗馬愛好者)、さらに仏外人部隊など十数カ国軍の招待部隊が参加した。 

  大統領政庁前の特設貴賓席で1時間半に亘り、国防相、玖大統領、墨大統領が演説した。玖大統領は、ラ米史における玖墨関係の重要性に触れた後、カストロ兄弟ら革命の同志が1955年メキシコに亡命し、そこで出会った亜国人エルネスト(チェ)ゲバラとともにキューバ島にクルーザー「グランマ号」で遠征、59年元日に革命を成就させた歴史を辿り、メキシコとの深い関係を強調、感謝の意を表明した。

  とくにCOVID19で惨憺たる状況にあり、米国による経済封鎖で窮状に陥っているときに、メキシコ公式訪問に招かれたことや支援物資を供与されたことに謝意を表した。 ディアスカネルは、「平和とは他国の権利を尊重することだ」との、19世紀後半のベニート・フアレス墨大統領の名言を引用した。

  AMLO(アムロ)大統領は演説で、メキシコはアグスティン・デ・イトゥルビーデ将軍の下で1821年9月27日独立したが、同将軍がアグスティン1世として帝政を敷いた史実から、メキシコでは独立達成の日より、独立戦争を開始した日の方が重要で、その日を独立記念日としている、と強調した。(したがって今9月16日は独立200周年記念日を兼ねる。)

  独立後200年の歩みに触れた後、玖大統領を招いたことについては、「いかなる強国の内政干渉をも許さず、自由と独立をもって生きる権利を尊厳をもって守ってきた世界で稀な国の人民を代表するからだ」と述べ、キューバと大統領を讃えた。

  続けて、「これまで言ってきたことを繰り返すが、誰もが玖革命と玖政府に同意するか否かを決めることができる。だがキューバが62年間も屈従することなく抵抗し続けてきたことは、疑いなく歴史的偉業だ」と指摘した。

  「それゆえに玖人民は、その主権防衛闘争によって、尊厳賞と人類の遺産指定にふさわしい」と礼賛した。AMLOは、「キューバは抵抗の模範によって、現代のヌマンシアとして受け止められるべきだ」とも述べた。現在のスペインのカスティージャ・イ・レオン地方に存在したヌマンシアは、紀元前に侵入してきたローマ軍に最後まで抵抗して滅ぼされ、「抵抗の模範」とされている。

  その上でAMLOは、「対玖経済封鎖を止めるよう、米国に敬意をもって呼び掛ける」と続けた。「いかなる国にも、他国人民や他国を屈従させる権利はないからだ。まさに<諸国家は他国人民の不幸に乗じてはならない>というジョージ・ワシントンの発言の通りだ」

  さらに「極めて率直に言うが、米政府が玖人民を玖政府に対立するよう仕向けるために、玖人民の福利を阻もうと経済封鎖を使っているとすれば、それは悪いことに見える」と、厳しく指摘した。

  そして、「この邪悪な戦略は、玖側の尊厳の闘いによって成功しそうもないが、仮に成功するとすれば、その勝利は割に合わない、卑劣でさもしいものAになる。その汚れは大洋の水をもってしても消すことはできないだろう」と扱き下ろした。

  翻ってAMLOは、「オマール・トリホス将軍(パナマ革命最高指導者)はパナマ運河奪回を叫び、(カーター大統領の)米国はそれに応じた。政治的繊細さ豊かなバイデン大統領が偉大さをもって、対玖侮辱政策に永遠に終止符を打つことを願う」と呼び掛けた。「米政府の対玖和解努力は、在米キューバ系社会が選挙戦略や党派的利害を脇に押しやるのを助けるべく作用するはずだ」と強調した。

  「怨恨を捨て、新しい状況を理解し、和解を探らねばならない。いまは対立でなく、友愛の時代だ。ホセ・マルティが<無私の威厳と愛の至上権に発する絶妙な政治的手腕をもって>と言ったように、そのようにして衝突は避けられるのだ」。AMLOは、そう結んだ。

▼米大使が異論表明

  米国のケン・サラザール駐墨大使は9月17日、AMLO大統領の出身州タバスコ州で記者会見し、米政府に対玖経済封鎖などを求めたAMLO発言について、「発言すること自体は尊重するが、米国は玖国民のため玖民主化を図ろうと闘っている」と反論。「米墨両国が協調してなすべきことはたくさんあり、双方はそれから外れることはできない」と強調した。

▼メキシコ市でCELAC首脳会議

  ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の第6回首脳会議が9月18日、輪番制議長国メキシコの首都で開かれる。米州35カ国のうち米加北米両国を除く「広義の南米」33カ国から、AMLOを含む大統領および首相18人、副大統領2人、外相ら高官12人が出席を予定。

     残る一カ国は、昨年1月、CELAC加盟見直しを決めたボウソナロ極右政権のブラジルで、欠席する見込み。

  今首脳会議の主要議題は、COVID19対策、およびAMLOが提唱している、米国が主導権を握る米州諸国機構(OEA)の改編、ないし、それに替わる米州新機構の設立構想。

▼「先住民抵抗の500年」行事開催 

  AMLO大統領は、アステカ王国の都テノチティトゥランがスペイン軍に制圧された500周年記念日の8月13日、首都憲法広場(ソカロ)中央に築かれた模型のピラミッド型聖殿前で、「先住民抵抗の500年」会合を開いた。カナダ先住民モホークと、米先住民ナバホの代表がそれぞれ自国の先住民状況を語り、AMLOがアステカ王国滅亡以降の歴史の解釈を説いた。日本を含む先住民族のいる諸国の大使たちも招かれて、視聴した。


  

  

  

  

 

  

  

  

  

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