ニカラグア大統領選の野党側有力候補に捜査迫る
ニカラグア検察庁は5月29日、NGO「ビオレタ・バリオス=デ・チャモーロ財団」の資金洗浄捜査を終えた。同財団の管理者クリスティーナ・チャモーロ=バリオス(66)は11月7日の大統領選挙の反政府側の最有力候補と目されている。
ダニエル・オルテガ大統領の政権党FSLN(サンディニスタ民族解放戦線)が多数派の国会は昨年10月、「外国代理者規制法」を可決。外国資金を受けていた同NGOは法規制の対象となり、クリスティーナは2月7日、抵触するのを警戒してNGP活動を停止させた。
だが内務省は5月、資金洗浄の疑いで捜査を要求。これを受けて検察庁は捜査していた。同庁長官は、オルテガの下で戦った元FSLNゲリラ、アナ=フリア・ギド。
財団の名称で、クリスティーナの母親であるビオレタの夫ホアキン・チャモーロは1978年、当時のソモサ独裁政権に暗殺された。ホアキンは最大紙ラ・プレンサの主幹で、ソモサ体制批判の論陣を張っていた。
この暗殺で民衆が蜂起。長年ゲリラ攻撃を断続的に仕掛けていたFSLNは勢いづき大攻勢をかけ、79年7月ソモサ体制打倒に成功した。FSLNの放ったアルゼンチン人のゲリラコマンドは80年9月、パラグアイ首都アスンシオンでソモサを爆殺した。
ソモサの父親は米国と組んで1934年にアウグスト=セサル・サンディーノ将軍を暗殺した。それへの復讐だった。
反共主義の色濃いレーガン米大統領は81年就任するや、反革命ゲリラ「コントラ」をホンジュラス国内で結成、FSLN体制のニカラグアに攻め込ませた。長い戦闘でニカラグアは荒廃。1990年の大統領選挙でオルテガ大統領は日米が強力に支援したビオレタに敗れた。
だがオルテガは21世紀に政権に返り咲き、11月の選挙で連続4選(通算5期)を狙う。クリスティーナはラ・プレンサ記者だったが、現在は同紙副社長。運営していたNGPは「言論・表現の自由拡充」を活動目的にしていた。
米国際開発局(USAID)から資金提供を受けていた。米国務省は、同NGOによる資金洗浄を否定している。USAIDは援助先諸国で反政府活動を支援するので有名。
名門出身のクリスティ―ナは地名度が高く、最有力紙の紙面を持ち、米国の後押しもあって、野党および反政府勢力の統一候補になれば、オルテガ連続4選を阻む可能性が出てくる。
オルテガ政権の狙いは、資金洗浄で有罪に持ち込み、クリスティーナ出馬を阻止することにあると指摘されている。
▼「チャモロ失格」
ニカラグア中央選管は6月2日、クリスティーナ・チャモーロ=バリオスの被選挙権を剥奪した。チャモーロは1日、野党PRD(民主復興党)に予備選(大統領候補指名争い)への参加を申請したばかり。資金洗浄疑惑を理由に「失格」とされた。同党も最近、「非合法」の烙印を押された。
これを受けて3日、マリーア=エウへニア・アロンソという女性と、カリブ沿岸地方出身の黒人系市民ジョージ・エンリケス=カヤッソという男性がPRD予備選参加を申請した。
オルテガ政権に反対する「自由のための市民同盟」(CxL)がPRDを支持している。
コメント
コメントを投稿