キューバ党大会:守旧派と改革派が鬩ぎ合い

    ハバナ市内西部の会議殿堂で4月16日開会した第8回玖共産党(PCC)大会は2日目の17日、前日に引き続き、3部会で議論が続けられた。「経済危機からの脱出」が最大の関心事だが、共産党政権は従来通り国営企業中心の経済運営を経済政策の基盤にしており、これに異論を唱える者も少なくない。

 簡単に言えば、革命第一世代や軍部の代議員は守旧派で、経済畑や若い層の代議員は改革派だ。両者の鬩(せめ)ぎ合いが続いている。誰もが認識しているのは「市場化促進」以外に打開策はない、ということ。

 守旧派は「革命深化」という空しい言葉を吐き、改革派は「革命でなく、改革実行を」と叫ぶ。守旧派は、市場化が進めばPCCの統制機能が殺がれると恐れ、改革派は「他に選択肢がなく、水が首まで迫っているのに相変わらずためらっている」と不満を隠さない。

 厳しい外貨欠乏に直面し輸入がままならない現状を打破するため、仮想通貨を導入する案も出されている。同盟国ベネズエラのマドゥーロ政権は2018年、原油国際価格に連動する仮想通貨「エル・ペトロ」(石油)の使用を開始、一定の成果を挙げてきた。

 食糧危機は輸入できなくなったことによるところが大きいが、国内の生産者が、政府による農作物の独占的買上げ価格の低さに反発して、本気で生産しないことにも起因している。この問題も話し合われている。

 大会は、経済活性化と食糧確保を「国家安全保障問題」に組み入れた。

 政府は党大会に合わせて、牛肉の販売を認可した。玖人庶民の動物性蛋白源は豚肉、鶏肉、魚介類が中心。牛肉は高根の花だ。その販売許可は「新機軸」には違いない。肉牛の年齢、肉の部位などを基にした細かい価格が設定されている。牛乳の買上げ価格も更新された。これらの方策は、生産農民への刺激策だ。

 一方、1959年元日の革命の後、60年代から制度化されてきた生活必需物資の配給は、ソ連圏消滅で経済危機に直面した90年代以降、徐々に縮小されてきた。財政赤字が深刻なため補助金削減が急がれており、配給制度もそのあおりを食らっている。

 だが深刻な経済危機にある今、代議員から「縮小されながらも配給制度は、庶民に辛くも安心感を与えている」との指摘がなされている。

 国民は空腹と、国民間の格差拡大によって、PCCに背を向けつつある。80年代に生まれた40歳未満の層にそれは著しい。彼らは党が号令をかけても、笛を吹かれても、もはや踊らない。電子機器が国家の情報独占を打破し、内外情勢に毎秒触れられるようになっている国民は、真実、事実、虚偽を判断できるようになっている。

 ラウール・カストロ第1書記は党大会最終日の19日、引退する。30歳若いミゲル・ディアスカネル大統領が新第1書記に就任するが、革命戦争後世代のミゲルが名実ともに最高指導者として認められるには、新たな経済建設に成功することしかない。

 大統領は当面、間近に迫っている国産コロナワクチンの実用化に希望をかけている。

 対米関係も需要だ。ラウールとバラク・オバマ米大統領は14年12月、国交正常化に合意。国交は15年7月、54年ぶりに再開され、両国関係は大幅に改善された。だがトランプ政権は、在米キューバ系の意向を代弁する共和党右翼に引きずられ対玖関係は冷却化した。

 ディアスカネル大統領兼新第1書記とジョー・バイデン現大統領が、両国関係の打開をどう図ってゆくか。未知数だらけだ。バイデンは対中戦略を中心とする世界政治における主導権の回復を急いでおり、キューバを含むラ米との外交の優先度は低い。 

  

  


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