スペイン前国王フアン=カルロスが出国し姿くらます

  スペイン前国王フアン=カルロス・デボルボン1世(82)が自身の「不徳」から出国、姿をくらました。独裁者フランシスコ・フランコ総統が準備し復活させた王政は、45年経ったいま、国民の厳しい視線に晒されている。

 1975年11月のフランコ総統死去に伴い予定通り即位したフアン=カルロスは、民政に反対する準軍組織グアルディア・シビル(治安警備隊)極右勢力による国会占拠事件)を説得によって解決、軍事クーデターを未然に防いだ。

 フランコから帝王学を授けられていたため右翼的発想の持ち主かと見られていたが、これを裏切り「民主的国王」であることを内外に印象付けた。

 スペインは欧州共同体(EC、現EU)加盟、イベロアメリカ首脳会議設立、バルセローナ五輪開催などで国際的地位を強化。象徴的存在の国王は名声を揺るぎないものにした。

 だが愛人関係など醜聞が暴露され、2012年年には南部アフリカのボツワナで象狩りに興じ、国民の顰蹙を買った。

 14年、息子フェリーペ・デボルボン6世に譲位、優雅な年金生活に入った。しかしサウディアラビア絡みの巨額収賄事件が明るみに出、スペインおよび、銀行口座のあるスイスで捜査が始まっていた。前国王は「迷惑をかけないため」という趣旨の書簡を現国王に送り、出国した。

 フアン=カルロス前国王は、スペイン北西部から8月3日、陸路、ポルトガル北部のポルト市に至り、そこから空路、カリブ海のラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国=RD)の首都サントドミンゴ(SD)に向かったとされる。

 SD東部カリブ海浜の保養地にある富豪の邸宅に一時的に滞在すると伝えられる。だがRDの最有力紙リスティン・ディアリオは4日、前国王の入国は確認されていないと報じた。

 一方、スペインのペドロ・サンチェス首相は4日、前国王出国について、「王制(立憲君主制)ではなく、前国王個人の問題だ」と述べ、王制への打撃を避けたい意向を示した。

 だが左翼のパブロ・イグレシアス第2副首相は、「(国外逃亡は)前国王としてなすべきことではない」と批判。王制反対の立場から、「遅かれ早かれスペインの若い層は、<共和国スペイン>に向かってゆくだろう」と指摘した。

【国王の名称】ボルボン家のフアン=カルロス1世。ボルボン家のフェリーペ6世。

▼前国王はアラブ首長国連邦に滞在

 スペイン王室は8月17日、フアン=カルロス前国王は3日からアラブ首長国連邦(EAU)に滞在している、と明らかにした。

 

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