チリ国民投票で来年の「新憲法制定」決まる

  来年の新憲法制定に向かってチリが動きだした。10月25日実施された国民投票で、「新憲法制定と制憲議会による起草」が圧倒的多数で可決された。ピノチェー軍政(1973・9・11~90・3・11)の「悪しき遺産」である軍政憲法は来年、葬られることになった。

 投票率は50・9%で高くはなかったが、この国の国政投票では最大規模の約750万人が投票した。投票率が伸び悩んだのは、結果の趨勢が決まっていたこと、および政治的無関心による。

 開票終了時、新憲法制定賛成78・27%(588万人)、反対21・73%(163万人)で、制定派が圧勝。新憲法の起草は制憲議会で78・99%(564万人)、起草会議で21・01%(150万人)だった。25日夜の開票36%段階の新憲法制定賛成78%、反対22%の趨勢は終始変わらなかった。

 この趨勢が明確となった同夜、セバスティアン・ピニェーラ大統領はモネーダ宮殿(大統領政庁)前で早々と演説、「チリは新憲法制定に向けて歩み始めた」と宣言した。保守派の大統領が逸早く宣言したことで、右翼・極右らの「敗北拒否活動」は封じ込められた。

 大統領は26日朝の閣議で全閣僚に対し、コロナ禍対策、年金、治安などで有権者の要請に応えるよう指示した。

 制定反対票が多数を占めたのは、全国で5市しかなかった。タパカラ州コルチャネ(反対74%)、マガジャネス州アンタルティカ(南極、67%)、首都圏のビタクラ(67%)、ロ・バルネチェア(61%)、ラス・コンデス(55%)。ラス・コンデスは首都サンティアゴの富裕層居住地域だ。

 ピノチェー軍政が1980年に制定し、90年3月の民政移管後に何度か改憲されてきた、弱肉強食の新自由主義を基調とする現行憲法は来年廃止されることになる。

 世界ワースト17位の貧富格差に苦しむチリ国民多数派は、経済的平等性の高い新憲法制定の道を選んだのだ。

 中南部以南に居住するこの国最大の先住民族マプーチェは、現行憲法にある「テロリズム取締法」などの弾圧法の廃止や、先住民権、多民族国家チリ規定などを要求している。ボリビアはモラレス前政権が新憲法で、ボリビアを多民族国家と規定、国名に取り入れた。

 政権党(保守・右翼・極右)と野党勢力(中道・保守・左翼・極左)は制憲議会議員候補の選出に入った。定数155人は男女半々。選挙は来年4月実施される。男女半々の立候補者がどんな顔ぶれになるか、興味深い。

  新憲法起草者の半数が女性となることから、フェミニズモ(女権拡張主義)が一層の隆盛に向かっている。

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