ペルー政府がFARC武器事件で父フジモリを裁く方針

   ペルーのギド・べジード首相は8月18日、チリ政府に対し、アルべルト・フジモリ元大統領(83)を法廷で裁くための起訴案件を増やすのを許可するよう要請することを決めた。

  フジモリは政権3期目の2000年11月、日本に亡命。だがペルーでの政界復帰を決意し05年離日、ペルーの隣国チリに到着し、逮捕された。

  ペルーはチリに身柄引き渡しを要求した。長期の交渉の末、両国は腐敗5件、人道犯罪2件にかぎって裁くことで合意。07年9月、フジモリの身柄をペルーに引き渡した。

  法廷は09年、フジモリに禁錮25年の実刑判決を言い渡し、10年初め、確定した。以来、短い出所期間を除き、フジモリは特別に設えられた一戸の家のような拘置施設で刑期を勤めてきた。

  カスティージョ政権がチリに要請するのは、フジモリ政権が1999年にヨルダンで武器を買い、これをコロンビアゲリラFARC(コロンビア革命軍)に転売しようとした武器密輸工作事件(シベリア計画)でフジモリを起訴すること。

  この事件はCIAが暴露して大問題になった。事件に関与したフジモリの側近ブラディミロ・モンテシーノスは、06年から禁錮20の実刑に服している。

  カスティージョ政権が今になって起訴案件を拡大するのは唐突の感を免れないが、幾つかの理由が考えられる。

  その一つは、べジード首相をはじめ政権の重要人物らが、ペルーの極左地下結社センデロ・ルミノソ(SL=輝く道)に関係した疑いで捜査対象になっていること。

  隣国コロンビアでは、FARCの残党部隊がベネズエラ国境地帯で依然活動している。ペルーではSLの残党が農村部で今もうごめいている。武器密輸工作事件でフジモリを裁けば、カスティージョ政権への「心証」が改善されるとの計算があるだろう。

  もう一つは、今年の大統領選挙決選でカスティージョと大接戦を演じたケイコ・フジモリの政党FP(人民勢力)は今や国会内での政敵であり、政権に揺さぶりをかけつつある。ケイコの父親フジモリを新たに裁けば、ケイコを強く牽制することができる。

  また、ケイコは過去の不正選挙資金受領、その洗浄で起訴され、係争中。検察は禁錮30年の実刑を求刑する構えだ。フジモリの「新たな起訴」は、娘ケイコとFP党を要さぶる効果を持つ。

  問題は、内なる憂鬱な問題から国民の目をそらせるためと受け取られかねないペルー政府によるチリへの要請が、ペルー国民を納得させることができるかどうかだろう。

  

 

 

  

 

 

」いまになって政府が起訴案件の拡大を図ったのは唐突の感を免れないが、幾つかの理由が考えられる。 

 

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