10月のボリビア大統領選挙は決選実施の公算

 ボリビアの最大政党MAS(社会主義運動)の最高指導者エボ・モラレス前大統領は8月12日、大統領選挙の10月18日実施案を受け入れた。当初は5月3日だったが、コロナ禍を理由に9月6日に延期され、さらに10月18日に延期されることになった。

 昨年11月、ボリビアの右翼・保守派はトランプ米政権と連携して財界主導の軍部・警察クーデターを起こし、10月の大統領選挙で再選されていたモラレスを追放。右翼勢力の代弁者ジャニーネ・アニェスが一方的に「暫定大統領」に就いた。

 生命の危機に直面したモラレスは、AMLOメキシコ大統領が用意した政府機でメキシコ市に脱出。昨年末、アルゼンチンにペロン派のフェルナンデス政権が誕生すると、亡命地をブエノスアイレスに移した。ボリビアの隣国であり、政治活動に便利だからだ。

 10月の大統領選挙には8人が出馬する予定。最有力候補はモラレスの後継候補であるMASのルイス・アルセ元経済相。財界支配州サンタクルースの実力者で昨年のクーデターを主導したルイス・カマチョは対抗馬の一人で、保守連合「クレエモス」(我々は信じる)から出馬している。

 暫定大統領経験者の保守派の2人、ホルヘ・キロガ(リブレ21)とカルロス・メサ(市民共同体)も出馬。アニェス現暫定大統領(社会民主運動=MDS)は当初、次期大統領が決まるまでの中継ぎを表明していたが、権力への野心が高じて立候補、同志だったカマチョと仲違いしている。

 アニェスは選挙最高裁(TSE)を動かして大統領選挙日程の変更を重ねてきたが、真の理由はコロナ禍ではなく、勝機がないためと見られている。一時はMASの選挙からの締め出しさえ謀ったが、これには失敗した。

 アニェスの「陰謀」を知るMASの中核であるCOB(ボリビア中央労連)、鉱山労連、コカ葉栽培農連などは8月3日から選挙の10月への延期に抗議し、全国ストライキや幹線道路の封鎖を決行した。

 モラレスは10月への延期を受け入れたが、これは、反対闘争が長引き大量流血などの重大事態に発展すれば、それを口実にMASが選挙から排除されることにもなりかねないからだ。そうなればアニェスの思うつぼで、MASの政権奪回の機会は遠のいてしまう。

 大統領選挙だが、候補者が8人もいるため、第1回投票での当選者は出ず、上位2人が11月29日の決選に進出する公算が大きい。

 リチウムをはじめボリビアの資源を狙う意図を隠さないトランプ政権だが、米大統領選挙が11月3日にあるため、ボリビア選挙への大掛かりな介入はしにくいところだ。 

▼上院が10月18日選挙実施を事実上決定

 ボリビア上院は8月13日、正副大統領・国会議員選挙を10月18日までに実施する法案を可決した。これにより10月18日が投票日と事実上決まった。

▼モラレス排除さる

 ボリビア憲法裁は9月7日、(10月18日の)大統領選挙と同時に実施される国会上院議員選挙への出馬を予定していたエボ・モラレス前大統領の立候補を禁止した。

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