ベネズエラ極右指導者ロペスが逃亡、スペインへ

  ベネズエラの極右指導者レオポルド・ロペスが密出国し逃亡、スペインに向かった。ロペスは暴力による政変を肯定する極右政党「人民意志」(VP)の元党首で、依然、事実上の最高指導者。その弟子に当たるのが、フアン・グアイドー現国会議長だ。

 ロペス出国は、VPが10月24日発表した。 ホルヘ・アレアサVEN外相は同日、スペイン政府が外交に関するジュネーブ条約に違反した、と激しく抗議した。

 ロペスは2002年のチャベス打倒クーデターに参画、失敗し投獄された。だがウーゴ・チャベス大統領の恩情で釈放された。

 チャベスは2013年死去、後継大統領には側近のニコラース・マドゥーロ元外相が同年の大統領選挙に勝って就任した。するとロペスは14年2~5月、米国と謀って激しいグアリンバ(街頭暴力活動)を展開、死者43人、負傷者多数を出した。

 逮捕され15年に「暴動教唆罪」で禁錮15年の法廷判決を受け服役。マドゥーロの恩情で17年に自宅軟禁になった。

 ところが19年4月末、米国およびグアイドーと謀って自宅を離れ、カラカスの一角でグアイドーと並び立って軍事クーデターを呼び掛けた。だが根回しは失敗、国軍実戦部隊は集まらず、ロペスはスペイン大使公邸に亡命した。

 それから1年半、スペインの前保守政権から派遣されていた駐VEN大使は、現左翼・進歩主義政権の駐玖大使が横流れしてVEN駐在と決まり、近く赴任する。

 この時点でロペスは国外逃亡を決意した。マドリ―にはロペスの父親と妻子が住むが、この家族と合流する。父親は「息子は2日前にVENを離れ、おそらくコロンビア経由でマドリ―に向かっている」と明らかにした。だが、カラカス沖のカリブ海にある蘭領アルバに船で密出国し、そこから空路マドリ―に向かったという情報もある。

 VEN反政府野党勢力の悲劇は、暴力肯定路線のVP国会議員グアイドーを戴いていること。このため支持が広がらず、敗北するしかない12月6日の国会議員選挙をボイコットしている。

 マドゥーロ派多数派の新国会が21年1月5日発足すれば、グアイドーの権限は失われる。また11月3日の米大統領選挙で後ろ盾のドナルド・トランプ大統領が落選すれば、借りていた「虎の威」を失い、「狐」になってしまう。

 VEN諜報機関は24日、スペイン大使公邸の警備員および、ロペスの食事の世話をしていた女性のVEN人2人を逮捕した。ロペスは25日までにマドリ―に到着した。

 マドゥーロは、あらためてロペスをテロリストと呼んでいる。

▼イスラエル軍も待機していた

 今年5月に失敗した傭兵部隊によるニコラース・マドゥーロ大統領拉致・暗殺作戦(ヘレドン作戦)に、イスラエル軍特殊部隊の2つのコマンドが参加する態勢を整えていたことがわかった。10月22日のVEN最高裁刑事法廷での審理で明かされた。

▼「軍事理事会」設立

 ニコラース・マドゥ―ロ大統領は10月23日、VENの軍事的独立性を強化するためとして、露玖中イラン4か国の協力の下、「軍事理事会」を発足させた、と発表した。兵器開発や軍事技術で「完全な米国離れ」の方向に動き始めたと言える。

▼VEN主要閣僚が交代

 マドゥーロ大統領は10月25日、ララ州知事カルメン・メレンデス首席提督(元国防相)を内務・司法・平和相に任命した。同相ネストル・レべロール(首席将軍)は電力相に転じた。ㇾべロールは、レオポルド・ロペス国外逃亡の責任を取らされた。

▼VENミサイル破壊と米警告

 トランプ米大統領のVEN問題特使エリオット・エイブラムスは10月26日、米TVとの会見で、イランから長距離ミサイルがVENに搬入されれば、米国は破壊すると述べた。

 一方、イラン機B774型貨物機1機が27日、カラカス郊外のシモン・ボリーバル国際空港に到着した。積み荷は明らかにされていない。

▼ロペスに自己批判を要求

 VEN反政府野党のエンリケ・オチョア国会議員は10月28日、マドリ―に逃亡した極右指導者レオポルド・ロペスに向けて、「ロペスは数百人が死亡した一連のVEN国内での暴動事件の(悪しき)先駆だった。そのことと、マドゥーロ政権打倒に失敗したことを自己批判すべきだ」と厳しく批判した。

▼スペインは大使派遣取り止め

 西国外務省は10月29日、VEN駐在大使派遣を取り止め、臨時代理大使を任命すると発表した。当初、現在の駐玖大使をVENに派遣することにしていた。

▼2021年度予算決まる

 VEN制憲議会(ANC)は10月29日、21年度歳出約4兆ボリーバル(実勢で約82憶米ドル)を承認した。その76%は社会投資向け。



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