ベネズエラ政権党が国会議席の91%握る

  ベネズエラ選挙理事会(CNE=中央選管)は12月9日、国会議員選挙(6日実施)の結果に基づく議席配分を発表した。それによると、政権党PSUV(ペスーブ=VEN統一社会党)を中心とする政権党連合GPP(大愛国軸)が定数277議席のうち253議席(91%)を占めた。

 残りの24議席から先住民割り当て3議席を除く21議席は、AD(民主行動党)11、AP(進歩主義前哨党)3、変革党3、PV(VEN第一党)2、COPEI(キリスト教社会党)1、PCV(VEN共産党)1。先住民3議席は9日選出される。

 ADは、故カルロス=アンドレス・ペレス大統領ら多くの大統領を輩出した伝統政党。COPEIは1990年代までADと共に2大政党だった伝統政党で、故ラファエル・カルデラ大統領らを生んだ。変革党は、元大統領候補エンリケ・カプリレス(元ミランダ州知事)派の新興政党。APは、元大統領候補ヘンリ・ファルコン(元ララ州知事)の政党。PVも新興政党。

 共産党は、ウーゴ・チャベス前大統領時代にはGPPを組んでいたが、近年、政策の隔たりからマドゥーロ体制と仲違いしている。

 絶対的多数派となった政権党連合は、かつてチャベス大統領が国会審議抜きの「授権法」をもって経済政策を推進したように、授権法が使われるようになるかもしれない。

 カプリレスは、グアイドーが2019年1月国会議長に就任し、トランプ米政権に「暫定大統領」として擁立されるまでは、反政府野党勢力の指導者だった。カプリレスは9日、グアイドーの議長任期は21年1月5日に終わると述べ、「暫定大統領」の根拠も失われることを示唆した。

 「バイデン米次期大統領は、<VEN暫定政権>は消費し尽くされた構想であり、今後は続かないということを理解すべきだ」と、カプリレスは述べた。

 そのうえで、反政府野党には「指導者はおらず、指導力もない」と指摘。野党勢力は米欧の支援を受けつつ選挙で勝負できる態勢を整えなければならない、と強調した。この発言は、暴力的政変を肯定するトランプ・グアイドー路線の失敗に立っている。

 カプリレスはPJ(まず正義を)党の党首だったが、同党はグアイドー派に加わって選挙をボイコットした。それを見越していたカプリレスは、自派政党「変革党」を結成し、今選挙に参加した。ADもボイコットしたが、一部が選挙に参加した。

 一方、国連高等弁務官ミチェル・バチェレ―(前チリ大統領)は9日、「真の野党になろうとしているVEN野党勢力と接触しているが、彼らは21年の州知事や市長の選挙に備えようとしている」と述べた。この発言には、グアイドー派のボイコット路線への批判が込められている。

  グアイドーが前回選挙時に出馬したラ・グアイラ選挙区では、大統領の息子、ニコラース・マドゥーロ=ゲラが当選した。

▼メキシコがOEA決議に反対票

 米政府の影響下にある米州諸国機構(OEA、本部ワシントン)は12月9日、遠隔大使会議を開催、「不正があった」としてVEN国会議員選挙を認めない決議案を賛成21、反対2、棄権5、投票不参加6で採択した。

 メキシコとボリビアは「内政干渉決議だ」として反対票を投じた。

 ★賛成にはグアイドー派のVENが入っている。VENでの国政選挙を、実体のない傀儡「政権」が否定するという虚構はトランプ米政権と、ルイス・アルマグロOEA事務総長がつくった。国連はマドゥーロ政権を正統な代表と認めており、このOEA決議がいかに歪んだものかがわかる。

 棄権は亜国、スリナム、バルバドス、ベリーズ、セントクリストファー&ネヴィス。

 不参加は ニカラグア、ドミニカ、セントヴィンセント&グレナディーン、TT、グレナダ、アンティグア&バーブーダ。

 決議案は米国、ブラジル、コロンビアなどが共同提案した。

 一方、VENを密出国しスペインに住むVEN極右指導者レオポルド・ロペスは12月9日、コロンビアを訪問、同国政府との話し合いなどを開始した。ロペスはグアイドーが所属する暴力的政変肯定路線の「人民意志」(VP)の最高指導者。

 コロンビア大統領イバン・ドゥケは9日ロペスと会談。ロペスが10月VENから逃亡した際、密出国を支援したことを明らかにした。

 


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