キューバが「社会経済戦略」発表、対ドル課徴金を廃止

 ミゲル・ディアスカネル大統領のキューバ(玖)政府は7月16日、9項目の「社会経済戦略」を発表、そのうちの一項「ドル販売店開設による内需促進」は20日から実施される。この「戦略」はポストコローナ期の経済開発が目的で、「2030年国家経済開発計画」の一環でもある。

 9項目: ①中央計画経済体制維持 ②国産保護と輸入依存心一掃 ③主に間接的な市場規制 ④国営、非国営など経済当事部門の連携 ⑤国庫準備外貨蓄積のための米ドル販売店開設による内需促進 ⑥企業部門の自主性最大化 ⑦活動と所有権の形態現代化の促進 ⑧資材と資金の効率化に基づく競争力促進 ⑨環境政策に配慮しての持続可能な開発。

 最も重要で具体的な第5項目は、7月20日実施される。全国に主な小売り販売店は4800店あるが、そのうちの軍部系CIMEX傘下などの72店で実施される。食料品、衛生用品、金物が販売される。支払いは外貨口座に基づくキャッシュカードで為される。

 米ドルへの10%課徴金は同20日廃止される。この課徴金は2004年、当時のブッシュ米政権が、対玖経済封鎖の強化策としてキューバの米ドルによる国際的決済を禁止したことで、玖側の損失が増えたのを補う措置として導入されていた。

 ドルを持つ国民や入国時に両替する外国人旅行者には評判が悪かった。政府は今回、ドル吸い上げ政策強化のため、障害となってきた「10%税」を廃止した。

 経済学者やジャーナリトは、第5項目実施を、「玖経済のドル化促進策」と受け止めている。これを皮肉るように、玖要人の肖像をあしらったパロディーの「玖ドル札」が庶民メディアに登場した。

 「100ドル札」の顔はディアスカネル大統領、「50ドル」はラウール・カストロ共産党第1書記、「10ドル」はラミーロ・バルデス革命司令官、「5ドル」はギジェルモ・ガルシア革命司令官、「2ドル」は故フアン・アルメイダ革命司令官。

 玖経済はコローナ禍で観光産業が大打撃を受け、観光を含む「3大外貨収入源」の「海外からの送金」と「対外派遣医療団収入」も激減、外貨が逼迫し、対外債務返済も停止されている。

 頼みの動力源はベネズエラ(VEN)原油だが、マドゥーロ政権の政策失敗や米国の対VEN経済封鎖で石油産業が大きく縮小。対玖原油輸送も滞りがちだ。

 キューバの巷には、小売店での生活必需品の払底や、買う際に強いられる長時間行列への不満が鬱積し、反政府発言を厭わない庶民が急増している。そこへもってきてのドル販売店開設は、ドルを持たない市民、わずかしかありつけない庶民の神経を逆なでする。

 90年代に「革命の平等主義」から離れた政府は、国民間の経済格差拡大を承知の上で、ドル持ち富裕層に便宜を図り、ドルを国庫に吸い上げる政策を優先せざるを得ないのだ。

 従来、ドル吸い上げ策の中心は「兌換ペソ」(CUC)だったが、政府は昨年、懸案の通貨一本化政策によりCUC廃止方針を決め、その後、一部でCUC使用を禁止してきた。だがコローナ禍などによる経済の苦境もあって、社会に定着してきたCUCの使用は依然続いている。
 
 国連・ラ米・カリブ経済委員会(CEPAL)は、玖経済は今年8%縮小すると推測している。

 

  

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